• 検索結果がありません。

5月18日(水) 9:50~11:50 第2会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室A)

ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 50-53)

ホッ トト ピッ クス

座長:

冨本秀和(三重大学医学部神経内科) 小野寺理(新潟大学脳研究所神経内科)

≪ねらい≫

神経内科医の実臨床で脳卒中は極めて大きな領域を占め るにも関わらず,神経学会で脳卒中分野は過小評価され,研 究,とりわけ遺伝子の研究とは縁遠いと思われてきた分野で ある.しかしCADASILやCARASILなどの遺伝性脳梗塞の 存在は決して稀ではないことが示されつつあり,脳の小血管 病の研究は本邦神経内科医の貢献は大きい.また動脈瘤,動 脈解離など血管疾患と遺伝子との密接な関係が証明されつ つある.そこで遺伝子診断は脳卒中をどこまで解明できた かという企画を提案する.シンポジウム前半でCADASILお よびCARASILなど小血管病と遺伝子研究の成果について解 説していただく.シンポジウム後半では動脈瘤や動脈解離 など神経内科と脳外科の重複領域の脳卒中における遺伝子 の関与について,最新の研究成果を解説していただく.

HT-01-1

CADASILはどこまで解明されたか

京都府立医科大学神経内科

○水野敏樹

優性遺伝形式をとる遺伝性脳小血管病CADASILではミス センス変異によりNOTCH3細胞外ドメイン(NECD)にある EGF様リピート内の3対のシステイン残基が偶数個から奇数 個となり,システイン残基相互のS-S結合状態が変わるため,

EGF様リピートの高次構造が変化すると想定されている.

一方電顕で認められる血管平滑筋およびpericyteの基底膜周 囲 に 蓄 積 す る Granular Osmiophilic Materials (GOM) が CADASILでは病理学的特徴とされるが,その主たる成分は NECDであることが明らかにされた.さらに免疫染色では CADASIL 小 血 管 に NECD と 共 に Tissue Inhibitor of metalloprotease 3(TIMP3)とvitronectin(VTN)の二つの蛋 白も蓄積することが同定された.これらの所見から現在は 変異型NECDの過剰がTIMP3と共に凝集の核となり,さら にVTNなどの細胞外基質を巻き込み,TGFβ関連蛋白も加 わって雪だるま式に蛋白凝集が進行することが想定され,

CADASILの発症機序はgain of functionによる血管への異常 蛋白蓄積と考えられている.また病理所見や遺伝子改変動 物からCADASILの脳小血管病理では共通して血管壁の肥厚 と血管平滑筋の脱落を認め,脳小血管の土管様変化を生じて いる.これらの所見はCADASILにおいて血管の収縮拡張機 能不全が起こり,血流調節が障害されることが脳虚血,大脳 白質病変の機序として示唆される.さらに小血管病を基盤 として虚血性白質病変,微小出血が進行し,視床前部,内包,

脳梁膝部に発症するラクナ梗塞・脳出血によって前頭前野―

皮質下回路が障害されることから認知機能低下を来し,大脳 皮質梗塞が合併することで認知機能のさらなる悪化を生じ ると推定される.今後これらの病態を考慮した脳梗塞発症 予防と再発予防による認知症進展への予防が必要である.

《略歴》昭和58年 京都府立医科大学医学部卒業.

昭和58年 京都府立医科大学附属病院研修医 昭和62年 京都府立医科大学大学院医学研究科入学 平成 2 年 北海道大学附属病院神経内科特別研究派遣学生.

平成 3 年 京都府立医科大学大学院医学研究科修了 平成 4 年 医学博士取得

平成 6 年 京都府立医科大学医学部助手

平成10年 英国ニューキャッスル大学精神科神経病理学部門客員研究 平成12年 京都府立医科大学医学部講師.

