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5月19日(木) 8:00~10:00 第8会場(ポートピアホテル本館B1F 偕楽2)

ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 121-124)

249

-ガイ ドラ イン コー

G-02-2

単純ヘルペス脳炎の診断におけるアシク ロビル耐性株の検出

国立感染症研究所ウイルス第一部

○西條政幸

アシクロビル(ACV)の導入により単純ヘルペスウイルス(HSV)による 中枢神経感染症(herpes simplex encephalitis,HSE)の予後は改善したもの の,後遺症を残す患者が多い.ACVが開発されてから約40年が,そして ACVが日本で使用可能になってから約30年が経過した.このような状況の 中でもHSEに対する治療のための第一選択薬はACVである.

一方で,ACV治療に耐性を示すHSE患者報告がなされているが,その病 態がACV耐性HSV-1によるHSEなのか,それともACV感受性HSV-1による HSEなのかは証明されるケースは極めて少ない.脳脊髄液(CSF)からHSV を分離することができないからである.しかし,ACV治療に加えて vidarabineやfoscarnetによる治療を追加する等の治療法の選択には原因ウ イルスの薬剤感受性試験がなされる必要がある.

最近,私たちは新生児におけるウイルス学的に証明されたACV耐性HSV-1による脳炎ついて,世界で初めて報告した(Kakiuchi, JCM, 2013).患者の ACV治療中のCSFから増幅されたウイルス性チミジンリン酸化酵素(vTK)

遺伝子塩基配列を決定することができたことから,それが可能であった.

vTK遺伝子における一塩基置換(点変異,G375T→Q125H変異)がACV耐 性誘導変異であることが証明された(Shiota, Antiviral Res, 2011).現在,世 界的にvTK遺伝子ACV耐性を誘導する遺伝子の情報が蓄積されていること から,多くの場合,CSF中のvTK遺伝子を増幅し,その塩基配列を決定する ことでACVに対する感受性を迅速に評価できるようになると考えられる.

また,DNAポリメラーゼ遺伝子における変異もACV耐性を誘導する.

ACV耐性HSV-1およびHSV-2のvTK遺伝子やDNAポリメラーゼ遺伝子の塩 基配列情報をデータベース化し,CSF中のHSV遺伝子塩基配列の決定によ り薬剤感受性を迅速に評価できるようにする必要がある.

日本ではHSV等のヘルペスウイルス臨床株の薬剤感受性試験が実施され る施設は少ない.薬剤感受性試験を実施し,その結果を患者の治療に反映 できるようなネットワーク整備が求められる.

《略歴》現職:国立感染症研究所ウイルス第一部長 経歴:1987年 3 月31日:旭川医科大学医学部 卒業 1987年 4 月-1997年 3 月:同大学小児科学教室に在籍

1995年 6 月-1996年 5 月:1年間JICAザンビア感染症対策プロジェクトに参画 1997年 4 月1日:国立感染症研究所ウイルス第一部外来性ウイルス室(現,第

一室)研究員 2007年11月 1 日:同第三室長

2010年10月 1 日:国立感染症研究所ウイルス第一部長に就任し,現在に至る.

専門領域:ウイルス感染症,小児科学,感染症学 主な著書:

1. Yoshikawa T, et al. Phylogenetic and geographic relationships of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus in China, South Korea, and Japan. J Infect Dis 212(6):889-98, 2015

2. Takahashi T, et al. The first identification and retrospective study of severe fever with thrombocytopenia syndrome in Japan. Journal of Infectious Diseases 209:816-27, 2014

3. Kakiuchi S, et al. Neonatal herpes encephalitis caused by a virologically confirmed acyclovir resistant herpes simplex virus type 1. Journal of Clinical Microbiology 51:356-9, 2013

G-02-3

単純ヘルペス脳炎成人例の転帰・後遺症 および転帰影響因子

大阪医科大学病院 内科学I・神経内科

○中嶋秀人

成人例の予後:抗ウイルス薬が開発される以前では単純ヘルペス脳炎 の死亡率は70%以上あったが,アシクロビルの登場後低下し,現在の死 亡率は10~15%とされる.2000年以降の報告では,治療6ヶ月時点での 死亡率は8~14%,死亡と高度後遺症を併せた転帰不良率は27~35%,

一方,完全回復症例は14~23%,軽度から中等度の後遺症を残した症例 は40~51%,さらに,治療1年後の完全回復症例は17%,軽度から中等 度の後遺症症例は42%と報告されており,完全回復,あるいは後遺症が 軽度で社会復帰できる患者は約半数と推定される.

