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5月20日(金) 8:00~10:00 第3会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室B)

ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 78-82)

ホッ トト ピッ クス

座長:

飯塚高浩(北里大学医学部 神経内科学)

中根俊成(熊本大学医学部附属病院 神経内科(分子神 経治療学寄附講座))

≪ねらい≫

過去10年,自己免疫性神経疾患における診断技術の進歩は めざましい.2007年に報告された抗NMDA受容体抗体を皮 切りに,新規の神経細胞表面抗原やシナプス蛋白に対する抗 体が次々と同定され,これまで原因不明とされてきた脳症や 脳症,てんかんや精神疾患の一部の病態が解明されてきてい る.自己抗体は中枢神経系のみならず,自律神経系や神経筋 接合部なども含め,新規の抗体が同定されている.一方,表 現型の多様性も指摘されており,抗体と神経症状は必ずしも 一対一の対応ではない.また,細胞内シナプス蛋白である GADを認識している抗GAD抗体のpathogenicityについては 未だに結論は出ていない.本企画では,抗体毎に抗体に関連 した臨床スペクトラムと病態をレビューし,臨床診断に役立 つ最新知識を受講者に提供したい.

共催:日本神経免疫学会

HT-10-1

免疫性神経疾患と自己抗体:この10年で 何が明きらかにされたか

岐阜大学大学院医学系研究科 神経内科・老年 学分野

○犬塚 貴

さまざまな神経疾患において,血液・髄液中に抗神経抗体が発見され,その抗体のバ イオマーカーとしての価値,病原性の有無や機序が検討されてきた.報告される抗体 は,ある疾患や症候への特異性が強調されるが,時を経ると多様な表現型が追加され て来るのが一般的である.病原性については対応神経組織の病理学的変化,動物や病 態モデルでの受動免疫の成立まで示せる場合はごく限られている.しかし,ここ10年,

抗神経抗体の検出技術はめざましく,チャネルや受容体などの細胞表面分子を標的と する新規の抗体が次々と報告されてきた.細胞内抗原と異なり,抗体のアクセスが容 易あり病原性の可能性も高い.またシナプス内の抗原もシナプス顆粒の放出開口時や ピノサイトーシスを介して抗体が比較的良くアクセスできると考えられている.これ まで原因不明とされてきた脳炎や脳症,てんかんや精神疾患の一部の症例に,NMDA 受容体,VGKC複合体,GABAB受容体などに対する抗体を有するものが発見されてお り,その病態が解明されてきた.自己抗体には辺縁系や大脳を標的とする上記の抗体 の他,シナプス内のGADに対する抗体陽性患者が知られてきており,辺縁系・大脳に 加えて小脳や脊髄を標的とし,小脳失調症やステッフパーソン症候群を呈する場合が ある.重症筋無力症においては21世紀に入り,従来から知られているアセチルコリン 受容体抗体に加えて抗MuSK抗体が発見され,更に2011年に抗Lrp4抗体も発見された.

抗神経節性アセチルコリン受容体抗体陽性例には,自己免疫性自律神経障害が起こり やすいことが知られている.このように中枢神経系だけではなく,自律神経節や神経 筋接合部などに対しても新規の抗体が同定されている.但し,抗体と神経症状は必ず しも一対一対で対応するわけではない.臨床表現型の多様性の問題,抗体を生成分泌 する細胞群の成り立ち,中枢神経内へのリンパ球・抗体移行の機序,抗体の神経組織へ の傷害機序など,多くは未解決である.神経細胞表面やシナプスの抗原を認識する自 己抗体陽性疾患では,傍腫瘍性のこともあれば,腫瘍とは無関係に発症することも多 い.治療に関しては,免疫療法もしくは腫瘍合併例では腫瘍に対する治療が必要であ る.これらの治療が適切になされることにより,良好な経過を示し,完全回復もまれ ではない.早期の診断と適切な免疫療法が重要であり,本邦での免疫療法の早急な保 険適応が期待される.

《略歴》岐阜大学大学院医学系研究科 神経内科・老年学分野 教授 1976年3月 新潟大学医学部卒業

1978年6月 新潟大学脳研究所神経内科入局 1981年5月-1984年6月アメリカ合衆国NIH客員研究員 1994年4月 新潟大学医学部附属病院講師 (神経内科) 1999年1月 岐阜大学医学部教授(高齢医学)

組織改編により

2004年4月 岐阜大学大学院医学系研究科教授(神経内科・老年学分野)

現在に至る

(2008.4-2012.3 同上 医学系研究科長・医学部長)

主な所属学会

・日本老年医学会 (理事,専門医,指導医)

・日本神経学会 (代議員,専門医,指導医)

・日本内科学会 (評議員,指導医)

・日本神経免疫学会(理事)

・日本認知症学会(専門医)

・日本難病医療ネットワーク学会(理事)

ホットトピックス HT-10:免疫性神経疾患における自己抗体:知っておく べき治せる病態

5月20日(金) 8:00~10:00 第3会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室B)

