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鈴木 直輝

ドキュメント内 プレナリー (ページ 130-133)

≪ねらい≫

封入体筋炎は高齢者に多い筋疾患ですが、病変分布から多彩 な鑑別診断を持ち誤診や診断の遅れにしばしば遭遇します。

稀な病気と思われていましたが、高齢化および生活の欧米化 に伴い患者数が増加しています。したがって専門施設だけで なく一般神経内科でも、診断・治療・ケアを適切に行うこと が要求されるようになってきました。〔改行)このコースでは 封入体筋炎の臨床・生理・病理・治療と診断のピットフォー ルに焦点を当て、臨床現場で生かせる知識を提供します。本 セミナーの参加により、経験者はもちろん神経筋疾患症例の 経験の少ない医師も、診断から治療まで独力でアプローチ出 来るよう内容を厳選しました。

S-31-1 高齢化社会で重要性を増

す封入体筋炎:疫学デー タを中心に

○‌‌青木 正志、井泉瑠美子、

鈴木 直輝

東北大学大学院医学系研究科神経内科学

【略歴】

平成‌ 2年3月 東北大学医学部卒業

  同‌ ‌‌4月 東北大学医学部神経内科へ入局 平成‌ 6年3月 東北大学大学院医学研究科卒業

平成‌ 8年4月‌‌‌‌米国ボストンのハーバード大学マサチューセッツ総合病院神 経内科(Prof.‌Robert‌Brown)へ留学

平成10年9月 東北大学医学部附属病院神経内科助手 平成19年6月 東北大学病院講師

平成23年2月 東北大学大学院医学系研究科神経内科教授 平成24年4月 東北大学病院臨床研究推進センター副センター長 平成29年4月 東北大学病院地域医療連携センター長

専門分野筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋疾患などの神経・筋疾患の病態の解明と治療 法の開発、再生医療、トランスレーショナルリサーチ

封入体筋炎 (Sporadic Inclusion Body Myositis:以下sIBM)

は50歳以上の中高年で発症する慢性進行性の筋疾患である。

100万人あたりのsIBMの有病率は国ごとで異なっており、米 国で10.7、西オーストラリアでは14.9、オランダでは4.9、ノ ルウェーでは33、トルコでは1.1と報告されている。

厚生労働省難治性疾患政策研究事業「希少難治性筋疾患」班で は国立精神・神経医療研究センターの筋病理診断症例の中の 多発筋炎の症例数と比較しsIBM の有病率を推定した。1990 年からの9年間ではsIBMと多発筋炎は各8例と151例、1999年 からの9年間では各69例と165 例であった。2000年代に入っ て飛躍的にsIBM診断数が増えていることがわかる。多発筋 炎の特定疾患受給者数が約3,000人と一定であることから、

sIBM の日本での有病率は2000年代で100万人当り9.83人と推 定され、1990年代の推定1.28人と比較して増加していた。

2000年代に入ってからの神経内科専門医に対するsIBM患者 数のアンケート調査においても2005年から2009年の5年間で の診断症例数は286例、2011年から2015年の5年間では384例 と、患者数は増え続けている。研究班の調査では、日本には 1,000-1,500人のsIBM患者がいると推定した。増加の原因と しては日本社会の高齢化、sIBMの疾患認知度の向上、生活 様式の欧米化などが関与していると推察している。

さらにsIBM患者アンケートをおこない自然歴を解析したと ころ、67名(男49 名,女18 名)から回答をえた。平均年齢は 73歳、発症から平均8.7年経過時点での回答であり、各症状 の出現時期はしゃがみ立ち不能が発症後4.6年、車椅子が7.3 年、電動車椅子が13.7年、ペットボトルの開栓不能が6.6 年、

洗顔不能が7.2年であった。

本シンポジウムでは日本で行った調査をもとに高齢化社会で 重要性を増しているsIBMについて疫学や自然歴に関してお 話ししたい。

1 シ ン ポ ジ ウ ム 日

シンポジウム 31

9月1日(火)10:45 ~ 12:15 第09会場(岡山県医師会館4F402会議室)

公募 Jp

S-31-2 封入体筋炎の基本的な臨

床像と落とし穴

○‌‌森 まどか

国立精神・神経医療研究センター 脳神経内科

【略歴】

1995年  信州大学医学部医学科卒業 東京大学医学部付属病院および関連 病院で研修

2000年  東京大学大学院医学研究科脳神経医学専攻入学、国立精神・神経 医療研究センター神経研究所 遺伝子疾患治療研究部にて研究生活 2004年 同 卒業

2006年より国立精神・神経センター病院神経内科(当時)