平成15年 京都府立医科大学大学院医学研究科神経病態制御学助教授

(准教授)

平成25年 京都府立医科大学大学院医学研究科神経内科学教授 平成27年 京都府立医科大学附属病院副院長

ホットトピックス HT-01:遺伝子診断は脳卒中にどこまで迫ったか

5月18日(水) 9:50~11:50 第2会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室A)

178 -ホッ

トト ピッ クス

HT-01-2

脳小血管病の分子病態機序 CARASIL からのアプローチ

新潟大学脳研究所神経内科

○小野寺理

従来脳小血管障害は,大血管の閉塞による二次的な物,もしくは 大血管と同様な動脈硬化による障害と考えられ,脳小血管に大血管 とは異なる独自の分子病態があるという視点での検討はなされて こなかった.しかし,脳の小血管は,他の臓器の小血管とは異なる,

脳独自の機能を持ちその為に特殊な構造のを持つ.脳小血管の持 つ機能の一つは血液脳関門である.もう一つは神経活動依存性の 脳血流量の調節である.特に神経活動依存性の脳血流量の調節は,

ヒトの巨大化した大脳を効率よく機能させ,環境への繊細かつ迅速 な対応を可能とする重要な機能である.

この機能を支えるために,脳小血管には大血管と異なる構造があ る.脳小血管は,周皮細胞(平滑筋細胞),血管内皮細胞,アストロ サイトにより構成される.特に神経活動依存性の脳血流量の調節 機能として,周皮細胞や平滑筋細胞などの壁細胞の機能の重要性が 注目されている.この構造に起因した小血管の分子病態について は,近年まで全く未解明であった.

脳小血管に大血管とは異なる独自の分子病態機序があることは,

遺伝性脳小血管病の解明により明らかとなってきた.我々は遺伝 性脳小血管病の一つであるCARASILに関して,その病態機序の研 究を進め,本疾患が原因遺伝子の機能喪失による,トランスフォー ミング増殖因子(Transforming growth factor:TGF)ファミリー シグナルの更新により引き起こされることを明らかとした.さら に近年,CARASILの原因遺伝子HTRA1の一部の変異は優性遺伝 を示す可能性も示された.CARASILでは病理学的に内膜の肥厚と 壁細胞の変性が特徴とされ,孤発性の脳小血管病と類似点があり,

本症の分子病態の解明は,孤発性の脳小血管病の解明に繋がると考 えられる.本講演ではCARASILの分子病態機序の解明から明らか となってきた脳小血管病の分子病態と,それに基づく治療戦略につ いて,最新の知見を紹介しながら概説する.

《略歴》学歴:

昭和62年 3 月 新潟大学医学部医学科卒業

平成 5 年 3 月 新潟大学大学院医学研究科内科系博士課程卒業医博 職歴:昭和62年 4 月 新潟大学医学部附属病院神経内科入局

平成 4 年 4 月 日本学術振興会特別研究員

平成 7 年 7 月 米国デューク大学神経内科リサーチアソシエイト 平成10年 4 月 新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野助手 平成14年 5 月 新潟大学脳研究所分子神経疾患資源解析学分野 准教授 平成23年10月 同教授

