307
-シン ポジ ウム
S-18-2
確定診断 進行性核上性麻痺PSP/皮質基 底核変性症CBDの画像診断
1東京都健康長寿医療センター 放射線診断科,2国立研
究開発法人国立精神・神経医療研究センター臨床検査部,3東京都健康 長寿医療センター 神経内科・バイオリソースセンター・高齢者ブレイ ンバンク(神経病理),4東京都健康長寿医療センター研究所高齢者ブレ インバンク,5名古屋市立大学医学部放射線科
○徳丸阿耶1,齊藤祐子2,村山繁雄3,藤ヶ崎純子4, 下地啓五1,伊藤公輝1,櫻井圭太5
PSPとCBDの臨床診断は難しい.病理学的に確定された症例の蓄積と,臨床像の見直しによって,原著に示 されたPSP/CBDの疾患概念再構築を要し,PSP,CBDともに多彩な臨床像の存在が明らかになった故である.
PSPではパーキンソン病(PD)と鑑別が難しいPSP-P,すくみ歩行の先行するPSP-pure akinesia with gait freezing(PSP-PAGF),非流暢性失語を呈するPSP-primary non-fluent aphasia(PSP-PNFA)などが知られる.
また,臨床的にCBDと診断された背景病理には,アルツハイマー病,FTLD-TDP,PSP,PD,クロイツフェル ト・ヤコブ病までもが存在し,CBDと生前診断される率は低い.このため,進行性の大脳皮質徴候と錐体外路 徴候を示す臨床疾患名としてcorticobasal syndrome(CBS)が用いられる.
PSP,CBDの多彩な臨床スペクトラムを規定するものは,病変の質に依存するのみではなく,病変の局在によ る可能性がある.背景病理に基づく画像検討は,PSP,CBDの診断機転,多彩な臨床スペクトラムを示す要因と なる病理学的病変の局在と萎縮部位,臨床症状との関連を明確にし,背景病理に近づく臨床診断バイオマー カーとしての役割に期待がもたれる.
PSP-RSでは中脳被蓋萎縮を認めるが,CBDや他の変性疾患,水頭症でも萎縮がある.PSPのsubtypeや病初 期には中脳被蓋萎縮は必ずしも明瞭でない.上小脳脚萎縮も小脳歯状核変性に追随する遠心路の二次変化を 反映し,重要な所見であるが,CBDでも同部の萎縮はとらえられる.PSPでは,前帯状回萎縮,橋被蓋,第3脳 室,第4脳室拡大もとらえられる.視床下核や淡蒼球の信号変化がMRIでとらえられる場合がある.
CBDでは,前頭頭頂葉優位,中心溝近傍の萎縮,左右差が明瞭にとらえられる場合,診断の一助となる.こ の萎縮に対応して,大脳脚にも左右差が生じる.病期,萎縮の程度によっては,視診のみでは評価が難しく,
脳血流SPECTや糖代謝PET所見,VBMは診断に有用な情報を与える.大脳萎縮に対応し,脳梁菲薄が目立つ.
CBDは,萎縮の強い部位の皮質下に,T2強調画像,あるいはFLAIRで高信号があり,病理学的にも白質の一義 的変性が強く対応する所見と考えられる.しかし,PSP-PNFAなどでは,白質の差異のみでCBDとの鑑別が難 しい場合もある.
CBSの観点,またPSP-subtypeの観点からの画像解析の報告はまだ少ないが,VBMを用いての検索,拡散テ ンソル画像を用いた,定量的方法論が採用され,有用性が明らかになりつつある.
