ガイ ドラ イン コー ス
座長:
大澤美貴雄(医療法人財団 健貢会 東京クリニック ボ ツリヌス神経治療センター)
柏原健一(岡山旭東病院 神経内科)
≪ねらい≫
2016年度に刊行予定のジストニア診療ガイドラインの要 点について討議を行う.
G-03-1
ジストニア診療ガイドライン overview
近畿大学医学部堺病院 神経内科
○中村雄作
ジストニア診療ガイドラインの特徴と目的
ジストニア診療ガイドライン委員会(梶龍兒委員長)でジストニア研究班(長谷川 ら)の成果を基に検討・作成された.神経内科診療に役立つ内容,構成を目標とし神経 内科医師以外の内科医師全般や一般の人たちにも容易に理解できるように配慮した.
作成はMinds2014に従った.スコープを作成し,それに基づきclinical question(CQ)
を作成した.エビデンスは,A(強),B(中),C(弱),D(とても弱い)とし,推奨の強さ は,「1」:強く推奨する,「2」:弱く推奨する,を用い1Aや2Dなどと記載した.
ジストニアの定義と分類
ジストニアは「反復性・捻転性の持続する一定のパターンを持った筋収縮により特 定の姿勢や動作が障害される病態」(Marsden)であり,本邦ではジストニア班(長谷 川ら)によりジストニア運動とジストニア姿位が加味された.ジストニア分類は2013 年分類案(Albaneseら)に準拠した.分類は臨床特徴(clinical characteristics)と病因 (etiology)の二軸構成である.臨床特徴は①発症年齢 (Age at onset),②罹患部位 (body distribution),③経過 (temporal pattern),④随伴症状 (associated features)に 分類された.病因は,⑤神経病理所見(neuropathology),⑥原因 (etiology)である.
ガイドラインの構成
総論,各論および一般向けにジストニアの予後,経済負担・社会資源を取り上げた.
総論ではジストニアの病型,病態,診断法,治療を取り上げた.ジストニアは診断困難 な場合も多いため一般への啓蒙も念頭に置いたCQを取り上げた.診断では遺伝性ジ ストニアを取り上げた.「CQジストニアは治りますか」などを設定し最新治療法とし てボツリヌス毒素治療,バクロフェン髄注療法,脳刺激法と日常診療で重要なリハビ リテーションを取り上げた.各論の構成は部位別に眼瞼,上肢,体幹,下肢などの各項 目について診断・治療・予後のCQを作成した.発生頻度が多い職業・スポーツ・外傷 および音楽家を取り上げた.各種器具などの繰り返す練習によりジストニアの発症リ スクが高いが一方指導者などの認識が低く警鐘を鳴らす意味も考えられた.パーキン ソン病やその他の神経疾患に合併するジストニアは,また薬剤性ジストニアは治療に 関連したもので注意を要する病態であり取り上げた.
結語
Minds2014に準拠し最新の診断基準,治療法などを一般の人にも利用できるように 作成した.
《略歴》所属・身分
近畿大学医学部堺病院神経内科教授 学歴および職歴
昭和53年 4 月 鳥取大学医学部卒業 昭和53年 7 月1日 大阪大学第二内科研修医 昭和54年 7 月1日 社会保険紀南綜合病院内科医員
昭和57年 7 月1日 大阪大学医学部附属病院中央臨床検査部医員 昭和62年12月1日 大阪大学第二内科助手
昭和63年 7 月1日 近畿大学医学部神経内科医学部講師
平成 8 年 4 月より平成10年 3 月 ロンドン大学 Institute of Neurology
(Prof. John Rothwell研究室)に留学
平成10年 4 月1日 国立泉北病院神経内科医長および近畿大学医学部 神経内科特任助教授
平成11年 3 月1日 近畿大学医学部堺病院神経内科助教授 平成18年 4 月1日より平成24年12月 近畿大学医学部堺病院副院長 平成15年11月1日より 近畿大学医学部堺病院神経内科教授
ガイドラインコース G-03:ジストニア診療ガイドライン
5月19日(木) 15:15~16:55 第9会場(ポートピアホテル偕楽3本館B1F)
252 -ガイ
ドラ イン コー ス
G-03-2
眼瞼痙攣・痙性斜頸の診断と治療
岡山旭東病院 神経内科
○柏原健一
眼瞼痙攣,痙性斜頸はそれぞれ眼部,頚部の局所性ジストニアである.
治療には,いずれもボツリヌス注射が第一選択となる.
