第三章 集団所有土地利用の内容とその法的関係
第二節 集団所有土地利用における法的関係
三 土地請負経営戸の権利義務の帰属
律及び家族法の関連規定を組み合わせて、農戸の行為を規制する必要がある373。 以上、学界の議論を概観した。上述のように、土地請負経営戸の法的地位について、
学界では新主体説、自然人説、非法人説などの学説がある。新主体説の「土地請負経 営戸は法人でもなく、自然人でもない」という主張が賛成するが、土地請負経営戸は 一体どのような法的地位があるかについて解明されていない。新主体説と比べて、非 法人説は土地請負経営戸の法的地位を明確にし、最も妥当である。厳密にいうと、土 地請負経営戸は組合ではなく、非法人団体の中の権利能力なき社団に属する。その理 由は以下のように説明できる。権利能力なき社団は組合と類似し、法人格を有しない 点で共通しているが、両者は区別される。社団は個人的目的を超越し、構成員の個性 が薄弱な団体である。これに対して、組合は、組合員の個人的目的のために、組合員 相互間の債権的法鎖を持つ契約関係によって結合するゆえに、組合員の個性が顕著な 団体である374。土地請負経営戸は、契約関係によって結合する団体ではなく、多くの場 合、家庭を基礎として成立したものである。そのため、土地請負経営戸は組合ではな く、非法人団体の中の権利能力なき社団に属する。ただし、非法人団体の要件は複数 人によって組成された組織体(団体)であり、二人以上の構成員がいることを要求す る。土地請負経営戸は一人の構成員のみがいる場合も多い。このような場合、土地請 負経営戸は非法人団体ではなく、自然人である。
益を比較考慮し、最も適当な解釈を求めるべきである。
前節の考察により、土地請負経営権の主体は、当該集団経済組織内の家庭でもない、
構成員個人でもない、当該集団経済組織内の農戸であることが分かった。請負経営期 間内で、結婚、出産などの原因で土地請負経営戸の構成員が頻繁に変更されるにもか かわらず、請負経営土地を調整・回収してはならないとされている。以上の規定から 見ると、土地請負経営戸の内部関係は中国の共有理論によって説明できない。そのた め、外国法の理論を参考にし、土地請負経営戸の内部関係を解釈する必要がある。そ して、本項は、まず、土地請負経営戸の権利帰属は中国の共有理論によって説明でき ないことを論証する。次に、日本法における共有理論を適用できるかどうかを検討し、
適用できないとした場合、英国法の共有理論を適用できるかどうかを検討する。
(一) 中国法における共有理論の適用
土地請負経営戸の構成員の間には、集団から取得する請負経営権に対してどのよう な法的関係があるか。この問題について、学界では、一般的に以下のように解釈して いる。数人あるいは農戸によって共同で農地使用権を擁し、それらの内部と外部の法 律関係は所有権の共有に関する規定を準用することができる。農民は戸を単位として、
農業生産に従事し、戸の構成員は共同で農地使用権(土地請負経営権)を擁す376。中国 の学界では、以上のような解釈があるが、どの種類の共有に帰属するかについては詳 しく論じていない。以下では、まず、中国法における共有理論の基本内容を概観する。
次に、中国法における共有理論により、請負経営権の主体である農戸の構成員間の権 利関係は、中国法の共有理論によって解明できるかについて検討する。
中国民法通則と物権法によって、共有には共同共有と持分共有がある。物権法には、
「二つ以上の組織、個人が用益物権、担保物権を共同で有する場合、第 8 章共有の規 定を参照する」と規定されている。従って、数人が共同して所有権以外の財産権(例 えば、用益物権、抵当権、著作権など)を保有することを準共有という、この場合に は、法令に別段の定めがある場合を除き、第 8 章共有に関する規定が準用される。共 同共有には、夫婦共有、家族共有、遺産分割前の共有などの場合がある。一般的に、
共同共有者間には法律で認められている特殊な関係がある。すなわち、夫婦関係、家 族構成員関係、相続人関係などの関係である。これらの特別な関係を有しない場合は 持分共有が成り立っている。共有の不動産や動産を処分する場合、及び共有の不動産 や動産について重大な修繕を行う場合、持分額の三分の二以上を占める共有者または 全体の共同共有者の同意を得なければならない。ただし、共有者間に別段約定のある
376梁慧星(代表)『中国物権法草案建議稿』521 頁(陳甦執筆)。
場合はこの限りではない。
共同共有として認められる場合は以下のとおりである。例えば、中国婚姻法の規定377 によって、夫婦財産は共同共有である。中国の学界では、一般的には家庭財産を共同 共有として扱うにもかかわらず、物権法が制定される前に制定された民法通則や婚姻 法で家庭財産の性質が明確に規定されていない。多くの学者は、民法通則の共同共有 の規定によって、家庭共有財産を家庭構成員の共同共有のものと解釈している。家庭 共有財産の性質について、中国の物権法にも明確に規定されていない。最も密接な条 文が物権法の第 103 条である。第 103 条は「共有不動産または共有動産が持分共有か 共同共有かについて、共有者間で約定がない場合、または約定が不明確な場合は、共 有者間に家族関係が存在する時を除き、持分共有と推定する」と規定されている。こ れにより、共同共有者の間には、法律で認められている特殊な共同関係、すなわち、