《略歴》現職:東京都健康長寿療センター 放射線診断科 部長 1985年:三重大学医学部卒業
都立広尾病院研修医 1987年:松阪中央病院研修医 1989年:都立広尾病院放射線科 1990年:慶応大学医学部放射線科 助手 1991年:亀田総合病院放射線科 1994年:UCSF Neuroradiology fellow 1995年:亀田総合病院放射線科 1996年:駿河台御茶ノ水クリニック
都立神経病院非常勤 1998年:防衛医大放射線科助手,講師
2005年より 東京都老人医療センター 放射線科医長を経て,現職 東邦大学佐倉医療センター放射線科 客員教授 日本神経放射線学会評議員
第35回日本神経放射線学会,最優秀,優秀論文賞 第35回日本医学放射線学会秋季大会 最優秀論文賞 第37回日本神経放射線学会優秀論文賞
2007年度日独医報最優秀論文賞
2011年欧州神経放射線学会 Best Educational Paper Award 第42回日本神経放射線学会 優秀論文賞
S-18-3
PSP/CBDの神経病理中央診断
都立神経病院 検査科
○小森隆司
進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy, PSP)は1964年にSteeleら によって,大脳基底核変性症(corticobasal degeneration, CBD)は1968年に Rebeizらによって非遺伝性の神経変性疾患として報告された.今日では共に神 経細胞とグリア細胞に異常リン酸化タウ蛋白が蓄積する疾患の1つ(4リピートタ ウオパチー)として分類されているが,臨床像と病理像には乖離がみられること が明らかとなり,PSPとCBDは病理診断名として使われる.病理学的にはPSPで は淡蒼球内節,視床下核,中脳黒質,橋被蓋,小脳歯状核に変性の主座があり,
大脳皮質の変性は中心前回を含む前頭葉にみられるものの一般に軽い.CBDで は大脳皮質の高度な全般性萎縮は稀で中心溝周囲の前頭・頭頂領域,前頭葉吻側,
シルビウス裂周囲などの比較的限局性の萎縮がみられる.左右差はCBDに特徴 的とされるが,左右差の明らかではない例も多く,PSPでも時に皮質の左右差は 存在する.淡蒼球変性は外節優位で黒質の変性が強い.細胞病理学的には,PSP では深部諸核神経細胞のglobose tangle,アストロサイトのtufted astrocyte,オ リゴデンドロサイトのcoiled bodyとargyrophilic threadsが,CBDでは腫大神経 細胞,astrocytic plaque,coiled bodyとargyrophilic threadsが特徴的である.黒 質ではglobose tangleをみる.タウ蛋白の蓄積量は,PSPでは神経とグリアにほ ぼ同等,CBDではオリゴデンドロサイトに著しい.PSPとCBDの変性分布と神 経細胞異常は時に重なる.グリア病変の乏しい淡蒼球黒質ルイ体に限局した globose tangleを伴うPSP関連疾患とも考えられる症例も存在する.一方,異常 タウ陽性グリアの病理は一部の例外を除き重複しない.タウ陽性アストロサイ トのみならず,CBDのcoiled bodyやthreadsの形状はPSPのものとは異なる.異 常タウ線維の超微形態は,PSPでは直細管が,CBDではリボン状線維が特徴的で ある.一連のグリア病理の相違は生化学的な相違を反映し,臨床像の相違は肉眼 変性分布を反映している可能性が考えられる.病理中央診断においては相互排 除的な所見と共存し得る所見とを明確に記載することが重要であると考えられ る.
