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側頭葉てんかんの新展開

ドキュメント内 プレナリー (ページ 146-149)

座長:重藤 寛史 ‌‌

九州大学医学部保健学科

神  一敬 ‌‌

東北大学大学院医学系研究科てん かん学分野

≪ねらい≫

成人発症てんかんのほとんどは焦点てんかんであり、特に側 頭葉てんかんが最も多い。脳神経内科医が最も遭遇する機会 の多いてんかんは側頭葉てんかんである。海馬硬化を伴う内 側側頭葉てんかんはその代表的疾患であるが、典型例はむし ろ少なく、病因、発作症候、脳波・画像所見が異なる多様な 患者を含んだ一群である。近年、その病因として、アルツハ イマー病を始めとする認知症、自己免疫性脳炎が注目されて いる。また、側頭葉てんかん患者にみられる高次脳機能障害 に関する新たな知見も報告されている。本企画では、側頭葉 てんかんに関する最近の動向を経験豊富なエキスパートが概 説する。

S-37-1 側頭葉てんかんの多様性

○‌‌寺田 清人

1,2

1 てんかんと発達の横浜みのる神経クリニッ ク、2 NHO 静岡てんかん・神経医療センター

【略歴】

1991年3月、東北大学医学部卒業 1991年6月、京都大学医学部神経内科研修医 1992年4月、京都大学大学院医学研究科入学 1996年4月、京都大学大学院研修生

1996年6月、Cleveland‌Clinic‌Foundation,‌Research‌Fellow 1998年4月、医仁会武田総合病院神経内科医員

2001年4月、同院神経内科医長

2002年4月、京都大学医学部附属病院神経内科医員 2003年2月、市立島田市民病院神経内科医長

2004年7月、‌独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 神経内科医員

2006年9月、同院神経内科医長

2020年1月、てんかんと発達の横浜みのる神経クリニック開設 現在に至る

 側頭葉にてんかん原性焦点を有するてんかんを側頭葉てん かんと呼び、焦点てんかんの多くを占めている。1989年の ILAEのてんかん分類では、側頭葉の内側辺縁系に起始する の中で内側底部辺縁系・嗅脳に起始する扁桃体海馬発作を有 する内側側頭葉てんかんと、側頭葉新皮質に起始する外側側 頭葉発作を有する外側側頭葉てんかんの2種類の側頭葉てん かんが記載されていた。

 側頭葉てんかん、内側側頭葉てんかん、外側側頭葉てんか んのいずれもてんかん原性焦点がそれぞれの部位に存在する ことを示すだけもので、病因やてんかん症候群は単一ではな い。しかし、海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかんについては、

①10歳頃(4-16歳)に発症、②発作時には前胸部不快感などの 自律神経症状を前兆とし、その後に意識減損とともに口部自 動症、身振り自動症を呈し、数分程度の発作後にもうろう状 態を呈する、③既往歴として海馬硬化を起こす先行損傷(熱 性けいれん重積、脳炎など)を有する、④抗てんかん薬に抵 抗性な一方で外科的治療への反応性は良好である、などの共 通した臨床的特徴を持っていることから、一つの症候群とみ なされている。

 近年、側頭葉てんかんにおける多様な病態が報告されてい る。内側側頭葉てんかんにおいては、画像的に海馬より扁桃 体に異常がみられる「Amygdalar sclerosisを伴う側頭葉てん かん」や「Amygdalar enlargementを伴う側頭葉てんかん」が 報告された。さらに、側頭葉てんかんの病因についても、従 来の感染性てんかん(脳炎後てんかんなど)や構造的てんかん

(海馬硬化、脳腫瘍など)以外に、素因性てんかん(Familial mesial temporal lobe epilepsy、Familial lateral temporal lobe epilepsyなど)、免疫性てんかん(自己免疫てんかん)、

病因不明てんかん(アルツハイマー病に伴う側頭葉てんかん、

高齢発症の側頭葉てんかんなど)などが相次いで報告された。

これらの多様な側頭葉てんかんについて、実例を供覧しつつ 概説する。

1 シ ン ポ ジ ウ ム 日

シンポジウム 37

9月1日(火)16:00 ~ 17:30 第04会場(岡山コンベンションセンター3F301会議室)

Jp

S-37-2 側頭葉てんかんと認知症

○‌‌赤松 直樹

1,2

1 国際医療福祉大学 医学部脳神経内科、

2 福岡山王病院

【略歴】

昭和56年 兵庫県立西脇高等学校卒業 昭和62年 産業医科大学医学部医学科卒業

昭和62年 産業医科大学病院・小倉記念病院 臨床研修医

平成 4年  米国Cleveland Clinic財団病院 神経内科レジデント・てんか んフェロー

平成 7年 社団法人日本健康倶楽部福岡支部(産業医)

平成 9年 産業医科大学 神経内科助手、平成18年同講師  平成23年 産業医科大学 神経内科准教授

平成26年 国際医療福祉大学 福岡保健医療学部教授

平成26年 福岡山王病院 脳神経機能センター脳神経内科(併任)

