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前臨床に有用なALSモデルを考える 座長:漆谷  真 ‌‌ 国立大学法人滋賀医科大学内科学

ドキュメント内 プレナリー (ページ 55-58)

講座脳神経内科

井口 洋平 ‌‌

名古屋大学医学部神経内科

≪ねらい≫

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は原因遺伝子や病原蛋白質の同 定により病態解明が著しい。関連パスウェイへの介入による 新規治療薬の発見や原因遺伝子、蛋白質そのものに対する標 的治療法の開発も進んでいる。これらの進歩は、様々な動物 種や細胞を用いたALSモデルの創生に基づいており、各々の モデルの特性とALS患者への外装性を理解することは、病態 の真の理解と前臨床的視点を持つ上で重要と考える。本シン ポジウムではこれらのALSモデルがもつ有用性と特性につ いて、エキスパとに最新の知見を交えながらご紹介いただき、

知見の共有と展望を考えてゆきたい。

S-06-1 線虫をモデルにした筋萎

縮性側索硬化症関連タン パク質SOD1 の毒性評価

○‌‌古川 良明

慶應義塾大学理工学部化学科生命機構化学研究室

【略歴】

京都大学大学院工学研究科分子工学専攻‌ 森島績教授のもと、タンパク質 電子移動反応の制御メカニズムに関する研究を行い、2002年3月に博士後 期課程を修了するとともに博士(工学)を取得する。その後、JSPS特別研究 員・海外特別研究員として、米国ノースウェスタン大学化学科‌Professor‌

Thomas‌O'Halloranとともに金属シャペロンタンパク質の作用機序に関す る研究を行い、2005年6月から2010年3月まで理化学研究所脳科学総合研 究センター‌貫名信行グループリーダーのもと、研究員・基礎科学特別研究 員として、タンパク質のミスフォールディングと神経変性疾患に関する研 究を進める。現在は、慶應義塾大学理工学部‌准教授として研究室を主宰し、

生体内における金属イオン動態の制御メカニズムとその破綻がもたらす神経 変性疾患の病理機序解明に従事している。2009年‌日本生物物理学会若手奨 励賞受賞。

 家族歴が認められる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の約2割にお いて、銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)をコー ドする遺伝子に変異が認められる。変異に伴うアミノ酸置換に よって、立体構造が異常化した(ミスフォールドした)SOD1が 運動ニューロンに蓄積し、ALS発症への関与が提案されてい る。遺伝的要因が不明の孤発性ALSにおいても、ミスフォー ルドした野生型のSOD1が脳脊髄液に検出されることから(Mol Neurodegener 2019 14 42)、SOD1の構造と毒性の相関を評価 することはALSの病理を理解する上で非常に重要である。

 我々の研究室では、精製したSOD1タンパク質を用いて様々 なミスフォールド型SOD1(アミロイド様線維、可溶性オリゴ マーなど)の作製に成功し、モデルマウスや患者から検出され るミスフォールド型SOD1との比較を進めてきた。特に、ミス フォールド型SOD1の毒性は、培養細胞への添加やモデルマウ スへの接種を通じて検討されることが多いものの、ミスフォー ルドしたタンパク質が個体に及ぼす影響を比較的手軽に評価で きる線虫に着目することで、毒性を発揮するミスフォールド型 SOD1の構造的特徴について研究を進めてきた。

 例えば、正常にフォールドしたSOD1やアミロイド様線維を 線虫に食餌として与えても、生存率・運動性・排泄行動などに は何ら影響を及ぼさなかったものの、可溶性オリゴマーを与え ると、生存率と運動性が顕著に低下し、排泄行動にも異常が 見られた。また、病因性変異型SOD1を発現するALSモデルマ ウスでは、脊髄において変異型SOD1の可溶性オリゴマー化が 進行し、運動ニューロンが変性するものの、小脳ではSOD1の オリゴマー化が認められず、神経細胞死は観察されない(Mol Neurodegener 2017 12 2)。そこで、小脳抽出物を線虫に与えた ところ、運動性に影響が見られなかったのに対して、脊髄抽出 物は線虫を麻痺させることで運動性を低下させることがわかっ た。野生型マウスの脊髄抽出物を線虫に与えても影響は見られ なかったことから、モデルマウスの脊髄に形成するSOD1の可 溶性オリゴマーが線虫に対して毒性を発揮していることが考え られた。

 以上より、SOD1タンパク質はコンフォメーション依存的に 毒性を発揮し、特に、可溶性のオリゴマーが疾患の発症に関与 しているのではないかと考えられる。

31 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 05

8月31日(月)10:30 ~ 12:00 第11会場(ANAクラウンプラザホテル岡山1F曲水)

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S-05-4 ナタリズマブの使い方

○‌‌吉倉 延亮

岐阜大学病院 脳神経内科

【略歴】

2008年3月 岐阜大学医学部卒業

2008年4月~2010年3月 岐阜県総合医療センター 初期研修医 2010年4月  岐阜大学大学院医学系研究科 神経内科・老年学分野

(現 脳神経内科学分野)

2014年4月 同助教 2018年   学位取得

多発性硬化症 (multiple sclerosis, MS)は,中枢神経組織の ミエリンを構成する蛋白が標的となる自己免疫疾患と考えら れている.この中枢神経の炎症性脱髄疾患は,日本には約2 万人,世界では約250万人の患者が存在すると見込まれ,日 本では古くから"難病"に位置づけられている.