眼瞼痙攣は,眼輪筋など眼裂周囲の筋が間欠的または持続的に不随 意収縮し,不随意に閉眼したり,円滑な開眼に支障を生じる場合に診断 する.多くは弧発性,発症のピークは50代で,女性に多い.主な訴えは 開眼(開瞼)困難である.軽症例では不随意運動が目立たず,開眼困難 や眼球表面の不快感のみを訴え,ドライアイなどの誤診につながり易 い.重症例は終始閉眼し,機能的に盲目となる.口舌ジスキネジアや,
他部所のジストニアを伴うこともある.眼瞼痙攣に加えて,顔面,下顎,
舌,咽頭,喉頭,頚部のいずれかにジストニアを認めるものをMeige症 候群と呼ぶ.しばしば合併する開眼失行は同一スペクトラムの疾患で ある.不規則な閉瞼や開眼困難の検出に軽瞬テスト,速瞬テスト,強瞬 テストが役立つことがある.鑑別であるが,パーキンソン病や抗精神 病薬は二次性に眼瞼痙攣を生じることがある.片側顔面痙攣は通常片 側性で,鑑別は容易である.両側性の場合も発症時期が左右で異なり,
痙攣は左右非同期である.治療は眼輪筋へのボツリヌス注射が第一選 択である.トリヘキシフェニディル,クロナゼパム,ゾルピデムの有効 例がある.ボツリヌス治療無効例には眼輪筋切除術,Meige症候群では 深部脳刺激術も試みられる.羞明が強い場合に遮光眼鏡の有効例があ る.
痙性斜頸は,頚部筋の不随意な常同的収縮で生じる頚部随意運動や 頭位の異常である.頭位の偏倚,可動制限,疼痛などを呈す.異常頭位 として回旋,側屈,前後屈,肩甲挙上,側弯などを生じる.顔面に触れ ると偏倚が改善する感覚トリックが見られる.中年期の発症が多く,
ストレス下の長期異常姿位持続は誘因の1つである.診断は問診,視診 により容易である.パーキンソン病や多系統萎縮症など錐体外路症状 を呈する疾患や抗精神病薬で二次的に生じることもある.鑑別には頚 部の筋力低下や骨格異常が挙げられる.治療はボツリヌスが第一選択 薬で,A型毒素製剤,B型毒素製剤の二種が利用できる.ボツリヌス治 療が無効な場合,リハビリテーションあるいはトリヘキシフェニディ ルを併用する.これら治療に抵抗し,社会生活に支障があり,罹病期間 が長い場合,深部脳刺激術を選択する.長期罹患で拘縮など骨や軟部 組織に二次的変化が進行すると,治療効果は期待出来ない.
《略歴》1981.3 岡山大学医学部卒業
1981.4 岡山大学大学院医学研究科 神経精神医学 1985.3 上記終了
1985.4 岡山大学付属病院神経科精神科 1985.5 高知県立中央病院 神経内科 (高知)
1987.4 国立療養所山陽荘病院(現 宇部医療センター) 神経科 医長 (山口)
1988.4 岡山大学付属病院神経科精神科 助手
1989.8 米国アリゾナ大学医学部薬理学教室 客員研究員 (2年間)
1994.6 岡山大学神経内科 講師 2001.4 岡山旭東病院 神経内科 主任医長 2012.4 岡山旭東病院 神経内科 部長
日本神経学会専門医,代議員,日本脳卒中学会専門医,日本てんかん学会専門医,評議 員,日本神経治療学会評議員,日本パーキンソン病および運動障害疾患学会(MDSJ)広 報委員長
G-03-3
全身性ジストニア,書痙・上肢のジスト ニアの診断と治療
鳥取大学病院 脳神経内科
○野村哲志
全身性ジストニアとは「体幹+その他2部位以上」の罹患 と定義され,下肢罹患の有無を記載する.ヒトコブラクダ様 姿勢が特徴とされるが,他にもさまざまな姿勢を呈しうる.
ジストニア以外の症候を認める場合を中心に,原因疾患の検 索を行う.遺伝性ジストニアは孤発性にも認められるが,と くに親族内発症がある場合には関連遺伝子の検索を検討す る必要がある.特徴として,異常姿勢やエネルギー消費の亢 進による合併症の頻度が高い.治療では内服が第一選択と されるが[2D],実際にはドパ反応性ジストニア(瀬川病など)
[1B]を除き顕著な効果を期待し難いため,定位脳手術を検討 する[1B].眼瞼痙攣・痙性斜頸のみを治療対象とする場合に はボツリヌス毒素療法を行う[1B].海外ではバクロフェン髄 腔内投与療法も試みられている[2C].また,ジストニア重積 状態は緊急症であり,集中治療を要することが多い.
書痙は上肢ジストニアの一型であり,書字の際に上肢の随 意運動に支障を来して円滑な書字ができないことから疑う.