夫婦関係、家族構成員関係、相続人関係などがある。これらの特殊な関係を有しない 時は、持分共有が成り立っている。この規定によって、特別な約束がなければ、家庭 財産を共同共有と推定することができる。
次に、中国民法における共同共有と持分共有は、土地請負経営戸の構成員間の法的 関係を解明することができるか否かについて、学界の議論を考察する。
中国の学界では、土地請負経営戸の構成員は、土地請負経営権に対し、それらの関 係が共同共有であるという主張が存在している。前述したように、特別な約束がなけ れば、家庭財産を共同共有と推定することができる。農戸に分配される土地請負経営 権に対して、その構成員の関係は物権法 103 条の規定を根拠として、共同共有という 関係である。農戸の共同関係が終止するまで、土地請負経営権の分割を要請すること
377婚姻法第 17 条 夫婦が婚姻関係存続期間に取得した財産は、夫婦の共同所有とする。
(一) 給料、ボ-ナス、
(二) 生産、経営による収益、
(三) 知的財産権による収益、
(四) 相続或いは贈与による所得財産、本法第十八条第三項の規定は除外である、
(五) その他共同所有する財産。
婚姻法第 18 条 下記に一つでも当て嵌まる場合、夫婦一方の財産とする。
(一)一方の婚前財産、
(二) 一方が身体傷害により、得た医療費、障害者生活補助費等費用、
(三)遺言書或いは贈与で得た夫または妻一方の財産、
(四)一方専用の生活用品、
(五)その他の一方に帰する財産。
婚姻法第 19 条 夫婦は婚姻関係存続期間に取得した財産或いは婚前財産について、各自所有、共 同所有或いは部分各自所有、部分共同所有を約束することができる。約束は書面形式を取らなければ ならない。約束がないまたは曖昧な場合、本法第 17 条、第 18 条の規定に従うべきである。夫婦は共 同所有する財産に対し、平等の処理権を有する。
を禁じる。このようにして、個人権利の保護にとって有利である378。上述したように、
家庭財産は共同共有であると推定できるため、土地請負経営権も共同共有であると推 定される場合が多い。
しかし、戸と家庭は異なる概念であり、区別されなければならない379。従って、「家 庭共有財産は共同共有である」「夫婦財産は共同共有である」のような規定によって、
「集団土地請負経営権も共同共有である」と解釈することができない。中国の物権法 と婚姻法における「家庭財産」に関する規定は、土地請負経営戸の構成員の権利関係 に適用できない場合もある。
また、中国の学界では、農戸の構成員は、土地請負経営権に対し、それらの関係は 持分共有であるという主張がある。その理由は以下のとおりである。法律は公正さを 追求して、いかなる主体でも法律上ですべて平等である。農村家庭を請負経営の主体 とすると、この集団範囲内のすべての家庭は同じ面積の請負土地を持つべきである。
同様でないと、請負主体間の不公平を引き起こす。そのため、個々の集団構成員は一 定の持分の請負経営権を獲得することができる。各家庭は自分の構成員の人数に基づ いて相応面積の土地使用権を取得する。中国多数の地区が人口によって集団所有農地 を公平に分配する。このように、各農戸の請負地の面積は不公平であると解釈するこ とができる380。従って、農戸の各構成員は分配される土地請負経営権に対し、自分の持 分がある。請負経営権に対し、各構成員の関係は持分均等の共有である381。
しかし、現在多くの地方で「戸内の人員が増加しても請負土地は増加しないし、減 少しても請負土地は減少しない」という制度を実施している。この制度により、請負 経営期間内で、結婚、出産などの原因で戸の構成員が頻繁に変更されるにもかかわら
378韓志才・袁敏殊「土地承包経営権主体辨析」96 頁。
379例一 夫 A は農村で農業を営み、妻 B は仕事のために、戸籍を勤務先に移転し、そして A と B は 一人っ子 C を養育dしており、子供 C の戸籍は夫 A と一緒である。農地請負経営契約を締結した際に、
当村集団経済組織には A と C 二人のみの戸籍がであったため、土地請負経営権証書に二人だけの名前 が記入されていた。この場合、妻 B は家庭農業生産に参加した場合、収益のみには夫妻財産の共同共 有関係に基づき、権利を持っているが、請負経営権のような身分に基づくものについては権利を有し ない。
例二 夫 A と妻 B 、子供 C、D 二人がいる場合、農地請負経営契約を締結する際に、A 、B 、C、D 四人の戸籍が当村集団経済組織に属するので、「土地請負経営権証書」には「戸主姓名 A 、土地請 負人数 4 人」というように記入された。その後、C、D 二人は順次に結婚し、別々に住んでいるが、
三つの家庭の戸籍はまだ分離せず、一つの「戸」に属している。
例一の場合、一つの家庭に二つの戸籍簿があり、これに対して、例二は複数の家庭で一つの戸籍簿 を有する。この二つの例から見て明らかなように、「戸」と「家庭」二つの概念は同一視することが できない。
380宋剛「論土地承包権-以我国『農村土地承包経営法』為中心展開」68頁。
381韓小兵「農村婦女土地承包権保護几个問題の法学理論分析」河北法学 2003 第 5 期 38-40 頁。