大会長講演
日本神経学会2019年度学会賞受賞者講演 特別科学文化講演
特別講演01, 02, 03, 04
WFN Special Lecture
9月1日(火)13:45 ~ 14:15 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
座長:Peter St. George-Hyslop
Tanz Centre for Research In Neurodegenerative Diseases, University of Toronto, CanadaPr-1
脳神経内科疾患の病態解明と脳保護療法の開発展開
阿部 康二
岡山大学脳神経内科
1956(昭和31)年 宮城県生まれ 1981(昭和56)年 東北大学医学部 卒業
1987(昭和62)年 東北大学大学院 修了(医学博士)
1988(昭和63)年 アメリカ合衆国ハーバード大学神経内科学教室 留学
【略歴】
内科研修医時代に常に不満を感じていた脳卒中急性期治療について、その原因がその病態を知らないためで あることを自覚し、大学院に進み脳卒中急性期の基礎病態を酸化ストレスの観点から生化学的解明と新しい治療 方法の開発に取り組んだ。留学先のハーバード大学では遺伝性アルツハイマー病のgene huntingを目指したが、
当時は成功することが出来なかった。しかし帰国後にこのneurogeneticsの方法論は遺伝性筋萎縮性側索硬化症
(ALS)に応用することが出来、1994年にSOD1遺伝子異常の発見に結びついた。SOD1も酸化ストレスから生体を 防御するシステムである。
中枢神経(脳と脊髄)は高エネルギー産生臓器であると共に、その機能実現のために多価不飽和脂肪酸が最も 多いため、元々酸化ストレスに弱い臓器である。そのため脳の病気は老化と関連が深いものが多く、脳卒中や ALS、アルツハイマー病、パーキンソン病などがその代表として有名である。時間の経過とともに起きる老化は 地球上の生命すべてに与えられており、地球そのものあるいは宇宙ですらその運命から逃れることはできない。
一方、酸素を有効活用して生命を享受している全ての生命は、誕生の瞬間から酸素毒性の十字架も同時に背負っ て生きて行くことに運命づけられている。時間と酸化ストレスという二つの要素で進行して行く老化を抑えるに は、時間を止め酸化ストレスを抑えることが重要である。
演者は長年このような酸化ストレスと脳障害の研究に関わって来て、脳卒中の基礎的研究は2001年のエダラボ ンの世界初脳保護薬として医療現場に還元され今日に至っている。その後2015年にはこれまた世界初ALSの脳脊 髄保護療法として適応追加となった。2019年に新しく発見したアルツハイマー病の血清biomarkerは脳内炎症や 血液凝固系に関与することを明らかにし、また抗酸化物質mixサプリメントTwendeeXによる基礎研究ならびに 臨床試験も成功し、抗酸化療法のtranslational researchは認知症の分野にまで拡大発展して来ている。パーキン ソン病の補助的治療法としての脳保護療法にも期待が集まっている。
プ レ ナ リ ー
1 日
日本神経学会 2019 年度学会賞受賞者講演
9月1日(火)14:45 ~ 15:45 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
Jp
座長:戸田 達史
東京大学大学院医学系研究科神経内科学阿部 康二
岡山大学医学部脳神経内科AW-1
稀少末梢神経疾患に対するドラッグ・リポジショニングに よる新規治療開発
三澤 園子
千葉大学病院 脳神経内科学
【学歴及び職歴】
1999年 3月 千葉大学医学部卒業
2006年 3月 医学博士号取得(千葉大学大学院医学研究院)
2008年12月 千葉大学大学院医学研究院神経内科学助教 2014年 7月 千葉大学医学部附属病院神経内科講師 2017年 3月 千葉大学医学部附属病院神経内科准教授
【専門領域】
臨床神経生理学・末梢神経疾患・臨床試験・ボツリヌス治療
【受賞】
BrazierAward(国際臨床神経生理学会、2006年)、第52回日本神経学会学術大会優秀口演賞(2011年)、第24回日本神経免疫学会学術集会学会 賞(2012年)、第110回日本内科学会奨励賞(2013年)
第8回日本臨床神経生理学会奨励賞(2018年)、日本神経学会賞学術部門(2019年)、日本医師会医学研究奨励賞(2019年)など
【略歴】
POEMS症候群、ギラン・バレー症候群(GBS)はいずれも稀少末梢神経疾患であり、患者の生命と機能予後に大き く影響しうる疾患である。
POEMS症候群は形質細胞のモノクローナルな異常増殖と血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰産生に伴い、脱髄性 ニューロパチーをはじめ多彩な全身症状を来す。我々はサリドマイドの有効性と安全性をランダム化群間比較試 験(RCT)で示した。本症候群において、RCTが成功したのは世界初である。また、自家移植、レナリドミド、ボ ルテゾミブ等の治療薬の有効性を示した。そのほか、新規診断基準の提唱、疾患活動性の評価(血清VEGF値)の 確立等を行った。サリドマイド、VEGF測定(体外診断薬)に関しては、まもなく承認申請を予定している。
GBSでは、免疫グロブリン療法、血漿浄化療法の有用性が確立され、標準治療となっている。順調に回復する例 もあるが、非常に重症化し後遺障害を残す例も一部に存在する。GBSの重症化に補体の活性化と膜障害性複合体 の産生が関与するとされる。エクリズマブは補体C5に対するモノクローナル抗体であり、補体活性化経路の最終 過程を阻害し、GBSの重症化を抑制できる可能性がある。我々は、GBSにおけるエクリズマブの有効性と安全性 を探索するためのRCTを行い、神経障害への有用性の可能性を示した。日本からGBSの新規治療についての臨床 試験結果を、世界に先駆けて公表するのは初である。今後、実用化を目指す。
上記のサリドマイド、エクリズマブの開発とも、ドラッグ・リポジショニングによるものであり、新規治療の開 発手段としてはハードルの比較的低い方法である。しかし、臨床医にとっては現実的な、新規治療開発の手段の 一つである。今後も、臨床現場に必要な治療を、質の高いデータと共に届けていく研究に、引き続き従事したい と考える。
1 プ レ ナ リ ー 日 大会長講演
9月1日(火)13:45 ~ 14:15 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
En
座長:Peter St. George-Hyslop
Tanz Centre for Research In Neurodegenerative Diseases, University of Toronto, CanadaPr-1
NeuroprotectivetherapybothforALSandacuteischemic stroke
KojiAbe
Department of Neurology, Okayama University, Japan
Amyotrophic lateral sclerosis (ALS) is a progressive and fatal neurodegenerative disease caused by selective death of motor neurons. Among our own 390 ALS patients, 4.1% show familial ALS (FALS), in which 50% is associated with missense mutations of SOD1, 25% were TDP43 and FUS mutations, and 6.3% is an optineurin mutation. Although the underlying mechanism of ALS has not yet been fully clarified, several reports have implicated the involvement of oxidative stress under selective death of motor neurons in both ALS patients and animal models. Edaravone is a free radical scavenger, which is the first clinical drug for neuroprotection in the world which has been approved from 2001 in most ischemic stroke patients in Japan, and some of China and India.
