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めまいを科学する

ドキュメント内 プレナリー (ページ 49-52)

座長:城倉  健 ‌‌

横浜市立脳卒中・神経脊椎センタ ー‌脳神経内科

福武 敏夫 ‌‌

亀田メディカルセンター脳神経 内科

≪ねらい≫

多発性硬化症(MS)の疾患修飾薬は2019年初夏の時点で合計 6種類が承認されているが、2019年下半期に7種類目が、2020

~21年に8種類目が承認される可能性がある。視神経脊髄炎 関連疾患(NMOSD)の治療薬はステロイドと既存の免疫抑制 剤であるが、2019~2020年にエクリズマブが承認される可能 性がある。このように増え続ける治療薬を俯瞰し、横断的に その使い方や利点欠点を学ぶことは大変に有意義である。

めまいやふらつきは患者数が極めて多く、しかもADLを高 度に障害する。高齢化社会ではフレイルや要介護状態の原因 にもなる。しかしながら、高い社会的ニーズに反し、めまい の病態解明やそれに基づく治療法の開発は全く進んでいな い。この原因の一旦は、めまいの科学的な研究の進歩が脳神 経内科医や一般内科医にあまり知られていないために、患者 を前にしても科学的な分析を試みず、主観や経験だけに基づ いた診療を繰り返してきたことにある。本企画は、近年のめ まいの研究の進歩を紹介し、めまいが十分科学の対象になり 得る点を啓蒙することにある。本企画により、めまいに興味 を持ち、科学的に病態を解明して治療に結びつけようとする 脳神経内科医が増えることを期待する。

S-04-1 前庭性片頭痛(片頭痛関

連めまい)の病態と治療

○‌‌柴田  護

慶應義塾大学病院 神経内科

【略歴】

1992年‌‌‌‌‌‌‌‌慶應義塾大学医学部卒業

1996年‌‌‌‌‌‌‌‌慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程‌(内科学)修了 1996年‌‌‌‌‌‌‌‌慶應義塾大学医学部助手‌(内科学・神経内科)

1999年‌‌‌‌‌‌‌‌大阪大学大学院医学研究科神経機能解剖基礎系医員‌

2000年‌‌‌‌‌‌‌‌慶應義塾大学助手‌(医学部内科学・神経内科)

2002年‌‌‌‌‌‌‌‌米国Harvard‌Medical‌School細胞生物学部門博士研究員 2005年‌‌‌‌‌‌‌‌慶應義塾大学助手‌(医学部内科学・神経内科)

2006年‌‌‌‌‌‌‌‌国立病院機構東京医療センター神経内科医員 2008年‌‌‌‌‌‌‌‌慶應義塾大学助教‌(医学部内科学・神経内科)

2008年‌‌‌‌‌‌‌‌慶應義塾大学学部内専任講師‌(医学部内科学) 

2014年‌‌‌‌‌‌‌‌慶應義塾大学専任講師‌(医学部内科学) 

2019年  ‌‌慶應義塾大学准教授‌(医学部内科学)

前庭性片頭痛 (VM)は、片頭痛患者において前庭症状発作 が生じた際に、50%以上の頻度で片頭痛症状が随伴する疾患 と定義されている。発作中には三叉神経系あるいは片頭痛病 態と関連の深い中枢神経部位に加えて前庭神経系が同時に活 性化されていると推測されるが、その詳細なメカニズムは依 然不明である。内耳には三叉神経終末が分布しており、前庭 神経系と三叉神経系の両者から脳幹の結合腕傍核、縫線核、

青斑核へ入力することも知られていることから、両神経系の 密接な関連性は解剖学的にも裏付けられている。一般の片頭 痛患者でも三叉神経刺激によって眼振が誘発されやすいこと が報告されているため、三叉神経系と前庭神経系との異常な 相互作用はVM患者に限らず存在すると思われる。しかし、

VM患者では一般の片頭痛患者に比較して、前庭神経系刺激 受容の亢進や耳音響放射装置を用いた検査における蝸牛神 経機能の調節機能の異常が確認されている。さらに、VM患 者ではfunctional MRIを用いた研究において、カロリックテ ストで前庭神経を刺激した際の視床背内側核 (mediodorsal nucleus)におけるBOLD信号の変化が、前兆のない片頭痛患 者や健常者に比較して有意に強く生じ、かつBOLD信号変化 の程度が発作回数と正の相関を示すことが実証されている。

したがって、VMの病態においては前庭神経および蝸牛神経 への刺激に対する感受性の亢進や中枢における信号処理の異 常が重要な役割を果たしている可能性がある。近年、カルシ トニン遺伝子関連ペプチド (CGRP)を標的にした片頭痛治 療が脚光を集めている。遠心性前庭神経線維にはカルシト ニン遺伝子関連ペプチド (CGRP)の発現が確認されており、

これらの線維は有毛細胞とシナプスを形成している。さら にCGRPのノックアウトマウスでは耳石機能の異常やバラン ス障害が実証されている。VM病態におけるCGRPの役割は 未だ十分に検討されていないが、CGRPを標的にした治療が VMの病状に与える効果が明らかになることで、この点につ いて大きなヒントが得られるのではないかと推察される。