後遺症の頻度:後遺症の内訳では記憶障害(53~69%)と人格障害

(30~80%)の頻度が高く,その他にてんかん,見当識障害,運動障害な どがある.嗅覚障害や味覚障害も単純ヘルペス脳炎の後遺症として頻 度が高く,単純ヘルペス脳炎の好発部位である側頭葉,前頭葉の病変,

さらにウイルスが嗅神経を介して中枢神経内に侵入する機序に関連し ていると考えられる.

転帰影響要因:転帰不良因子として,高齢者,アシクロビル治療開始時 に高度意識障害を認めること,アシクロビル治療開始の遅れ(入院から 治療開始が2日以上)があげられる.アシクロビル治療開始の遅れの要 因として,重篤な全身状態やアルコール依存症,入院翌日以降の脳画像 検査の施行,髄液検査における典型的所見の欠如(細胞数10/mm3以下)

のために単純ヘルペス脳炎の認識が遅れたことがあげられている.そ の他の転帰不良因子として,アシクロビル治療開始時にCTやMRI画像 所見で広範な病巣を認めること,入院時に全身状態が重篤なこともあ げられる.一方,アシクロビル治療開始時の髄液中の単純ヘルペスウ イルスDNAコピー数と予後との関連性は認められないが,ウイルス DNA検出の遷延は予後の悪化に関連する可能性がある.

治療内容として,アシクロビルと副腎皮質ステロイド薬の併用はア シクロビル単独治療に比べて予後が良好であったと報告されており,

副腎皮質ステロイド薬がウイルス感染時の宿主免疫反応による細胞傷 害性を伴う炎症反応を抑制することが,その有用性の機序として考え られる.

《略歴》1988年 大阪医科大学卒業

1988年 大阪医科大学付属病院(第一内科学教室) 臨床研修 1996年 大阪医科大学大学院博士課程修了(医学博士)

1998年 テキサス大学ガルベストン校(UTMB)内科感染症部門留学 2000年 大阪医科大学内科学I 助手

2006年 医療法人清恵会病院 内科部長・副院長 2011年 大阪医科大学 内科学I・神経内科 講師

学会活動日本内科学会,日本神経学会,日本神経治療学会,日本脳卒中学会,日本 神経感染症学会,日本神経免疫学会

細菌性髄膜炎診療ガイドライン作成委員,単純ヘルペス脳炎診療ガイドラ イン作成委員

ガイドラインコース G-02:単純ヘルペス脳炎の診療ガイドライン2015に 基づく診断と治療

5月19日(木) 8:00~10:00 第8会場(ポートピアホテル本館B1F 偕楽2)

ガイ ドラ イン コー

G-02-2

単純ヘルペス脳炎の診断におけるアシク ロビル耐性株の検出

国立感染症研究所ウイルス第一部

○西條政幸

アシクロビル(ACV)の導入により単純ヘルペスウイルス(HSV)による 中枢神経感染症(herpes simplex encephalitis,HSE)の予後は改善したもの の,後遺症を残す患者が多い.ACVが開発されてから約40年が,そして ACVが日本で使用可能になってから約30年が経過した.このような状況の 中でもHSEに対する治療のための第一選択薬はACVである.

一方で,ACV治療に耐性を示すHSE患者報告がなされているが,その病 態がACV耐性HSV-1によるHSEなのか,それともACV感受性HSV-1による HSEなのかは証明されるケースは極めて少ない.脳脊髄液(CSF)からHSV を分離することができないからである.しかし,ACV治療に加えて vidarabineやfoscarnetによる治療を追加する等の治療法の選択には原因ウ イルスの薬剤感受性試験がなされる必要がある.

最近,私たちは新生児におけるウイルス学的に証明されたACV耐性HSV-1による脳炎ついて,世界で初めて報告した(Kakiuchi, JCM, 2013).患者の ACV治療中のCSFから増幅されたウイルス性チミジンリン酸化酵素(vTK)

遺伝子塩基配列を決定することができたことから,それが可能であった.

vTK遺伝子における一塩基置換(点変異,G375T→Q125H変異)がACV耐 性誘導変異であることが証明された(Shiota, Antiviral Res, 2011).現在,世 界的にvTK遺伝子ACV耐性を誘導する遺伝子の情報が蓄積されていること から,多くの場合,CSF中のvTK遺伝子を増幅し,その塩基配列を決定する ことでACVに対する感受性を迅速に評価できるようになると考えられる.

また,DNAポリメラーゼ遺伝子における変異もACV耐性を誘導する.

