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脳神経内科のキャリアパス:訪問診療、在 宅診療の要としての脳神経内科医

ドキュメント内 プレナリー (ページ 165-168)

座長:和泉 唯信 ‌‌

徳島大学病院神経内科

松岡 直輝 ‌‌

まつおか内科・脳神経内科

≪ねらい≫

2000年に介護保険が導入され医療介護連携がより重要になっ てきた。それととも療養型病床での長期入院が減少し介護施 設または自宅で療養することが急増した。このような流れの 中で近年は訪問のみを行う開業医も増えてきた。脳神経疾患 は長期に療養を要するすることが多いため、脳神経内科医が 訪問医として活躍されることが各方面から益々求めれる。本 シンポジウムでは首都圏、地方都市、過疎地で訪問医として 活躍されている先生からご自身の実践とともに訪問医に各地 域で求められるもの、脳神経内科だからできること、脳神経 内科医に必要なことを提示いただく。また在宅での呼吸器管 理、経管栄養の実際も提示する。

S-43-1 都市部での在宅医療の現

状と課題

○‌‌吉野 正俊

吉野内科クリニック

【略歴】

昭和62年‌ 3月 ‌金沢大学医学部卒業 昭和62年‌ 6月 ‌金沢大学附属病院研修医

平成‌ 4年‌ 4月 ‌東京都老人医療センター(現東京都健康長寿医療センター)

内科平成‌ 5年‌ 7月‌‌‌‌日本神経学会専門医

平成‌ 6年‌ 4月‌‌‌‌金沢大学医学部生理学教室助手 平成‌ 8年‌ 1月‌‌‌‌学位授与(金沢大学医学部)

平成10年‌ 9月‌‌‌‌‌東京都老人医療センター(現東京都健康長寿医療センター)

平成15年‌ 6月‌‌‌‌‌東京都老人医療センター(現東京都健康長寿医療センター)内科 平成20年11月‌‌‌‌吉野内科クリニック開設内科医長

 約800万人の団塊の世代が75歳以上となる2025年には,75 歳以上の高齢者が約2,200万人になると予想されている.未 曾有の超高齢社会を迎える中で,都市部では近隣住民とのつ ながりが希薄化しており,独居高齢者や老々介護など介護力 不足なケースが多く見受けられる.病気の方を自宅など地域 の中で支え,場合によっては看取りまでも行うためには,地 域包括ケアシステムを踏まえた環境づくりが必要である.今 後,更なる高齢者の著しい増加のために都市部での医療資源 はひっ迫すると考えられ,特に急性期病院から回復期病床,

介護施設への流れが重要になり同時に更なる在宅医療の普及 も望まれている.

 24時間365日対応が外来診療を主体とする医療機関にとっ て在宅医療に参入する上でのハードルとなっている.24時間 体制の在宅ケア実現のためには,在宅ケアに関わる医師,看 護師,薬剤師,ケアマネジャー,介護福祉士,地域包括支援 センター職員,ヘルパーといった多くの職種が水平連携を行 うことが24時間対応可能なシステムづくりには必要不可欠で あり,地域包括ケアシステムの構築に繋がっていくことにな る.

 医療従事者と介護従事者とが情報共有を行っていく多職種 連携は,一般的な病院の病棟で働く医師や看護師などの医療 従事者にとってはいまだに未知の領域であることは否めな い.在宅患者が症状悪化によって病院に搬送される際には,

在宅医からの入院時連携と同時に,訪問看護師からは看護サ マリー,ケアマネジャーからは介護情報アセスメントシート など,在宅療養中の詳細な看護・介護の情報提供が迅速に行 われることによって,病院側の個々の患者の実情に合わせた 効率的な検査や治療の計画,看護の計画を立てることが可能 となる.入院直後から行われる退院支援についての検討にお いてもそれらの情報が大いに役立つことになる.

 演者が在宅医療を行っている東京都板橋区では,多くの病 院に医療連携室が配備され,医師会の療養相談室とも協働し,

地域の医療機関との連携の基に,患者の入退院支援に寄与し ている.病院医師,在宅医,病院と地域の退院支援スタッフ が情報を共有して行う在宅患者の入退院時連携は,地域包括 ケアシステムを体現する縮図と考えられる.本稿では,東京 都板橋区での,行政が主催する多職種勉強会,医師会が主導 する副主治医制度,医師会在宅医会による研修会などによる 在宅医療への支援状況についても述べてみたい.

