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神経変性“因子”のイメージング研究最前線 座長:米田  誠 ‌‌ 福井県立大学看護福祉学部

ドキュメント内 プレナリー (ページ 70-73)

井川 正道 ‌‌

福井大学医学部附属病院脳神経 内科

≪ねらい≫

パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患は、

脳内へのαシヌクレインやβアミロイド、タウなどの蛋白の 蓄積が原因である。イメージングによって、これらの蛋白を 患者生体で評価できる時代が到来し、蓄積の過程が明らかに なりつつある。では、蛋白蓄積や神経変性を開始・促進させ る要因はいったい何で、どのように関与しているのであろ うか? 以前からその“因子”として、ミクログリアによる神 経炎症(TSPO)、ミトコンドリア障害、フリーラジカルによ る酸化ストレス、アストログリオーシス(MAO-B)、生合成 や代謝の変化などが知られているが、実際の患者における挙 動の評価は困難であった。最近のイメージング研究の発展に よってこれら“因子”の可視化が実現し、患者生体での蛋白蓄 積・神経変性に及ぼす影響が解明されつつある。神経変性“因 子”イメージング研究の最新の成果をお話いただき、神経変 性過程への包括的な理解を深めたい。

S-11-1 ミトコンドリア機能・

神経炎症のイメージング

○‌‌尾内 康臣

浜松医科大学病院 生体機能イメージング研究室

【略歴】

1988年3月‌‌‌‌京都大学医学部医学科卒業(神経内科入局)

1995年3月‌‌‌‌京都大学大学院医学研究科博士課程終了 1995年4月~2007年10月 

浜松市医療公社・先端医療技術センター 副医長・医長 1997年~1998年‌‌‌‌

USAハワイ州Queen's‌Medical‌Center共同研究員 2002年~現在‌‌‌‌

浜松光医学財団理事

2007年11月‌‌浜松医科大学 分子イメージング先端研究センター 教授 2016年1月~現在  

組織統合改組でセンター・所属名称変更、現職

生きたヒト脳内のミトコンドリア活性や神経炎症を観察評価 できる道具はPETのみである。ミトコンドリア活性を間接 的に捉える方法は1970年代と古くからあり、15Oで標識した 酸素を用いた脳酸素代謝測定が該当する。また、18FDGを用 いたブドウ糖代謝測定で間接的に細胞のエネルギー生成を評 価するという点から潜在的にミトコンドリア活動を推定する ことも可能である。あるいは62Cu-ATSMを用いた酸化的ス トレスの程度からそれを類推することもできる。しかし、よ り直接的な方法はミトコンドリア内の分子を標的とした画像 化であろう。最近ミトコンドリアのETC第1律速酵素である 複合体1型(MC-1)に結合するPETリガンド([18F]BCPP-EF)

が開発でき、直接ミトコンドリア密度を可視化できるよう になった。この結合部位はMC-1阻害薬であるrotenoneと同 一部位であることがわかり、活性化したミトコンドリアは その数が増えていることから[18F]BCPP-EFの結合の程度を 知ることでその細胞の機能活性を推定できる。本講演では、

18FDGによるブドウ糖代謝と比較して、解糖系の機能活性を 健常と異常(認知症)での相違について話す。

また、認知症の脳環境に必然と存在するものに神経炎症があ る。2000年になってTSPOプローブを用いて主に活性化した ミクログリアの画像化が可能となり、認知症の死後脳で検討 されてきた病理画像を生前で捉えて評価できる時代となっ た。神経炎症の中心はミクログリアであるが、アストロサイ トなどの他のグリア細胞も関係している。ミクログリアはま た保護性作用と神経傷害性作用の2極性を有し、それぞれの 機能的側面を可視化して病態評価することも今後の重要な ミッションである。我々は動物でTSPO画像と比較してCB2 画像の意義を示したが、今回の講演ではその知見を紹介し、

ヒト脳での現状について簡単に触れたい。

31 シ ン ポ ジ ウ ム 日

シンポジウム 11

8月31日(月)13:30 ~ 15:00 第07会場(岡山コンベンションセンター2F展示ホール)

公募 Jp

S-11-2 酸化ストレスのイメージング

○‌‌井川 正道

1,2

1 福井大学医学部附属病院 脳神経内科、2 福井 大学 高エネルギー医学研究センター

【略歴】

2000年 福井医科大学医学部医学科 卒業,同附属病院 第2内科 研修医 2001年 聖隷浜松病院 総合診療内科 研修医

2003年 福井大学医学部附属病院 神経内科 医員 2005年 福井赤十字病院 神経内科 医員 2010年 福井大学医学部附属病院 神経内科 助教

2011年 福井大学大学院医学系研究科博士課程 修了,医学博士号 取得 2013年 米国 国立衛生研究所(NIH) Molecular Imaging Branch,NIMH

