座長:丸山 博文
広島大学大学院医系科学研究科脳 神経内科学坪井 義夫
福岡大学医学部脳神経内科≪ねらい≫
非定型パーキンソン病であるPSP/CBSはともに4-repeat tauopathyであり、タウ蛋白をターゲットとした治療戦略も 開発されてきている。しかし早期診断が難しく、精度の高 い診断基準に加え、神経画像の補助診断の精度の向上が期 待される。MRIは最も普及した画像診断であるが、ニューロ メラニンMRIあるいは容積測定等の測定法によりその精度が 高まっている。一方でタウトレーサーを使用したPETによ る脳内タウの画像化はPSP/CBDの鑑別診断において強力な 補助診断になる可能性がある。このシンポジウムではPSP / CBDにおける最新神経画像を議論する。
S-03-1 PSP/CBSはここまで見える
○島田 斉
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門 放射線医学総合研究所 脳 機能イメージング研究部
【略歴】
2003年 千葉大学医学部卒業、同神経内科入局
2005年 千葉大学大学院入学、放射線医学総合研究所(放医研)客員協力
2009年 千葉大学大学院卒業研究員
2005年 放医研 分子イメージング研究センター 博士研究員を経て
2014年 同、主任研究員研究員
2016年 原研との独法統合に伴い、現所属(量研・放医研)の主任研究員 2017年 同、主幹研究員
現在に至る [研究テーマ]
『認知症性神経変性疾患の機能画像解析』
[社会活動]
アミロイドイメージングガイドライン作成ワーキンググループメンバー 日本神経学会代議員,認知症学会代議員,日本脳循環代謝学会幹事&学術委 員会委員ほか
[受賞等]
1.YoungInvestigatorAward,theInternationalCollegeofGeriatric
Psychoneuropharmacology,2014
2.deLeonPrizeinNeuroimaging(年間最高論文賞/SeniorScientist部 進行性核上性麻痺(PSP)は, 病理学的には脳内にみられ る4リピートタウの異常蓄積を特徴とする4リピートタウオ パチーである. 臨床的には病早期から顕著な姿勢反射障害 が前景に立つパーキンソン症状を基盤とする誘因のない繰 り返す転倒や, 垂直性核上性眼球運動障害を特徴とする進 行性のパーキンソン症候群としてとらえられる. 古典的な Richardson症候群の進行症例においては, パ-キンソン病と の鑑別に苦慮することは少ないと思われるが, 病早期例や症 状進行が緩徐なPSP-parkinsonismなどの亜型の症例におい ては, パーキンソン病や他のパーキンソン症候群との鑑別は 必ずしも容易とは言えない.
一方, 大脳皮質基底核変性症(CBD)も病理学的にはPSPと 同様に4リピートタウオパチーの一種である. 臨床的には特 異な大脳皮質徴候や, 時に顕著な左右差を呈するパーキンソ ン症状やジストニアなどによって特徴づけられるが, 臨床症 状からCBDが疑われる症例の背景病理は, CBD以外にPSPや アルツハイマー病を含む多様な脳病態を呈し得ることが知ら れているため, 既述のような臨床症状を呈する症例は大脳皮 質基底核症候群(CBS)の臨床診断名が冠され, 病理学的診断 のCBDとは区別されている. CBSの背景病理を臨床症状のみ から推察することは, しばしば困難である.
これまでさまざまな画像検査を用いたPSP/CBSの臨床診 断法の確立に関する検討が行われてきているが, 近年ヒト生 体において脳内4リピートタウ病変を可視化するタウPETイ メージング技術が登場し, PSP/CBSの臨床診断の精度を革新 的に向上させ得る技術として注目を集めている. 本講演では PSP/CBSにおけるタウPETイメージング研究の最新の成果 を紹介し, タウPETイメージングが持つPSP/CBSの臨床診断 における可能性について考察する.
