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5月18日(水) 13:15~15:15 第3会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室B)

ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 127-130)

255

-シン ポジ ウム

S-01-2

ギラン・バレー症候群の病理

山口大学大学院医学系研究科神経内科学

○神田 隆 これまでわかったこと

ある疾患の障害部位を決定するにあたって病理形態学が威力を発揮すること については異論はないものと思われる.ギラン・バレー症候群では,一次的に障 害される部位が末梢神経髄鞘であるか,軸索であるかによって脱髄型(AIDP)と 軸索型(AMAN, AMSAN)に2分されることが現在ほぼ定説として定着している.

しかし,残念ながらこの2分論は病理形態学がリードして構築されたものではな い.ギラン・バレー症候群の剖検報告の多くはギラン・バレー症候群=急性の脱 髄,というかつての原則を誰もが疑わなかった時代になされたものであり,また,

欧米では脱髄型の比率が高いこともあって,1980年代前半以前の剖検報告は細胞 浸潤を伴う自己免疫性の急性脱髄,軸索障害は存在しても二次性の軸索障害,と いうストーリーで組み立てられている.一次性軸索障害症例の存在は,病理学的 にはほとんど問題視されていなかったといってよい.

現在では,AIDPは血液神経関門の破綻部位に一致した巣状散在性の急性脱髄 が,AMAN/AMSANでは神経根に強調される軸索傷害巣が,それぞれの病型の 特徴的な病理所見と考えられている.急性期AMANではランヴィエ絞輪部の C3d沈着が報告されており,軸索傷害との関連が注目されている.超微形態学的 には両者の違いはさらに明らかになる.AIDPではSchwann細胞基底膜側から侵 入したマクロファージがミエリンを貪食し,その近傍には健常な軸索が残存する 像が捉えられるのに対し,AMAN/AMSANでは一見正常なミエリンを有する有 髄線維であるにもかかわらずマクロファージが軸索周囲腔へ侵入,軸索傷害をき たしている像が観察される.

これからの展望

病理学的に解明すべき課題は決して少なくない疾患であるが,神経生検は現実 的ではなく,不幸にして亡くなられた患者さんから可能な限り多部位の検体を採 取し,その上で,綿密な病理所見の蓄積を地道に積み重ねることが新しい知見を 得る王道と思われる.有髄軸索・髄鞘の保持や破壊の判定にはエポン包埋標本と 電子顕微鏡的観察が不可欠であり,conventionalなパラフィン切片のみでは不十 分であることを強調しておきたい.AIDPとAMAN/AMSANの違いが補体沈着 や液性因子・細胞性因子の関与の程度で明らかになれば,病型によって治療方針 を変えていく有力な根拠を提供することにも繋がる.AIDPとAMAN/AMSAN の患者がほぼ同数に近い日本でのみなされうる貢献であろう.

《略歴》1981年3月 東京医科歯科大学医学部医学科卒業 1981年4月 東京医科歯科大学大学院医学研究科入学

1985年3月 東京医科歯科大学大学院医学研究科卒業(医学博士)

1985年4月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科医員 1985年6月 東京都立神経病院神経内科医師(主事)

1988年6月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科助手

1990年1月 同休職,米国南カリフォルニア大学神経学教室リサーチフェロー 1992年1月 米国ヴァージニア医科大学生化学・分子生物学教室研究員 1994年1月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科助手 1999年4月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科講師

2000年1月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学系脳行動病態 学講座脳神経機能病態学部門助教授