平成29年 国際医療福祉大学 医学部 脳神経内科教授 現在に至る 日本神経学会;てんかんガイドライン副委員長、てんかんセクション委員 日本てんかん学会;理事、ガイドライン委員長、教育委員、47回大会副会長 日本臨床神経生理学会;評議員、教育委員、脳波セミナー・アドバンスコース 委員米国てんかん学会AES; Fellow of American Epilepsy Society(2017-)、

AES Guidelines and Assessment Committee Member (2019-)

国際抗てんかん連盟ILAE; Epilepsy in the Elderly Task Force Commission on Medical Therapies (2018-)

高齢者はてんかんの好発年齢でもある。老年人口の急激な増 加に伴い、高齢初発てんかん患者が増加している。福岡県久 山町における有病率調査では65歳以上の住民の1%以上がて んかんを有していた。高齢初発てんかんは、全身痙攣発作の みならず、痙攣のない焦点意識減損発作をきたす側頭葉てん かんが多い。1-5分間位の意識減損をきたす発作で自動症を 伴うことが多い点が発作の特徴である。発作型を念頭に置い て目撃者から病歴を聴取することが診断に肝要である。全身 痙攣発作で発症した場合においては、焦点起始強直間代発作 進展が多く、脳卒中後てんかん等でみられる。脳波検査は焦 点発作の診断に有用で、発作間欠期の焦点性棘波が特徴的な 所見である。非痙攣性てんかん発作重積状態は持続する意識 障害を呈するが、脳波検査をしないと診断は困難である。物 忘れ外来に側頭葉てんかん患者が受診することがある。焦点 意識減損発作が頻発すると記憶障害をきたすので、認知症と 誤診される可能性がある。認知症患者にてんかんが発症する 場合があり、多くはてんかんの病因が認知症であると診断さ れている。例えばアルツハイマー病にてんかんが発症する率 は3-5%程度と最近では報告されている。高齢者ではてんかん 発作が患者に与える身体的・精神的影響が大きい。一方、適 切に診断・治療すれば、抗てんかん薬による発作抑制が90%

で可能であり患者のQOL向上に寄与する。

S-37-3 側頭葉てんかんと自己免

疫性脳炎

○‌‌加藤 量広

みやぎ県南中核病院 脳神経内科

【略歴】

2007年 東北大学医学部卒 2007-9年 東北大学病院で初期臨床研修 2009年 東北大学神経内科へ入局

2011-15年 東北大学てんかん学分野で臨床研究 (博士課程)

2015-2019年 石巻赤十字病院神経内科 2019年- みやぎ県南中核病院脳神経内科 所属学会:

-日本内科学会 認定内科医 -日本神経学会 神経内科専門医

-日本てんかん学会 てんかん専門医・評議員

-日本臨床神経生理学会 専門医 (脳波分野, 筋電図・神経伝導分野)

複雑部分発作 (焦点意識減損発作) の原因疾患の多くは側頭 葉てんかんであるが, 治療抵抗性の場合は傍腫瘍性脳炎や自 己免疫性脳炎を鑑別疾患に挙げ, 神経細胞抗体の検査を行う ことがある. これまでに発見されたさまざまな神経細胞抗体 は, 細胞内抗原に対するもの と 細胞表面・シナプス蛋白に 対するもの に分けられる. 最近では前者に関連するものを傍 腫瘍性脳炎, 後者に関連するものを自己免疫性脳炎とする報 告が主になっている.

傍腫瘍性・自己免疫性脳炎の確定診断には, 血清や脳脊髄液 に抗体が検出されることが必要である. しかし検査結果を得 るまでにはある程度の時間を要するので, 病歴・症状の十分 な確認と腫瘍の有無などの精査を行い, 治療を早期に開始 すべきである. 自己免疫性の可能性が高ければステロイド, 免疫グロブリン静注, または血漿交換を検討し, 病態に関係 する腫瘍性病変が見つかればそれに対する治療も急がれる べきである. 顔面と上肢に出現する faciobrachial dystonic seizure という運動症状は抗LGI1抗体陽性例に, 律動性デル タ活動に速波が重畳した extreme delta brush という脳波所 見は抗NMDA抗体陽性例に特異的で, 診断に有益である. し かし, いずれも必発する所見ではない. 運動症状が発作かど うかの判断にはビデオ脳波が有用だが, 常同運動などによる アーチファクトが脳波に混入しうることには注意が必要であ る. 自己免疫性脳炎の臨床症状は一般的に多様であり, 病巣 部位も辺縁系は比較的多いがそれ以外の箇所にも生じうる.

多くの臨床情報を総合して判断することが大切である.

