ホッ トト ピッ クス
座長:
德丸阿耶(東京都健康長寿医療センター放射線診断科) 原田雅史(徳島大学病院放射線科)
≪ねらい≫
現在のMR最先端は,細胞レベルを追跡する段階まできて おり,微細なasonal flowの異常,秒単位での病態変遷を「み る」技術,病因となる物質の可視化など驚異的な進捗を示し ている.このシンポジウムでは,MR技術開発の最先端を,
自ら切り分け,開発し,さらに臨床に役立つ形で提示してき たexpertに,最先端MRによって「みえるもの,みるべきも の」を提示していただく.それぞれの技術は,技術にとどま らず,またそれぞれの技術のみに閉じこもることなく,脳機 能の解明,神経疾患の病態生理を究めるために磨かれてい る.磨きぬいた技術は,ジャンルを超え,自在にネットワー クを形成していっているように見える.透明人間をどう やってみるのか,夢は幻ではないのか,脳の微細構造はどの ように,脳活動を支えているのか.未来の医療のために何を めざし,現在の医療に何を還元してゆくのか,科学と臨床の 最先端のedgeに立つexpertから,そのヒントを得たいと思 う.
HT-05-1
MRIで透明脳をみる
1順天堂大学大学院医学研究科放射線医学,2順 天堂大学大学院医学研究科老人性疾患病態・治
療研究センター,3東京医科歯科大学大学院難治疾患研究所 神経病理学
○青木茂樹1,鎌形康司1,Aurelien Kerever2, 佐藤香菜子1,堀 正明1,岡澤 均3,平澤恵理2,4
透明脳化技術は,脳組織を特殊な処理のあとに脂質を除くと屈折 率が均一化して透明化するというもので,脂質以外の構造をどの程 度保てるかでCLARITY, CUBICなどの種々の手法が提案されてい る.共焦点や2光子励起顕微鏡と組み合わせることで,脳を切片化 すること無く,3次元の神経ネットワークを観察することができる.
MRIはin vivoで脳の形態を観察でき,T1・T2強調像などの解剖情 報が得られ,拡散テンソルや次世代拡散MRIで微細構造に関連した 情報が得られるとともに,確立した種々の全脳解析法がある.透明 脳をMRIで"みる"ことにより,2つの手法の解剖学的構造の比較が3 次元的に行えるとともに,拡散MRIの種々のパラメータの検証や,
MRIで全脳解析を探索的に行い,特定の部位を透明脳で詳細に観察 するなどが可能となる.透明化技術による脳回路研究が期待され るが,その知見は,生体での観察が可能なMRIとの対比を詳細に 行っておくことでより生かされる.我々はBTBR脳梁欠損マウスで 拡散テンソルtractographyと透明脳とを組み合わせて白質路の詳 細な検討を行い,ventral hippocampal commisureの位置について の 新 た な 知 見 を 報 告 し た.ま た,拡 散 テ ン ソ ル や Neurite orientation dispersion and density imagingの定量パラメータと透明 脳での計測値とをThy1-Cre-YFP蛍光マウスで比較検討し,拡散パ ラメータの検証を行った.透明脳化技術とMRIを相補的に利用し,
ex vivoとin vivo,細胞レベル(nm~μm)と組織レベル(mm)と 言った従来別々に観察されてきた情報を橋渡しすることは,神経解 剖・神経科学研究にとって非常に挑戦的かつ重要な課題であると考 える.
《略歴》1959年東京生まれ.1984年 東京大学医学部卒.東大病院,駒込病院放射線科にて 研修・勤務の後,87-88年米国UCSF神経放射線部門に留学.Barkovichらと共同研 究.1995年山梨医大放射線部助教授,2000年東大放射線科助教授を経て,2008年よ り順天堂大学教授.
放射線学会理事,磁気共鳴医学会理事・同学会雑誌(MRMS, IF 1.5 2014)編集委員 長,日本学術会議 連携会員,第107回医師国家試験(2013年2月施行)試験委員長,
CATO CBT実施委員会委員,PMDA専門委員
第43回磁気共鳴医学会大会長(2015),第46回日本神経放射線学会会長(2017予定)
第44回ベルツ賞(2007)
著書に“よくわかる脳MRI”,“所見からせまる脳MRI”,“これでわかる拡散MRI”等.
主な研究テーマは頭蓋内血管および血管壁の可視化,拡散テンソルtractographyお よび次世代拡散MRIを用いた脳のconnectivity
ホットトピックス HT-05:MRIの最先端技術-何をめざし,何を還元する か-
5月18日(水) 13:15~15:15 第7会場(ポートピアホテル本館B1F 偕楽1)
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トト ピッ クス
HT-05-2
定量的磁化率マッピングで脳の構造と酸 素代謝をみる
北海道大学大学院放射線診断科
○工藤與亮,藤間憲幸,Khin Khin Tha,清水幸衣,
原田太以佑,吉田篤司
磁化率(χ)は物質に固有の物性値であり,常磁性体は磁 化率が正の値であるためMRIの静磁場中で局所磁場を強く し,反磁性体は磁化率が負の値であるため局所磁場を弱め る.局所磁場の変化はMRIではスピン位相の変化になるた め,これらの物質の存在により位相画像上でのコントラスト を生じる.また,定量的磁化率マッピング(quantitative susceptibility mapping,QSM)という手法により,ピクセル 毎の磁化率を定量化して画像化することが可能となってお り,常磁性体や反磁性体の存在による局所磁化率変化を定量 評価することができる.脳内に存在する常磁性体として,組 織鉄(フェリチン)や脱酸素化ヘモグロビンがあり,QSMに よって組織鉄の定量が可能となるため,大脳皮質や深部灰白 質の鉄沈着を評価することができる.また,脱酸素化ヘモグ ロ ビ ン の 定 量 に よ っ て 酸 素 摂 取 率(oxygen extraction fraction,OEF)の画像化が可能となり,MRIでも酸素代謝の 情報が得られるようになった.脳内の反磁性体としてはミ エリンがあり,QSMによって白質内構造が仮視化されるが,
磁化率にはテンソルとしての性質もあるため,拡散テンソル 画像のような磁化率テンソル画像により白質線維の描出も 可能となっている.本講演では磁化率の基礎的な性質や QSMの手法を紹介し,パーキンソン病,多発性硬化症,慢性 虚血性疾患などの様々な疾患における臨床応用について概 説する.
