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急性期脳卒中インターベンションへの新た なアプローチ

ドキュメント内 プレナリー (ページ 162-165)

座長:木村 和美 ‌‌

日本医科大学脳神経内科

藤本  茂 ‌‌

自治医科大学内科学講座神経内科 学部門

≪ねらい≫

急性期脳卒中治療において、機能障害の軽減・回復に向けた

「介入療法」と再発防止に向けた「疾患マネジメント」は極めて 重要である。本シンポジウムでは、前者に対しては、time based からtissue basedに変わった最新の再潅流療法戦略と 本療法適応外または再潅流療法を行っても良好な転帰が得ら れない症例に対する集中的な急性期脳卒中リハビリテーショ ン法を解説する。後者に対しては、自宅退院可能例への運動 療法、危険因子管理、啓発を含めた疾病マネージメントとし ての包括的循環器リハビリテーション及び新たな抗血小板薬 を含めた薬物療法につき概説する。

S-42-1 再灌流療法戦略:tissue-basedアプローチによる 適応判断

○‌‌平野 照之

杏林大学医学部 脳卒中医学教室

【略歴】

1988年‌熊本大学卒業,同年‌第一内科入局,1991年‌国立循環器病センター レジデント内科脳血管部門,1995年‌熊本大学第一内科・神経内科,1996 年‌メルボルン大学National‌Stroke‌Research‌Institute,1998年‌熊本労 災病院,1999年‌熊本大学神経内科,2002年‌同‌助手,2006年‌同‌講師,

2012年‌大分大学‌第三内科・神経内科‌准教授,2014年‌杏林大学医学部脳 卒中医学‌教授,‌2015年‌同‌脳卒中センター長(併任)現在に至る

受賞:1995年‌日本心臓財団「草野賞」

 2020年現在、急性期脳梗塞に対する再灌流療法の適応は、

脳画像所見で推定した組織可塑性(tissue-based)で判断する ことが一般的となった。発症からの経過時間(time-based)

で決めていた時代の、4.5時間(rt-PA静注)や6時間(機械的血 栓回収: MT)という治療時間枠(therapeutic time window:

TTW)は、最大公約数の患者で効果を担保するための時間 とも言える。そもそも虚血プロセスの進展速度は、閉塞部位 や側副血行の程度によって様々であり、個人の虚血耐性も 異なる。したがって各々の患者でTTWは大きく異なり、こ れを私たちは先進画像検査で判断できるようになったわけ である。再灌流療法で最も重要とされる"Time is brain" に 変わりはないが、患者選択においては "Every patient has a different clock" であることに留意する。

 Clinical imaging mismatch:DAWN(MT, 24時間まで)

で採用されたアプローチ。年齢別に重症度と虚血コアサイズ から治療適応を決めるもの。80歳以上では21 ml未満(NIHSS

≧10)、80歳未満では31あるいは51 ml未満(それぞれNIHSS

≧10あるいは≧20)のものが対象となった。

 Target mismatch:DEFUSE 3およびEXTENDで採用 された。DEFUSE3(MT, 16時間まで)での定義は、虚血コ アサイズが< 70 ml、かつ灌流異常域(Tmax >6秒)とのミス マッチ容積>15 mlかつ比率>1.8である。またEXTEND(rt-PA, 睡眠中発症および9時間まで)では虚血コア<70 ml、ミ スマッチ容積>10 mlかつ体積比>1.2を用いた。

 DWI-FLAIR mismatch:WAKE-UP(rt-PA, 睡眠中発症)

で用いられた。MRIの虚血感度の違いから治療可能性を探る

(tissue-clock)アプローチである。拡散強調画像が発症後1時 間以内に病変を描出できるのに対し、FLAIRは3時間以内の 病変を同定し難く、両者の所見の差をもって発症時間を推定 する。

1 シ ン ポ ジ ウ ム 日

シンポジウム 42

9月1日(火)16:00 ~ 17:30 第11会場(ANAクラウンプラザホテル岡山1F曲水)

Jp

S-42-2 再潅流療法戦略:tPA+

血栓回収療法

○‌‌園田 和隆

済生会福岡総合病院 脳神経内科

【略歴】

平成20年(2008) 3月 27日 九州大学医学部卒業 平成20年(2008) 4月 九州大学病院 初期研修プログラム 平成20年(2008) 4月 原三信病院 総合診療科 平成23年(2011) 4月 九州大学医学部附属病院 神経内科

(平成23年10月 福島県いわき市立総合磐城協立病院へ災害支援で赴任)

平成24年(2012)4月 済生会福岡総合病院 神経内科/脳血管内科 平成26年(2014)4月 小倉記念病院 脳神経外科

平成28年(2016)4月 国立循環器病研究センター 脳卒中集中治療科 平成31年(2019)4月 現職

急性期脳梗塞において、組織壊死に至っていない虚血領域

(penumbra領域)に対して、血流を再開通させることで症状 の改善を図る再灌流療法は本邦においては2005年のアルテプ ラーゼ承認に端を発した。経静脈的血栓溶解療法は当初発 症3時間以内に限られていたが、ECASSⅢ試験の結果を受け て4.5時間まで延長された。しかし血栓量が多い主幹動脈閉 塞では再開通が得られにくいことから、カテーテルを用いて 直接血栓を回収し、再開通を得る血管内治療に期待が寄せ られた。新たなデバイスの開発にも助けられた2015年以降、