 封入体筋炎〔inclusion body myositis, IBM〕は高齢者に多 い後天性の筋疾患である。高齢化に伴い患者数が増加してお り、神経筋疾患を専門としなくとも脳神経内科で遭遇しやす い疾患となってきた。このセクションでは神経筋疾患の経験 がなくとも診断・ケア・治療が可能になるよう、IBMの診療 のポイントや落とし穴について解説する。

 高齢者に生じる大腿四頭筋と手指屈筋の筋力低下や嚥下障 害を伴い、特徴的な臨床像を呈するのが典型的な症例である。

しかし、加齢性変化や他疾患の合併、非典型例の存在などか ら、診断が容易な症例ばかりではない。患者自身も含め加齢 や廃用と誤解されている頻度も高い。鑑別疾患として、手 指・遠位筋力低下は頸椎症や運動ニューロン疾患、高CK血 症と嚥下障害の合併では皮膚筋炎やサルコイドーシスも検討 の必要がある。初期には手指筋力低下が目立たない症例もあ り多発筋炎と判断しがちだが、筋病理で縁取り空胞が観察さ れる症例は結局IBMの経過になることが多い。診断を過たな いため、筋生検では適切な筋肉を選ぶこと、筋画像や筋電図 を活用して筋原性変化や病変分布を確認することが大切であ る。特徴的な罹患筋分布や病理を呈さない場合があり、その 場合はIBMの可能性を念頭に置いた慎重な経過観察が必要と なる。

 免疫治療は一般に無効とされるが、時期や症状、症例によっ ては有効な場合もあり、今後の検討が必要である。予後に影 響を与える因子は誤嚥性肺炎であるが、背景に呼吸機能低下 が存在することがあり、排痰・呼吸ケアや外科治療も含めた 誤嚥対策が鍵になることが多い。本質的な治療戦略は今後の 課題である。

S-31-3 封入体筋炎の針筋電図所

見:神経原性と間違えな いために

○‌‌東原 真奈

東京都健康長寿医療センター 神経内科・脳卒中科

【略歴】

2001年  信州大学医学部卒業 2003年  東京大学医学部神経内科入局 2011年  東京大学大学院医学系研究科卒業

2017-2019年 Westmead Clinical School, University of Sydney留学 2013年-現在  東京都健康長寿医療センター神経内科・脳卒中科(現職)

[資格・所属学会]

日本内科学会認定内科医, 日本神経学会専門医・指導医, 日本臨床神経生理学 会専門医American Association of neuromuscular and electrodiagnostic medicine (AANEM)所属

[受賞歴]

Golseth young investigator award, President's research initiative award (AANEM)ほか

 針筋電図に関していえば、封入体筋炎(IBM)に特異的な所 見というものはなく、近年提唱されているIBMのdiagnostic research criteriaに針筋電図は含まれていない。しかしながら、

実臨床においてIBMの診断プロセスにおいて針筋電図検査の 果たす役割は非常に大きい。すでに別項で述べられているよう に、IBMは特徴的な臨床像を呈するにもかかわらず、筋萎縮性 側索硬化症(ALS)の臨床診断で筋電図外来に紹介されてくる ことが少なくなく、長母指屈筋や深指屈筋の筋力低下から前骨 間神経麻痺が疑われることもある。針筋電図診断においては、

IBMをふくむ、慢性の筋疾患では高振幅・長持続時間の巨大運 動単位電位(motor unit potential, MUP)が観察されるが、一般 的に神経原性疾患で高振幅・長持続時間MUPが、筋疾患では 低振幅・短持続時間MUPが特徴的であるとされているために、

このMUP形態による診断能を過信し、筋疾患を神経原性変化

(特にALS)と誤診してしまうケースが多い。しかしながら、神 経原性疾患と筋疾患との針筋電図による鑑別で最も有用なの は、動員パターンである。神経原性疾患では少ないMUPに比し、

個々のMUPの発火頻度が不釣合に上昇する動員パターン減少 がみられるが、筋疾患では運動単位数に変化がないものの、筋 線維自体の障害によって筋力が低下するため、弱収縮にもかか わらず不釣合に多いMUPが動員される急速動員パターンが観 察される。さらに、この動員パターンの違いは、筋力低下が明 らかな筋において認識しやすい。すなわち、慢性経過の神経原 性疾患では、初期には運動単位が減少しても神経再支配によっ て代償されるため筋力低下は生じないが、神経再支配で代償で きないほど運動単位が減少すると臨床的に筋力低下が生じる。