《略歴》1984年 山形大学医学部卒業,東京女子医科大学神経内科研修医 1988年 東京女子医科大学神経内科助手
1990-92年 メイヨークリニック病理部門(神経病理)留学 岡崎春雄,Bernd W. Scheithauer教授に師事 1993年 東京女子医科大学第一病理学教室助手
1996年 東京都神経科学総合研究所臨床神経病理研究分野主任研究員 2001年 同 副参事研究員
2011年 東京都医学総合研究所脳腫瘍病理研究室室長(改組)
2012年 東京都立神経病院検査科部長,現在に至る 埼玉医科大学病理学教室客員教授
東京女子医大第一病理学教室・病理診断科非常勤講師 東京女子医大先端研先端工学外科分野非常勤講師 東京都医学総合研究所客員研究員
日本脳腫瘍病理学会常任理事 日本神経病理学会理事 日本外科病理学会理事 日本病理学会評議員
アメリカ神経病理学会 active member
WHO Classification of CNS Tumors 分類作成委員
国立がん研究センターがん対策情報センター コンサンルタント 日本病理学会 コンサンルタント 神経筋チームリーダー Brain Tumor Pathology, Editor-in-Chief
Neuropathology, Editorial Board Pathology International, Editorial Board
シンポジウム S-18:PSP/CBDの臨床と病理
5月21日(土) 8:00~10:00 第7会場(ポートピアホテル本館B1F 偕楽1)
シン ポジ ウム
S-18-2
確定診断 進行性核上性麻痺PSP/皮質基 底核変性症CBDの画像診断
1東京都健康長寿医療センター 放射線診断科,2国立研
究開発法人国立精神・神経医療研究センター臨床検査部,3東京都健康 長寿医療センター 神経内科・バイオリソースセンター・高齢者ブレイ ンバンク(神経病理),4東京都健康長寿医療センター研究所高齢者ブレ インバンク,5名古屋市立大学医学部放射線科
○徳丸阿耶1,齊藤祐子2,村山繁雄3,藤ヶ崎純子4, 下地啓五1,伊藤公輝1,櫻井圭太5
PSPとCBDの臨床診断は難しい.病理学的に確定された症例の蓄積と,臨床像の見直しによって,原著に示 されたPSP/CBDの疾患概念再構築を要し,PSP,CBDともに多彩な臨床像の存在が明らかになった故である.
PSPではパーキンソン病(PD)と鑑別が難しいPSP-P,すくみ歩行の先行するPSP-pure akinesia with gait freezing(PSP-PAGF),非流暢性失語を呈するPSP-primary non-fluent aphasia(PSP-PNFA)などが知られる.
また,臨床的にCBDと診断された背景病理には,アルツハイマー病,FTLD-TDP,PSP,PD,クロイツフェル ト・ヤコブ病までもが存在し,CBDと生前診断される率は低い.このため,進行性の大脳皮質徴候と錐体外路 徴候を示す臨床疾患名としてcorticobasal syndrome(CBS)が用いられる.
PSP,CBDの多彩な臨床スペクトラムを規定するものは,病変の質に依存するのみではなく,病変の局在によ る可能性がある.背景病理に基づく画像検討は,PSP,CBDの診断機転,多彩な臨床スペクトラムを示す要因と なる病理学的病変の局在と萎縮部位,臨床症状との関連を明確にし,背景病理に近づく臨床診断バイオマー カーとしての役割に期待がもたれる.
PSP-RSでは中脳被蓋萎縮を認めるが,CBDや他の変性疾患,水頭症でも萎縮がある.PSPのsubtypeや病初 期には中脳被蓋萎縮は必ずしも明瞭でない.上小脳脚萎縮も小脳歯状核変性に追随する遠心路の二次変化を 反映し,重要な所見であるが,CBDでも同部の萎縮はとらえられる.PSPでは,前帯状回萎縮,橋被蓋,第3脳 室,第4脳室拡大もとらえられる.視床下核や淡蒼球の信号変化がMRIでとらえられる場合がある.
CBDでは,前頭頭頂葉優位,中心溝近傍の萎縮,左右差が明瞭にとらえられる場合,診断の一助となる.こ の萎縮に対応して,大脳脚にも左右差が生じる.病期,萎縮の程度によっては,視診のみでは評価が難しく,
脳血流SPECTや糖代謝PET所見,VBMは診断に有用な情報を与える.大脳萎縮に対応し,脳梁菲薄が目立つ.