A recent multicenter prospective double-blind placebo-control clinical trial with edaravone for ALS patients conducted in Japan showed a positive effect for delaying the clinical score (ALS FRS-R) during the 24 weeks of examination. Serious or critical adverse effect was not noted in this clinical trial. Of particular was that this clinical benefit of edaravone was shown as an add-on therapy after anti-glutamatergic riluzole. These data strongly suggest a potential underlying mechanism of oxidative stress in ALS and a clinical delay by a free radical scavenger. These translational studies on a free radical scavenger Edaravone allowed governmental permissions both for acute ischemic stroke after 2001 and for ALS after 2015. Edaravone was approved for ALS at 2015 in Japan, 2016 in Korea, and 2017 in USA.
Edaravone scavenges hydroxyl radicals both in hydrophilic and hydrophobic conditions, and is especially useful in thrombolytic therapy with tissue plasminogen activator (tPA). Combination therapy of Edaravone with tPA greatly increased survival of stroke animals, reduced infarct size, and inhibited molecular markers of oxidative damage in lipid, protein and DNA. Use of Edaravone greatly reduced hemorrhagic transformation accompanied by tPA treatment, and may also extend therapeutic time window with tPA therapy for more than 4.5 hr in human stroke patients for preserving neurovascular unit (NVU). An intensive Edaravine therapy for 3 days now showed a favorite recovery in 3 European countries.
Professor Koji Abe is currently Professor and Chairman of Neurology at Okayama University Medical School in Japan. Professor Koji Abe has been publishing more than 750 papers on cerebral blood flow and metabolism and neurodegenerative diseases. His research interests cover many important fields of neurology especially in the mechanism of ischemic brain damage, gene and stem cell therapy, neuroprotection, and neuroimaging. He is the Congress Chair of Japan Neurology Meeting in Okayama City on May 20-23, 2020.
【CurriculumVitae】
プ レ ナ リ ー
1 日
9月1日(火)14:45 ~ 15:45 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
座長:戸田 達史
東京大学大学院医学系研究科神経内科学阿部 康二
岡山大学医学部脳神経内科AW-1
稀少末梢神経疾患に対するドラッグ・リポジショニングに よる新規治療開発
三澤 園子
千葉大学病院 脳神経内科学
【学歴及び職歴】
1999年 3月 千葉大学医学部卒業
2006年 3月 医学博士号取得(千葉大学大学院医学研究院)
2008年12月 千葉大学大学院医学研究院神経内科学助教 2014年 7月 千葉大学医学部附属病院神経内科講師 2017年 3月 千葉大学医学部附属病院神経内科准教授
【専門領域】
【略歴】
POEMS症候群、ギラン・バレー症候群(GBS)はいずれも稀少末梢神経疾患であり、患者の生命と機能予後に大き く影響しうる疾患である。
POEMS症候群は形質細胞のモノクローナルな異常増殖と血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰産生に伴い、脱髄性 ニューロパチーをはじめ多彩な全身症状を来す。我々はサリドマイドの有効性と安全性をランダム化群間比較試 験(RCT)で示した。本症候群において、RCTが成功したのは世界初である。また、自家移植、レナリドミド、ボ ルテゾミブ等の治療薬の有効性を示した。そのほか、新規診断基準の提唱、疾患活動性の評価(血清VEGF値)の 確立等を行った。サリドマイド、VEGF測定(体外診断薬)に関しては、まもなく承認申請を予定している。
GBSでは、免疫グロブリン療法、血漿浄化療法の有用性が確立され、標準治療となっている。順調に回復する例 もあるが、非常に重症化し後遺障害を残す例も一部に存在する。GBSの重症化に補体の活性化と膜障害性複合体 の産生が関与するとされる。エクリズマブは補体C5に対するモノクローナル抗体であり、補体活性化経路の最終 過程を阻害し、GBSの重症化を抑制できる可能性がある。我々は、GBSにおけるエクリズマブの有効性と安全性 を探索するためのRCTを行い、神経障害への有用性の可能性を示した。日本からGBSの新規治療についての臨床 試験結果を、世界に先駆けて公表するのは初である。今後、実用化を目指す。
上記のサリドマイド、エクリズマブの開発とも、ドラッグ・リポジショニングによるものであり、新規治療の開 発手段としてはハードルの比較的低い方法である。しかし、臨床医にとっては現実的な、新規治療開発の手段の 一つである。今後も、臨床現場に必要な治療を、質の高いデータと共に届けていく研究に、引き続き従事したい と考える。
1 プ レ ナ リ ー 日
9月1日(火)13:45 ~ 14:15 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
座長:Peter St. George-Hyslop
Tanz Centre for Research In Neurodegenerative Diseases, University of Toronto, CanadaPr-1
NeuroprotectivetherapybothforALSandacuteischemic stroke
KojiAbe
Department of Neurology, Okayama University, Japan
Amyotrophic lateral sclerosis (ALS) is a progressive and fatal neurodegenerative disease caused by selective death of motor neurons. Among our own 390 ALS patients, 4.1% show familial ALS (FALS), in which 50% is associated with missense mutations of SOD1, 25% were TDP43 and FUS mutations, and 6.3% is an optineurin mutation. Although the underlying mechanism of ALS has not yet been fully clarified, several reports have implicated the involvement of oxidative stress under selective death of motor neurons in both ALS patients and animal models. Edaravone is a free radical scavenger, which is the first clinical drug for neuroprotection in the world which has been approved from 2001 in most ischemic stroke patients in Japan, and some of China and India.
A recent multicenter prospective double-blind placebo-control clinical trial with edaravone for ALS patients conducted in Japan showed a positive effect for delaying the clinical score (ALS FRS-R) during the 24 weeks of examination. Serious or critical adverse effect was not noted in this clinical trial. Of particular was that this clinical benefit of edaravone was shown as an add-on therapy after anti-glutamatergic riluzole. These data strongly suggest a potential underlying mechanism of oxidative stress in ALS and a clinical delay by a free radical scavenger. These translational studies on a free radical scavenger Edaravone allowed governmental permissions both for acute ischemic stroke after 2001 and for ALS after 2015. Edaravone was approved for ALS at 2015 in Japan, 2016 in Korea, and 2017 in USA.
Edaravone scavenges hydroxyl radicals both in hydrophilic and hydrophobic conditions, and is especially useful in thrombolytic therapy with tissue plasminogen activator (tPA). Combination therapy of Edaravone with tPA greatly increased survival of stroke animals, reduced infarct size, and inhibited molecular markers of oxidative damage in lipid, protein and DNA. Use of Edaravone greatly reduced hemorrhagic transformation accompanied by tPA treatment, and may also extend therapeutic time window with tPA therapy for more than 4.5 hr in human stroke patients for preserving neurovascular unit (NVU). An intensive Edaravine therapy for 3 days now showed a favorite recovery in 3 European countries.