2004年9月 山口大学医学部脳神経病態学講座神経内科学教授

2006年4月 山口大学大学院医学系研究科システム統御医学系専攻 脳・神経病態 制御医学領域神経内科学分野教授

現在に至る

S-01-3

Guillain-Barré症候群100年,神経伝導検 査50年

帝京大学病院 神経内科

○園生雅弘

Guillain-Barré症候群(GBS)は記載されてから100年となるが,その電気生理学的所見,特 に神経伝導検査(NCS)の所見が記載され始めたのは1960年代の初頭,およそ50余年前のこと となる.そのような初期の報告から,神経伝導速度の著明な低下がGBSの特徴であることが 記載され,GBSの病理が脱髄であることを支持する所見とされた.GBSの「診断基準」として 最もよく知られているものに,1978年のAsburyのものがある.そこには,GBSを強く支持す る電気生理学的特徴として,伝導速度は通常正常の60%以下となること,遠位潜時やF波潜時 の延長,伝導ブロックなど,脱髄を示唆する所見が列挙されている.即ちGBSは急性炎症性 脱髄性多発根ニューロパチー(AIDP)と同義と考えられていた.これに対し,軸索型のGBS という概念が1986年Feasbyらによって提唱された.その後1990年代初頭から,中国北部の急 性運動麻痺の検討,Campylobacter jejuni(C jejuni)感染・抗GM1-IgG抗体との関連の発見な どを経て,急性運動性軸索型ニューロパチー(AMAN)の概念が提唱されるに至る.AIDPか AMANかの病型分類はNCSで行われることとなり,NCSの重要性がさらに増すこととなっ た.病型分類の基準として,Hoらの基準,Haddenらの基準が提唱され,広く用いられてきた.

ここで,AMANは欧米に比べ日本に多いため,その電気生理学的特徴は日本で桑原らにより 精力的に調べられてきた.その結果,AMANの軸索機能障害でも初期には伝導ブロックを呈 することが明らかとなった.また,一部のAMAN例では初期に遠位潜時が延長するので従来 の基準ではAIDPに分類されてしまうが,真のAIDPのように進行性に延長することはなく,

急速に正常化して結局AMANであることが明らかになることが示され,NCSの時間経過を追 うことの重要性が強調された.筆者らは,GBSの急性期に出現することが報告されていたA 波と,抗ガングリオシド抗体や従来の電気生理学的分類(Ho分類)との関係を検討し,豊富な A波がAIDPと関係すること,またA波の方がHo分類よりも抗体の有無と密接に関係すること を示した.また,上述の正中神経遠位潜時の時間経過の特徴と豊富なA波の有無とは完全に 一致し,これらが従来分類よりも正確にGBSの脱髄か否かの特徴を捉えている可能性が示唆 された.このようにNCSから恣意的に定められた従来分類を超えて,より正確にGBSの病理 を特徴付ける電気生理学的所見が明らかとなってきている.

《略歴》1982年 東京大学医学部卒業

1984年 東京大学医学部脳研神経内科入局

1991年より1年間,スウェーデンウプサラ大学臨床神経生理部門Erik Stålberg教授の元に留学(針筋電図定量解析に関する研究)

1992年 帝京大学医学部神経内科講師 2006年 同助教授

2011年 同主任教授

2015年 神経筋電気診断センター センター長(兼任)

主な研究領域:臨床神経学,神経筋電気診断学・臨床神経生理学(針筋 電図,単線維筋電図,神経伝導検査,体性感覚誘発電位など),ヒステ リー性麻痺の診断,めまいの診断

主な学会活動・資格:

日本臨床神経生理学会 認定医(筋電図・神経伝導分野,脳波分野),

理事,代議員,専門医制度委員会委員長,試験・認定委員会委員長,電 気診断技術向上委員会他委員

日本神経学会 専門医,代議員,専門教育小委員会副委員長,専門医 育成教育ワーキンググループ部会長,専門医制度検討委員会他委員 日本末梢神経学会 理事,評議員

日本神経救急学会 世話人

“Muscle and Nerve” (Official Journal of American Academy of Neuromuscular disorders and Electrodiagnostic Medicine; AANEM) Editorial Board

シンポジウム S-01:100年目のギラン・バレー症候群:これまでわかった こと,これからの展望

5月18日(水) 13:15~15:15 第3会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室B)

シン ポジ ウム

S-01-2

ギラン・バレー症候群の病理

山口大学大学院医学系研究科神経内科学

○神田 隆 これまでわかったこと

ある疾患の障害部位を決定するにあたって病理形態学が威力を発揮すること については異論はないものと思われる.ギラン・バレー症候群では,一次的に障 害される部位が末梢神経髄鞘であるか,軸索であるかによって脱髄型(AIDP)と 軸索型(AMAN, AMSAN)に2分されることが現在ほぼ定説として定着している.

しかし,残念ながらこの2分論は病理形態学がリードして構築されたものではな い.ギラン・バレー症候群の剖検報告の多くはギラン・バレー症候群=急性の脱 髄,というかつての原則を誰もが疑わなかった時代になされたものであり,また,

欧米では脱髄型の比率が高いこともあって,1980年代前半以前の剖検報告は細胞 浸潤を伴う自己免疫性の急性脱髄,軸索障害は存在しても二次性の軸索障害,と いうストーリーで組み立てられている.一次性軸索障害症例の存在は,病理学的 にはほとんど問題視されていなかったといってよい.

