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法律上及び各地の規定

第五章 農民集団の法的形態に関する一考察

第四節 集団土地株式化の法的性質

一 法律上及び各地の規定

物権法、農村土地請負法などの法律においては、農民集団が株式合作化された後、

権利義務の変化について何も規定していない。農民専業合作社法と農民専業合作社登 記管理条例などにおいて直接的な規定もない。各地方では、土地請負経営権により合 作社に出資することについて様々な規定があるが、合作社は株式制であるか、それと も他の方式であるかについて峻別せず、総括的な規定だけがある633。それらの規定は概 ね、以下の四種類に分けられる634

第一の種類は、土地請負経営権によって合作社に出資できるという規定である。例 えば、浙江省では、「浙江省農村土地請負経営権作価出資農民専業合作社登記暫行弁法」

においては、以下のような規定がある。家庭請負あるいは入札、競売、公開協議など の方式によって農村土地を請負い、かつ法律に従って登記し、農村土地請負経営権の 証明を取得する。そのような方式で取得する土地請負経営権は法律に照らして価格を 定め、農民合作社に出資することができる。江西、天津、安徽、山東等の地方法規に おいても類似した規定がある635

633以下の規定は、農民集団は株式合作化され、土地請負経営権の代わりに、農民が株主権を取得する 場合だけでなく、土地請負権により出資する場合がすべて含まれ、土地請負経営権の株式化はその中 の一種である。

634温世扬・張永兵「土地承包経営権入股農民専業合作社法律問題探析」甘粛政法学院学報 2014 年第 3 期 89 頁。

635浙江工商行政管理弁公室「関于印発『浙江省農村土地承包経営権作価出資農民専業合作社登記暫行 弁法』的通知」(浙工商企(2009)4 号)http://www.zjaic.gov.cn/zjaic/zfxxgk/xxgkml/zfyjywj/w j/qy/200903/t20090317_69416.htm(2009 年 3 月 17 日発表)

「江西省農民専業合作社条例」第 15 条第 2 項は、「農民は法律に照らし、自発有償の原則によって、

土地請負経営権(林権を含む)を株式化し、農業共同生産に従事することができる」と規定されてい る(「江西省農民専業合作社条例」江西日報 2011 年 12 月 15 日第 B3 版)

「天津市農民専業合作社促進条例」第 13 条は、「集団経済組織は農民で組織し、土地請負経営権を 主な出資方式として、農民専業合作社を設立し、農業の集約化と規模化経営を実行する」と規定され ている(「天津市農民専業合作社促進条例」天津日報 2014 年 7 月 30 日第 4 版)

第二の種類は、請負経営土地の収益によって合作社に出資できるという規定である。

例えば、黑龍江省では「黑龍江省農民専業合作社条例」第6条第2項は「農民は土地の 請負期間に土地の用途を変更しない場合には、その土地から予測される収益の価格を 定め、農民専業合作社に加入する」と規定されている。陝西省でも類似した規定があ る636

第三の種類は、土地請負経営権あるいはその収益のいずれでも、合作社に出資でき るという規定である。例えば、山西省では、「山西省農民専業合作社条例」第7条は「農 民専業合作社の構成員は通貨、実物、知的財産権、土地請負経営権またはその予測さ れる収益価値で出資することができる。その収益を通貨で評価することもでき、かつ 法律に従って、譲渡できる非通貨財産として値段をつけて出資することもできる」と 規定されている637

第四の種類は、所有権、請負権、経営権の「三権分離」を強調するという規定であ る。例えば、浙江省嘉興市平湖市人民政府「関于加快推進農村土地請負経営権股份化 流転的指導意見」では「土地所有権と請負権の変更がなく、農民の土地請負経営権を 株主権に転化し、これによって合作社に出資する。農民は株主権により、経営収益の 中から一定の比例の配当を獲得する。請負土地の所有権、請負権、経営権の三権分離 を実現する」と規定されている。海南経済特区、江蘇省638にも類似した規定がある。

「安徽省実施「中華人民共和国農民専業合作社法」弁法」第 11 条第 2 項は、「農民は法律に照らし、

自発有償の原則によって、土地請負経営権を株式化して、株式合作社を設立し、農業共同生産に従事 し、農業の生産、経営の規模を広大する」と規定されている(「安徽省実施「中華人民共和国農民専 業合作社法」弁法」(2010 年 4 月 23 日安徽省第十一届人民代表大会常務委員会第十八次会議通過)h ttp://www.ahhzs.com/Thematic/4-30/page.html(2015 年 9 月 19 日検索))

「山東省人民政府関于印発「山東省農民専業合作社条例」等有関法規的通知」第 11 条は、「農民専 業合作社の構成員は通貨で出資することができ、同様に実物、土地請負経営権、知的財産権及びほか の通貨でも値段をつけることができる、さらに、法律に従って譲渡することができる非通貨財産を出 資することもできる。ただし、構成員は非通貨財産によって出資する場合、全体の構成員でその値段 をつけるか、またはその値段をつける方式を決定する」と規定されている(「山東省人民政府関于印 発『山東省農民専業合作社条例』等有関法規的通知」(鲁政発「2010」34 号)山東政報 2010 年第 9 期)

636「黑龍江省農民専業合作社条例」(黑龍江省第十一届人民代表大会常務委員会公告第 25 号)http:/

/www.hljrd.gov.cn/detail.jsp?urltype=news.NewsContentUrl&wbtreeid=1209&wbnewsid=8447」(200 9 年 12 月 17 日発表)

