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夢に描く難病医療と支援:難病法の下での 課題と展望

ドキュメント内 プレナリー (ページ 88-91)

座長:吉良 潤一 ‌‌

九州大学大学院‌医学研究院神経内 科学分野

荻野美恵子 ‌‌

国際医療福祉大学医学部医学教育 統括センター

≪ねらい≫

難病法の下、各都道府県では新拠点病院に難病診療連携コー ディネーターが配置される体制となった。これまでの神経難 病ネットワークは、重症神経難病を主な対象として療養相談、

長期療養・レスパイト入院施設の確保、在宅支援ネットワー クの構築等を行ってきた。難病法では全ての難病に対象が拡 大され、小児慢性疾病特定児童の成人医療への移行期支援、

未診断例の診断支援を新たに実施することとなった。一方、

難病治療に分子標的薬や核酸医薬・遺伝子治療などが導入さ れ予後が大きく改善する道筋が開けてきた。難病早期診断・

治療開始とともに難病者への診断時から始まる就学・就労支 援が大切である。そのため、各自治体で難病相談支援センター の整備が進んでいる。これらの新規治療は超高額医療である ため、我が国の保険医療体制が持続できるようどう組み込ん でいくかも大きな課題である。本企画ではこれら喫緊の課題 をとりあげ、その解決策を討論したい。

‌‌後援:日本難病医療ネットワーク学会

S-17-1 難病法の下での難病医療

提供新体制と全ての難病 を対象とした支援

○‌‌吉良 潤一

九州大学病院 医学研究院神経内科学分野

【略歴】

現職は九州大学大学院医学研究院神経内科学教授。1979年に九州大学医学 部を卒業し、米国NIH留学等を経て、1997年に同大学医学部神経内科学教 授に就任。専門は神経内科学、神経免疫学。1998年に福岡県難病医療連絡 協議会会長に就任し、福岡県重症神経難病ネットワークと福岡県難病相談 支援センターの運営にあたっている。日本神経免疫学会理事長、日本難病 医療ネットワーク学会理事長、日本神経学会理事、日本内科学会理事、日 本末梢神経学会理事、日本自律神経学会理事、日本脳卒中学会理事等を歴 任。American‌Neurological‌Association‌corresponding‌member、

Pan-Asian‌Committee‌for‌Treatment‌and‌Research‌in‌Multiple‌

 平成27年1月に「難病の患者に対する医療等に関する法律」

(難病法)が施行され、目指すべき難病の医療提供体制の方向 性として、①早期に正しい診断ができる医療体制の構築、② 難病患者が身近な医療機関で適切な医療を受けながら就学・

就労ができる環境の整備、③小児慢性特定疾病児童が成人後 も切れ目なく必要な医療を受けられるよう連携体制を充実さ せることなどが示された。これを受け、各都道府県では難病 法下での難病医療提供体制の構築が始まった。

 福岡県は平成10年度に難病患者入院施設確保事業に基づき 福岡県難病医療連絡協議会を設置し、九州大学病院を拠点病 院として神経系難病27疾病を対象として重症神経難病ネット ワーク事業を行なってきた。病状や介護の状況に応じて、在 宅療養ネットワークの構築や長期療養先・短期レスパイトケ ア入院先の紹介を行ってきた。平成18年には、本協議会は全 ての難病(指定難病等361疾患)を対象とした難病相談支援セン ター事業を開始し、生活相談・就労支援、講演会・研修会、ホー ムページを通じた情報提供、難病患者交流会支援、ピアサポー ター養成とピア相談などを実施してきた。平成27年には福岡 県・福岡市小児慢性特定疾病児童等自立支援事業を開始し、

小児の難病819疾病を対象として、就学・就労相談支援、教員・

養護教諭・保育士・幼稚園教諭の研修会、患者家族交流会支 援などを行なっている。現在は、九州大学病院内に「福岡県・

福岡市難病相談支援センター」を置き、3事業を集約して6名の 常勤相談員が、密接に連携して、毎年約5,000件程度の相談支 援を行っている。

 令和元年12月1日に福岡県では新難病診療連携拠点病院とし て九州大学病院が指定された。上記の役割に加えて、難病が 疑われているが未診断の患者の相談を受け付け、速やかに診 断が受けられるよう医療連携を図ることとなった。「未診断・

