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第四章 集団土地所有権と総有論に関する一考察

第四節 小 括

本章では、中国集団土地所有権に総有理論を適用するべきか否かという問題を念頭

528李永燃『中国農村の土地公有制及びその法的分析』141 頁。

529丁関良『土地承包経営権基本問題研究』85 頁。

530丁関良『土地承包経営権基本問題研究』85 頁。

531丁関良『土地承包経営権基本問題研究』85 頁

において、日本の入会権の総有論と中国の学界の総有論を考察した。日本では、入会 権は総有の性質を有しているものと認識され、通説として認められているが、入会権 の現状から見ると、次第に消滅または解体する実態が多くなっている。そして、入会 権の現状を踏まえ、総有という通説に対しても疑問を投げかける学説も存在している。

これに対して、中国の学界では、現行の集団土地所有権の性質が総有であるかどうか について大きく議論されている。本章では総有論を支持するかどうかについて、各学 説を折衷説、肯定説、否定説の三つに分けて、それぞれを概観した。結果、この三つ の学説の中、否定説が最も適切であると考えられる。その理由は以下のように説明で きる。

まず、総有はきわめて強い団体性と閉鎖性を持ち、現代社会の発展に当てはまらな いからである。既述したように、17、18 世紀から、個人主義所有権制度の建設に伴っ て、身分と密接な関係がある封建的財産所有権制度が次第に瓦解していた。団体的な 形態が個人的形態に転化するのが現代の課題である。総有はきわめて強い団体性と閉 鎖性を持ち、現代社会の発展に当てはまらないことが指摘される。すでに述べたが、

総有という概念はドイツに源流を持つものではあるが、現在ではドイツ学説によって も否定されている。また、本章の考察により、日本では、総有権の具体例とする入会 権は解体の道を辿っていることが分かった。このような現状に基づき、日本の学界で も、総有関係が現在社会に当てはまらないと主張する学者が多い。入会権だけではな く、権利能力なき社団に総有の適用を否定する学説も有力になっている。これに対し て、中国では、改革開放後、次第に計画経済体制から市場経済体制に変わっている。

集団土地所有権の問題の解決策を求める際には、市場的決定を採用し、国家の介入や 命令を減らし、市場発展に順応するべきである。そのため、中国の農村土地制度の改 革は、集団土地所有権の主体を明確にし、集団所有権を「私権」の方向に向かわせて 発展するべきである。つまり、次第に国家意志の干渉を減らし、農民の個人権利の保 護を強化するべきである。なお、総有理論は集団の利益が構成員個人の利益より優先 すると強調している。個人は自由に集団財産を処分することができず、集団財産に対 する権利は厳しく制限されている。以上の分析により、総有理論は現代社会の発展に 当てはまらず、集団土地所有権に適用できないことが分かった。

また、集団土地所有権は総有の特徴を備えていないし、本研究の第二章と第三章の 考察により、集団構成員の資格の判断基準、集団権利の主体及び集団権利の行使など についても、両者は大きな差異が存在していることが分かった。従って、集団土地所 有権は総有の特徴を備えていないため、中国の集団土地所有権は総有権ではない。

なお、折衷説である新型総有論にも不適切な点が存在している。例えば、総同共有 の研究者が主張する「全員一致」という原則が合理的ではない。入会権の「全員一致」

の意思決定原則は入会権者の権利を充分に保障することはできるが、合理性を欠くと ころがある。その理由は以下のとおりである。法制度がおよそ法制度である以上、効 率性要件と正義性要件を満たさなければならず、法制度を設計するには、両方を考慮 する必要がある532「全員一致」という決定方式は正義性基準を満たすが、効率性基準 を満たさない。例えば、全員の同意を得るために、時間をかけて、反対者を説得しな ければならない。このようにして、集団の意思決定の効率にも悪影響を及ぼす可能性 がある。それゆえ、「全員一致」という決定方式を適用するべきではない。効率性基準 と正義性基準の両方を考慮し、多数決が採用されるべきである。

以上の理由により、中国集団土地所有権の改革は「私権強化」の方向に向かわせ、

総有を適用するべきではないという結論を得た。第一章で考察したように、建国前、

中国では総有と類似する形態も存在していた。例えば、祠堂、学田などのような宗族 共有財産に対して、宗族構成員間の関係は総有である533。しかし、本章の考察により、

総有は現代社会に当てはまらないことが分かった。中国では、宗族共有財産というも のが次第に少なくなっている。また、日本の入会権も解体の道を辿っている。宗族共 有財産の減少及び入会権の解体は、総有が現在社会に適合しないことが表明できる。

中国集団土地所有権の改革は政府または集団からの制限を緩和し、「私権強化」の方向 に向かわせるべきであるため、総有は適用できない。

既述したように、中国物権法では、持分共有と共同共有の二種類しか規定していな い(第 93 条)。すなわち、伝統民法上の共有と合有である。共有と合有の中において、

いずれにしても、構成員の変動などの原因で、集団土地所有権の頻繁な変動を引き起 こし、集団土地所有権を個人私有権に変更される可能性があるため534、集団土地所有権 の法的性質は中国民法上の二類型の共有ではない535。つまり、集団土地所有権は伝統民 法上の共有でもなく、合有でもない。また、本章で考察したように、集団土地所有権 に総有も適用できない。従って、集団土地所有権の法的性質は共有、合有、総有の中 のいずれにも属しない。集団土地所有権と集団土地使用権の虚位問題を解決するため に、集団土地所有権の法的性質、及び集団と構成員の関係についてどのように解釈す るべきか、次章でこれらの問題について検討する。

532平井宜雄『法政策学-法制度設の理论と技法(第 2 版)』70 頁。

533史尚寛『物権法論』154 頁。

534韓松「集体所有権研究」王利明編『物権法専題研究(上)』482-483 頁。

535韓松「集体所有権研究」王利明編『物権法専題研究(上)』472 頁。