陕西省工商行政管理局「関于進一步支持和促進農民専業合作社発展的意見」においては、「生産請 負経営期限内で、生産用途を変えないことを前提として、農民がその土地請負経営権の収益に値段を つけて出資し、農民専業合作社に加入することができる」と規定されている(陕西省工商行政管理局

「関于進一步支持和促進農民専業合作社発展的意見」(陕工商字「2009」1 号)http://nhs.saic.gov.

cn/wcms2/actsociety/experience/html/1253.htm(2009 年 1 月 4 日発表)

637「山西省農民専業合作社条例」山西人大网 http://www.sxpc.gov.cn/sxrd/sxrd/201109/201109231 80553891419.html(2011 年 9 月 23 日発表)

638「海南経済特区農民専業合作社条例」第 7 条第 2 項は、「農民はその家庭請負の農地経営権に値段

上述したように、農地を使って出資することについて、各地の規定は四種に分けら れる。中国の学界では、法律および各地の規定に基づき、農地を使って出資すること の性質について様々な学説がある。次項では、各学説の内容を概観する。

二 学界の議論

農地の株式化の性質について、学界では概ね三つの学説がある。すなわち、物権移 転説、債権移転説、土地請負経営期間分割説である。以下、この三つの学説を概観す る。

(一) 物権移転説

物権移転説は、土地請負経営権を株式化し出資することが、物権的変動であり、譲 受者は用益物権の性質を持った土地請負経営権を取得すると主張する。その内容は以 下のとおりである。土地請負経営権は用益物権であり、土地請負経営権を出資するこ とは、土地請負経営権の移転の一つ方式である。これは物権的変動であり、移転した 後、譲受方が取得するのは用益物権の性質を持った土地請負経営権である639。農民専業 合作社法により、合作社は法人格を持ち、株式合作社が解散される前に、合作社の財 産は構成員の財産とともに互いに独立する。そして、出資した非通貨財産は会社に出 資することと同じように、物権を移転しなければならない640。つまり、農民は土地請負 経営権を農民集団法人に出資すると、この土地請負経営権を喪失することを意味する。

従って、土地請負経営権により、株式合作社法人化された農民集団に出資することは 物権的移転と推定できる。

物権移転説に対し、以下の反論がある。物権移転説は、土地請負経営権が用益物権 であること、及び会社の出資制度を根拠とし、合作社の特殊性を軽視している。合作 社法人は、その本質が「互助的な経済組織である」、企業法人と異なり、利益の最大 化を目的としない。合作社に加入する際に、財産の帰属関係の変化が発生しない。つ をつけて株主になることができ、合作の方式で加入したりまたは農民専業合作社を設立したりでき る」と規定されている(海南日報 2011 年 12 月 25 日第 A5 版)

「江蘇省農民専業合作社条例」第 12 条は、「農民は請負地の経営権を主な出資方式として、農民専 業合作社を設立し、土地請負経営権の収益を増やし、妥当な規模の農業経営の収益を割り当てる」と 規定されている(「江蘇省農民専業合作社条例」新華日報 2009 年 12 月 9 日第 A7 版)

639房紹坤『物権法用益物権編』104 頁。

640宋志紅「土地承包経営権入股的法律性質辨析」法学雑誌 2010 年第 5 期 11 頁。

まり、入社する際に、構成員の財産は合作社に帰属せず、依然として構成員個人に属 する。合作社から脱退する時には、自分の財産を取り戻すことができる641。農民は土地 請負経営権によって、合作社に出資すれば、請負経営権は喪失しない。農民は民主的 に合作社を管理し、土地の使用について民主的に決定し、いつでも合作社から脱退す ることができる。このように、合作制により、農地経営の安全性が保障され、土地請 負経営権を株式にすることのリスクが減少される642。以上の理由によって、中国の学界 では、物権移転説は妥当ではないと主張する学者がいる。

(二) 債権移転説

債権移転説は土地請負経営権が株式化されても、土地請負経営権者は依然として土 地請負経営権を持つと主張している。つまり、土地請負経営権の株式化は、請負経営 者が土地請負経営権を失うことではなく、ただ請負経営地の使用価値を支配する行為 である。

債権移転説はその内容によって大別すると二種類に分けられる。一つ目は、土地請 負経営権の株式化は賃貸と同じように、債権を設定する移転方式であるという主張で ある643。請負経営地を集団経済組織に賃貸し、これによって、農民集団に対する出資が 実現される。結果として、土地請負経営権者は農民集団の株主権を取得する。土地請 負経営権者は請負地の賃貸権により、株主権を交換する。二つ目は、土地請負経営権 の株式化は土地の所有権、請負権、経営権の三権分離によって実現できるという主張 である。つまり、土地請負経営権はさらに土地請負権と土地経営権に分離できる。農 民は土地請負権を保留し、土地経営権のみを集団に移転し、株式化される(図 5-2)644。 この主張により、農民は土地の請負権を保留し、土地の経営権のみの移転によって、

株主権を獲得する。

641向勇「駁合作社法人所有権」政治与法律 2008 年第 9 期 115-118 頁。

642楊紅朝「土地承包経営権入股農民専業合作社法律問題探討」河北法学 2011 年第 6 期 29 頁。

643馬新彦・李国強「土地請負経営権流転的物権法思考」法商研究 2005 年第 5 期 112-118 頁。

644張征・張正河「農地承包経営権流転分析」中国土地2006年第4期27-29頁、楊紅朝「土地承包経営 権入股農民専業合作社法律問題探討」30頁。