31 シ ン ポ ジ ウ ム 日
シンポジウム 03
8月31日(月)10:30 ~ 12:00 第07会場(岡山コンベンションセンター2F展示ホール)
Jp
S-03-2 PSP/CBS:診断における 脳画像の役割
○佐光 亘
徳島大学大学院 医歯薬学研究部 臨床神経科学分野
【略歴】
平成15年 徳島大学医学部医学科卒業
平成15年 財団法人田附興風会医学研究所北野病院内科 研修医 平成17年 財団法人田附興風会医学研究所北野病院神経内科 レジデント 平成18年 徳島大学医学部附属病院神経内科 医員兼大学院生 平成23年 The Feinstein Institute for Medical Research, Center
for Neurosciences, Postdoctoral Research Fellow
(Neuroimaging laboratory, Dr. David Eidelberg)
平成26年 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部臨床神経科学分野 助教
平成27年 徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床神経科学分野 助教 (現在に至る)
2017 年 に 進 行 性 核 上 性 麻 痺 (progressive supranuclear palsy:PSP)の新しい診断基準が策定され、Richardson以 外のtypeも組み込まれることとなり、PSP診断は新たな時 代に入った。しかしながら、脳神経画像は未だに項目には 含まれてはおらず、この点は今後の検討課題である。そ の脳神経画像は、positron emission tomography (PET)、
single photon emission computed tomography (SPECT)、
magnetic resonance imaging (MRI)とmagnetic resonance spectroscopy (MRS)と多岐にわたるが、本講演では実際の 日本の臨床で最も用いられる機会が多いであろうMRIの中で も、特に構造的MRIを中心に話を進めていきたい。PSP診断 のために、中脳、上小脳脚、大脳基底核などの形態的評価が これまで行われてきたが、現段階では、検者間の再現性とい う観点からは中脳が優れていると考えられている。その中脳 サイズの測定方法も、前後径、面積、楕円を想定した長軸・
短軸などが用いられてきた。その診断能を考えると面積測定 が勝るが、簡便性の点では前後径測定が優れている。我々の 施設では、両者の長所を兼ね備えた新しい中脳サイズ測定法 である「One line method」を考案し、PSP診断を目的として 実際に臨床応用を行っている。この方法は、空間的標準化、
スムージングや関心領域の設定などの前処理を一切必要とせ ず、得られた正中矢状断スライス一枚の中脳における縦の長 軸一本で中脳サイズを測定する方法である。その診断能は面 積測定に劣らず、簡便性に関しても前後径測定に劣らないこ とが示されているが、より強固なエビデンスを構築するため には今後の他施設からの追試が待たれる。また、橋、中小脳 脚、上小脳脚などと組み合わせることにより、より正確に PSPを他のパーキンソン症状を来す疾患から鑑別できるとい う報告も散見されるが、何れの測定値をいかに統合するのが 最適かについても既報告を基に考察したい。CBS・CBDに関 しては、表現型と背景病理の組み合わせの多様性が知られて いる。CBSの臨床症状と背景病理、それらの関連を実際の臨 床情報のみで探るにあたり、脳神経画像がどのように役立つ ことができるのかも考察したい。
S-03-3 PSP/CBS 画像診断のコツ
○徳丸 阿耶
東京都健康長寿医療センター 放射線診断科
【略歴】
1985年: 三重大学医学部卒業 同年医師 都立広尾病院研修医免許取得 1987年:松阪中央病院研修医 1989年:都立広尾病院放射線科 1990年:慶応大学医学部放射線科 助手 1991年:亀田総合病院放射線科 1994年: UCSF Neuroradiology