未指定難病相談支援センター」を従来からの難病相談支援セン ターと同じ九大病院内のスペースに設置し、専門の相談員1名 が福岡県下の未診断難病患者に対する相談支援を実施する体 制となった。本事業により診断の難しい難病患者の円滑な診 断が進むことが期待される。今後は、未診断時から診断後ま で難病患者の切れ目のない支援が、全国どこででも格差なく 受けられる体制を協力して作っていくことが大切である。

31 シ ン ポ ジ ウ ム 日

シンポジウム 17

8月31日(月)15:15 ~ 16:45 第07会場(岡山コンベンションセンター2F展示ホール)

Jp

S-17-2 小児慢性特定疾病患者が円

滑に成人医療へ移行するた めの移行支援体制の整備

○‌‌掛江 直子

国立成育医療研究センター生命倫理研究室

【略歴】

 1997年早稲田大学大学院人間科学研究科生命科学専攻修士課程を修了。

同大学人間総合研究センター専任助手、国立精神・神経センター精神保健研 究所流動研究員、国立成育医療センター研究所共同研究員を経て、2003年 より現職(組織変更、室名等変更あり)。専門は、生命倫理学(バイオエシッ クス)、小児医療政策。

 生命倫理学では、2000 年より厚生労働省・文部科学省・経済産業省によ る「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」策定のための作業委員会 をはじめ、生命倫理の専門家として厚生労働省ならびに文部科学省等の様々 な委員会委員を務め、現在は厚生科学審議会 再生医療等評価部会、臨床研 究部会、先進医療技術審査部会等の委員、AMEDの諸事業の評価委員等も 務める。 また、小児医療政策では、2005年小児慢性特定疾患治療研究事業の法制 化及び制度改正に携わり、対象疾患の追加や診断基準及び対象基準の整備、

データベース化等を進めた。さらに2014年の児童福祉法の一部を改正する 法律の成立に基づき新しくなった小児慢性特定疾病対策では、対象疾病の追 加等に加え、自立支援事業や移行期医療支援等に携わり、難病事業との連携 にも努める。

 小児期発症の慢性疾患患者で、小児慢性特定疾病対策によ る医療費助成を受けている患者は年間約14万人以上いる。医 学の進歩、医療技術の発展により、多くの疾患が治療可能と なり、慢性疾患を抱えつつも成長し成人になっていく患者た ちが飛躍的に増えている。しかしながら、医療体制ならびに 社会支援体制はこの現状に対応出来ておらず、患者が成人し た後も小児科を継続して受診する状況が続いている。このよ うな状況について、国(厚生労働省)、医療機関、そして医療 専門家の間で問題意識を共有するようになって久しく、現在 様々な取組みが進められている。

 小児慢性特定疾病対策の基本方針においては、小児期発症 の慢性疾患を有して成人していく児童らの移行期支援が重要 な課題の一つとして挙げられている。この移行期支援には、

年齢に応じた適切な医療を受けられるようにとするための小 児科から成人診療科への転科等の課題と、自らの医療につい て自己決定できる自律的な患者を育てるという自律(自立)支 援等の課題があると言われている。前者は、医療提供体制の 課題として、難病法に基づく難病支援施策との連携や学会等 における小児領域と成人領域の連携等の推進を期待している ところである。後者については、自立(自律)支援として、発 症早期から患者本人に病名を伝え、小児期から年齢に合わせ た情報提供等の働きかけを行うことにより、将来自らの健康 管理を行なえるヘルスリテラシー(必要な健康・医療情法を 入手し、理解し、効果的に利用する能力)を獲得し、自らの 医療において自己決定ができる自律的な患者となることが望 まれている。

 本報告では、小児慢性特定疾病対策における移行期支援の 取組み、日本小児科学会や小児医療機関での取組み等を紹介 し、小児から成人まで切れ目のない難病支援を、制度を越え て皆さまとご検討したいと考えます。