【CurriculumVitae】
プ レ ナ リ ー
1 日
日本神経学会 2019 年度学会賞受賞者講演
9月1日(火)14:45 ~ 15:45 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
Jp
座長:戸田 達史
東京大学大学院医学系研究科神経内科学阿部 康二
岡山大学医学部脳神経内科AW-3
神経感染症およびその関連領域における診療向上
亀井 聡
上尾中央総合病院 脳神経内科
職歴:
昭和55年6月 日本大学医学部神経学教室入局
昭和61年10月~昭和63年 1月米国エモリー大学およびCDCに留学。
平成 9年 3月~平成14年 2月日本大学医学部神経内科 講師
平成14年 3月~平成19年 3月日本大学医学部内科学系神経内科学分野 助教授
平成19年 4月~平成22年 2月同上 准教授
平成22年 3月~平成31年 3月同上主任教授
平成31年 4月~現在 同上教授
上尾中央総合病院 神経感染症センター センター長
●主要所属学会:
日本神経学会(名誉会員・前理事・代議員・編集委員会委員・広報委員会幹事), 日本神経治療学会(理事・評議員・治療指針作成委員会委員・医療保険委員会委員), 日本神経感染症学会(特別功労会員・前理事長),日本薬物脳波学会(理事・評議員)
●診療ガイドライン作成委員・委員長
単純ヘルペス脳炎(日本神経治療学会・日本神経学会・日本神経感染症学会の3学 会合同・2012-2019年作成委員会委員長)、細菌性髄膜炎(日本神経治療学会・ 日本神経学会・日本神経感染症学会の3学会合同・2011-2019年作成委員会委員長)
●その他活動:
独立行政法人医薬品医療機器総合機構専門委員
【略歴】
神経系感染症と関連領域の診療向上として、(1)日本のデータに基ずく細菌性髄膜炎および単純ヘルペス脳炎診療 ガイドラインの作成およびその周知による診療向上、(2)診療向上委員会委員長として、神経系感染症および関連 疾患の診療報酬の向上、および(3)臨床的解析から抗NMDA受容体脳炎の存在を初めて指摘し、その確立に寄与し、
さらに自己免疫性脳炎における日本の抗体診断システムを構築した。疾患別に示す。
#1. 細菌性髄膜炎
診療ガイドライン2014を作成委員長として公表した。日本におけるガイドラインが必要との認識に立ち、日本の 成人例リスク別起炎菌データを初めて調査(Takahashi K: Neurol Clin Neuroscience 2017)した。 さらに、メロ ペネムの高用量が保険未適応であったので、成人例を対象に多施設前向き治験を組織し、その有用性と安全性を 評価 (Morita A: J Infect Chemother 2014)し認可された。
#2.単純ヘルペス脳炎
診療ガイドライン2017を作成委員長として公表した。診断では、高感度PCRが必要であること(Kamei S: J Neurol Neurosurg Psychiatry 1999)、またPCR定量結果と転帰は一致しないこと(Kamei S : Inter Med 2004;)
を報告した。治療では、転帰影響要因の多変量解析から、世界で初めて臨床的に抗ウイルス薬とステロイドの併 用が有用であることを明らかにし(Kamei S: J Neurol Neurosurg Psychiatry 2005)、現在の米国や欧州のガイド ラインにも反映されている。さらに、その機序がサイトカインカスケードの抑制にあること(Kamei S: Cytokine 2009)も明らかにした。なお、高感度PCRによるHSV検出は、平成28年度診療報酬で認可され、平成30年度増額 された。
#3.抗NMDA受容体脳炎
2007年にDalmau J教授により疾患概念が確定したが、その3年前に、精神症状で発症し,痙攣重責・中枢性低換 気など特異な臨床像を呈し、遷延経過を示すが、長期予後は良好な11例を抽出し、統計的に有意差を持って、従 来の脳炎と異なる臨床像を呈するNMDA受容体抗体を検出する独立疾患であると自験脳炎86例の臨床解析から明 らかにし、世界で初めて本症の存在を日本学術会議主催のシンポジウムで提唱した。さらに、本症の全国調査を 実施した(Kamei S: Inter Med 2009)。一方、本症が卵巣奇形腫以外の腫瘍でも発症することも報告(Hara M: J Neurol 2011)した。現在抗神経抗体の測定および神経抗体の有無を確認できるTissue based assayを構築した。
1 プ レ ナ リ ー 日 日本神経学会 2019 年度学会賞受賞者講演
9月1日(火)14:45 ~ 15:45 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
Jp
座長:戸田 達史
東京大学大学院医学系研究科神経内科学阿部 康二
岡山大学医学部脳神経内科AW-2
遺伝性アミロイドポリニューロパチーの診断・病態解析・
治療の実践と総合センターの設立と運営
安東由喜雄
長崎国際大学 アミロイドーシス病態解析学分野
昭和58年 熊本大学医学部卒業
昭和61年-2年 熊本大学医学部大学院(第一内科、第2生化学)
平成 5年 熊本大学医学部第一内科、助手
平成 8年 4月 スウェーデン、ウメオ大学内科学教室、客員教授 平成10年 4月 熊本大学医学部附属病院、中央検査部、助手 平成11年11月 熊本大学医学部、臨床検査医学講座、講師 平成15年 4月 熊本大学大学院医学薬学研究部、病態情報解析学講師 平成18年 7月 熊本大学大学院医学薬学研究部、病態情報解析学教授 平成19年-21年3月 先進医療担当副病院長
平成19年-25年3月 本荘地区RIセンター長兼任
平成23年-25年3月 先進医療担当副病院長
平成24年 2月- 熊本大学大学院生命科学研究部 神経内科学分野教授 平成25年 4月- 熊本大学医学部医学科長兼任、副医学部長 平成28年 7月- 日本アミロイドーシス学会理事長
平成29年 4月- 熊本大学医学部長兼任、大学院生命科学研究部長、
教育部長
平成30年 3月- 世界アミロイドーシス学会長
平成31年 4月- 長崎国際大学副学長、アミロイドーシス病態解析学分 平成31年 4月- 長崎国際大学学長
【略歴】
アミロイド-シスは私がこの疾患の研究を始めた30数年前は10種類にも満たないアミロイド前駆物質しか知られ ていなかったが、その後研究が進み、現在は37種類もの異なるアミロイド原蛋白質が明らかにされ、アミロイド を形成し様々な病態を引き起こすことが解ってきた。
とりわけ超高齢化社会の到来と共に神経疾患関連のアミロイドーシスの重要性は増し、その病態解析、治療研究 は大きく進歩し、まさに「21世紀の疾患」となっている。
アルツハイマー病は脳に老人斑と呼ばれるアミロイド塊が形成されることにより、いわゆる「アミロイドカスケー ド」が作動し、認知症を来すと考えられているし、それに付随しておこるアミロイドアンギオパチーも重要な病態・
疾患となってきた。また、アミロイドの定義としては、細胞外にアミロイド線維が形成されることが必須条件で あったが、パーキンソン病でみられるαシヌクレインが形成するレビー小体は細胞外に形成されるものの、線維 を形成しており、アミロイドと同等の物質を形成することが解ってきた。
トランスサイレチンが引き起こすアミロイドーシスは遺伝的に変異した本蛋白質がアミロイドとなり末梢神経障 害、心、腎、消化器、眼など全身の諸臓器が傷害される家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloid polyneuropathy: FAP) (ATTRv アミロイドーシス)が知られていたが、世界ではポルトガル、スウェーデン、
日本、本邦では熊本や長野に限局した病気と考えられてきた。しかし現在では様々なgenotypoe、phenotypeが明 らかにされてきて、かなり広がりを持つ病気ではないかと考えられるようになってきた。更にwild typeのトラン スサイレチンが高齢になると心臓や腱、靱帯にアミロイドを形成し臓器障害を引き起こす老人性全身性アミロイ ドーシス(senile systemic amyloidosis: SSA: ATTRwt アミロイド-シス)が超高齢化社会の到来と共に大きな疾患 として取り上げられつつある。本疾患は心不全や不整脈に加えて、頸椎症、腰部脊柱管狭窄症、小径線維ニュー ロパチーなどを引き起こすため、神経疾患として重要である。こうした状況のなかで、熊本大学脳神経内科では、
アミロイドーシスセンターを作り、診療サポートを行ってきた。最近の10年で診断依頼件数は4,000件を上回り、