CBDは,萎縮の強い部位の皮質下に,T2強調画像,あるいはFLAIRで高信号があり,病理学的にも白質の一義 的変性が強く対応する所見と考えられる.しかし,PSP-PNFAなどでは,白質の差異のみでCBDとの鑑別が難 しい場合もある.
CBSの観点,またPSP-subtypeの観点からの画像解析の報告はまだ少ないが,VBMを用いての検索,拡散テ ンソル画像を用いた,定量的方法論が採用され,有用性が明らかになりつつある.
《略歴》現職:東京都健康長寿療センター 放射線診断科 部長 1985年:三重大学医学部卒業
都立広尾病院研修医 1987年:松阪中央病院研修医 1989年:都立広尾病院放射線科 1990年:慶応大学医学部放射線科 助手 1991年:亀田総合病院放射線科 1994年:UCSF Neuroradiology fellow 1995年:亀田総合病院放射線科 1996年:駿河台御茶ノ水クリニック
都立神経病院非常勤 1998年:防衛医大放射線科助手,講師
2005年より 東京都老人医療センター 放射線科医長を経て,現職 東邦大学佐倉医療センター放射線科 客員教授 日本神経放射線学会評議員
第35回日本神経放射線学会,最優秀,優秀論文賞 第35回日本医学放射線学会秋季大会 最優秀論文賞 第37回日本神経放射線学会優秀論文賞
2007年度日独医報最優秀論文賞
2011年欧州神経放射線学会 Best Educational Paper Award 第42回日本神経放射線学会 優秀論文賞
S-18-3
PSP/CBDの神経病理中央診断
都立神経病院 検査科
○小森隆司
進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy, PSP)は1964年にSteeleら によって,大脳基底核変性症(corticobasal degeneration, CBD)は1968年に Rebeizらによって非遺伝性の神経変性疾患として報告された.今日では共に神 経細胞とグリア細胞に異常リン酸化タウ蛋白が蓄積する疾患の1つ(4リピートタ ウオパチー)として分類されているが,臨床像と病理像には乖離がみられること が明らかとなり,PSPとCBDは病理診断名として使われる.病理学的にはPSPで は淡蒼球内節,視床下核,中脳黒質,橋被蓋,小脳歯状核に変性の主座があり,
大脳皮質の変性は中心前回を含む前頭葉にみられるものの一般に軽い.CBDで は大脳皮質の高度な全般性萎縮は稀で中心溝周囲の前頭・頭頂領域,前頭葉吻側,
シルビウス裂周囲などの比較的限局性の萎縮がみられる.左右差はCBDに特徴 的とされるが,左右差の明らかではない例も多く,PSPでも時に皮質の左右差は 存在する.淡蒼球変性は外節優位で黒質の変性が強い.細胞病理学的には,PSP では深部諸核神経細胞のglobose tangle,アストロサイトのtufted astrocyte,オ リゴデンドロサイトのcoiled bodyとargyrophilic threadsが,CBDでは腫大神経 細胞,astrocytic plaque,coiled bodyとargyrophilic threadsが特徴的である.黒 質ではglobose tangleをみる.タウ蛋白の蓄積量は,PSPでは神経とグリアにほ ぼ同等,CBDではオリゴデンドロサイトに著しい.PSPとCBDの変性分布と神 経細胞異常は時に重なる.グリア病変の乏しい淡蒼球黒質ルイ体に限局した globose tangleを伴うPSP関連疾患とも考えられる症例も存在する.一方,異常 タウ陽性グリアの病理は一部の例外を除き重複しない.タウ陽性アストロサイ トのみならず,CBDのcoiled bodyやthreadsの形状はPSPのものとは異なる.異 常タウ線維の超微形態は,PSPでは直細管が,CBDではリボン状線維が特徴的で ある.一連のグリア病理の相違は生化学的な相違を反映し,臨床像の相違は肉眼 変性分布を反映している可能性が考えられる.病理中央診断においては相互排 除的な所見と共存し得る所見とを明確に記載することが重要であると考えられ る.