客員研究員

2018年 福井大学医学部 地域高度医療推進講座 講師

福井大学医学部附属病院 脳神経内科 副科長,同 遺伝診療部 副部長 兼任 福井大学高エネルギー医学研究センター 兼任教員

神経変性疾患の病態,すなわち脳内への異常な蛋白蓄積や神 経細胞の減少には,さまざまな神経変性“因子”の関与が想定 されている.そのなかでも活性酸素種(ROS)の発生増加によ る酸化ストレスは,細胞構成成分の酸化的損傷および原因蛋 白の蓄積をもたらし,パーキンソン病(PD)など多くの神経 変性疾患の病態に関与することが病理・基礎研究から示唆さ れている.酸化ストレス,すなわち酸化的損傷を引き起こす ROSの大部分は,ミトコンドリア呼吸鎖不全による過剰な電 子の滞留(過還元状態)による電子と酸素分子のアンバランス によって生じる.PETリガンドである62Cu-ATSMは,過還 元状態に陥った部位,すなわちミトコンドリア機能障害によ るROS発生増加部位に特異的に集積するため,生体におけ る酸化ストレスの非侵襲的・直接的な評価に用いることがで きる.我々は62Cu-ATSMによるPETイメージングによって,

患者脳内における酸化ストレスの可視化に世界で初めて成功 し,種々の神経変性疾患における病態解明研究を実施して いる.これまで62Cu-ATSM PETによって,ミトコンドリア 病(MELAS)患者の脳卒中様発作病変,PD患者の脳線条体,

筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の脳運動関連領域における 酸化ストレス増強を明らかにした.さらにPDおよびALSに おいては,上記の病変部位への62Cu-ATSM集積と,UPDRS やALSFRS-Rによる臨床的重症度との間に正の相関が認めら れ,酸化ストレス増強が神経変性の進行に関与することを示 すことができた.さらに最近では,長半減期の64Cu-ATSM および最新鋭PET/MRスキャナを導入し,より精度の高い 酸化ストレスイメージングを開始している.現在は主にアル ツハイマー病患者を対象に研究を実施しており,重症度やア ミロイド沈着に関連した脳内の酸化ストレス増強が明らかに なるなど,興味深い結果が得られつつある.これらの知見は,

神経変性疾患における,酸化ストレスおよびミトコンドリア 機能に対するイメージングを用いた直接的・リアルタイムな 評価・病態解明の重要性を示している.さらに,病態機序へ の神経変性“因子”の関与が明らかになることで,これらの因 子を標的とした新たな治療法開発の契機となることが期待さ れ,イメージングは病態評価と創薬の双方にとって欠かせな いツールとなりつつある.

S-11-3 脳内代謝の分析・イメー

ジング:MRSによるトラ ンスレーショナル研究

○‌‌高堂 裕平

量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門 放射線医 学総合研究所 脳機能イメージング研究部

【略歴】

2015年10月 - 現在

放射線医学総合研究所(現・量子科学技術研究開発機構)

脳機能イメージング研究部 研究員 2011年 - 2015年 スイス連邦工科大学ローザンヌ校 博士研究員 2010年 - 2011年 スイス連邦工科大学ローザンヌ校 スイス政府奨学金留

学生/博士研究員

2006年 - 2010年 新潟大学脳研究所 統合脳機能研究センター 大学院生 2004年 - 2006年 秋田赤十字病院神経内科

2003年 - 2004年 新潟大学脳研究所神経内科 医員 2002年 - 2003年 小千谷総合病院 内科研修医 2001年 - 2002年 新潟大学医学部付属病院 内科 研修医

 神経変性疾患の病態に関わる'因子'として,近年,脳内に おける代謝の重要性が注目されている.脳における代謝は,

脳機能や脳病態とともに変化するため,代謝分子の定量測定 によって脳活動や病態を推測することができる.脳の代謝を 正しく把握するには非侵襲に代謝を測定することが求められ る.磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)は,磁気共鳴画像

(MRI)装置によって,脳の一定領域における代謝を非侵襲に 測定・イメージングすることで,脳機能や脳病態の評価を可 能にすることができる手法である.近年のMRI装置の静磁場 強度の増加,撮像法の改良,MRS解析手法技術の発展により,

MRSによって測定できる代謝物の種類が増え,検討できる 脳病態が格段に増えており,医療現場における関心が高まっ ている。

 本講演では,はじめに,神経変性疾患の病態に関わる'因 子'としての脳代謝をMRSによって測定することで,いかな る脳病態を評価できるのかをお伝えする.続いて演者らが量 研・放医研にて取り組んでいるMRSを用いた神経変性疾患

(進行性核上性麻痺やアルツハイマー病)を対象としたトラン スレーショナル研究の具体例を紹介させていただく.タウ オパチー患者を対象としたMRSデータとタウ蓄積型モデル マウスを対象としたMRSデータを合わせて検討することで,

タウオパチー病態における糖代謝異常の関与が示唆された.

MRSをヒトと動物に用いて脳代謝を評価することで,他の 手法では得られない知見を得ることができた例を示す.