我が国の神経アミロイドーシスのみならずアミロイドーシス全般の診断・病態解析・治療法の開発に大きく貢献 してきた。
1 日 プ レ ナ リ ー
9月1日(火)14:45 ~ 15:45 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
座長:戸田 達史
東京大学大学院医学系研究科神経内科学阿部 康二
岡山大学医学部脳神経内科AW-3
神経感染症およびその関連領域における診療向上
亀井 聡
上尾中央総合病院 脳神経内科
職歴:
昭和55年6月 日本大学医学部神経学教室入局
昭和61年10月~昭和63年 1月米国エモリー大学およびCDCに留学。
平成 9年 3月~平成14年 2月日本大学医学部神経内科 講師
平成14年 3月~平成19年 3月日本大学医学部内科学系神経内科学分野 助教授
●主要所属学会:
日本神経学会(名誉会員・前理事・代議員・編集委員会委員・広報委員会幹事),
日本神経治療学会(理事・評議員・治療指針作成委員会委員・医療保険委員会委員),
日本神経感染症学会(特別功労会員・前理事長),日本薬物脳波学会(理事・評議員)
●診療ガイドライン作成委員・委員長
【略歴】
神経系感染症と関連領域の診療向上として、(1)日本のデータに基ずく細菌性髄膜炎および単純ヘルペス脳炎診療 ガイドラインの作成およびその周知による診療向上、(2)診療向上委員会委員長として、神経系感染症および関連 疾患の診療報酬の向上、および(3)臨床的解析から抗NMDA受容体脳炎の存在を初めて指摘し、その確立に寄与し、
さらに自己免疫性脳炎における日本の抗体診断システムを構築した。疾患別に示す。
#1. 細菌性髄膜炎
診療ガイドライン2014を作成委員長として公表した。日本におけるガイドラインが必要との認識に立ち、日本の 成人例リスク別起炎菌データを初めて調査(Takahashi K: Neurol Clin Neuroscience 2017)した。 さらに、メロ ペネムの高用量が保険未適応であったので、成人例を対象に多施設前向き治験を組織し、その有用性と安全性を 評価 (Morita A: J Infect Chemother 2014)し認可された。
#2.単純ヘルペス脳炎
診療ガイドライン2017を作成委員長として公表した。診断では、高感度PCRが必要であること(Kamei S: J Neurol Neurosurg Psychiatry 1999)、またPCR定量結果と転帰は一致しないこと(Kamei S : Inter Med 2004;)
を報告した。治療では、転帰影響要因の多変量解析から、世界で初めて臨床的に抗ウイルス薬とステロイドの併 用が有用であることを明らかにし(Kamei S: J Neurol Neurosurg Psychiatry 2005)、現在の米国や欧州のガイド ラインにも反映されている。さらに、その機序がサイトカインカスケードの抑制にあること(Kamei S: Cytokine 2009)も明らかにした。なお、高感度PCRによるHSV検出は、平成28年度診療報酬で認可され、平成30年度増額 された。
#3.抗NMDA受容体脳炎
2007年にDalmau J教授により疾患概念が確定したが、その3年前に、精神症状で発症し,痙攣重責・中枢性低換 気など特異な臨床像を呈し、遷延経過を示すが、長期予後は良好な11例を抽出し、統計的に有意差を持って、従 来の脳炎と異なる臨床像を呈するNMDA受容体抗体を検出する独立疾患であると自験脳炎86例の臨床解析から明 らかにし、世界で初めて本症の存在を日本学術会議主催のシンポジウムで提唱した。さらに、本症の全国調査を 実施した(Kamei S: Inter Med 2009)。一方、本症が卵巣奇形腫以外の腫瘍でも発症することも報告(Hara M: J Neurol 2011)した。現在抗神経抗体の測定および神経抗体の有無を確認できるTissue based assayを構築した。
1 プ レ ナ リ ー 日
9月1日(火)14:45 ~ 15:45 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
座長:戸田 達史
東京大学大学院医学系研究科神経内科学阿部 康二
岡山大学医学部脳神経内科AW-2
遺伝性アミロイドポリニューロパチーの診断・病態解析・
治療の実践と総合センターの設立と運営
安東由喜雄
長崎国際大学 アミロイドーシス病態解析学分野
昭和58年 熊本大学医学部卒業
昭和61年-2年 熊本大学医学部大学院(第一内科、第2生化学)
平成 5年 熊本大学医学部第一内科、助手
平成 8年 4月 スウェーデン、ウメオ大学内科学教室、客員教授 平成10年 4月 熊本大学医学部附属病院、中央検査部、助手
平成23年-25年3月 先進医療担当副病院長
平成24年 2月- 熊本大学大学院生命科学研究部 神経内科学分野教授 平成25年 4月- 熊本大学医学部医学科長兼任、副医学部長 平成28年 7月- 日本アミロイドーシス学会理事長
平成29年 4月- 熊本大学医学部長兼任、大学院生命科学研究部長、
【略歴】
アミロイド-シスは私がこの疾患の研究を始めた30数年前は10種類にも満たないアミロイド前駆物質しか知られ ていなかったが、その後研究が進み、現在は37種類もの異なるアミロイド原蛋白質が明らかにされ、アミロイド を形成し様々な病態を引き起こすことが解ってきた。
とりわけ超高齢化社会の到来と共に神経疾患関連のアミロイドーシスの重要性は増し、その病態解析、治療研究 は大きく進歩し、まさに「21世紀の疾患」となっている。
アルツハイマー病は脳に老人斑と呼ばれるアミロイド塊が形成されることにより、いわゆる「アミロイドカスケー ド」が作動し、認知症を来すと考えられているし、それに付随しておこるアミロイドアンギオパチーも重要な病態・
疾患となってきた。また、アミロイドの定義としては、細胞外にアミロイド線維が形成されることが必須条件で あったが、パーキンソン病でみられるαシヌクレインが形成するレビー小体は細胞外に形成されるものの、線維 を形成しており、アミロイドと同等の物質を形成することが解ってきた。
トランスサイレチンが引き起こすアミロイドーシスは遺伝的に変異した本蛋白質がアミロイドとなり末梢神経障 害、心、腎、消化器、眼など全身の諸臓器が傷害される家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloid polyneuropathy: FAP) (ATTRv アミロイドーシス)が知られていたが、世界ではポルトガル、スウェーデン、
日本、本邦では熊本や長野に限局した病気と考えられてきた。しかし現在では様々なgenotypoe、phenotypeが明 らかにされてきて、かなり広がりを持つ病気ではないかと考えられるようになってきた。更にwild typeのトラン スサイレチンが高齢になると心臓や腱、靱帯にアミロイドを形成し臓器障害を引き起こす老人性全身性アミロイ ドーシス(senile systemic amyloidosis: SSA: ATTRwt アミロイド-シス)が超高齢化社会の到来と共に大きな疾患 として取り上げられつつある。本疾患は心不全や不整脈に加えて、頸椎症、腰部脊柱管狭窄症、小径線維ニュー ロパチーなどを引き起こすため、神経疾患として重要である。こうした状況のなかで、熊本大学脳神経内科では、
アミロイドーシスセンターを作り、診療サポートを行ってきた。最近の10年で診断依頼件数は4,000件を上回り、
我が国の神経アミロイドーシスのみならずアミロイドーシス全般の診断・病態解析・治療法の開発に大きく貢献 してきた。
1 日 プ レ ナ リ ー
特別講演
9月1日(火)14:45 ~ 15:45 第10会場(岡山県医師会館2F三木記念ホール)
En
Chair:MikioShoji
GeriatricsResearchInstituteandHospital
SL-1
Rolesofintrinsicallydisorderedproteinsin neuronalheathanddisease
PeterSt.George-Hyslop
1,RyutaMorihara
2,3,
TetsuroMurakami
2,SeemaQamar
1,TuomasKnowles
1,
MicheleVendruscolo
11 University of Cambridge, UK, 2 University of Toronto, Canada, 3 Okayama University, Japan