現在では,AIDPは血液神経関門の破綻部位に一致した巣状散在性の急性脱髄 が,AMAN/AMSANでは神経根に強調される軸索傷害巣が,それぞれの病型の 特徴的な病理所見と考えられている.急性期AMANではランヴィエ絞輪部の C3d沈着が報告されており,軸索傷害との関連が注目されている.超微形態学的 には両者の違いはさらに明らかになる.AIDPではSchwann細胞基底膜側から侵 入したマクロファージがミエリンを貪食し,その近傍には健常な軸索が残存する 像が捉えられるのに対し,AMAN/AMSANでは一見正常なミエリンを有する有 髄線維であるにもかかわらずマクロファージが軸索周囲腔へ侵入,軸索傷害をき たしている像が観察される.

これからの展望

病理学的に解明すべき課題は決して少なくない疾患であるが,神経生検は現実 的ではなく,不幸にして亡くなられた患者さんから可能な限り多部位の検体を採 取し,その上で,綿密な病理所見の蓄積を地道に積み重ねることが新しい知見を 得る王道と思われる.有髄軸索・髄鞘の保持や破壊の判定にはエポン包埋標本と 電子顕微鏡的観察が不可欠であり,conventionalなパラフィン切片のみでは不十 分であることを強調しておきたい.AIDPとAMAN/AMSANの違いが補体沈着 や液性因子・細胞性因子の関与の程度で明らかになれば,病型によって治療方針 を変えていく有力な根拠を提供することにも繋がる.AIDPとAMAN/AMSAN の患者がほぼ同数に近い日本でのみなされうる貢献であろう.

《略歴》1981年3月 東京医科歯科大学医学部医学科卒業 1981年4月 東京医科歯科大学大学院医学研究科入学

1985年3月 東京医科歯科大学大学院医学研究科卒業(医学博士)

1985年4月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科医員 1985年6月 東京都立神経病院神経内科医師(主事)

1988年6月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科助手

1990年1月 同休職,米国南カリフォルニア大学神経学教室リサーチフェロー 1992年1月 米国ヴァージニア医科大学生化学・分子生物学教室研究員 1994年1月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科助手 1999年4月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科講師

2000年1月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学系脳行動病態 学講座脳神経機能病態学部門助教授

2004年9月 山口大学医学部脳神経病態学講座神経内科学教授

2006年4月 山口大学大学院医学系研究科システム統御医学系専攻 脳・神経病態 制御医学領域神経内科学分野教授

現在に至る

S-01-3

Guillain-Barré症候群100年,神経伝導検 査50年

帝京大学病院 神経内科

○園生雅弘

Guillain-Barré症候群(GBS)は記載されてから100年となるが,その電気生理学的所見,特 に神経伝導検査(NCS)の所見が記載され始めたのは1960年代の初頭,およそ50余年前のこと となる.そのような初期の報告から,神経伝導速度の著明な低下がGBSの特徴であることが 記載され,GBSの病理が脱髄であることを支持する所見とされた.GBSの「診断基準」として 最もよく知られているものに,1978年のAsburyのものがある.そこには,GBSを強く支持す る電気生理学的特徴として,伝導速度は通常正常の60%以下となること,遠位潜時やF波潜時 の延長,伝導ブロックなど,脱髄を示唆する所見が列挙されている.即ちGBSは急性炎症性 脱髄性多発根ニューロパチー(AIDP)と同義と考えられていた.これに対し,軸索型のGBS という概念が1986年Feasbyらによって提唱された.その後1990年代初頭から,中国北部の急 性運動麻痺の検討,Campylobacter jejuni(C jejuni)感染・抗GM1-IgG抗体との関連の発見な どを経て,急性運動性軸索型ニューロパチー(AMAN)の概念が提唱されるに至る.AIDPか AMANかの病型分類はNCSで行われることとなり,NCSの重要性がさらに増すこととなっ た.病型分類の基準として,Hoらの基準,Haddenらの基準が提唱され,広く用いられてきた.