 神経変性疾患の克服のために脳神経内科医に求められる役 割は様々であり,トランスレーショナル研究の推進もその一 つである.動物で得られたシーズをヒトへとつなげていくこ とは重要であるものの,基礎と臨床には大きな隔たりがあ り,その隔たりを基礎研究者(PhD)のみで埋めることは困難 である.一方,臨床業務に多忙な医師(MD)のみで橋渡しを 実現するのも現実的ではない.MRSはヒトと動物における 共通分子を測定でき,それらを通じて種々の病態を評価でき るため,トランスレーショナル研究や創薬において,PhDと MDの間をつなぐ有用なツールとなる可能性がある.PhDの みならず,脳神経内科医が神経変性疾患の臨床および研究に MRSを有効に活用することは,脳疾患を対象とするトラン スレーショナル研究の発展に重要であると考えられる.

31 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 11

8月31日(月)13:30 ~ 15:00 第07会場(岡山コンベンションセンター2F展示ホール)

公募 Jp

神経変性“因子”のイメージング研究最前線 座長:米田  誠 ‌‌

福井県立大学看護福祉学部

井川 正道 ‌‌

福井大学医学部附属病院脳神経 内科

≪ねらい≫

パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患は、

脳内へのαシヌクレインやβアミロイド、タウなどの蛋白の 蓄積が原因である。イメージングによって、これらの蛋白を 患者生体で評価できる時代が到来し、蓄積の過程が明らかに なりつつある。では、蛋白蓄積や神経変性を開始・促進させ る要因はいったい何で、どのように関与しているのであろ うか? 以前からその“因子”として、ミクログリアによる神 経炎症(TSPO)、ミトコンドリア障害、フリーラジカルによ る酸化ストレス、アストログリオーシス(MAO-B)、生合成 や代謝の変化などが知られているが、実際の患者における挙 動の評価は困難であった。最近のイメージング研究の発展に よってこれら“因子”の可視化が実現し、患者生体での蛋白蓄 積・神経変性に及ぼす影響が解明されつつある。神経変性“因 子”イメージング研究の最新の成果をお話いただき、神経変 性過程への包括的な理解を深めたい。

S-11-1 ミトコンドリア機能・

神経炎症のイメージング

○‌‌尾内 康臣

浜松医科大学病院 生体機能イメージング研究室

【略歴】

1988年3月‌‌‌‌京都大学医学部医学科卒業(神経内科入局)

1995年3月‌‌‌‌京都大学大学院医学研究科博士課程終了 1995年4月~2007年10月 

浜松市医療公社・先端医療技術センター 副医長・医長 1997年~1998年‌‌‌‌

USAハワイ州Queen's‌Medical‌Center共同研究員 2002年~現在‌‌‌‌

浜松光医学財団理事

2007年11月‌‌浜松医科大学 分子イメージング先端研究センター 教授 2016年1月~現在  

組織統合改組でセンター・所属名称変更、現職

生きたヒト脳内のミトコンドリア活性や神経炎症を観察評価 できる道具はPETのみである。ミトコンドリア活性を間接 的に捉える方法は1970年代と古くからあり、15Oで標識した 酸素を用いた脳酸素代謝測定が該当する。また、18FDGを用 いたブドウ糖代謝測定で間接的に細胞のエネルギー生成を評 価するという点から潜在的にミトコンドリア活動を推定する ことも可能である。あるいは62Cu-ATSMを用いた酸化的ス トレスの程度からそれを類推することもできる。しかし、よ り直接的な方法はミトコンドリア内の分子を標的とした画像 化であろう。最近ミトコンドリアのETC第1律速酵素である 複合体1型(MC-1)に結合するPETリガンド([18F]BCPP-EF)

が開発でき、直接ミトコンドリア密度を可視化できるよう になった。この結合部位はMC-1阻害薬であるrotenoneと同 一部位であることがわかり、活性化したミトコンドリアは その数が増えていることから[18F]BCPP-EFの結合の程度を 知ることでその細胞の機能活性を推定できる。本講演では、

18FDGによるブドウ糖代謝と比較して、解糖系の機能活性を 健常と異常(認知症)での相違について話す。

また、認知症の脳環境に必然と存在するものに神経炎症があ る。2000年になってTSPOプローブを用いて主に活性化した ミクログリアの画像化が可能となり、認知症の死後脳で検討 されてきた病理画像を生前で捉えて評価できる時代となっ た。神経炎症の中心はミクログリアであるが、アストロサイ トなどの他のグリア細胞も関係している。ミクログリアはま た保護性作用と神経傷害性作用の2極性を有し、それぞれの 機能的側面を可視化して病態評価することも今後の重要な ミッションである。我々は動物でTSPO画像と比較してCB2 画像の意義を示したが、今回の講演ではその知見を紹介し、

ヒト脳での現状について簡単に触れたい。

31 シ ン ポ ジ ウ ム 日

ドキュメント内 プレナリー (ページ 70-73)

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