《略歴》1984年 山形大学医学部卒業,東京女子医科大学神経内科研修医 1988年 東京女子医科大学神経内科助手
1990-92年 メイヨークリニック病理部門(神経病理)留学 岡崎春雄,Bernd W. Scheithauer教授に師事 1993年 東京女子医科大学第一病理学教室助手
1996年 東京都神経科学総合研究所臨床神経病理研究分野主任研究員 2001年 同 副参事研究員
2011年 東京都医学総合研究所脳腫瘍病理研究室室長(改組)
2012年 東京都立神経病院検査科部長,現在に至る 埼玉医科大学病理学教室客員教授
東京女子医大第一病理学教室・病理診断科非常勤講師 東京女子医大先端研先端工学外科分野非常勤講師 東京都医学総合研究所客員研究員
日本脳腫瘍病理学会常任理事 日本神経病理学会理事 日本外科病理学会理事 日本病理学会評議員
アメリカ神経病理学会 active member
WHO Classification of CNS Tumors 分類作成委員
国立がん研究センターがん対策情報センター コンサンルタント 日本病理学会 コンサンルタント 神経筋チームリーダー Brain Tumor Pathology, Editor-in-Chief
Neuropathology, Editorial Board Pathology International, Editorial Board
シンポジウム S-18:PSP/CBDの臨床と病理
5月21日(土) 8:00~10:00 第7会場(ポートピアホテル本館B1F 偕楽1)
308 -シン
ポジ ウム
S-18-4
PSP/CBD脳に蓄積するタウの生化学解析
東京都医学総合研究所
○長谷川成人
タウの異常病変は様々な神経疾患に認められ,その特徴的 病変から神経病理学的な疾患分類に用いられている.ヒト の大人の脳では6種類のアイソフォームが発現するが,繰り 返し配列が3つの3Rタウと4つの4Rタウに大別される.興味 深いことにアルツハイマー病では6種類すべてのタウアイ フォーム(すなわち3Rタウと4Rタウの両方)が蓄積するの に対し,ピック病では3Rタウが,進行性核上性麻痺(PSP)や 皮質基底核変性症(CBD)では,4Rタウアイソフォームが蓄 積する.また,PSPとCBDは同じ4Rタウアイソフォームが 蓄積するが,それぞれ特徴的なタウ病変(astrocytic plaque, tuft-shaped astrocyte)が認められ,生化学的にも蓄積タウの C末端断片のバンドパターンが異なることが新井らにより報 告されている.我々は,神経病理学的に診断された9例の PSP,8例のCBDの症例について脳に蓄積するタウの生化学 解析を行った.その結果,PSPとCBDに蓄積するタウは,新 井の報告通り,確かにそのC末端断片が異なるバンドパター ンを示すことを確認した.さらに,不溶性タウのトリプシン 耐性バンドを解析した結果,PSPでは弱い14, 16kDaのバン ドが,またCBDでは10, 13, 15kDaの3本バンドの異なる耐性 バンドパターンをとることが示された.それぞれのトリプ シン耐性バンドについて質量分析などの蛋白化学解析を 行った結果,異なる領域のタウが検出され,それらが線維の 中心構造を作っていることが示唆された.さらに電子顕微 鏡で不溶性タウの超微細形態を観察した結果,PSPには,直 径7~15nmの細い線維が,CBDには直径10-25 nm よじれた リボン状の線維が観察された.この結果はタウの重合構造 とトリプシン耐性バンドが関係していることを示唆する.
以上の結果から,PSPとCBDは神経病理学的にも生化学的に も区別可能な異なる疾患,病型であるといえる.