fellow
1995年:亀田総合病院放射線科 1996年: 駿河台御茶ノ水クリニック 都立神経病院非常勤 1998年: 防衛医大放射線科助手、講師 2005年より
東京都老人医療センター 放射 線科医長を経て、現職 東邦大学佐倉医療センター放射線科 客員教授帝京大学医学部放射線科 非常勤講師
日本神経放射線学会評議員
日本神経病理学会関東地方会画像コメン テーター
第35回日本神経放射線学会、最優秀、
優秀論文賞
第35回日本医学放射線学会秋季大会 最優秀論文賞
第37回日本神経放射線学会優秀論文賞 2007年度日独医報最優秀論文賞 2011年欧州神経放射線学会 Best Educational Paper Award
(Nakatsuka et al)
第42回日本神経放射線学会 優秀論文賞 第47回日本神経放射線学会 学会賞
(櫻井圭太et al)
2017年 臨床放射線 優秀論文賞 2018年 日本神経放射線学会 優秀論
文賞
「PSP/CBS 画像診断のコツ」という演題名が仮題として筆者に 与えられた。仮題であって変更可能とあったのだが、「かだい」
という響きは、ただちに「課題」と変換された。筆者自身が、日 常画像診断の現場でPSP/CBS診断に困難を感じながらも診断を 示唆する客観所見を見出し、どこまでを画像診断レポートに記 載しているのか、さらに臨床経過に追随し、神経所見や他の検 査所見、ひいては病理像、患者像と対応しようとしているかを 明らかにしつつ、PSP/CBS画像診断の可能性と現時点での困難 を示したい。本講演では、大脳皮質基底核変性症(corticobasal denegeration:CBD)は病理診断名、大脳皮質基底核症候群(
corticobasal syndrome: CBS)を臨床診断名として使用する。
PSP、CBSともに臨床、病理、分子生化学的な観点から、多彩 な臨床スペクトラムが明らかになり、神経画像はこれらの病態 概念の変遷に対応し、病態に迫る画像診断を追及することが求 められ、視診による診断のみならず、機能画像の活用、MRIに おける形態診断への統計解析の応用、病因の一端を可視化する タウPET、拡散テンソルそのほかの新たな手法を取り入れた知 見が蓄積されつつある。
【PSPの形態変化】橋底部に比較しての中脳被蓋の萎縮が、ペン ギンシルエットサインとしてしられるが、CBDも中脳被蓋の萎 縮を来し得る。上小脳脚萎縮、前帯状回、橋被蓋萎縮も認める。
視床下核や淡蒼球の信号変化がMRIでとらえられる場合がある が、単独所見では診断への寄与が難しい。いずれも病期によっ て所見は異なり、近年明らかになったPSPの多彩な臨床スペク トラムにおいて、萎縮の局在や程度に差異がある。
【CBD/CBSの形態変化】 PSPと同様にCBDには多彩な病態があ り、対応する神経画像も多様である。中脳被蓋、上小脳脚に萎 縮をきたすため、PSPとの鑑別には、画像を俯瞰して判断する 必要がある。前頭頭頂葉優位、中心溝近傍萎縮、さらに左右差 が明瞭にとらえられる場合、診断の一助となる。この萎縮に対 応し大脳脚にも左右差が生じる。病期、萎縮の程度によっては、
視診のみでは評価が難しく、脳血流SPECTや糖代謝PET所見 が診断に有用な情報を与える。萎縮の強い部位の皮質下白質に、
T2強調画像、あるいはFLAIRで高信号がとらえられ、病理学 的変性に対応する。CBS以外の表現型を呈するCBD、臨床診断 CBSで背景病理がAD、PSPなど他疾患であるCBD mimicsが存 在する。
31 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 03
8月31日(月)10:30 ~ 12:00 第07会場(岡山コンベンションセンター2F展示ホール)
Jp
PSP / CBD: 神経画像の進歩
座長:丸山 博文
広島大学大学院医系科学研究科脳 神経内科学坪井 義夫
福岡大学医学部脳神経内科≪ねらい≫