ProfessorPeterStGeorge-Hyslop,OC,MD,FRCP(C),FMedSci,FRS<br>ProfessorStGeorge-Hyslophasmademajorcontributionstotheunderstandingofthe
functionalgenomicsofmultiplehumanneurodegenerativediseasesincludingAlzheimerdisease,frontotemporaldementiaandALS.Hehasplayedamajor
roleincloningofgenesassociatedwithsusceptibilitytothesedisordersincludingAPP,APOE,PS1,PS2,SORL1,TREM2andseveralothers.Hehasbuiltprotein
structural,molecular,cellularandanimalmodelsofthesedisorders,andusedthemtoexplorecandidatetherapeuticsincludingearlyworkonanti-Abeta
vaccines,inhibitorsofAbetaaggregation,andinhibitorsofgamma-secretase,andmicroglialmodulatorssuchasCSF1Rinhibitors.HeiscurrentlyUniversity
ProfessorintheDivisionofNeurology,DepartmentofMedicineatTheUniversityofToronto,andProfessorofExperimentalNeuroscienceattheUniversityof
Cambridge.HehasreceivednumerousacademichonoursincludingelectiontotheRoyalSocietyofLondon,RoyalSocietyofCanada,USNationalAcademy
ofMedicine,theOrderofCanadaandtheUKAcademyofMedicalSciences,aswellastheHowardHughesInternationalScholarAward,Potamkinprize,
MetropolitanLifeAward,DanDavidPrize,RymanPrize,ZenithAwardandRoyalCollegeofPhysiciansofCanadaGoldMedalinMedicine.
【CurriculumVitae】
Many proteins contain domains that are structurally intrinsically disordered (i.e. do not fold into unique 3-dimensional structures). Recent work on these proteins has revealed that they can reversibly transition
("condense") between monodispersed, liquid: liquid droplets ("oil and vinegar") and hydrogels ("Jelly desert")
phases. This capacity underpins their ability to form transient 2-dimensional and 3-dimensional membraneless organelles inside cells (e.g. nucleolus, ribonucleoprotein (RNP) granules, pre- and post-synaptic densities (PSD).
A prominent class of such proteins are RNA binding proteins like FUS and TDP-43. These proteins can bind selected mRNAs and components of the RNA metabolism and translation machinery, and incorporate them within RNP granules. In neurons, these RNP granules are reversibly tethered to lysosomes by ANXA11, and are co-transported from the soma into the remote axonal termini. The mRNAs are then released to support local synthesis of a selected set of specialised synaptic proteins that differ from proteins expressed in the soma.
Recent work has shown that abnormal post-translational modifications (e.g. arginine hypomethylation) or inherited sequence variants in these proteins cause them to lose their ability to reverse the condensation process. Instead, they form irreversible aggregates that are visible in neuropathological specimens of patients with ALS and FTLD. These aggregates are both poorly transported down axons and fail to release their mRNA cargo. The net effect is to reduce new protein synthesis in vulnerable synaptic compartments, leading to neurodegeneration.
Work is now focusing upon the mechanisms that regulate reversible biological condensation, especially on molecular chaperones and posttranslational modifying enzymes, which may be potential therapeutic targets.
Murakami, T. et al. Neuron 88, 678-690, (2015).
Liao, Y. C. et al. Cell 179, 147-164 (2019).
Qamar, S. et al. Cell 173, 720-734 (2018).
1 プ レ ナ リ ー 日 特別科学文化講演
9月1日(火)11:00 ~ 12:00 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
Jp
座長:水澤 英洋
国立精神・神経医療研究センターCL-1
意識とは何か?現代脳科学と古代インド仏教思想との対比
浅野 孝雄
医療法人聖心会
昭和18年、北海道北見市に生まる。同37年4月東京大学理科三類入学、43年東京大学医学部卒業、脳経外科入局。同45年米国コネチカット州ハー トフォード病院脳神経外科レジデント、同47年スイス・チューリヒ州立病院にて脳微小手術研修。同49年日本脳神経外科学会専門医試験合格、同51 年東京大学医学博士号試験合格。昭和49年~61年東大病院脳神経外科助手および講師。昭和61年埼玉医科大学教授(総合医療センター脳神経外科)。
平成19~26年小川赤十字病院院長。同定年退職後、埼玉医科大学名誉教授。現在は川越市南古谷病院特別顧問、中村元東方学院講師。
所属学会:日本脳神経外科学会;日本脳卒中学会、日本脳循環代謝学会、脳卒中の外科学会、日本脊髄外科学会。
賞罰:昭和60年度東京部医師会医学賞受賞、平成9年度公益信託美原脳血管障害研究振興基金・美原賞受賞.
著書:「脳虚血の病態学」、中外医学社;2003;「脳科学のコスモロジー」、医学書院、2009;「古代インド仏教と現代脳科学における心の発見」、産業図書、
2014.