1 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 42

9月1日(火)16:00 ~ 17:30 第11会場(ANAクラウンプラザホテル岡山1F曲水)

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S-42-4 急性期脳梗塞例への新た

な抗血栓療法

○‌‌長尾 毅彦

日本医科大学多摩永山病院 脳神経内科

【略歴】

1988年:日本医科大学 卒業

1988 - 1990年:日本赤十字社医療センター 内科研修医

1990 - 1993年: 東京都多摩老人医療センター(現 東京都保健医療公社 多 摩北部医療センター)神経内科

1994年:日本医科大学大学院 卒業

1994年 - 2010年:都立荏原病院(現 東京都保健医療公社 荏原病院)神経内 科、総合脳卒中センター

2010 - 2015年:東京女子医科大学 神経内科 2015年より現職

 脳梗塞に対する抗血栓療法は、急性期・慢性期を問わず、

標的となる血栓を溶解・退縮もしくは形成阻止するために用 いられる。なかでも脳梗塞発症直後の抗血栓療法は、血栓に よる血流低下を最小限に食い止め、脳障害を軽症化させるた めに不可欠な治療法である。しかし、脳虚血の回復は、血流 再開だけでもたらされるものではなく、すでに不可逆的に なった脳組織に血流を再開させれば出血性脳梗塞を誘発し、

逆に予後を悪化させる危険がある。超急性期の抗血栓療法に は強い抗血栓効果と少ない出血助長作用という二律背反の条 件が求められ、薬剤の選択以上に、投与量、投与期間そして 適応症例選択に細心の注意が必要となるのである。薬剤特性 がどんなに良くても、臨床試験方法を見誤ればその薬剤は日 の目を見なくなってしまうことになる。

 血栓溶解薬であるアルテプラーゼ認可以降、15年間で我が 国で新たに使用可能となった急性期抗血栓療法は皆無であ る。その他では、既存の抗血小板薬2剤を併用する急性期の DAPT(dual antiplatelet therapy)が辛うじて有効性を示し たに過ぎない。

 新規薬剤としては、海外では血小板 GPIIb/IIIa 阻害薬で ある tirofiban の急性期投与が一般的に行われている国もあ る。 一方、ADP 受容体阻害薬である ticagrelor を用いた急 性期国際共同試験 SOCRATES は全体では有意な有効性に わずかに届かず、日本人を含むアジア人種のサブ解析では有 意な有効性を示しているにも関わらず、脳梗塞急性期では使 用できなくなっている。

 現在開発中の薬剤としては、ワンショット rt-PA であ る tenecteplase、TAFIa(活 性 化 thrombin activatable fibrinolysis inhibitor)阻害薬、FXIa(活性化第XI因子)阻害 薬などが知られており、本シンポジウムまでに得られた最新 の情報を紹介する予定である。

1 シ ン ポ ジ ウ ム 日

9月1日(火)15:30 ~ 17:00 第12会場(岡山国際交流センター8Fイベントホール)

S-43-2 新興住宅地の在宅療養を支

える脳神経内科医の実践

○‌‌松岡 直輝

まつおか内科・脳神経内科

【略歴】

1998年 広島大学医学部卒業

1998年 広島大学医学部付属病院第三内科

1999年 国立呉病院内科(現 国立病院機構呉医療センター)

2001年 広島大学大学院脳神経内科学  2004年 広島大学病院脳神経内科 

2007年  国立病院機構柳井病院神経内科(現 国立病院機構柳井医療 センター)

2009年 同 神経内科医長

2010年 広島市立広島市民病院神経内科

 新興住宅地において新たに内科系診療所が開設される場合、

地域住民からは総合内科医やゲートキーパーとしての役割を 期待されることになる。実際、当院(2011年に広島市中心部よ り約10kmの距離にある新興住宅地の医療ビルで開業)では内 科と脳神経内科の両方を標榜しているが、新規外来患者の中 で神経学的診察を必要とする割合は10%程度で、それ以外は 感染症と生活習慣病が多くを占めており、新興住宅地の外来 診療においては脳神経内科の専門性に対するニーズはあまり 高くないことを実感している。一方、在宅医療に目を向けて みると、新興住宅地やその周辺の住宅団地には、住み慣れた 住居で生活を続けたいと希望する通院困難な神経難病患者が 一定の割合で存在しており、難病の専門的知識と経験を持つ 脳神経内科医の参画が強く求められているという現状がある。

 当院では、開業当初より外来診療と平行して訪問診療を行っ ており、2011年5月から2019年12月現在までに、167例の患者 の在宅療養に関わってきた。訪問診療を必要とした患者は、