ここで,AMANは欧米に比べ日本に多いため,その電気生理学的特徴は日本で桑原らにより 精力的に調べられてきた.その結果,AMANの軸索機能障害でも初期には伝導ブロックを呈 することが明らかとなった.また,一部のAMAN例では初期に遠位潜時が延長するので従来 の基準ではAIDPに分類されてしまうが,真のAIDPのように進行性に延長することはなく,

急速に正常化して結局AMANであることが明らかになることが示され,NCSの時間経過を追 うことの重要性が強調された.筆者らは,GBSの急性期に出現することが報告されていたA 波と,抗ガングリオシド抗体や従来の電気生理学的分類(Ho分類)との関係を検討し,豊富な A波がAIDPと関係すること,またA波の方がHo分類よりも抗体の有無と密接に関係すること を示した.また,上述の正中神経遠位潜時の時間経過の特徴と豊富なA波の有無とは完全に 一致し,これらが従来分類よりも正確にGBSの脱髄か否かの特徴を捉えている可能性が示唆 された.このようにNCSから恣意的に定められた従来分類を超えて,より正確にGBSの病理 を特徴付ける電気生理学的所見が明らかとなってきている.

《略歴》1982年 東京大学医学部卒業

1984年 東京大学医学部脳研神経内科入局

1991年より1年間,スウェーデンウプサラ大学臨床神経生理部門Erik Stålberg教授の元に留学(針筋電図定量解析に関する研究)

1992年 帝京大学医学部神経内科講師 2006年 同助教授

2011年 同主任教授

2015年 神経筋電気診断センター センター長(兼任)

主な研究領域:臨床神経学,神経筋電気診断学・臨床神経生理学(針筋 電図,単線維筋電図,神経伝導検査,体性感覚誘発電位など),ヒステ リー性麻痺の診断,めまいの診断

主な学会活動・資格:

日本臨床神経生理学会 認定医(筋電図・神経伝導分野,脳波分野),

理事,代議員,専門医制度委員会委員長,試験・認定委員会委員長,電 気診断技術向上委員会他委員

日本神経学会 専門医,代議員,専門教育小委員会副委員長,専門医 育成教育ワーキンググループ部会長,専門医制度検討委員会他委員 日本末梢神経学会 理事,評議員

日本神経救急学会 世話人

“Muscle and Nerve” (Official Journal of American Academy of Neuromuscular disorders and Electrodiagnostic Medicine; AANEM) Editorial Board

シンポジウム S-01:100年目のギラン・バレー症候群:これまでわかった こと,これからの展望

5月18日(水) 13:15~15:15 第3会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室B)

256 -シン

ポジ ウム

S-01-4

ギラン・バレー症候群と自己抗体

山口大学大学院 神経内科学

○古賀道明

ギラン・バレー症候群(GBS)では,治療法として単純血 漿交換療法が有効であることが証明されていることから,血 中の液性因子(特にIgG分子)が大部分の症例で発症に関与 していると考えられる.以前より,患者血中における自己抗 体の探索が多くなされてきたが,1988年にIlyasらが本症患 者の血中にガングリオシドに対する抗体を検出したのを契 機に,GBS研究が主として本邦の研究成果により大いに進展 した.

つまり,(1)末梢神経に発現する微量なガングリオシド

(GM1bやGalNAc-GD1aなど)を含め数多くのガングリオシ ドが自己抗体の標的分子として見いだされ,診断マーカーと して臨床の場で汎用されるようになった (2)検出される抗 ガングリオシド抗体の種類が神経所見と密接に関連するこ と が 示 さ れ た (3)主 要 な 先 行 感 染 因 子 で あ る Campylobacter jejuniの菌体上にガングリオシド様糖鎖構造 が発現しており,先行感染病原体と生体組織との間に分子相 同性が証明された (4)ガングリオシド自体やガングリオシ ド様構造を含有する菌体成分を動物に感作することで抗ガ ングリオシド抗体の上昇を伴ったGBSモデル動物が作成さ れた.

一方,解明すべき課題も多い.GBS全体で自己抗体(抗ガ ングリオシド抗体)が検出される割合は約半数の症例に過ぎ ず,特に脱髄型GBSでは大部分の症例で関与する自己抗体は 同定されていない.また,抗ガングリオシド抗体による末梢 神経障害機序も十分に解明されたとは言えない.つまり,抗 体陽性例における神経所見は,標的ガングリオシドの生体内 分布を必ずしも反映しておらず,特徴的な神経所見がどのよ うに規定されているか不明である.同じ抗ガングリオシド 抗体が検出されても,速やかに回復する症例がある一方で,

軸索変性に至り高度の後遺症をきたす症例があるなど,臨床 像に多様性をもたらす機序についても今後明らかにしてい く必要がある.