S-17-3 夢に描く難病医療と支

援:難病法の下での課題 と展望「当事者が期待し ていること」

○‌‌伊藤たてお

日本難病・疾病団体協議会

【略歴】

1985年室蘭市生まれ 北海道立札幌南高等学校卒業

☆現在:一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)、一般社団法人全国 筋無力症友の会、特定非営利活動法人難病支援ネット・ジャパン、全国難病 センター研究会、ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用の在り 方に関する専門委員会

☆主な歴任:厚生労働審議会疾病部会難病対策委員会、内閣府障害者政策委 員会、社会保障審議会障害者部会、総合科学技術・イノベーション会議生命 倫理専門調査会タスク・フォース構成員、平成24・25年度厚生労働学研究 費「患者支援団体等が主体的に難病研究支援を実施するための体制構築に向 けた研究」研究代表、財団法人北海道難病連元代表理事

・「当事者」とは

 「当事者」というのは様々な解釈があると思いますが、ここでは「患 者とその家族」のこととして話を進めます。また単に「当事者」という 場合と「当事者性」という切り口もありますが、ここでは「当事者性」

を具現化する組織として「患者会」または「患者団体」を指すこととし ます。

 ではその「患者会」とはいったい何をするところ(組織)なのでしょ うか。      

 患者会には「三つの役割」があります(1981.なんれん№23北海道難 病団体連絡協議会)。①病気を正しく知ること(科学的に把握するこ と) ②励ましあい助け合うこと(生きる勇気と気概を持つこと) ③ 本当の福祉社会を目指すこと(生きるための環境づくり)としていま す。これがまさに患者会が持つ社会貢献なのだと思います。

 患者会の共通の願いは1972年の難病対策要綱が作られたころから

「一日も早く原因の究明と治療法の開発を」と「難病患者・障害者・高 齢者が安心して暮らせる社会の実現」でした。

・難病法への期待したものと法の理念

 「難病患者に対する医療等に関する法律」はなぜ翻訳も困難な「難病 法」なのでしょうか。難病法の第2条「基本理念」にその答えがありま す。「難病の患者に対する医療等は、難病の克服を目指し、難病の患 者がその社会参加の機会が確保されること及び地域社会において尊 厳を保持しつつ他の人々と共生することを妨げられないことを旨と して、難病の特性に応じて、社会福祉その他の関連施策との有機的 な連携に配慮しつつ、総合的に行われなければならない。」としてい るところに現れています。

・医学・医療の進歩によって変わりゆく患者・家族の願いとそれを支 える社会の環境。

 科学技術の発展に伴って医学・医療も大きく変わっていきます。そ のことによって患者・家族の願いもまた変わっていきます。ただし社 会の環境や社会保障の制度が果たしてその変化についていけるのか どうか、支えることができるかという新しい課題が生じています。  

ゲノム編集(改変)に技術が人類の未来をどう変化させるか、人類は その変化に対応できるのか、社会はその結果を支えることができる のかどうかという新しい課題に直面し、患者会は今大きな戸惑いの 中に置かれているのです。

患者は、危険を身をもって知らせるカナリアになるのでしょうか、

それとも未来の世界に希望を持つことができるのでしょうか。私た ちは今その分かれ道にいる。

31 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 17

8月31日(月)15:15 ~ 16:45 第07会場(岡山コンベンションセンター2F展示ホール)

Jp

夢に描く難病医療と支援:難病法の下での 課題と展望

座長:吉良 潤一 ‌‌

九州大学大学院‌医学研究院神経内 科学分野

荻野美恵子 ‌‌

国際医療福祉大学医学部医学教育 統括センター

≪ねらい≫

難病法の下、各都道府県では新拠点病院に難病診療連携コー ディネーターが配置される体制となった。これまでの神経難 病ネットワークは、重症神経難病を主な対象として療養相談、

長期療養・レスパイト入院施設の確保、在宅支援ネットワー クの構築等を行ってきた。難病法では全ての難病に対象が拡 大され、小児慢性疾病特定児童の成人医療への移行期支援、

未診断例の診断支援を新たに実施することとなった。一方、

難病治療に分子標的薬や核酸医薬・遺伝子治療などが導入さ れ予後が大きく改善する道筋が開けてきた。難病早期診断・

治療開始とともに難病者への診断時から始まる就学・就労支 援が大切である。そのため、各自治体で難病相談支援センター の整備が進んでいる。これらの新規治療は超高額医療である ため、我が国の保険医療体制が持続できるようどう組み込ん でいくかも大きな課題である。本企画ではこれら喫緊の課題 をとりあげ、その解決策を討論したい。