新興住宅地内では18例と少数であったが、全体の8割は当院か ら車で20分以内の近隣の住宅団地に居住していた。全体の約 半数の87例が指定難病患者であり(パーキンソン病37例、筋萎 縮性側索硬化症12例、進行性核上性麻痺10例、多系統萎縮症9 例、脊髄小脳変性症5例、その他14例)、続いて認知症(アルツ ハイマー型認知症、レビー小体型認知症)29例、悪性新生物 16例、脳血管障害後遺症12例、その他23例(内科、精神科、整 形外科疾患)であった。訪問診療を行う他の診療所と比べ、神 経疾患、特に神経難病の割合が極めて高いのが特徴であると 言える。筋萎縮性側索硬化症や多系統萎縮症など、他の内科 ではフォローが難しい神経難病を、総合病院の脳神経内科か ら紹介される頻度が高いことがその一因と考えられる。在宅 での看取りは65例(自宅51例、施設14例)であり、内訳は指定 難病30例、認知症13例、悪性新生物12例、脳血管障害後遺症6 例、その他4例となっている。現時点で訪問診療を終了してい る指定難病患者は59例であることより、その半数の患者にお いて亡くなるまで在宅療養に関わることが出来たことになる。

 本演題では、当院を開業してからの9年間の経験を基に新興 住宅地とその近隣における在宅医療の現状と課題を提示し、

脳神経内科医が在宅医療に積極的に関与していくことの意義 や重要性について考察する。

S-43-3 神経難病患者の在宅療養

を支える脳神経内科医に 求められるもの

○‌‌小笠原 望

大野内科

【略歴】

昭和51年 弘前大学医学部卒 同年    徳島大学第一内科入局 昭和52年 高松赤十字病院内科勤務 昭和63年     同病院神経内科部長 平成 9年 大野内科副院長(旧中村市)

平成12年    同院長

平成17年 医療法人 鬨(とき)の会 大野内科院長(四万十市)

平成30年           同理事長

 演者は日本最後の清流四万十川のほとりで、日々の診療を続け ている。勤務医としては高松赤十字病院で、脳神経内科医として 神経難病の在宅人工呼吸器療法が最後の仕事になった。若い時、

日本内科学会地方会に看護師たちと一緒におこなった筋萎縮性側 索硬化症の濃厚なケアを発表した。その時の座長に、「もっと長 く生きているALSはいる。この発表に何の意味があるのか」と言 われたのが、神経疾患のケアを極めたいと思うきっかけになった。

当時人工呼吸器を装着して、現在24年目になる患者とメールのや りとりを今も続けている。高松赤十字病院では、脳神経内科をし つつ、一般内科全般、心療内科もこなし、緩和ケアも興味を持っ ていた。当時から、「大病院の田舎医者」を自称して、将来は地方 で役に立ちたいと思っていた。

 その続編が四万十での在宅医療である。四万十は自然にあふれ ている。病院よりも自然の中での在宅医療へ演者の気持ちが移っ ていったのは必然だった。香川県に匹敵する面積を持つ幡多地方

(高知県西南部)には常勤の脳神経内科医は演者一人である。しだ いしだいに神経疾患を含めた在宅医療を担うようになった。

 在宅医療で脳神経内科医に求められるものは、とくに地方では 徹底的に最後までつきあう腰を据えた姿勢である。演者の地域で は、神経難病の確定診断は百キロ離れた高知市の病院でされるこ とが多い。それからの患者の長い大変さに、とことん付き合う粘 り強さと理屈ぬきの泥臭さが求められる。それと自らの専門性に 閉じこもらない総合診療医としての幅広さが不可欠である。「神 経部門だけは診ます」は成り立たない。

 もう一つ、患者の不自由さや介護者の不安に対応する、「ここ ろへの気づき」が欲しい。神経学という論理的な世界の上に、切 なさを共有できる文学的な素養が求められる。言葉を磨いて会話 の自在さを持ちたい。湿っぽくならないユーモアのセンスも必要 だ。リハビリテーションの知識も持ち、家族やスタッフとそれぞ れの患者の療養の日々への工夫する楽しさを感じたい。地方の在 宅医療にはお互いの信頼という心地よさが残っている。

 多職種とかかわるときには、最後に発言する少し引いた位置が いい。介護への敬意を払い、「もっとこの患者さんに何かできな いか」の、ともに患者のためにの姿勢を持ちたい。演者の今まで の経験を紹介しながら、地方での脳神経内科医の在宅医療の実際 をお伝えする。

1 シ ン ポ ジ ウ ム 日

ドキュメント内 プレナリー (ページ 165-168)

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