中原 仁
慶應義塾大学医学部 神経内科≪ねらい≫
多発性硬化症(MS)の疾患修飾薬は2019年初夏の時点で合計 6種類が承認されているが、2019年下半期に7種類目が、2020
~21年に8種類目が承認される可能性がある。視神経脊髄炎 関連疾患(NMOSD)の治療薬はステロイドと既存の免疫抑制 剤であるが、2019~2020年にエクリズマブが承認される可能 性がある。このように増え続ける治療薬を俯瞰し、横断的に その使い方や利点欠点を学ぶことは大変に有意義である。
S-05-1 視神経脊髄炎スペクトラ
ム障害に対するステロイ ド・免疫抑制剤の使い方
○中島 一郎
東北医科薬科大学医学部 老年神経内科学
【略歴】
1994年 東北大学医学部 卒業
1995年 財団法人広南会 広南病院神経内科 1995年 東北厚生年金病院 神経内科 1999年 東北大学大学院医学系研究科 修了 2001年 東北大学医学部附属病院神経内科 助手 2011年 東北大学病院神経内科 講師
2013年 東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野 准教授 2017年 東北医科薬科大学医学部老年神経内科学 教授 現在に至る 視 神 経 脊 髄 炎 スペクトラム 障 害(neuromyelitis optica spectrum disorder: NMOSD)は抗アクアポリン4抗体が関 与する自己免疫疾患であり、中枢神経に炎症を来たし壊死性 変化による組織ダメージから高度の後遺症を遺す。多発性硬 化症とは異なり、症状の慢性進行はまれであり、再発毎に重 症度が増していくため再発予防が重要である。最近抗アクア ポリン4抗体陽性のNMOSDに対してエクリズマブが承認さ れたが、従来副腎皮質ステロイド剤と免疫抑制剤による再発 予防が標準的に行われている。NMOSDの再発の大半は直前 の再発から12ヵ月以内に集中して起きており、NMOの臨床 経過は発作が短期間に集中する「群発期」と、それ以外の「間 欠期」に分かれることが報告されている。プレドニゾロンで 15mg/日でほとんどの症例は再発が予防できるため、群発期 の1年間は15mg/日を維持することが勧められる。プレドニ ゾロン15mg/日で再発する場合や、副作用が問題になる場合 は免疫抑制剤を併用する。
31 シ ン ポ ジ ウ ム 日
シンポジウム 05
8月31日(月)10:30 ~ 12:00 第11会場(ANAクラウンプラザホテル岡山1F曲水)
Jp
S-05-2 (RRMS)自己注射薬(IFN β・GA)の使い方
○奥野 龍禎
大阪大学大学院医学研究科 神経内科学
【略歴】
1996年 大阪大学医学部卒業
1996年 大阪大学医学部附属病院 神経内科 研修医
1997年 大阪府立病院(現 大阪府立急性期・総合医療センター) 研修医 2007年 大阪大学微生物病研究所 感染病態分野 研究員
2010年 大阪大学微生物病研究所 感染病態分野 助教(免疫学フロンテ イア研究センター 兼任)
2010年 大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学 助教 2010年 大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学 学部講師 専門分野 神経免疫学 特にMS、NMOの病態解明
多発性硬化症(MS)の疾患修飾薬(disease modifying drug, DMD)の選択肢が年々増え、本邦でもインターフェロンβ
(IFNβ)、フィンゴリモド(FTY)、ナタリズマブ、グラチラ マー酢酸塩(GA)フマル酸ジメチル(DMF)が使用可能となっ ている。IFN-βとGAはMSに対して全世界で20年以上使わ れており、non-responderが存在するものの、エビデンスが 豊富で、安全性が高く安心して使用できる注射剤である。G Aに関しては妊娠を考えている女性に使いやすいのが特徴 である。2017年のガイドラインにおける治療薬の選択に関 しては、長期安全性と有効性の観点から、ベースライン薬
(IFNβとGA)で開始し、治療効果を判定後不十分な場合には、
ベースライン薬の中での切り替えや、FTY、ナタリズマブ などより高い治療効果が期待できる薬へ段階的に切り替える escalation therapyが基本とされている。
しかしながら近年induction therapyや早期escalationした ほうが二次進行型に移行しにくくなるというエビデンスが出 つつあるため、これら注射剤の疾患活動性の高い症例や重症 度の高い例への使用は避ける傾向にあり、症例を選択して適 切な時期を選んで注射剤を使用していくことが求められてい る。本シンポジウムではどのようにして注射剤が好適な症例 を選択し使用していくか、使用中の病勢のモニタリングも含 め触れていきたい。また注射剤で安定している症例の投与中 止についても触れたい。
S-05-3 経口薬の使い方
○越智 博文
愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経内科・
老年医学
【略歴】
1993年 3月 九州大学医学部医学科卒業
2000年 3月 九州大学大学院医学系研究科内科系専攻終了(医学博士)
2003年10月 Harvard Medical School, Brigham & Women's Hospital, Center for neurologic Diseases, Research Fellow