《略歴》1986年 筑波大学 大学院 修士課程 修了
1992年 博士(医学)取得 (東京大学 医学部 論文博士) 1993年 東京大学 医学部,脳研究施設 助手 (井原 康夫 研究室) 1995年 英国 ケンブリッジ,MRC 分子生物学研究所 研究員 (Michel
Goedert 研究室)
1999年 東京大学 大学院 薬学系研究科 講師 (岩坪 威 研究室) 2001年 東京都精神医学総合研究所 部門長
2011年 東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野 分野長 認知症に関する業績・活動内容等
タウ,αシヌクレイン,TDP-43の生化学,蛋白化学解析,及び認知症 の発症,進行と関係する異常蛋白質の伝播に関する研究.
S-18-5
PSP/CBDの関連遺伝子研究の進歩
新潟大学脳研究所 遺伝子機能解析学分野
○春日健作
いまだ治療法の確立していない進行性核上性麻痺(Progressive spranuclear palsy, PSP)および大脳皮質基底核変性症(Corticobasal degeneration, CBD)に おいて,病態を解明し根本的な治療法を開発する上で,原因遺伝子あるいはリス ク遺伝子を把握することは言うまでもなく重要である.
神経内科の臨床において,家族性のPSP様症候群(PSP-like syndrome, PSPS)
および大脳皮質基底核症候群(Corticobasal syndrome, CBS)を経験する機会は 多くない.しかし,PSPSおよびCBS症例においてパーキンソニズムや認知症の 家族歴を有する頻度は,一般人口より高いことが報告されており,PSPSおよび CBSに何らかの遺伝的要因が関与している可能性が示唆される.
遺伝子解析においても,PSPSおよびCBSの背景病理がPSPあるいはCBDと一 対一対応していないことが,解析対象の選択を難しくさせている.対症療法では なく根本的治療を目的とすれば,PSPSやCBSといった認知症やパーキンソニズ ムの表現型に影響をおよぼす遺伝子に着目するのではなく,特徴的な病理所見に 定義されるタウオパチーとしてのPSPおよびCBDの原因となる遺伝子に焦点を 絞る必要がある.すなわち,家族性PSPSあるいは家族性CBSにおいてグラニュ リン遺伝子(GRN)に変異が同定されたが,これらの症例では病理学的にタウ蛋 白の蓄積は認めない.このことはGRNの変異はPSPSないしCBSといった表現型 に影響をおよぼすと考えられるが,PSPやCBDの原因遺伝子ではないといえる.
一方,病理診断されたPSPあるいはCBD症例において微小管関連蛋白タウ遺伝子
(MAPT)に変異が同定されている.
われわれの施設では,PSPS,CBSの日本人多施設コホートにおける遺伝子解 析を行っており,少数ながらMAPTに変異を有する症例を確認している.また,
頻度の高い一塩基多型を複数確認している.MAPT変異は,PSP,CBDだけでな く,ピック病や嗜銀顆粒性認知症などの多彩な病理を呈するが,これは,タウ蛋 白の機能自体に影響を与える変異と選択的スプライシングに影響を与える変異 が存在することが関係しており,タウオパチーの治療法を開発する上で重要な知 見である.
さらに近年,多数の病理診断例をゲノムワイド関連解析により,PSPとCBDの リスク遺伝子がそれぞれ同定された.これらの遺伝子の機能および相互関係を 明らかにすることで,よりPSPおよびCBDの理解が深まり,治療法の開発へとつ ながることに期待したい.
《略歴》2000年 新潟大学 医学部卒業
2002年 新潟大学 脳研究所 神経内科入局 2009年 新潟大学 大学院医学研究科 博士課程修了 2009年 新潟大学 医歯学総合病院 神経内科 特任助教
2010年 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校 神経科学分野 博士研究員 2012年 新潟大学 医歯学総合病院 神経内科 特任助教
2014年 新潟大学 超域学術院(脳研究所 遺伝子機能解析学分野)助教
シンポジウム S-18:PSP/CBDの臨床と病理
5月21日(土) 8:00~10:00 第7会場(ポートピアホテル本館B1F 偕楽1)
309
-シン ポジ ウム