ACV耐性HSV-1およびHSV-2のvTK遺伝子やDNAポリメラーゼ遺伝子の塩 基配列情報をデータベース化し,CSF中のHSV遺伝子塩基配列の決定によ り薬剤感受性を迅速に評価できるようにする必要がある.

日本ではHSV等のヘルペスウイルス臨床株の薬剤感受性試験が実施され る施設は少ない.薬剤感受性試験を実施し,その結果を患者の治療に反映 できるようなネットワーク整備が求められる.

《略歴》現職:国立感染症研究所ウイルス第一部長 経歴:1987年 3 月31日:旭川医科大学医学部 卒業 1987年 4 月-1997年 3 月:同大学小児科学教室に在籍

1995年 6 月-1996年 5 月:1年間JICAザンビア感染症対策プロジェクトに参画 1997年 4 月1日:国立感染症研究所ウイルス第一部外来性ウイルス室(現,第

一室)研究員 2007年11月 1 日:同第三室長

2010年10月 1 日:国立感染症研究所ウイルス第一部長に就任し,現在に至る.

専門領域:ウイルス感染症,小児科学,感染症学 主な著書:

1. Yoshikawa T, et al. Phylogenetic and geographic relationships of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus in China, South Korea, and Japan. J Infect Dis 212(6):889-98, 2015

2. Takahashi T, et al. The first identification and retrospective study of severe fever with thrombocytopenia syndrome in Japan. Journal of Infectious Diseases 209:816-27, 2014

3. Kakiuchi S, et al. Neonatal herpes encephalitis caused by a virologically confirmed acyclovir resistant herpes simplex virus type 1. Journal of Clinical Microbiology 51:356-9, 2013

G-02-3

単純ヘルペス脳炎成人例の転帰・後遺症 および転帰影響因子

大阪医科大学病院 内科学I・神経内科

○中嶋秀人

成人例の予後:抗ウイルス薬が開発される以前では単純ヘルペス脳炎 の死亡率は70%以上あったが,アシクロビルの登場後低下し,現在の死 亡率は10~15%とされる.2000年以降の報告では,治療6ヶ月時点での 死亡率は8~14%,死亡と高度後遺症を併せた転帰不良率は27~35%,

一方,完全回復症例は14~23%,軽度から中等度の後遺症を残した症例 は40~51%,さらに,治療1年後の完全回復症例は17%,軽度から中等 度の後遺症症例は42%と報告されており,完全回復,あるいは後遺症が 軽度で社会復帰できる患者は約半数と推定される.

後遺症の頻度:後遺症の内訳では記憶障害(53~69%)と人格障害

(30~80%)の頻度が高く,その他にてんかん,見当識障害,運動障害な どがある.嗅覚障害や味覚障害も単純ヘルペス脳炎の後遺症として頻 度が高く,単純ヘルペス脳炎の好発部位である側頭葉,前頭葉の病変,

さらにウイルスが嗅神経を介して中枢神経内に侵入する機序に関連し ていると考えられる.

転帰影響要因:転帰不良因子として,高齢者,アシクロビル治療開始時 に高度意識障害を認めること,アシクロビル治療開始の遅れ(入院から 治療開始が2日以上)があげられる.アシクロビル治療開始の遅れの要 因として,重篤な全身状態やアルコール依存症,入院翌日以降の脳画像 検査の施行,髄液検査における典型的所見の欠如(細胞数10/mm3以下)

のために単純ヘルペス脳炎の認識が遅れたことがあげられている.そ の他の転帰不良因子として,アシクロビル治療開始時にCTやMRI画像 所見で広範な病巣を認めること,入院時に全身状態が重篤なこともあ げられる.一方,アシクロビル治療開始時の髄液中の単純ヘルペスウ イルスDNAコピー数と予後との関連性は認められないが,ウイルス DNA検出の遷延は予後の悪化に関連する可能性がある.

治療内容として,アシクロビルと副腎皮質ステロイド薬の併用はア シクロビル単独治療に比べて予後が良好であったと報告されており,

副腎皮質ステロイド薬がウイルス感染時の宿主免疫反応による細胞傷 害性を伴う炎症反応を抑制することが,その有用性の機序として考え られる.