HERMESに纏められる複数のRCTの結果が上梓され、発症 6時間以内の前方循環主幹動脈閉塞に対する血管内治療の有 効性が確立するに至った。しかし、治療が受けられる患者は なお限定的であり、治療対象の拡大が期待された。そこで、

造影画像評価を用いて、penumbra領域を直接計測するソフ トウェアを用いて、より再灌流療法の恩恵を受けうる患者を 選択することで、DAWN試験では発症24時間、DEFFUSE3 試験では16時間まで血管内治療の有効性を延長することに 成功した。現在、本邦においても3学会合同の適正使用指針 で、発症24時間までの血管内治療を許容している。一方で このような時間準拠(time based)の患者選択から画像評価 による(tissue based)患者選択へのシフトは、経静脈的血栓 溶解療法への恩恵ももたらしている。WAKE-UP試験では DWI-FLAIRミスマッチがある起床時発症患者に対して起 床後4.5時間以内のアルテプラーゼ投与の有効性が示され、

EXTEND試験では前述のソフトウェアを用いることで、発 症9時間までアルテプラーゼの有効性が延長し得ることを示 された。

また、血管内治療においてはより遠位の閉塞や後方循環への 治療有効性の報告も多くなされており、経静脈的血栓溶療法 としてはテネクテプラーゼがEXTEND-IA TNK試験でアル テプラーゼを上回る再開通率を示しており、今後の実用化に 期待が持たれている。

このように、急性期脳梗塞に対する再灌流療法は短期間に大 きな進歩を見せているが、現在も多くの試験が進行中であり、

さらなる発展が期待される。

S-42-3 急性期脳卒中リハビリ

テーション:HAL

®

歩行 運動療法と包括的循環器 リハビリテーション

○‌‌横田 千晶

1

、中西 道郎

2

、中島  孝

3

1 国立循環器病研究センター 脳血管リハビリテーション科、

2 国立循環器病研究センター 心血管リハビリテーション科、

3 国立病院機構 新潟病院 脳神経内科

【略歴】

1988年 滋賀医科大学 医学部卒業

1988年 滋賀医科大学 医学部附属病院 研修医(第3内科)

1989年 第二岡本総合病院 医師(糖尿病内科)

1991年 国立循環器病センター 内科動脈硬化代謝部門 レジデント 1994年 同    内科脳血管部門 専門修練医

1996年 同    内科脳血管部門 医師

1997年 同    研究所 病因部 脳血管障害研究室 研究員(内科脳血管部門併任)

2005年 同    内科脳血管部門 医長 2010年 国立循環器病研究センター 脳血管内科 医長

2016年   同     脳血管リハビリテーション科 医長(脳血管内科併任)現在に至る

【所属学会】

日本脳卒中学会(評議員、専門医、指導医)、日本脳循環代謝学会(幹事)、日本内科学会(総合内 科専門医)、日本神経学会、日本老年医学会(専門医)、日本リハビリテーション医学会、日本ニュー ロリハビリテーション学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本心血管脳卒中学会(評議員)

現在、急性期虚血性脳卒中例に対しては、急性再潅流療法が機能転帰 を改善することが明らかにされている。しかしながら、その恩恵は、

治療までの時間、病態のほか、実施体制により制限され、現在全体の 20%未満と推定される。脳出血に関しては、効果的な急性期内科治療 は未開発である。従来、急性期脳卒中リハビリテーションは、合併症 なく早期離床することに主眼がおかれ、本格的なリハビリテーション は、回復期を中心に行われてきた。一方で脳卒中発症後間もない時期 は、神経可塑性を生じやすい時期とされ、脳卒中後の運動訓練効果は 発症後の時間が経過するにつれて減弱することが知られている。脳卒 中例に対する急性期リハビリテーションは、再潅流療法、薬物治療と 並んで、機能回復のための重要なインターベンションとなりうる。

既に我々は、急性期脳卒中例に対するサイボーグ型ロボットHybrid Assistive Limb (HAL®)を用いた歩行運動療法に関する観察研究を行 い、通常の理学療法にHAL®歩行訓練を併用した歩行運動療法は、通 常の理学療法単独に比べて、特に重症歩行障害例において歩行機能・

歩行自立度が改善する可能性を示した(Yokota C, et al, 2019)。HAL® 医療用下肢タイプ(CYBERDYNE. Inc.製)を用いた歩行運動療法は、