206 -ホッ

トト ピッ クス

HT-10-2

抗NMDA受容体抗体関連症候群

北里大学医学部神経内科学

○飯塚高浩

抗NMDA受容体(NMDAR)脳炎は,NR1 subunit 上の細 胞外立体的エピトープを認識するIgG 抗体によって生じる疾 患である.本疾患は卵巣奇形腫を有する若年女性に好発す るが,性別や腫瘍の有無に関係なくあらゆる年齢層で発症し 得る.統合失調症,てんかん,CJD,seronegative NMO,

HSV脳炎でも本抗体が血清から検出され,臨床スペクトラム の多様性が指摘されているが,偽陽性,偽陰性も含め,抗体 結果を慎重に判断する必要がある.本疾患は治療反応性の 疾患とされているが,約半数は第一選択免疫療法が無効であ り,死亡率は約7%,発症24ヵ月後も約20%に高度の後遺症 を 認 め て い る.難 治 例 で は 第 二 選 択 免 疫 療 法

(cyclophosphamide とrituximab)の早期開始が推奨されて いるが,本邦では未承認のため,十分な免疫治療が行えない のが現状である.

本講演では,抗NMDA受容体抗体に関連した臨床スペク トラムと病態をレビューし,臨床診断に役立つ最新知識を提 供したい.

《略歴》1987年:北里大学医学部卒業.

1994年:University of Texas, Southwestern Medical Center at Dallas へ2年間留学.

1998年から北里大学医学部神経内科学講師に就任.

2013年11月から診療准教授に就任.

2015年7月から准教授に就任し,現在に至る.

主な研究テーマ:自己免疫性脳炎,MELASおよび片麻痺性片頭痛の病態 現在は,自己免疫性脳炎を中心に臨床研究をしています.

HT-10-3

抗GAD抗体関連症候群

東京医科大学八王子医療センター 神経内科

○南里和紀

GAD(glutamic acid decarboxylase)は,興奮性伝達物質であるグルタミン酸から抑制性伝 達物質のGABAを合成する酵素である.抗GAD抗体は,1型糖尿病や多腺性自己免疫症候群 のみならず,stiff-person症候群(SPS)や小脳失調症などの神経疾患でも認められ,また,て んかん,辺縁系脳炎,認知機能障害との関連についても報告されている.

1.SPS

持続性の全身性筋硬直と発作性有痛性筋痙攣を主症状とする症候群である.本症候群の約 60%にGADに対する自己抗体が存在することが示された.抗GAD抗体は高力価であり,

GABA作働性抑制ニューロンが障害され,α運動ニューロンの興奮性が高まり筋硬直や筋痙 攣が生じると考えられている.

通常は慢性進行性である.病初期は,体幹や四肢の近位筋に局所の筋痙攣が発作性に出現 し,数週から数ヵ月で全身性の筋硬直や痙攣をきたすようになる.治療としては,diazepam,

baclofenなど,また,免疫療法としてはステロイド,免疫グロブリン療法などが行われる.

2.抗GAD抗体関連小脳失調症

女性に多く,中高年発症,抗甲状腺抗体陽性例が多い,1型糖尿病を併発することが多い,

また抗GAD抗体は2000 U/mL以上の高力価例が大多数を占めるが,低力価例の報告もある.

現段階では,抗GAD抗体のみで小脳失調症をおこすという明白な証拠はなく,抗GAD抗体 以外の自己抗体や細胞性免疫の関与も推測されている.小脳失調症の末梢血リンパ球T細胞 はIFN-γを高濃度に産生したが,SPSでは産生がなかったことから,炎症反応が小脳萎縮と 関連している可能性がある.

抗GAD抗体陽性の多腺性自己免疫症候群に小脳失調を来した報告が7報告あり,うち2例は 抗GAD抗体は低力価であった.

3.てんかん,辺縁系脳炎

自己免疫性てんかんの15%が抗GAD抗体陽性であったと報告されている.また,抗GAD抗 体が1.8 U/mLとわずかな陽性例,抗GAD抗体関連脳炎17例中12例が抗GAD抗体100U/mL 以下であったなど,低力価例も散見される.

4.認知障害

抗GAD抗体陽性(平均30 U/mL)の糖尿病患者は陰性の2型糖尿病患者に比べ認知機能が低 下しているとの報告がなされた.抗GAD抗体は認知機能障害に関連している可能性がある.

小脳失調,治療抵抗性てんかん,辺縁系脳炎などの神経疾患患者では,抗GAD抗体は高力 価だけでなく低力価であっても治療可能な自己免疫性神経疾患である可能性があり underdiagnosisせず,免疫治療を考慮することが望まれる.

《略歴》昭和60年 東京医科大学卒業

平成 8 年 フランス国立科学研究センター脳血管研究所に留学 平成14年 東京医科大学八王子医療センター 神経内科科長 平成19年 東京医科大学第三内科 准教授

平成23年 東京医科大学第三内科 教授 平成25年 東京医科大学神経内科 教授 東京薬科大学薬学部 客員教授 日本神経学会 代議員 日本神経免疫学会 評議員 日本脳卒中学会 評議員 日本神経治療学会 評議員

ホットトピックス HT-10:免疫性神経疾患における自己抗体:知っておく べき治せる病態

5月20日(金) 8:00~10:00 第3会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室B)

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-ホッ トト ピッ クス

ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 78-82)

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