‌‌後援:日本難病医療ネットワーク学会

S-17-1 難病法の下での難病医療

提供新体制と全ての難病 を対象とした支援

○‌‌吉良 潤一

九州大学病院 医学研究院神経内科学分野

【略歴】

現職は九州大学大学院医学研究院神経内科学教授。1979年に九州大学医学 部を卒業し、米国NIH留学等を経て、1997年に同大学医学部神経内科学教 授に就任。専門は神経内科学、神経免疫学。1998年に福岡県難病医療連絡 協議会会長に就任し、福岡県重症神経難病ネットワークと福岡県難病相談 支援センターの運営にあたっている。日本神経免疫学会理事長、日本難病 医療ネットワーク学会理事長、日本神経学会理事、日本内科学会理事、日 本末梢神経学会理事、日本自律神経学会理事、日本脳卒中学会理事等を歴 任。American‌Neurological‌Association‌corresponding‌member、

Pan-Asian‌Committee‌for‌Treatment‌and‌Research‌in‌Multiple‌

Sclerosis‌Science‌Program‌Committee‌Chairman、International‌

Society‌of‌Neuroimmunology‌Advisory‌Board‌Member、Clinical‌

and‌Experimental‌Neuroimmunology誌Chief‌Editor、その他Multiple‌

Sclerosis‌Journalなど多数の英文学術誌のeditorial‌board‌memberを務 めた。

 平成27年1月に「難病の患者に対する医療等に関する法律」

(難病法)が施行され、目指すべき難病の医療提供体制の方向 性として、①早期に正しい診断ができる医療体制の構築、② 難病患者が身近な医療機関で適切な医療を受けながら就学・

就労ができる環境の整備、③小児慢性特定疾病児童が成人後 も切れ目なく必要な医療を受けられるよう連携体制を充実さ せることなどが示された。これを受け、各都道府県では難病 法下での難病医療提供体制の構築が始まった。

 福岡県は平成10年度に難病患者入院施設確保事業に基づき 福岡県難病医療連絡協議会を設置し、九州大学病院を拠点病 院として神経系難病27疾病を対象として重症神経難病ネット ワーク事業を行なってきた。病状や介護の状況に応じて、在 宅療養ネットワークの構築や長期療養先・短期レスパイトケ ア入院先の紹介を行ってきた。平成18年には、本協議会は全 ての難病(指定難病等361疾患)を対象とした難病相談支援セン ター事業を開始し、生活相談・就労支援、講演会・研修会、ホー ムページを通じた情報提供、難病患者交流会支援、ピアサポー ター養成とピア相談などを実施してきた。平成27年には福岡 県・福岡市小児慢性特定疾病児童等自立支援事業を開始し、

小児の難病819疾病を対象として、就学・就労相談支援、教員・

養護教諭・保育士・幼稚園教諭の研修会、患者家族交流会支 援などを行なっている。現在は、九州大学病院内に「福岡県・

福岡市難病相談支援センター」を置き、3事業を集約して6名の 常勤相談員が、密接に連携して、毎年約5,000件程度の相談支 援を行っている。

 令和元年12月1日に福岡県では新難病診療連携拠点病院とし て九州大学病院が指定された。上記の役割に加えて、難病が 疑われているが未診断の患者の相談を受け付け、速やかに診 断が受けられるよう医療連携を図ることとなった。「未診断・

未指定難病相談支援センター」を従来からの難病相談支援セン ターと同じ九大病院内のスペースに設置し、専門の相談員1名 が福岡県下の未診断難病患者に対する相談支援を実施する体 制となった。本事業により診断の難しい難病患者の円滑な診 断が進むことが期待される。今後は、未診断時から診断後ま で難病患者の切れ目のない支援が、全国どこででも格差なく 受けられる体制を協力して作っていくことが大切である。

31 シ ン ポ ジ ウ ム 日

ドキュメント内 プレナリー (ページ 88-91)

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