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学説に関する考察

第五章 農民集団の法的形態に関する一考察

第二節 農民集団の法人化に関する諸学説

二 学説に関する考察

(五) 株式合作社法人説

株式合作社法人説は、中国会社法の規定により、集団土地株式合作社法人を設立す ることを主張している。

株式合作社法人説の内容は以下のとおりである606。まず、農民集団の株式合作化につ いて、法律上の規定が欠乏する段階で、外国法における法人定款に関する規定を参考 にし、中国の村民委員会組織法の規定を依拠として、集団土地の株式合作社法人定款 を制定する。また、各地の現状により、株式合作社の範囲を判断する。つまり、農村 土地請負経営制が実施されて以来、集団土地の区分が行政村を単位とするか、それと も村民小組を単位とするかに基づき、株式合作社の範囲を確定する。次に、戸籍を原 則として、さらには集団土地が生活の保障であるかどうかを判断基準とし、株式合作 社法人の構成員を明確にする。さらに、社員大会は株式合作社法人の意思機関とし、

村民委員会以外には、独立的な機関を設置し、村民委員会の経済的役割を代替する。

この独立的な機関は株式合作社法人の執行機関とし、その担当者は株式合作社法人の 法定代表者でもある。他に、株式合作社法人は社区組織であるため、その範囲が一般 的に大きくない。従って、特定の監事会を設立する必要がなく、現行の村務公開制度 を基礎とし、構成員全員に監督権を授ける607

また、株式合作社法人説により、農民集団の株式合作社法人化には集団土地の社会 保障の機能を実現できるという有利な点がある。加えて、土地権益の移転、集中及び 農村労働力の移転に対しても有利であり608、農民集団の株式合作社法人化は農民の積極 性を高め、農民が最大の利益を実現するために、積極的に自分の権利を行使し、これ によって、集団土地所有権主体の虚位問題を解決できる609

合作社法人説、農村社区法人説、農村社区合作社法人説の欠点をまとめ、農民集団の 法人化は合作社という形式が最も妥当である理由を説明し、その上で、株式合作社法 人という形式が最も妥当である理由を三つに分けて説明する。

第一に、自治法人説、農業合作社法人説、農村社区法人説、農村社区合作社法人説 は以下のような欠点があるからである。まず、自治法人説は行政権力が集団所有権に 干渉し易く、農民の利益を害する恐れがある。自治法人は村民自治の役割と経済的役 割の両方を持つ。村民委員会は日常業務の決定機関として、自治事務の管理と対外的 な連絡を担当する。ともに、村民委員会の主任はその法定代表者とする。このように、

行政権力が集団所有権を干渉しやすく、農民の利益を害する恐れがある。次に、農業 合作社法人説は集団土地所有権の社会保障方面の機能に関する配慮が不足している。

中国の集団土地所有権は社会保障の機能を持っているが、農業合作社法人説は社会保 障の機能を配慮していない。さらに、農村社区法人説は、農民の自由な移動と労働力 の移転を妨げる。この説は、社区という範囲を強調し、農村社区に加入・脱出する条 件には詳しく論じていない。人口移動についての考慮が不足している。農民が集団の 構成員として、集団を選択する自由が否定され、農民の自由な流動と労働力の移転が 妨げられる。最後に、農村社区合作社法人説は、その委員は村民委員会の委員と互い に兼務することができると主張し、行政権力が集団所有権を干渉しやすく、農民の利 益を害する恐れがある。自治法人説と同じような問題が存在している。

第二に、農民集団の法人化は合作社という形式が最も妥当であるからである。合作 社法人の特徴は以下のように総括できる。合作社とは、構成員の互助に基づき、共同 で経営し、共同で働き、各構成員が集団から利益を分配されるという組織である。合 作社の資金は主に自己が調達する。構成員は合作社からの脱退は自由であり、合作社 の債務に対しては一般的に有限責任を引き受ける。合作社法人の主な特徴は以下の三 つがあげられる610。一つ目は、合作社は自発的に連合し、民主的に運営する互助の経済 組織であり、その営業は営利を目的としないということである。二つ目は、合作社の 収益は出資額だけではなく、取引額または労働量などにより分配されることである。

合作社の社員は経営あるいは労働に参与し、労働量が収益分配の重要な根拠である。

三つ目は、合作社の事業は社員が共同で経営し、すべての社員は平等な投票権を持つ ことである。合作社は独立な財産があり、これらの財産によって民事責任を引き受け ることができる。合作社のこれらの構成条件は中国の民法通則の中の法人の成立要件 と一致する611

610合作社法人は以下の特徴について、王利明『民法総論』(中国人民大学出版社・2015 年)189-190 頁を参考。

611王利明『民法総論』190 頁

合作社法人の設立は次のとおりである。それは日本と同じように、中国では、法人 は法が定めたものでなければ設立できず、いわゆる法人法定主義をとっている。つま り、法律上の根拠がなければ、法人化できない。そして、農民集団の法人化には法律 上の根拠が必要である。中国では、合作社の法人格はすでに法律上で認められている612。 2006 年公布された農民専業合作社法第 10 条の規定により、農民専業合作社の設立に関 し、下記の条件を備えなければならない。すなわち、組合員五人以上、定款、組織機 構、名称及び住所、組合員の出資金などを有するという条件である。他に、合作社の 成立は登記を要件とし、登記しなければ成立できない。また、農民専業合作社法第 13 条の規定により、合作社法人の設立については準則主義がとられている613。つまり、農 民集団は合作社法人の設立条件を備えると、法人格を持つこととなる。従って、農民 集団の法人化は合作社という形式を採用すれば、法人格の取得は容易になる。以上の 考察により、農民集団の法人化は合作社という形式が最も妥当であると考える。

第三に、以上の考察を踏まえて、さらに株式合作社法人という制度設計が最も妥当 である理由は二つ挙げられる。一つは、株式合作社法人という制度設計により、集団 と構成員の関係は明確にされるという理由である。集団所有権の関係においては、農 民個人が集団所有権の主体ではなく、しかも現行法の解釈と学者の見解によれば、農 民個人の構成員という資格と集団所有権との間に法律関係がない。それゆえ、集団所 有権と農民との非民法的関係が農民の利益を保護できないことを物語っている614。農民 集団が株式合作社法人化されると、構成員は集団に対する民法上の権利義務関係を持 ち、集団は法律上の所有権を持つことになる。このようにして、構成員と集団の関係 は民事上法人と株主の関係になり、現行民法上理論と繋がり、明確にされる。二つは、

株式合作社法人という制度設計により、集団土地の社会保障機能を実現できるという 理由である。農民集団は株式合作社法人に改造されると、農民が株主として老後また は病気になった時にも、安定的な土地収益を獲得することができる。出稼ぎ農民は自 分が土地を耕作しなくても、集団土地の所有者の一員として、株式合作社から株の配 当を獲得する。このようにして、集団土地の社会保障機能を実現できる。

以上、自治法人説、農業合作社法人説、農村社区法人説、農村社区合作社法人説の 欠点をまとめ、農民集団の法人化は株式合作社法人という形式を採用するべき理由に ついて考察した。次節で、株式合作社法人の特徴、歴史沿革、現実の発展、理論上の 議論などに具体的な内容について説明する。

612王利明『民法総論』185 頁。

613梁慧星『民法総論(第 4 版)』136 頁。

614近江幸治・孫憲忠「物権法立法における「所有権」問題」早大法学 77 巻 2 号(2002 年)14 頁。