そのため、筋力低下が明らかな筋では高度の動員パターン減少 を認め、筋原性変化との鑑別は容易である。さらに、IBMにお いては、臨床的にも高度の筋力低下を認める深指屈筋で典型的 な筋原性変化の特徴を認めるため、確信しやすい。安静時活動 では、線維自発電位および陽性鋭波ともにIBMとALSのいずれ でも観察されるので、鑑別診断にはあまり役に立たないが、線 維束自発電位はALSで豊富に認めることが多い一方で、筋疾患 では通常観察されないため、豊富な線維束自発電位を認める場 合にはALSなどの神経原性を強く疑って検査を進めることが 重要である。

1 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 31

9月1日(火)10:45 ~ 12:15 第09会場(岡山県医師会館4F402会議室)

公募 Jp

まるごと2時間封入体筋炎 ~ up to dateとpitfall ~

座長:森 まどか ‌‌

国立精神・神経医療研究センター 脳神経内科

鈴木 直輝 ‌‌

東北大学神経内科

≪ねらい≫

封入体筋炎は高齢者に多い筋疾患ですが、病変分布から多彩 な鑑別診断を持ち誤診や診断の遅れにしばしば遭遇します。

稀な病気と思われていましたが、高齢化および生活の欧米化 に伴い患者数が増加しています。したがって専門施設だけで なく一般神経内科でも、診断・治療・ケアを適切に行うこと が要求されるようになってきました。〔改行)このコースでは 封入体筋炎の臨床・生理・病理・治療と診断のピットフォー ルに焦点を当て、臨床現場で生かせる知識を提供します。本 セミナーの参加により、経験者はもちろん神経筋疾患症例の 経験の少ない医師も、診断から治療まで独力でアプローチ出 来るよう内容を厳選しました。

S-31-1 高齢化社会で重要性を増

す封入体筋炎:疫学デー タを中心に

○‌‌青木 正志、井泉瑠美子、

鈴木 直輝

東北大学大学院医学系研究科神経内科学

【略歴】

平成‌ 2年3月 東北大学医学部卒業

  同‌ ‌‌4月 東北大学医学部神経内科へ入局 平成‌ 6年3月 東北大学大学院医学研究科卒業

平成‌ 8年4月‌‌‌‌米国ボストンのハーバード大学マサチューセッツ総合病院神 経内科(Prof.‌Robert‌Brown)へ留学

平成10年9月 東北大学医学部附属病院神経内科助手 平成19年6月 東北大学病院講師

平成23年2月 東北大学大学院医学系研究科神経内科教授 平成24年4月 東北大学病院臨床研究推進センター副センター長 平成29年4月 東北大学病院地域医療連携センター長

専門分野筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋疾患などの神経・筋疾患の病態の解明と治療 法の開発、再生医療、トランスレーショナルリサーチ

封入体筋炎 (Sporadic Inclusion Body Myositis:以下sIBM)

は50歳以上の中高年で発症する慢性進行性の筋疾患である。

100万人あたりのsIBMの有病率は国ごとで異なっており、米 国で10.7、西オーストラリアでは14.9、オランダでは4.9、ノ ルウェーでは33、トルコでは1.1と報告されている。

厚生労働省難治性疾患政策研究事業「希少難治性筋疾患」班で は国立精神・神経医療研究センターの筋病理診断症例の中の 多発筋炎の症例数と比較しsIBM の有病率を推定した。1990 年からの9年間ではsIBMと多発筋炎は各8例と151例、1999年 からの9年間では各69例と165 例であった。2000年代に入っ て飛躍的にsIBM診断数が増えていることがわかる。多発筋 炎の特定疾患受給者数が約3,000人と一定であることから、

sIBM の日本での有病率は2000年代で100万人当り9.83人と推 定され、1990年代の推定1.28人と比較して増加していた。

2000年代に入ってからの神経内科専門医に対するsIBM患者 数のアンケート調査においても2005年から2009年の5年間で の診断症例数は286例、2011年から2015年の5年間では384例 と、患者数は増え続けている。研究班の調査では、日本には 1,000-1,500人のsIBM患者がいると推定した。増加の原因と しては日本社会の高齢化、sIBMの疾患認知度の向上、生活 様式の欧米化などが関与していると推察している。

さらにsIBM患者アンケートをおこない自然歴を解析したと ころ、67名(男49 名,女18 名)から回答をえた。平均年齢は 73歳、発症から平均8.7年経過時点での回答であり、各症状 の出現時期はしゃがみ立ち不能が発症後4.6年、車椅子が7.3 年、電動車椅子が13.7年、ペットボトルの開栓不能が6.6 年、

洗顔不能が7.2年であった。

本シンポジウムでは日本で行った調査をもとに高齢化社会で 重要性を増しているsIBMについて疫学や自然歴に関してお 話ししたい。

1 シ ン ポ ジ ウ ム 日

ドキュメント内 プレナリー (ページ 130-133)

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