2005年10月 飯塚病院神経内科 医長 2006年 4月 九州大学病院神経内科 助教 2008年 6月 九州大学病院神経内科 講師
2009年 4月 福岡リハビリテーション病院神経内科 部長 2011年 4月 愛媛大学大学院医学系研究科 加齢制御内科学 講師 2012年11月 愛媛大学大学院医学系研究科 老年・神経・
総合診療内科学 講師
2019年 4月 愛媛大学大学院医学系研究科 老年・神経・
総合診療内科学 准教授
2019年11月 愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経内科・老年医学 准教授
【専門分野】
神経内科学、神経免疫学
【学会活動歴など】
日本神経学会(代議員、多発性硬化症診療ガイドライン作成委員会委員)
日本内科学会(四国支部評議員)
日本神経免疫学会(評議員)
日本神経治療学会(評議員)
日本アフェレシス学会(評議員、日本アフェレシス学会ガイドライン WG委員)
2020年1月時点において、日本で使用可能な多発性硬化症の 経口治療薬はフィンゴリモド (Fingolimod:FTY)とフマル 酸ジメチル(Dimethyl Fumarate:DMF)である。いずれも
「多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制」を効 能・効果とするが、両者で作用機序は大きく異なる。前者 は、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体に対する分子標的 薬であり、S1P受容体の機能的アンタゴニストとして作用す ることで治療効果を発揮する。S1P1受容体を介して二次リ ンパ組織からのリンパ球移出を抑制し、リンパ球の体内循環 を抑制することで神経炎症を抑制することが、多発性硬化症 に対する主な作用と考えられている。また、血液脳関門を容 易に通過することから、中枢神経細胞に発現したS1P受容体 に作用することで、神経の修復機能を促進する作用も期待さ れる。一方、後者は低分子化合物であり、生体内で速やかに フマル酸モノメチル(MMF)に加水分解され、このMMFが 生理活性を有する。MMFは、ヒドロキシカルボン酸受容体 2(HCAR2)のアゴニストとして作用することで抗炎症作用 を発揮する。また、酸化や炎症、生体異物などのストレスか ら細胞を保護するストレス応答性転写因子Nrf2経路の活性 化を介して、抗炎症・抗酸化作用を発揮する。このため、神 経保護作用も期待される。このように、両者は全く異なる作 用機序を有するため、対象となる患者像や副作用マネジメン トも大きく異なることは想像に難くない。そこで本講演では、
多発性硬化症治療の中で、経口薬がどういう位置づけになる のか、また、両者の使い方とその実際について症例を交えて 解説したい。
31 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 05
8月31日(月)10:30 ~ 12:00 第11会場(ANAクラウンプラザホテル岡山1F曲水)
Jp
総括! MS・NMOSDの治療法 Update 座長:横山 和正
順天堂大学医学部脳神経内科中原 仁
慶應義塾大学医学部 神経内科≪ねらい≫
多発性硬化症(MS)の疾患修飾薬は2019年初夏の時点で合計 6種類が承認されているが、2019年下半期に7種類目が、2020
~21年に8種類目が承認される可能性がある。視神経脊髄炎 関連疾患(NMOSD)の治療薬はステロイドと既存の免疫抑制 剤であるが、2019~2020年にエクリズマブが承認される可能 性がある。このように増え続ける治療薬を俯瞰し、横断的に その使い方や利点欠点を学ぶことは大変に有意義である。
S-05-1 視神経脊髄炎スペクトラ
ム障害に対するステロイ ド・免疫抑制剤の使い方
○中島 一郎
東北医科薬科大学医学部 老年神経内科学
【略歴】
1994年 東北大学医学部 卒業
1995年 財団法人広南会 広南病院神経内科 1995年 東北厚生年金病院 神経内科 1999年 東北大学大学院医学系研究科 修了 2001年 東北大学医学部附属病院神経内科 助手 2011年 東北大学病院神経内科 講師
2013年 東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野 准教授 2017年 東北医科薬科大学医学部老年神経内科学 教授 現在に至る 視 神 経 脊 髄 炎 スペクトラム 障 害(neuromyelitis optica spectrum disorder: NMOSD)は抗アクアポリン4抗体が関 与する自己免疫疾患であり、中枢神経に炎症を来たし壊死性 変化による組織ダメージから高度の後遺症を遺す。多発性硬 化症とは異なり、症状の慢性進行はまれであり、再発毎に重 症度が増していくため再発予防が重要である。最近抗アクア ポリン4抗体陽性のNMOSDに対してエクリズマブが承認さ れたが、従来副腎皮質ステロイド剤と免疫抑制剤による再発 予防が標準的に行われている。NMOSDの再発の大半は直前 の再発から12ヵ月以内に集中して起きており、NMOの臨床 経過は発作が短期間に集中する「群発期」と、それ以外の「間 欠期」に分かれることが報告されている。プレドニゾロンで 15mg/日でほとんどの症例は再発が予防できるため、群発期 の1年間は15mg/日を維持することが勧められる。プレドニ ゾロン15mg/日で再発する場合や、副作用が問題になる場合 は免疫抑制剤を併用する。