医師主導治験NCY-3001試験(研究代表者:中 島孝)の結果に基づき,

公的医療保険適用となり、2016年より指定難病の神経筋8疾患の治療 が開始された。 今後、脳卒中急性期領域での検証試験実施が望まれ ている。

更に、急性期脳卒中入院例の約半数が、機能回復により自宅退院可能 となるが、こうした例に対する、運動療法、危険因子管理、啓発を含 めた疾病マネージメントは機能維持と再発予防のために不可欠であ る。心疾患例に対しては、患者教育や運動療法を主体とする包括的心 臓リハビリテーション・プログラムが、運動耐容能や筋力の増加のみ ならず、冠危険因子の是正や生命予後改善に効果があることが明らか にされている。脳卒中例に対しては、再発予防に対する運動療法のエ ビデンスはない。

急性期脳卒中リハビリテーションの役割は、機能回復の「底上げ」と回 復期・維持期に向けた「方向づけ」にある。現在我々は、①急性期脳卒 中例に対するHAL®を用いた歩行運動療法、②急性期脳卒中軽症例に 対する包括的循環器リハビリテーションに取り組んでいる。本シンポ ジウムでは、各研究内容について概説する。

1 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 42

9月1日(火)16:00 ~ 17:30 第11会場(ANAクラウンプラザホテル岡山1F曲水)

Jp

急性期脳卒中インターベンションへの新た なアプローチ

座長:木村 和美 ‌‌

日本医科大学脳神経内科

藤本  茂 ‌‌

自治医科大学内科学講座神経内科 学部門

≪ねらい≫

急性期脳卒中治療において、機能障害の軽減・回復に向けた

「介入療法」と再発防止に向けた「疾患マネジメント」は極めて 重要である。本シンポジウムでは、前者に対しては、time based からtissue basedに変わった最新の再潅流療法戦略と 本療法適応外または再潅流療法を行っても良好な転帰が得ら れない症例に対する集中的な急性期脳卒中リハビリテーショ ン法を解説する。後者に対しては、自宅退院可能例への運動 療法、危険因子管理、啓発を含めた疾病マネージメントとし ての包括的循環器リハビリテーション及び新たな抗血小板薬 を含めた薬物療法につき概説する。

S-42-1 再灌流療法戦略:tissue-basedアプローチによる 適応判断

○‌‌平野 照之

杏林大学医学部 脳卒中医学教室

【略歴】

1988年‌熊本大学卒業,同年‌第一内科入局,1991年‌国立循環器病センター レジデント内科脳血管部門,1995年‌熊本大学第一内科・神経内科,1996 年‌メルボルン大学National‌Stroke‌Research‌Institute,1998年‌熊本労 災病院,1999年‌熊本大学神経内科,2002年‌同‌助手,2006年‌同‌講師,

2012年‌大分大学‌第三内科・神経内科‌准教授,2014年‌杏林大学医学部脳 卒中医学‌教授,‌2015年‌同‌脳卒中センター長(併任)現在に至る

受賞:1995年‌日本心臓財団「草野賞」

 2020年現在、急性期脳梗塞に対する再灌流療法の適応は、

脳画像所見で推定した組織可塑性(tissue-based)で判断する ことが一般的となった。発症からの経過時間(time-based)

で決めていた時代の、4.5時間(rt-PA静注)や6時間(機械的血 栓回収: MT)という治療時間枠(therapeutic time window:

TTW)は、最大公約数の患者で効果を担保するための時間 とも言える。そもそも虚血プロセスの進展速度は、閉塞部位 や側副血行の程度によって様々であり、個人の虚血耐性も 異なる。したがって各々の患者でTTWは大きく異なり、こ れを私たちは先進画像検査で判断できるようになったわけ である。再灌流療法で最も重要とされる"Time is brain" に 変わりはないが、患者選択においては "Every patient has a different clock" であることに留意する。

 Clinical imaging mismatch:DAWN(MT, 24時間まで)

で採用されたアプローチ。年齢別に重症度と虚血コアサイズ から治療適応を決めるもの。80歳以上では21 ml未満(NIHSS

≧10)、80歳未満では31あるいは51 ml未満(それぞれNIHSS

≧10あるいは≧20)のものが対象となった。

 Target mismatch:DEFUSE 3およびEXTENDで採用 された。DEFUSE3(MT, 16時間まで)での定義は、虚血コ アサイズが< 70 ml、かつ灌流異常域(Tmax >6秒)とのミス マッチ容積>15 mlかつ比率>1.8である。またEXTEND(rt-PA, 睡眠中発症および9時間まで)では虚血コア<70 ml、ミ スマッチ容積>10 mlかつ体積比>1.2を用いた。

 DWI-FLAIR mismatch:WAKE-UP(rt-PA, 睡眠中発症)

で用いられた。MRIの虚血感度の違いから治療可能性を探る

(tissue-clock)アプローチである。拡散強調画像が発症後1時 間以内に病変を描出できるのに対し、FLAIRは3時間以内の 病変を同定し難く、両者の所見の差をもって発症時間を推定 する。

1 シ ン ポ ジ ウ ム 日

ドキュメント内 プレナリー (ページ 162-165)

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