訳書:W.Freeman、「脳はいかにして心を創るのか」、産業図書、2011;R.Gombrich,「ブッダが考えたこと」、サンガ、2018。
【略歴】
脳神経回路網の物理的プロセスと現象的な心・意識の関係は、近年精力的に探究されているものの未だ結論は 得られていない。現在までに提起された数多くの意識理論のうち、カオス理論に立脚したWJフリーマンの意識 理論は、辺縁系を中心とする行動-知覚サイクルの働きが気づき・意識を生み出すとする点において顕著な特色 を有する(浅野孝雄訳・「脳はいかにして心を創るのか」、産業図書、2011)。上掲書の翻訳中に私は、それが仏教 心理学と多くの共通点を有していることに気付いた。現象的な心のプロセスについての内省的分析である仏教心 理学は、現代の現象学者からも高く評価されている。したがって、もしそれらの主要なプロセスの間に体系的な 対応が見出されたとすれば、それはフリーマン理論の正しさを支持する有力な根拠となる。さらにそれは、ブッ ダの言説の現代的意義のみならず、脳と心の関係についての包括的理解を可能ならしめるであろう。
このアプローチにおいて、ブッダの思想と現代脳科学の概念―言葉―を同じ平面に置いて比較することがカ テゴリー過誤に当たるかもしれないという懸念は、ブッダの思想の核心的概念である法(ダルマ)・縁起が現代科 学における自然的プロセスという概念に対応するとしたRゴンブリッチの解釈(浅野孝雄訳・「ブッダが考えたこ と」、サンガ、2018)によって払拭されている。この見地に立脚して比較を進めた結果、両者が明確な鏡像的対 応を有することが見いだされた。この結果は、脳の物理学的プロセスと心のプロセスは本来一つのものであるこ とを示唆している。こうして、物理学的言説と心的言説は心的因果と物理主義によって隔てられているとする 従来の見解が打ち破られたのである(浅野孝雄著・「インド古代仏教と現代脳科学における心の発見」、産業図書、
2014)。
従来、デカルト的二元論および観念論的/唯物論的一元論は、夫々に帰属する文化圏において、宇宙・自然・社会・
個人を繋ぐ紐帯としての役割を果たしてきた。しかし、グローバリゼーションの進行がこれらの異質な文化間の 直接的接触と摩擦を急速に増大させたことによって、これらの世界観は夫々の文化圏における普遍的な意味・価 値を失い、従って、まさにアノミーと呼ぶべき思想的・政治的混迷が世界を覆うようになったのである。本講演 で示した心脳同一論は、この混迷を打開するような包括的一元論の構築に役立つことが期待される。
1 日 プ レ ナ リ ー
9月1日(火)14:45 ~ 15:45 第10会場(岡山県医師会館2F三木記念ホール)
Chair:MikioShoji
GeriatricsResearchInstituteandHospital
SL-1
Rolesofintrinsicallydisorderedproteinsin neuronalheathanddisease
PeterSt.George-Hyslop
1,RyutaMorihara
2,3,
TetsuroMurakami
2,SeemaQamar
1,TuomasKnowles
1,
MicheleVendruscolo
11 University of Cambridge, UK, 2 University of Toronto, Canada, 3 Okayama University, Japan
ProfessorPeterStGeorge-Hyslop,OC,MD,FRCP(C),FMedSci,FRS<br>ProfessorStGeorge-Hyslophasmademajorcontributionstotheunderstandingofthe
functionalgenomicsofmultiplehumanneurodegenerativediseasesincludingAlzheimerdisease,frontotemporaldementiaandALS.Hehasplayedamajor
roleincloningofgenesassociatedwithsusceptibilitytothesedisordersincludingAPP,APOE,PS1,PS2,SORL1,TREM2andseveralothers.Hehasbuiltprotein
【CurriculumVitae】
Many proteins contain domains that are structurally intrinsically disordered (i.e. do not fold into unique 3-dimensional structures). Recent work on these proteins has revealed that they can reversibly transition
("condense") between monodispersed, liquid: liquid droplets ("oil and vinegar") and hydrogels ("Jelly desert")
phases. This capacity underpins their ability to form transient 2-dimensional and 3-dimensional membraneless organelles inside cells (e.g. nucleolus, ribonucleoprotein (RNP) granules, pre- and post-synaptic densities (PSD).
A prominent class of such proteins are RNA binding proteins like FUS and TDP-43. These proteins can bind selected mRNAs and components of the RNA metabolism and translation machinery, and incorporate them within RNP granules. In neurons, these RNP granules are reversibly tethered to lysosomes by ANXA11, and are co-transported from the soma into the remote axonal termini. The mRNAs are then released to support local synthesis of a selected set of specialised synaptic proteins that differ from proteins expressed in the soma.
Recent work has shown that abnormal post-translational modifications (e.g. arginine hypomethylation) or inherited sequence variants in these proteins cause them to lose their ability to reverse the condensation process. Instead, they form irreversible aggregates that are visible in neuropathological specimens of patients with ALS and FTLD. These aggregates are both poorly transported down axons and fail to release their mRNA cargo. The net effect is to reduce new protein synthesis in vulnerable synaptic compartments, leading to neurodegeneration.
Work is now focusing upon the mechanisms that regulate reversible biological condensation, especially on molecular chaperones and posttranslational modifying enzymes, which may be potential therapeutic targets.
Murakami, T. et al. Neuron 88, 678-690, (2015).
Liao, Y. C. et al. Cell 179, 147-164 (2019).
Qamar, S. et al. Cell 173, 720-734 (2018).
1 プ レ ナ リ ー 日
9月1日(火)11:00 ~ 12:00 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
座長:水澤 英洋
国立精神・神経医療研究センターCL-1
意識とは何か?現代脳科学と古代インド仏教思想との対比
浅野 孝雄
医療法人聖心会