認定内科専門医,指導医 日本神経学会専門医

日本内科学会,日本神経学会,認知症学会,分子生物学会,米国神経学会,米 国神経科学会,米国細胞生物学会

日本神経学会将来構想委員

日本神経学会運動ニューロン疾患分野コアメンバー 日本神経学会運動失調症分野コアメンバー 日本神経学会代議員 認知症学会評議委員

HT-01-3

RNF213に関連する脳血管疾患はどこま で解明されたか

1東京大学脳神経外科,2関東脳神経外科病院

○宮脇 哲1,今井英明1,清水暢裕2,八木伸一2, 小野秀明1,武笠晃丈1,中冨浩文1,清水庸夫2, 齊藤延人1

【背景】頭蓋内主幹動脈狭窄(以下頭蓋内狭窄)は脳梗塞の主たる原因の1つであるが,本邦を始めと したアジア人に多いとされ遺伝的要因存在が示唆されてきた.近年の研究成果により日本人の特発 性の頭蓋内狭窄を主たる病態とするもやもや病の発症者の80%がRNF213という遺伝子上にある一 塩基変異(c.14576G>A)を有することが明らかとなった.臨床においては時として,もやもや病と 動脈硬化性の頭蓋内狭窄の鑑別に苦慮することがある.我々はRNF213変異がもやもや病だけでな く,一般の動脈硬化性の頭蓋内狭窄の背景となる遺伝的要因であると考え多角的な解析を行った.

【方法】まず,脳血管疾患857例(もやもや病111例,動脈硬化性の頭蓋内狭窄303例,その他の疾患277 例,control166例)においてRNF213変異の有無を評価し関連解析を行った.さらに頭蓋内狭窄277例 とcontrol141例において,脳梗塞・動脈硬化に関連する約100種の遺伝子領域に関して次世代シークエ ンサーを用いてtarget resequenceを行い,RNF213変異以外の関連遺伝子変異の同定を試みた.【結 果】RNF213変異の関連解析においては,変異を持つ割合はもやもや病では80.1%(89/111)でさらに は動脈硬化性の頭蓋内狭窄においては25.4%(77/303),controlでは1.8%(3/166)認め,その他の群 で頻度はcontrolと同程度で,RNF213変異はもやもや病ばかりでなく,動脈硬化性の頭蓋内狭窄に対 して最も強い関連が示された.さらに発展的な解析においても,頭蓋内狭窄に対してRNF213変異が 最も強い関連を示す結果となった.【考察】RNF213 c.14576G>Aは動脈硬化性の頭蓋内狭窄に有意 な関連が示され,また日本人の2%程度がもつことが確認できた.この変異は高血圧・耐糖能と関連 することも報告されており,頭蓋内狭窄しいては脳卒中のリスクアレル・バイオマーカーととらえる ことができる.この変異をもつリスク群に対しては,MRIなどの脳精査や早期からの降圧薬治療介 入などにより,脳卒中の先制医療につながることが期待される.現在,当科では希望に応じて十分な 遺伝カウセリングの上この遺伝子診断を行なっておりその取り組みについても概説する.

《略歴》2003年3月 東京大学医学部医学科卒業 2003年4月 東京大学医学部脳神経外科入局

東京大学医学部附属病院および関連施設にて臨床研修 2010年4月 東京大学大学院医学系研究科 脳神経医学専攻 博士課程 入学 2014年3月 同上修了 (医学博士 学位取得)

2014年4月 東京大学医学部附属病院 脳神経外科 助教 現在に至る

免許・資格 2003年 医師免許

2009年 日本脳神経外科学会専門医 2012年 臨床遺伝専門医 2014年 日本脳卒中学会専門医

所属学会日本脳神経外科学会,日本脳神経外科コングレス,日本脳卒中学会,日本分子脳神経外科 学会,日本脳循環代謝学会,日本人類遺伝学会

受賞歴2013年 第14回 日本分子脳神経外科学会 学会賞 2013年 東京大学脳神経外科 同門会賞 2014年 東京大学医師会 医学賞

2015年 第40回 日本脳卒中学会 Young Investigator Award 研究助成2014年 科学研究費 研究活動スタート支援

2015-2016年 科学研究費 若手研究 (B)

2012年 公益財団法人先進医薬研究振興財団 循環医学分野若手研究者助成 2016年 公益財団法人三井生命厚生財団 医学研究助成

専門領域脳血管障害の外科手術,脳血管疾患の遺伝子解析

ホットトピックス HT-01:遺伝子診断は脳卒中にどこまで迫ったか

5月18日(水) 9:50~11:50 第2会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室A)

179

-ホッ トト ピッ クス

ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 50-53)

Outline

関連したドキュメント