31 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 03

8月31日(月)10:30 ~ 12:00 第07会場(岡山コンベンションセンター2F展示ホール)

Jp

S-03-4

一般演題から採用

定量的磁化率マッピング  進行性核上性麻痺、多系 統萎縮症とパーキンソン 病の検討

○‌‌松浦 慶太

1

、伊井裕一郎

1

、田部井賢一

2

前田 正幸

3

、海野 真記

4

、新堂 晃大

1

冨本 秀和

1

1 三重大学病院神経内科、

2 産業技術大学院大学産業技術研究科、

3 三重大学 先進画像診断学、4 三重大学 放射線科

【略歴】

2000年3月 三重大学医学部卒業 2000年5月 三重大学 神経内科 2000年7月 松阪中央総合病院 2001年4月 山田赤十字病院

2003年7月  三重大学 神経内科 2004年7月 三重県立総合医療センター 2005年7月 紀南病院 2007年4月 鈴鹿回生病院

2015年9月 三重大学 脳神経内科 助教 2017年4月~現在 同 学内講師

専門医  日本神経学会 専門医・指導医、日本内科学会 総合内科専門医、

日本脳卒中学会 専門医、日本臨床神経生理学会 脳波分野 筋電 図・神経伝導分野 専門医、日本定位・機能外科学科 機能的定位 脳手術技術認定医

[目的]定量的磁化率マッピング(QSM)を用いてパーキンソ ン病(PD)やその他の非定型パーキソニズムとの鑑別を試み た報告がある。しかし、実際の鑑別診断にどこまで有用かは まだ十分でない。そのため、PDおよび多系統萎縮症(MSA)

と進行性核上性麻痺(PSP)におけるQSM変化について検討 しその違いを明らかにすることを目的とした。[方法]臨床 的に診断したPD104例(平均68.5歳)、PSP16例(平均72.4歳)、

多系統萎縮症(MSA)-P9例(平均64.0歳)を対象とした。QSM 画像の作成には、新しく開発されたMUDICK法 (multiple dipole-inversion combination with k-space segmentation)を 使用し、黒質(SN)、赤核(RN)、視床下核(STN)、淡蒼球(GP)、

被殻(Put)のsusceptibility(ppm)を評価値として疾患ごとの 違いを検討した。[結果]Putは、PDに比してMSA-P, PSPが 有意に高く。その他の領域は、PSPが他のPD,MSA-Pに対し て有意に高かった。PDとPSP間において、ROC解析を行っ たところ、STNとRNでそれぞれAUCが0.953、0.867であった。

さらにSTN, SN, RN, GPにおいて、そのsusceptibility 値が 0.18/0.20/0.12/0.165ppmの閾値を超えるものにそれぞれ、3、

2、1、1点を足すIndexを作成し合計5点以上をPSPと判定す ると、感度97.1%特異度87.5%と非常に有効な結果を得た。[結 論]PD、PSP、MSA-Pにおいてその診断、鑑別にQSMが有 効であると考えられた。

31 シ ン ポ ジ ウ ム 日

8月31日(月)10:30 ~ 12:00 第09会場(岡山県医師会館4F402会議室)

S-04-2 大脳病変によるめまい

○‌‌福武 敏夫

亀田メディカルセンター 脳神経内科

【略歴】

東京大学理学部数学科中退、医学系予備校講師を経て、

1981年3月、千葉大学医学部卒業;同年5月、千葉大学神経内科(平山惠造 教授)入局

2000年6月、千葉大学神経内科助教授(服部孝道教授)

2003年4月、亀田メディカルセンター脳神経内科部長、現在に至る 学会活動:日本神経学会(用語委員会、教育小委員会)、日本神経治療学会

(功労会員)、日本頭痛学会(名誉会員、編集委員会)、日本高次脳機能障害学 会(特別会員)、日本脊髄障害医学会(名誉会員)、American Academy of Neurology(Corresponding Active, Royal Member)、日本漢字学会 著書:「神経症状の診かた・考えかた-General Neurologyのすすめー」第2 版(医学書院、2017)、「脊髄臨床神経学ノート-脊髄から脳へー」(三輪書店、

2014)、他に編集・分担執筆多数

主な研究領域:臨床神経学、神経症候学、脳小血管病、脊髄疾患、頭痛・めまい、

心因性疾患

 「め ま い」 に は、 主 に 回 転 性 め ま い(vertigo)、 浮 動 性 め ま い(dizziness)、 失 神 し そ う な 感 じ/前 失 神