非定型パーキンソン病であるPSP/CBSはともに4-repeat tauopathyであり、タウ蛋白をターゲットとした治療戦略も 開発されてきている。しかし早期診断が難しく、精度の高 い診断基準に加え、神経画像の補助診断の精度の向上が期 待される。MRIは最も普及した画像診断であるが、ニューロ メラニンMRIあるいは容積測定等の測定法によりその精度が 高まっている。一方でタウトレーサーを使用したPETによ る脳内タウの画像化はPSP/CBDの鑑別診断において強力な 補助診断になる可能性がある。このシンポジウムではPSP / CBDにおける最新神経画像を議論する。
S-03-1 PSP/CBSはここまで見える
○島田 斉
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門 放射線医学総合研究所 脳 機能イメージング研究部
【略歴】
2003年 千葉大学医学部卒業、同神経内科入局
2005年 千葉大学大学院入学、放射線医学総合研究所(放医研)客員協力
2009年 千葉大学大学院卒業研究員
2005年 放医研 分子イメージング研究センター 博士研究員を経て
2014年 同、主任研究員研究員
2016年 原研との独法統合に伴い、現所属(量研・放医研)の主任研究員 2017年 同、主幹研究員
現在に至る [研究テーマ]
『認知症性神経変性疾患の機能画像解析』
[社会活動]
アミロイドイメージングガイドライン作成ワーキンググループメンバー 日本神経学会代議員,認知症学会代議員,日本脳循環代謝学会幹事&学術委 員会委員ほか
[受賞等]
1.YoungInvestigatorAward,theInternationalCollegeofGeriatric
Psychoneuropharmacology,2014
2.deLeonPrizeinNeuroimaging(年間最高論文賞/SeniorScientist部 門),Alzheimer'eImagingConsortium,2014
3.TravelScholarship,HumanamyloidImagingConference,2014 4.BestPosterAward,Alzheimer'sImagingConsortium,2013 5.YoungInvestigatorEncouragementGrant,the13thAsian
OceanianCongressofNeurology,2012 ほか国内での受賞8件.
進行性核上性麻痺(PSP)は, 病理学的には脳内にみられ る4リピートタウの異常蓄積を特徴とする4リピートタウオ パチーである. 臨床的には病早期から顕著な姿勢反射障害 が前景に立つパーキンソン症状を基盤とする誘因のない繰 り返す転倒や, 垂直性核上性眼球運動障害を特徴とする進 行性のパーキンソン症候群としてとらえられる. 古典的な Richardson症候群の進行症例においては, パ-キンソン病と の鑑別に苦慮することは少ないと思われるが, 病早期例や症 状進行が緩徐なPSP-parkinsonismなどの亜型の症例におい ては, パーキンソン病や他のパーキンソン症候群との鑑別は 必ずしも容易とは言えない.
一方, 大脳皮質基底核変性症(CBD)も病理学的にはPSPと 同様に4リピートタウオパチーの一種である. 臨床的には特 異な大脳皮質徴候や, 時に顕著な左右差を呈するパーキンソ ン症状やジストニアなどによって特徴づけられるが, 臨床症 状からCBDが疑われる症例の背景病理は, CBD以外にPSPや アルツハイマー病を含む多様な脳病態を呈し得ることが知ら れているため, 既述のような臨床症状を呈する症例は大脳皮 質基底核症候群(CBS)の臨床診断名が冠され, 病理学的診断 のCBDとは区別されている. CBSの背景病理を臨床症状のみ から推察することは, しばしば困難である.
これまでさまざまな画像検査を用いたPSP/CBSの臨床診 断法の確立に関する検討が行われてきているが, 近年ヒト生 体において脳内4リピートタウ病変を可視化するタウPETイ メージング技術が登場し, PSP/CBSの臨床診断の精度を革新 的に向上させ得る技術として注目を集めている. 本講演では PSP/CBSにおけるタウPETイメージング研究の最新の成果 を紹介し, タウPETイメージングが持つPSP/CBSの臨床診断 における可能性について考察する.