《略歴》1988年 大阪医科大学卒業

1988年 大阪医科大学付属病院(第一内科学教室) 臨床研修 1996年 大阪医科大学大学院博士課程修了(医学博士)

1998年 テキサス大学ガルベストン校(UTMB)内科感染症部門留学 2000年 大阪医科大学内科学I 助手

2006年 医療法人清恵会病院 内科部長・副院長 2011年 大阪医科大学 内科学I・神経内科 講師

学会活動日本内科学会,日本神経学会,日本神経治療学会,日本脳卒中学会,日本 神経感染症学会,日本神経免疫学会

細菌性髄膜炎診療ガイドライン作成委員,単純ヘルペス脳炎診療ガイドラ イン作成委員

ガイドラインコース G-02:単純ヘルペス脳炎の診療ガイドライン2015に 基づく診断と治療

5月19日(木) 8:00~10:00 第8会場(ポートピアホテル本館B1F 偕楽2)

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ドラ イン コー

G-02-4

単純ヘルペス脳炎成人例における新たな 治療展開

国立病院機構埼玉病院 神経内科

○石川晴美

成人における単純ヘルペス1型ウイルス抗体保有率は50-90%と,単純ヘルペスウイ ルス1型感染は一般感染症である一方で,日本での単純ヘルペスウイルス脳炎の発生頻 度推計は年間100万人あたり3.5-3.9人,約0.00035%と決して多くはない.しかし,単純 ヘルペスウイルスの中枢神経系への感染は治療にも関わらず転帰不良率は高く,確立 された診断・治療が望まれている.

1980年代に注射用アシクロビルが発売され,成人単純ヘルペスウイルス脳炎の死亡 率は,無治療群70%以上,ビダラビン治療群50%~54%に比し,アシクロビル治療群 19%~28%と,治療成績は飛躍的に改善した.その後,約30年間,単純ヘルペスウイル スに対する新規抗ウイルス薬は導入されず,既存の治療薬を用いて治療成績を向上さ せる方法に焦点をあて,データベースを用いた多くの研究がなされてきた.そして,

2008年には米国から,2012年には英国から急性脳炎診療ガイドラインが発表され,脳 炎診療マネージメントが明確化された.脳炎のなかでも特に,単純ヘルペス脳炎にお いては,転帰不良率は33~53%と未だ高く,社会復帰率も約半数である.この原因の 一つとして,無治療や治療の遅れが指摘されており,診療アルゴリズムが明確化され ることは転帰改善のために非常に重要と考えられる.

本邦では2005年に神経治療学会より単純ヘルペス脳炎診療ガイドラインが公表さ れ,2013年から神経学会・神経治療学会・神経感染症学会合同ガイドライン委員会によ り改訂作業が行われている.単純ヘルペス脳炎の鑑別疾患は炎症性疾患だけではな く,脳血管障害,代謝性疾患,免疫疾患など多岐にわたる.本ガイドラインでは,この 多岐にわたる疾患から単純ヘルペス脳炎を疑い,早期に治療を開始するために,本邦 における診療アルゴリズムを示している.単純ヘルペスウイルス脳炎に対し,もっと も安全で有効性の高い抗ウイルス薬はアシクロビルであり,治療の中心となることに は変わりはない.このアシクロビルを用いて最も治療効果が期待できる診療アルゴリ ズムおよび成人における投与量や投与期間,投与後効果がない場合について,また,副 腎皮質ステロイドの併用について,ガイドラインに従い解説を行う.

《略歴》現職: 国立病院機構埼玉病院神経内科 医長 日本大学医学部内科学系神経内科学分野 臨床准教授 経歴:1990年 日本大学医学部医学科入学

1996年 同卒業

1996年 日本大学医学部神経内科学教室(現内科学系 神経内科学分野)入局 2000年 日本大学大学院医学研究科入学

2000年 国立精神・神経センター(現国立精神・神経医療研究センター) 微細 構造研究部

2001年 同疾病研究第一部

2003年 日本大学医学部内科学系神経内科学分野 2004年 日本大学大学院医学研究科卒業 2012年 日本大学医学部内科学系神経内科学 助教 2015年 国立病院機構埼玉病院神経内科 医長

日本大学医学部内科学系神経内科学分野 臨床准教授 現在に至る

加入学会(役職名):

日本神経学会 専門医・指導医 日本内科学会 認定内科医 日本神経治療学会 評議員 日本神経感染症学会 評議員

その他日本神経治療学会・日本神経学会・日本神経感染症学会合同 細菌性髄膜炎診療ガイドライン委員 2005 - 2007, 2011 -2014 単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン委員 2013 - 現在

ガイドラインコース G-02:単純ヘルペス脳炎の診療ガイドライン2015に 基づく診断と治療

5月19日(木) 8:00~10:00 第8会場(ポートピアホテル本館B1F 偕楽2)

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-ガイ ドラ イン コー

ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 121-124)

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