昭和18年、北海道北見市に生まる。同37年4月東京大学理科三類入学、43年東京大学医学部卒業、脳経外科入局。同45年米国コネチカット州ハー トフォード病院脳神経外科レジデント、同47年スイス・チューリヒ州立病院にて脳微小手術研修。同49年日本脳神経外科学会専門医試験合格、同51 年東京大学医学博士号試験合格。昭和49年~61年東大病院脳神経外科助手および講師。昭和61年埼玉医科大学教授(総合医療センター脳神経外科)。
平成19~26年小川赤十字病院院長。同定年退職後、埼玉医科大学名誉教授。現在は川越市南古谷病院特別顧問、中村元東方学院講師。
【略歴】
脳神経回路網の物理的プロセスと現象的な心・意識の関係は、近年精力的に探究されているものの未だ結論は 得られていない。現在までに提起された数多くの意識理論のうち、カオス理論に立脚したWJフリーマンの意識 理論は、辺縁系を中心とする行動-知覚サイクルの働きが気づき・意識を生み出すとする点において顕著な特色 を有する(浅野孝雄訳・「脳はいかにして心を創るのか」、産業図書、2011)。上掲書の翻訳中に私は、それが仏教 心理学と多くの共通点を有していることに気付いた。現象的な心のプロセスについての内省的分析である仏教心 理学は、現代の現象学者からも高く評価されている。したがって、もしそれらの主要なプロセスの間に体系的な 対応が見出されたとすれば、それはフリーマン理論の正しさを支持する有力な根拠となる。さらにそれは、ブッ ダの言説の現代的意義のみならず、脳と心の関係についての包括的理解を可能ならしめるであろう。
このアプローチにおいて、ブッダの思想と現代脳科学の概念―言葉―を同じ平面に置いて比較することがカ テゴリー過誤に当たるかもしれないという懸念は、ブッダの思想の核心的概念である法(ダルマ)・縁起が現代科 学における自然的プロセスという概念に対応するとしたRゴンブリッチの解釈(浅野孝雄訳・「ブッダが考えたこ と」、サンガ、2018)によって払拭されている。この見地に立脚して比較を進めた結果、両者が明確な鏡像的対 応を有することが見いだされた。この結果は、脳の物理学的プロセスと心のプロセスは本来一つのものであるこ とを示唆している。こうして、物理学的言説と心的言説は心的因果と物理主義によって隔てられているとする 従来の見解が打ち破られたのである(浅野孝雄著・「インド古代仏教と現代脳科学における心の発見」、産業図書、
2014)。
従来、デカルト的二元論および観念論的/唯物論的一元論は、夫々に帰属する文化圏において、宇宙・自然・社会・
個人を繋ぐ紐帯としての役割を果たしてきた。しかし、グローバリゼーションの進行がこれらの異質な文化間の 直接的接触と摩擦を急速に増大させたことによって、これらの世界観は夫々の文化圏における普遍的な意味・価 値を失い、従って、まさにアノミーと呼ぶべき思想的・政治的混迷が世界を覆うようになったのである。本講演 で示した心脳同一論は、この混迷を打開するような包括的一元論の構築に役立つことが期待される。
1 日 プ レ ナ リ ー
特別講演 02
8月31日(月)16:15 ~ 17:15 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
Jp
座長:梶 龍兒
独立行政法人国立病院機構宇多野病院SL-02-1
認知症研究から見た精神神経医学の流れ
武田 雅俊
大阪河﨑リハビリテーション大学学長、仁明会精神衛生研究所所長
1972年米国ダートマス大学卒業、1979年大阪大学医学部卒業、1983年大阪大学大学院卒業(医学博士)、1984年大阪大学精神医学教室助手、1985 年フロリダ大学神経科学部門リサーチフェロー、1986年ベイラー医科大学分子生物学部門リサーチフェロー、1991年大阪大学精神医学教室講師、
1996年大学大学院医学系研究科精神医学教授、2015年藍野大学学長(大阪大学名誉教授)、2018年仁明会精神衛生研究所所長、大阪河﨑リハビリテー ション大学認知予備力研究センター長
2020年大阪河﨑リハビリテーション大学学長 学会の役職
日本生物学的精神医学会理事長(2011-15)、日本精神神経学会理事長(2012-17)、InternationalPsychogeriatricAssociation(理事長;2009-11)、
WorldFederationofSocietiesofBiologicalPsychiatry(理事長;2015-19)、WorldPsychiatricAssociation;学会担当理事(2014-19)、日本老 年精神医学会、日本認知症学会、日本統合失調症学会、日本未病システム学会の理事を歴任。
専門分野
1.認知症の神経科学。アルツハイマー病の病因・病態・診断マーカー・治療法の開発に関する研究。
2.精神疾患における認知機能と行動異常の神経科学的研究。
【略歴】
演者は1996年から大阪大学精神医学教室教授を勤めたが、教授就任の頃は精神科薬物療法の変化の時期であっ た。1996年に最初の第二世代抗精神病薬リスペ リドンが導入され、統合失調症の薬物療法は第一世代抗精神病薬 から第二世代抗精神病薬(SGA)に変わった。1999年にわが国初の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor; SSRI)フルボキサミンが導入され、うつ病の薬物療法は、三環系抗うつ薬から SSRI、SNRIに変わった。1999年に最初の認知症治療薬であるドネペジルが導入され、それまで使用されてきた 脳循環・脳代謝改善薬の効果が否定され、コリンエステラー ゼ阻害作用を有するドネペジルは標準的なアルツハ イマー病治療薬となった。20世紀末に起こったこのような変化は、世界における中枢神経系薬物療法の大きな転 換点であり、中枢神経系疾患の代表ともいえる統合失調症、気分障害、認知症に対する治療法が大きく変化した 時期であった。
阪大精神科は、金子仁郎先生以降(S31-S53)認知症を重要なテーマとしてきた。金子仁郎は、奈良県認知症疫学調 査をまとめて、認知症が軽症・中等症・重症に三分類できることを示した。高齢者心理についての研究、老年期 認知症と血管性認知症を鑑別するドップラー検査機器の開発に業績を上げ、新福尚武先生(慈恵医大)、猪瀬正先 生(横浜市大)と並び、わが国の老年精神医学の父と呼ばれた。昭和53年に西村健が第六代教授となり、老年精神 医学研究の中心としての地位を固めた(S53-H7)。西村健は、それまでの形態学中心の認知症研究に生化学的手法 を導入し、認知症研究の新しい展開に貢献した。認知症脳では水溶性蛋白が不溶化していることを見出し、神経 原線維変化の形成機序の一部を明らかにした。
このような流れを受けて演者は、認知症研究の細胞分子生物学的な研究を推進し、その成果を機能性精神病の解 明につなげたいと考えた。換言すると、アルツハイマー病や血管性認知症には、認知機能障害とそれを示す脳内 病変がある。統合失調症やうつ病にも認知機能障害があり、新しい研究手法を用いれば、この認知機能障害を検 討することにより、機能性精神障害の病変に到達することができるのではないかと思い、アルツハイマー病研究 における病態発症の分子基盤・遺伝子研究の推進に加えて、統合失調症やうつ病を含む機能性精神障害の認知機 能についての研究を展開してきた。
31 プ レ ナ リ ー 日 特別講演 01
8月31日(月)15:15 ~ 16:15 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
Jp
座長:峰松 一夫
日本脳卒中協会/国立循環器病研究センター/医療法人医誠会SL-01-1
日本が今後目指すべき脳卒中研究・臨床の方向性
内山真一郎
山王メディカルセンター 脳血管センター
1974年北海道大学医学部卒業、1981年米国メイヨ―クリニック血栓症研究室研究員、1987年東京女子医科大学神経内科講師、1995年同助教授、
2001年同教授、2008年同主任教授、2009年同脳神経センター所長、2014年国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王病院・山王メディカル
センター脳血管センター長、東京女子医科大学名誉教授
学会役員:日本神経学会・日本脳卒中学会・日本血栓止血学会・日本脳神経超音波学会・日本脳ドック学会名誉会員、日本栓子検出と治療学会前理事長 海外学会役員:米国心臓協会脳卒中評議会評議員、欧州脳卒中機構評議員、アジア太平洋脳卒中機構学術委員
学術雑誌編集:「Stroke」編集委員、「CerebrovacularDiseases」編集委員
その他の役職:医薬品医療機器総合機構(PMDA)専門委員、国立病院機構臨床研究推進委員
学会会長歴:日本栓子検出と治療学会(2001年)、日本脳ドック学会総会(2006年)、日本脳神経超音波学会総会(2008年)、日本脳卒中学会総会(2011年)、
日本血栓止血学会学術集会(2012年)、アジア太平洋脳卒中学会(2012年)、国際TIA/ACVS会議(2013年)、日本脳血管・認知症学会(2017年)
【略歴】