《略歴》1994年3月 山口大学医学部医学科卒業

1994年5月~1995年3月 山口大学医学部附属病院研修医(神経内科)

1995年4月~1996年3月 山口県立中央病院研修医(内科)

1996年4月~1999年3月 山口大学大学院医学研究科 1999年4月~2000年3月 獨協医科大学神経内科助手 2000年4月~2003年3月 日本学術振興会特別研究員(PD)

2003年4月~2006年3月 獨協医科大学神経内科助手

2006年4月~2010年3月 山口大学大学院医学系研究科神経内科学助手

(併任講師) (2007年4月より助教[併任講師])

2010年4月~現在に至る 山口大学大学院医学系研究科神経内科学講師

S-01-5

治療の現状と展望

千葉大学病院 神経内科

○桑原 聡

ギラン・バレー症候群(GBS)に対する免疫学的治療として1980年代に血液浄 化法,1990年代の免疫グロブリン静脈療法の有効性が大規模ランダム化群間比較 試験(RCT)により示されており標準的治療となっている.しかしメタ解析によ ると,これらの治療を行っても死亡汁は4.4%,発症6ヵ月の歩不能症例は18%で あり,有効性は充分ではなく,より効果の高い革新的治療法が求められている.

2000年以降もインターフェロンβ,脳由来神経栄養因子,ミコフェノール酸モ フェチルなどの探索的RCTが行われてきたが,有効性を示せなかった.

一方,1990年代からGBSの病態・発症機序に関する研究は飛躍的に発展した.

軸索型GBSではCampylobacter腸炎を先行感染とし,菌体外膜に発言するGM1・

GD1aなど特定のガングリオシドに対する自己抗体がヒト神経軸索膜に対して交 差反応するという分子相同性による発症が証明された.治療を考える上で重要 な点は,抗体の沈着から軸索変性に至る最終エフェクターが補体(C5b-9:

membrane attack complex [MAC])であることが示された点である.以後補体を 標的とする新規治療が注目されている.Eculizumabは補体C5に対するモノク ローナル抗体製剤であり,MACによる組織障害を抑制する効能により発作性夜 間ヘモグロビン尿症に適応を有している.現在GBSに対して英国と日本で探索 的第Ⅱ相医師主導治験が進行中である.これらの治験で有効性・安全性が示され れば大規模国際共同治験が予定されている.脱髄型GBSの標的抗原や補体の関 与は証明されていないが,上記治験には脱髄型も対象に含まれており,治療効果 から逆に病態解明が進むことが期待される.

Immunoglobulin G-degrading enzyme of Streptococcus pyogenes (IdeS)は菌 が産生する切断酵素でありIgGのFc及びFabを効率的に断片化することから,抗 体介在性疾患の治療薬として注目されている.一部の疾患に対して第Ⅱ相試験 が北欧で行なわれており,GBSに対する治験も予定されている.

GBSの標準的治療として血液浄化法,免疫グロブリン静脈療法が行なわるよう になってから20年が経過しているが,その後の革新的新規治療開発は成功してこ なかった.本邦においてecuizumab治験が開始できたことは大きな進歩である.

原著報告から100年を経て,GBSの病態解明に大きな役割を果たしてきた日本か ら,革新的新規治療が発信されることが強く期待される.

《略歴》1984年 3 月 千葉大学医学部卒業

1986年~1994年 松戸市立病院~千葉県救急医療センター~JR東京総合病院 1995年 4 月 千葉大学医学部神経内科助手

1999年 4 月 オーストラリア(シドニー),プリンスオブウェールズ神経科学 研究所に留学

(David Burke教授,イオンチャネル生理学)

2001年 4 月 千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 講師 2004年 8 月 千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 准教授 2008年11月 千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 教授 [専門分野]

神経内科学,神経免疫学,臨床神経生理学 [学会活動歴など]

日本内科学会(評議員),日本神経学会(代議員),日本神経治療学会(理事),日本 神経免疫学会(理事),日本末梢神経学会(理事),日本臨床神経生理学会(理事)

[編集委員]

J Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry (Deputy Editor),J Neurol Sci (Editorial board)

Cochrane-Database Systematic Review (Chief reviewer, Treatment for POEMS syndrome)

シンポジウム S-01:100年目のギラン・バレー症候群:これまでわかった こと,これからの展望

5月18日(水) 13:15~15:15 第3会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室B)

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ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 127-130)

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