《略歴》平成元年 3 月 北海道札幌北高等学校 卒業 平成 7 年 3 月 北海道大学 医学部 卒業 平成 7 年 4 月 北海道大学 医学部 放射線科 入局
平成11年 4 月 北海道大学大学院 医学研究科 博士課程 入学 平成15年 3 月 北海道大学大学院 医学研究科 博士課程 修了 平成16年 4 月 北海道大学 医学研究科 放射線医学分野 助手 平成18年 5 月 米国Wayne State University MR Research Center 留学 平成19年 4 月 北海道大学病院 放射線科 助教
平成20年 4 月 岩手医科大学 先端医療研究センター 講師 平成23年 4 月 岩手医科大学 医歯薬総合研究所 講師
平成25年 4 月 北海道大学病院 放射線部 准教授,放射線診断科長
HT-05-3
拡散で脳微細構造をみる
名古屋大学医学部附属病院 放射線科
○田岡俊昭
拡散画像は水分子の微視的な運動を描出する手法である.自由水での拡散現象は 個々の水分子の不規則な運動によってもたらされている.1905年のアインシュタイン の論文では,分子の変位した距離をλxとして,分子の移動と時間の関連を,λx=√
<x2>=√2Dtとし,分子の位置の二乗平均<x2>が拡散時間(t)に比例するとしてい る.二乗平均は統計での分散に相当し,拡散によりある分子がある位置に存在する確 率は正規分布に従うことになる.拡散検出傾斜磁場(MPG)を用いて生体内の拡散現象 を観察する方法は1965年にStajskalとTannerによって報告された.1985年にこの手法 を用いて臨床例の拡散画像を実用化したのはLeBihanらである.医学領域では,1990 年にMoseleyらが脳での異方性拡散に関しての初の報告をしてから,テンソルという 概念を用いて拡散を三次元的に捉えようとするトレンドが始まったと言える.1999年 に,森らによって拡散テンソル法により白質路を描出するトラクトグラフィーが開発 されてからは,拡散テンソル法の臨床応用が一気に進んだ.
拡散テンソル法は,「拡散は正規分布に従う」という前提に基づく.しかし,生体内 には複雑な壁構造が存在し,正規分布モデルでの近似には限界がある.これを解決す るには,水分子の速い拡散から遅い拡散までの確率分布の観察が必要である.確率分 布の評価法の1つにq-space imaging(QSI)がある.QSIでは,様々なMPGの強さで速い 拡散から遅い拡散までの情報を収集し,確率分布関数の形で表現する.ただ,QSIは撮 像時間が長いという問題がある.その解決法の一つとして,比較的短い時間で収集で きる拡散尖度画像がある.尖度は正規分布からの逸脱をみる統計量であり,尖度が高 い,つまり正規分布からのずれが大きいほど,組織や細胞内の構造などにより拡散が 制限されると共に,拡散分布の多様性が増していることが示される.ただし拡散尖度 の上昇が意味するものが具体的には明確でない.その解決法の一つがNeurite orientation dispersion and density imaging (NODDI)と呼ばれる画像法である.ワトソ ン分布というモデルを用いて,脳内の微細構造を解析する手法であり,細胞内の制限 拡散,細胞間の束縛拡散,そして脳脊髄液成分の自由拡散の3つのコンパートメントに 分けて,拡散画像の信号への寄与の比率を算出する.本講演では,これらの拡散画像 の手法による脳微細構造の評価について紹介したい.
《略歴》平成元年 3 月 奈良県立医科大学卒業
平成元年 5 月 奈良県立医科大学附属病院臨床研修医(放射線科)
平成 4 年 7 月 奈良県立医科大学助手(放射線医学)
平成 5 年 6 月 奈良県立奈良病院医員(放射線科)
平成 9 年 4 月 奈良県立奈良病院医長(放射線科)
平成10年 7 月 奈良県立医科大学助手(腫瘍放射線医学)
平成11年 7 月~平成12年10月 ア イ オ ワ 大 学 放 射 線 科 客 員 研 究 員(Prof.
William Yuh)
平成14年 7 月 奈良県立医科大学助手(放射線医学)
平成16年 4 月 奈良県立医科大学助手(中央放射線部)
平成18年 6 月 奈良県立医科大学講師(中央放射線部)
平成19年10月 奈良県立医科大学准教授(中央放射線部)
平成27年 4 月 名古屋大学附属病院 病院准教授(放射線科)
賞平成11,14,15,17年 日本神経放射線学会優秀発表賞 平成19年 日本神経放射線学会加藤賞
平成20年 奈良県立医科大学中島佐一学術奨励賞 平成20年 北米放射線学会Certificate of Meritt賞 平成21年 日本医学放射線学会Bronze Medal賞 平成26年 MRMS誌 Most Outstanding Reviewer 平成27年 北米放射線学会Certificate of Meritt賞
ホットトピックス HT-05:MRIの最先端技術-何をめざし,何を還元する か-
5月18日(水) 13:15~15:15 第7会場(ポートピアホテル本館B1F 偕楽1)
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