(faintness/presyncope)、ふらつき/平衡障害(staggering/

dysequilibrium)が含まれる。乗り物酔い(動揺病)も「めまい」

と表現されることがあるし、「めまい恐怖症」などの心因性疾 患も上記各種の「めまい感」を訴える。

 脳血管障害を始めとする大脳病変では浮動性めまいや平衡 障害の頻度は高いが、傾斜感を含む回転性めまいは稀である。

しかし、MRI拡散強調像時代になり、大脳の小病変で回転性 めまいを呈する症例が少しずつ報告されてきているので、原 因として末梢や小脳ばかり考えていてはいけない。

 以前からPenfieldらによる脳刺激研究やめまいを主徴とす るてんかんの焦点研究により、頭頂間溝(上頭頂小葉と縁上 回・角回からなる下頭頂小葉を画する脳溝)の最前方の2v野 が大脳前庭中枢と目されていた。これに対し、サルにおけ る基礎的研究やヒトにおける機能画像研究、新たな脳刺激 研究により、両種において聴覚皮質に近い後部島皮質と島 皮質後部の(サルでは頭頂-島皮質前庭皮質[parieto-insular vestibular cortex: PIVC]と呼ばれる)領域に中心的統合中枢 があり、その周辺の頭頂葉、すなわち縁上回(7野)や2v野、

上~中側頭回に関連中枢があると推定されてきている。ヒ トでは側頭-Sylvius裂周囲前庭皮質(temporo-peri-Sylvian vestibular cortex: TPSVC)とも呼ばれている。前庭皮質の 同定が遅れたり、狭い範囲に同定できにくい理由は、他の諸 感覚に比して刺激とその感知に一対一対応がないこと、すな わち、視覚入力、足底や頚部からの体性感覚入力、三半規管 からの前庭性入力が統合されて初めて中枢らしい機能を発揮 すると考えられることにあろう。

 このように前庭皮質はそれなりに広く、それを含む脳病変 を有する患者は多い割に、回転性めまいを呈する患者が稀な 理由として、最近では対側半球による抑制機序が提唱されて いる。

 本講演では大脳の限局的な梗塞や出血による回転性めまい 症例を紹介すると共に、大脳病変による乗り物酔いし易さや てんかん性めまい、片頭痛性めまいについても言及する。

S-04-3 テント下病変による遷延

性めまいの病態と治療

○‌‌城倉  健

横浜市立脳卒中・神経脊椎センター 脳神経内科

【略歴】

1990年 横浜市立大学医学部卒業

1992年 横浜市立大学医学部附属病院神経内科 1994年 松戸市立福祉医療センター東松戸病院神経内科 1996年 横浜市立大学附属浦舟病院神経内科

2000年 横浜市立大学附属市民総合医療センター神経内科

2002年  平塚共済病院神経内科部長,2005年から同病院脳卒中センター 2014年  横浜市立脳卒中・神経脊椎センター副病院長,神経内科部長,現長を兼任

在に至る

 一側の末梢前庭が障害されると,入力信号低下により患側 の前庭神経核の活動性が低下し,左右の前庭神経核間に不均 衡が生じる.この不均衡は,前庭神経核同士の交連抑制によ り増強され,めまいをきたす.通常こうした前庭不均衡は,

小脳が過活動に陥った健側前庭神経核を抑制し,同時に交連 抑制から解放された患側前庭神経核の活動性が回復すること で是正される(前庭代償).テント下病変によりめまいが遷延 する場合には,こうした前庭代償機構の破綻が原因になるこ とが多い.

 延髄外側には前庭神経核があるため,梗塞が生じるとめま いを来す.梗塞が直接前庭神経核を障害した場合には,めま いは末梢前庭障害の場合と同様に時間と共に軽減する.一 方,梗塞が小脳から前庭神経核への抑制線維を障害した場合 には,前庭神経核が脱抑制されるためにめまいが長期間遷延 する(前庭代償機構の破綻).我々はこうした患者に対し,小 脳を賦活して脱抑制した前庭を再制御する治療法を考案し た.小脳の賦活手段として反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を選 択し,延髄外側梗塞で前庭脱抑制が生じている慢性めまい患 者に施行したところ,めまい自覚症状と脱抑制で生じる眼振 を改善することに成功した.小脳賦活による前庭再制御は,

生理学的にも放射線学的にも確認できた.こうした治療法は,

類似の病態(前庭神経核の小脳からの脱抑制)で難治性めまい が生じている橋外側部の梗塞や出血でも有効であった.

 Opsoclonusやocular flutter(OC/OF)は,室頂核の小脳虫 部からの脱抑制によりsaccade系が異常興奮して生じると考 えられている.こうした視覚関連経路の小脳からの脱抑制 でも難治性めまいを来すことがある.我々は,OC/OFによ る難治性めまいにも小脳rTMSを試み,自覚症状改善やOC/

OF軽減を確認した.小脳rTMSは脱抑制した室頂核を再抑 制し,OC/OFとそれに伴うめまいを軽減したと考えられた.

 延髄外側梗塞のめまい治療もOC/OFのめまい治療も,小 脳賦活により脱抑制した深部神経核を再制御するという点 で,治療戦略は共通している.他にも,身体の平衡維持には,

入力系では体性感覚が,また出力系では四肢体幹の運動系も 関与している.小脳はこうした神経系にも関わっているため,

小脳賦活による深部神経核の再制御という治療戦略は,今後 さらに応用が広がる可能性がある.

31 シ ン ポ ジ ウ ム 日

ドキュメント内 プレナリー (ページ 49-52)

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