MSが認識され始めた19世紀のシャルコーの時代から,百数 十年間は特別な治療法がなかった.しかし,1993年に米国 でインターフェロンβ1b (interferon-beta 1b, IFN-β1b)の注 射剤が,再発寛解型MS (relapsing-remitting MS, RRMS)患 者の再発予防に有効であることが示された.日本でも2000 年に同薬剤は使用可能となったが,国際的に認められた治 療薬が,国内で使用可能になるまでのドラッグ・ラグは今 日まで続いている.そのような状況の中で,現在は6つの 疾患修飾薬 (disease modifying drug, DMD)が使用可能で ある.なかでも,Natalizumab (NAT)は再発抑制効果が高 いものの,進行性多巣性白質脳症 (progressive multifocal leukoencephalopathy, PML)のリスクが懸念される薬剤であ る.そのため,“いつから”,“いつまで”,“だれに”,使用す るべきなのか,"リスクとどう向き合うのか",といった臨床 的課題がこれまでに議論され,一定の見解が示されてきた.

近年,強力なDMDを最初から用いる方が治療効果が高いこ とが示されてきている.また,RRMSの進行に関わる多数の 予後因子も明かにされており,それらを複数抱えている場 合,強力なDMDで治療する方が良い可能性がある.さらに は,NATの投与間隔を通常よりも延長する方法(Extended interval dosing, EID)によって有効性を保ったままPMLリ スクを減少させる可能性も報告されている.したがって今 後,さらにNATを使用する患者が増える可能性がある.一 方でNAT関連PMLには注意が必要で,画像上の特徴を理解 し,頭部造影MRIによって無症候のうちに診断することが重 要である.そして,いつまでNATを続けるべきなのか,に ついてはまだ一定の見解がなく,今後議論を深める必要があ る.ここでは,NATに関する知識を知恵にすることを目的に,

その使い方について解説したい.

最後に,NATに限らずDMDの選択に際して,最新の情報を 患者と共有して,患者とともに治療を選択をしていくことが 重要であり,その過程が患者と医師の間の強固な信頼関係の 構築に繋がる.この講演が,より良い治療選択に繋がれば幸 いである.

S-05-5 MS/NMOSDの新薬展望

○‌‌中原  仁

慶應義塾大学医学部神経内科

【略歴】

<学歴>

2003年、慶應義塾大学医学部卒業

2007年、慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了、博士(医学)

<職歴>

2003-2005年、慶應義塾大学病院内科研修医 2003-2004年、慶應義塾大学COE研究員(生命科学)

2004-2007年、独立行政法人日本学術振興会特別研究員(DC1)

2007-2008年、独立行政法人日本学術振興会特別研究員(PD)

2008-2013年、慶應義塾大学特任講師(医学部総合医科学研究センター)

2013-2018年、慶應義塾大学助教(医学部内科学(神経))

2018年-現在、 慶應義塾大学教授(医学部内科学(神経))

2018年-現在、 慶應義塾大学グローバルリサーチインスティチュート副所 長(兼務)

<資格・学会活動>

日本内科学会(評議員・指導医・総合内科専門医)

日本神経学会(関東甲信越支部代表・代議員・指導医・神経内科専門医)

日本神経免疫学会(理事)

日本神経治療学会(評議員)

日本神経感染症学会(評議員)

日本多発性硬化症ネットワーク(理事)

環アジア多発性硬化症治療研究会議(PACTRIMS)(Member of Central Organizing Committee)

多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)に対する世界初の疾患 修飾薬(disease-modifying drugs; DMD)としてインターフェ ロンβ1bが誕生したのは1993年であったが、我が国におけ る同承認は2000年を待たねばならなかった。しかしその後、

MS患者数の増加、MS患者団体の結成と成熟、MSを専門と する神経内科医の奮闘、製薬会社の協働などが功を奏し、ド ラッグラグは次第に解消に向かい、現在少なくともアジアで はMSに対するDMDの臨床開発を主導する立ち位置に在る。

また、2004年にNMO-IgG(抗AQP4抗体)が発見され、MSか ら分離独立した視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitis optica-spectrum disorders; NMOSD)の概念樹立には東北大学をは じめとする本邦の神経内科医が多大なる貢献をしたことは 周知の通りである。これら潮流が追い風となり、昨今MS/

NMOSD領域における国際共同治験に日本が参画することは 珍しくない。MSでは二次性進行型を対象とするsiponimod

(EXPAND試験; Kappos et al, Lancet 2018)、再発寛解型 を 対 象 と す るofatumumab(ASCLEPIOS試 験; 我 が 国 は APOLITOS試験; Hauser et al, ECTRIMS 2019)、NMOSD ではeculizumab(抗AQP4抗体陽性例のみ対象; PREVENT 試 験; Pittock et al, N Engl J Med 2019)、satralizumab

(SAkuraSky試験; Yamamura et al, N Engl J Med 2019)、

inebilizumab(N-MOmentum試験; Cree et al, Lancet 2019)

などが代表例である。本講演では昨今本邦が参画したこれら 国際共同治験を俯瞰し、我が国におけるMS/NMOSDの新薬 展望を概説する。

31 シ ン ポ ジ ウ ム 日

ドキュメント内 プレナリー (ページ 55-58)

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