脳炎活動期の発作は急性症候性発作でありてんかんではな い. 抗てんかん薬は無効の場合が多いが, 有効であれば一定 期間は投与することになる. 自己免疫性脳炎でてんかんが後 遺することは比較的少ないといわれるが, 一部の症例は局所 性てんかんを後遺する. 脳炎が再燃して発作を再発すること もあり得る. 抗てんかん薬投与の中止を検討するときは, 患 者側と医療者で情報共有し十分に相談することが望ましい.

自己免疫性脳炎の神経細胞抗体でこれまでに多く報告され ているのは, 抗NMDA受容体抗体, 抗LGI1抗体, および抗 AMPA受容体抗体である. 本講演ではそれぞれの抗体が陽性 であった症例を提示する. 今後, 新しい神経細胞抗体のさら なる発見や, より有効な診断・治療法の提案が期待される.

1 日 シ ン ポ ジ ウ ム シンポジウム 37

9月1日(火)16:00 ~ 17:30 第04会場(岡山コンベンションセンター3F301会議室)

Jp

側頭葉てんかんの新展開

座長:重藤 寛史 ‌‌

九州大学医学部保健学科

神  一敬 ‌‌

東北大学大学院医学系研究科てん かん学分野

≪ねらい≫

成人発症てんかんのほとんどは焦点てんかんであり、特に側 頭葉てんかんが最も多い。脳神経内科医が最も遭遇する機会 の多いてんかんは側頭葉てんかんである。海馬硬化を伴う内 側側頭葉てんかんはその代表的疾患であるが、典型例はむし ろ少なく、病因、発作症候、脳波・画像所見が異なる多様な 患者を含んだ一群である。近年、その病因として、アルツハ イマー病を始めとする認知症、自己免疫性脳炎が注目されて いる。また、側頭葉てんかん患者にみられる高次脳機能障害 に関する新たな知見も報告されている。本企画では、側頭葉 てんかんに関する最近の動向を経験豊富なエキスパートが概 説する。

S-37-1 側頭葉てんかんの多様性

○‌‌寺田 清人

1,2

1 てんかんと発達の横浜みのる神経クリニッ ク、2 NHO 静岡てんかん・神経医療センター

【略歴】

1991年3月、東北大学医学部卒業 1991年6月、京都大学医学部神経内科研修医 1992年4月、京都大学大学院医学研究科入学 1996年4月、京都大学大学院研修生

1996年6月、Cleveland‌Clinic‌Foundation,‌Research‌Fellow 1998年4月、医仁会武田総合病院神経内科医員

2001年4月、同院神経内科医長

2002年4月、京都大学医学部附属病院神経内科医員 2003年2月、市立島田市民病院神経内科医長

2004年7月、‌独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 神経内科医員

2006年9月、同院神経内科医長

2020年1月、てんかんと発達の横浜みのる神経クリニック開設 現在に至る

 側頭葉にてんかん原性焦点を有するてんかんを側頭葉てん かんと呼び、焦点てんかんの多くを占めている。1989年の ILAEのてんかん分類では、側頭葉の内側辺縁系に起始する の中で内側底部辺縁系・嗅脳に起始する扁桃体海馬発作を有 する内側側頭葉てんかんと、側頭葉新皮質に起始する外側側 頭葉発作を有する外側側頭葉てんかんの2種類の側頭葉てん かんが記載されていた。

 側頭葉てんかん、内側側頭葉てんかん、外側側頭葉てんか んのいずれもてんかん原性焦点がそれぞれの部位に存在する ことを示すだけもので、病因やてんかん症候群は単一ではな い。しかし、海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかんについては、

①10歳頃(4-16歳)に発症、②発作時には前胸部不快感などの 自律神経症状を前兆とし、その後に意識減損とともに口部自 動症、身振り自動症を呈し、数分程度の発作後にもうろう状 態を呈する、③既往歴として海馬硬化を起こす先行損傷(熱 性けいれん重積、脳炎など)を有する、④抗てんかん薬に抵 抗性な一方で外科的治療への反応性は良好である、などの共 通した臨床的特徴を持っていることから、一つの症候群とみ なされている。

 近年、側頭葉てんかんにおける多様な病態が報告されてい る。内側側頭葉てんかんにおいては、画像的に海馬より扁桃 体に異常がみられる「Amygdalar sclerosisを伴う側頭葉てん かん」や「Amygdalar enlargementを伴う側頭葉てんかん」が 報告された。さらに、側頭葉てんかんの病因についても、従 来の感染性てんかん(脳炎後てんかんなど)や構造的てんかん

(海馬硬化、脳腫瘍など)以外に、素因性てんかん(Familial mesial temporal lobe epilepsy、Familial lateral temporal lobe epilepsyなど)、免疫性てんかん(自己免疫てんかん)、

病因不明てんかん(アルツハイマー病に伴う側頭葉てんかん、

高齢発症の側頭葉てんかんなど)などが相次いで報告された。

これらの多様な側頭葉てんかんについて、実例を供覧しつつ 概説する。

1 シ ン ポ ジ ウ ム 日

ドキュメント内 プレナリー (ページ 146-149)

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