脳卒中の研究、診断、治療は絶え間なく進化してきたが、脳卒中・循環器病対策基本法が成立し、脳卒中医療は 全ての面で今後飛躍的な進歩が期待される。脳卒中センターの施設認定制度も開始され、令和元年は脳卒中医学 にとっても新たな出発の年となった。脳卒中センターの中心に位置する血栓回収療法と血栓溶解療法の治療時間 枠は拡大され、恩恵を受ける患者の増加が期待されるが、その需要に答えるには遠隔医療の普及と神経内科医の 積極的な関与が望まれる。現時点で血栓回収療法の適応は大血管閉塞に限定されているが、小血管まで変幻自在 に通過できるロボットも開発され、これまでアクセスできなかった小血管の血栓溶解や血栓回収ができるように なるかもしれない。また、回収された血栓の組成を解析する研究が盛んになっており、血球やフィブリンの組成 比の定量化に始まり、接着分子や血管内皮との相互作用の解析、さらにはゲノミクスやプロテオミクスを駆使し た血栓の発生機序に迫る解析は治療の適応決定や転帰の改善に有用であり、原因不明の脳梗塞の病因解明にも寄 与することが期待される。日本の医療経済は少子高齢化で危機的状況にあり、脳卒中医療も治療から予防に重点 が移されるのは必然の流れである。米国では2015年の大統領宣言によりprecision medicineが国家的プロジェク トとして推進され、このトレンドは世界的潮流となっている。Precision medicineの実現にはゲノムビッグデー タ解析が必須であり、日本のバイオバンクや脳卒中データベース研究も参加した国際脳卒中遺伝学コンソーシア ム(MEGASTROKE)は多因子疾患である脳卒中感受性遺伝子を次々と明らかにし、新たな創薬による人種差を含 めた個別化医療の推進が期待されている。脳卒中急性期の血流再開療法に比べて脳卒中後の機能回復を促進する 治療は遅れていたが、脳梗塞に対する細胞治療・再生医療が研究段階から治験の段階へと進み、その成否が注目 されている。また、脳卒中のリハビリテーションはロボット工学、脳刺激、brain machine interfaceといった、
人口知能も活用した技術の進歩により今後大きな進展が期待される。ただし、これらの機能回復療法の効果は、
自然経過による機能回復と区別するため無作為化比較対照試験により科学的に検証する必要があり、学会や論文 を通じた情報公開なしに安易に申請や承認が行われるべきではない。
31 日 プ レ ナ リ ー
8月31日(月)16:15 ~ 17:15 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
座長:梶 龍兒
独立行政法人国立病院機構宇多野病院SL-02-1
認知症研究から見た精神神経医学の流れ
武田 雅俊
大阪河﨑リハビリテーション大学学長、仁明会精神衛生研究所所長
1972年米国ダートマス大学卒業、1979年大阪大学医学部卒業、1983年大阪大学大学院卒業(医学博士)、1984年大阪大学精神医学教室助手、1985 年フロリダ大学神経科学部門リサーチフェロー、1986年ベイラー医科大学分子生物学部門リサーチフェロー、1991年大阪大学精神医学教室講師、
1996年大学大学院医学系研究科精神医学教授、2015年藍野大学学長(大阪大学名誉教授)、2018年仁明会精神衛生研究所所長、大阪河﨑リハビリテー ション大学認知予備力研究センター長
2020年大阪河﨑リハビリテーション大学学長 学会の役職
日本生物学的精神医学会理事長(2011-15)、日本精神神経学会理事長(2012-17)、InternationalPsychogeriatricAssociation(理事長;2009-11)、
【略歴】
演者は1996年から大阪大学精神医学教室教授を勤めたが、教授就任の頃は精神科薬物療法の変化の時期であっ た。1996年に最初の第二世代抗精神病薬リスペ リドンが導入され、統合失調症の薬物療法は第一世代抗精神病薬 から第二世代抗精神病薬(SGA)に変わった。1999年にわが国初の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor; SSRI)フルボキサミンが導入され、うつ病の薬物療法は、三環系抗うつ薬から SSRI、SNRIに変わった。1999年に最初の認知症治療薬であるドネペジルが導入され、それまで使用されてきた 脳循環・脳代謝改善薬の効果が否定され、コリンエステラー ゼ阻害作用を有するドネペジルは標準的なアルツハ イマー病治療薬となった。20世紀末に起こったこのような変化は、世界における中枢神経系薬物療法の大きな転 換点であり、中枢神経系疾患の代表ともいえる統合失調症、気分障害、認知症に対する治療法が大きく変化した 時期であった。
阪大精神科は、金子仁郎先生以降(S31-S53)認知症を重要なテーマとしてきた。金子仁郎は、奈良県認知症疫学調 査をまとめて、認知症が軽症・中等症・重症に三分類できることを示した。高齢者心理についての研究、老年期 認知症と血管性認知症を鑑別するドップラー検査機器の開発に業績を上げ、新福尚武先生(慈恵医大)、猪瀬正先 生(横浜市大)と並び、わが国の老年精神医学の父と呼ばれた。昭和53年に西村健が第六代教授となり、老年精神 医学研究の中心としての地位を固めた(S53-H7)。西村健は、それまでの形態学中心の認知症研究に生化学的手法 を導入し、認知症研究の新しい展開に貢献した。認知症脳では水溶性蛋白が不溶化していることを見出し、神経 原線維変化の形成機序の一部を明らかにした。
このような流れを受けて演者は、認知症研究の細胞分子生物学的な研究を推進し、その成果を機能性精神病の解 明につなげたいと考えた。換言すると、アルツハイマー病や血管性認知症には、認知機能障害とそれを示す脳内 病変がある。統合失調症やうつ病にも認知機能障害があり、新しい研究手法を用いれば、この認知機能障害を検 討することにより、機能性精神障害の病変に到達することができるのではないかと思い、アルツハイマー病研究 における病態発症の分子基盤・遺伝子研究の推進に加えて、統合失調症やうつ病を含む機能性精神障害の認知機 能についての研究を展開してきた。
31 プ レ ナ リ ー 日
8月31日(月)15:15 ~ 16:15 第03会場メインホール(岡山コンベンションセンター3Fコンベンションホール)
座長:峰松 一夫
日本脳卒中協会/国立循環器病研究センター/医療法人医誠会SL-01-1
日本が今後目指すべき脳卒中研究・臨床の方向性
内山真一郎
山王メディカルセンター 脳血管センター
1974年北海道大学医学部卒業、1981年米国メイヨ―クリニック血栓症研究室研究員、1987年東京女子医科大学神経内科講師、1995年同助教授、
2001年同教授、2008年同主任教授、2009年同脳神経センター所長、2014年国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王病院・山王メディカル
センター脳血管センター長、東京女子医科大学名誉教授
学会役員:日本神経学会・日本脳卒中学会・日本血栓止血学会・日本脳神経超音波学会・日本脳ドック学会名誉会員、日本栓子検出と治療学会前理事長
【略歴】
脳卒中の研究、診断、治療は絶え間なく進化してきたが、脳卒中・循環器病対策基本法が成立し、脳卒中医療は 全ての面で今後飛躍的な進歩が期待される。脳卒中センターの施設認定制度も開始され、令和元年は脳卒中医学 にとっても新たな出発の年となった。脳卒中センターの中心に位置する血栓回収療法と血栓溶解療法の治療時間 枠は拡大され、恩恵を受ける患者の増加が期待されるが、その需要に答えるには遠隔医療の普及と神経内科医の 積極的な関与が望まれる。現時点で血栓回収療法の適応は大血管閉塞に限定されているが、小血管まで変幻自在 に通過できるロボットも開発され、これまでアクセスできなかった小血管の血栓溶解や血栓回収ができるように なるかもしれない。また、回収された血栓の組成を解析する研究が盛んになっており、血球やフィブリンの組成 比の定量化に始まり、接着分子や血管内皮との相互作用の解析、さらにはゲノミクスやプロテオミクスを駆使し た血栓の発生機序に迫る解析は治療の適応決定や転帰の改善に有用であり、原因不明の脳梗塞の病因解明にも寄 与することが期待される。日本の医療経済は少子高齢化で危機的状況にあり、脳卒中医療も治療から予防に重点 が移されるのは必然の流れである。米国では2015年の大統領宣言によりprecision medicineが国家的プロジェク トとして推進され、このトレンドは世界的潮流となっている。Precision medicineの実現にはゲノムビッグデー タ解析が必須であり、日本のバイオバンクや脳卒中データベース研究も参加した国際脳卒中遺伝学コンソーシア ム(MEGASTROKE)は多因子疾患である脳卒中感受性遺伝子を次々と明らかにし、新たな創薬による人種差を含 めた個別化医療の推進が期待されている。脳卒中急性期の血流再開療法に比べて脳卒中後の機能回復を促進する 治療は遅れていたが、脳梗塞に対する細胞治療・再生医療が研究段階から治験の段階へと進み、その成否が注目 されている。また、脳卒中のリハビリテーションはロボット工学、脳刺激、brain machine interfaceといった、
人口知能も活用した技術の進歩により今後大きな進展が期待される。ただし、これらの機能回復療法の効果は、
自然経過による機能回復と区別するため無作為化比較対照試験により科学的に検証する必要があり、学会や論文 を通じた情報公開なしに安易に申請や承認が行われるべきではない。