多くの場合,初期には他の動作に支障を認めないが(動作特 異性),しばしば次第に他の動作も侵される.振戦を伴う場 合には,生理的振戦の増強,本態性振戦,パーキンソン病の 振戦,小脳性振戦等ジストニアの原因の鑑別(薬剤性を含 む),非ジストニア性書字障害の鑑別を行う.治療としては ボツリヌス毒素(BTX)治療で[1A],本邦ではBTX治療の保 険適応症がないため,抗コリン剤,抗てんかん薬,抗不安薬 などが用いられている[1C].バイオフィードバック法,指装 具,書字装具,冷水法など種々の治療法があるが,併用療法 に留まる[1B].書痙に対する視床手術療法は本邦で高い治療 効果が報告されており,社会生活や日常生活に高度の障害を 与えている場合に検討する[1B].
《略歴》1996年 3 月 島根医科大学卒業 2001年 9 月 鳥取大学大学院卒業
2001年11月 済生会境港総合病院神経内科勤務 2002年 5 月 国立療養所西鳥取病院神経内科勤務 2003年11月 国立米子病院神経内科勤務
2006年 8 月 鳥取大学医学部附属病院脳神経内科勤務 2007年 4 月 鳥取大学医学部附属高次集中治療部助教 2008年 9 月 臨床神経生理学会認定医取得
2009年 2 月 インスブルック医科大学Visiting Doctor 2009年 6 月 鳥取大学医学部附属神経内科助教 2014年 4 月 鳥取大学医学部附属神経内科学内講師
ガイドラインコース G-03:ジストニア診療ガイドライン
5月19日(木) 15:15~16:55 第9会場(ポートピアホテル偕楽3本館B1F)
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G-03-4
遺伝性ジストニア
徳島大学 神経内科
○宮崎由道,宮本亮介,瓦井俊孝,
梶 龍兒
遺伝性ジストニアでは,他の遺伝性疾患と同様,常染色体優性遺伝形 式,常染色体劣性遺伝形式,性染色体劣性遺伝形式をとるものがそれぞ れ報告されている.一般に常染色体優性遺伝形式では50%の確率で子 に遺伝するが,ジストニアにおいては浸透率が変動することが知られ ており,遺伝子異常を親から受け継いだとしても必ず発症するとは限 らない.また,家系内において症状の重症度の違いが大きく,親が軽症 で罹患者であることに気づかれないこともある.突然変異によってジ ストニアが発症することもある.
現在,遺伝性ジストニアとして登録されているものは,DYT遺伝子 としてはDYT1からDYT27まであり,その中で原因遺伝子が判明して いるものは19ある.脳内鉄沈着神経変性症(NBIA; neurodegeneration with brain iron accumulation)では,10の原因遺伝子が判明している.
遺伝子型と症状は一致することが多いが,発症年齢や重症度などは多 様である.
DYT遺伝子として本邦で報告されているものは,DYT1,DYT3,
DYT5,DYT6,DYT10,DYT11,DYT25がある.DYT3はフィリピン に多い疾患であるが,日本国内ではフィリピン系日本人で見出されて いる.DYT1は10歳前後にジストニアが四肢(特に下肢)に出現し,月 または年単位で全身に広がる捻転性ジストニアである.DYT5(瀬川 病)は小児期に足にジストニアで発症し,症状の日内変動があり,睡眠 で症状が軽快する.少量のレボドパ投与が有効である.DYT10は発作 性運動起源性ジスキネジア(急に走ったりした時に足がもつれる,など)
の症状がみられる.DYT11やDYT26ではジストニア以外にミオクロー ヌスが認められる.
NBIAでは,無セルロプラスミン血症を除いて,殆どが幼小児期に先 進発育遅滞で発症し,その後ジストニア,パーキンソニズムなど多種な 神経症状を呈する.頭部MRIでは,淡蒼球や黒質を中心にT1強調画像 で低信号を呈する鉄沈着所見が認められる.
《略歴》学歴・職歴
平成16年 3 月 愛媛大学医学部医学科 卒業 平成17年 4 月 財団法人永頼会松山市民病院 研修医 平成19年 4 月 愛媛大学医学部附属病院老年/神経内科 医員 平成20年 6 月 徳島大学病院神経内科 医員
平成22年 4 月 独立行政法人国立病院機構愛媛病院 統括診療部神経 内科 医師
平成23年 4 月 徳島大学病院神経内科 医員 平成25年 4 月 徳島大学病院神経内科 特任助教 免許・資格等
平成20年 9 月 日本内科学会 認定内科医 平成24年 4 月 医学博士(愛媛大学)
平成24年 7 月 日本神経学会 神経内科専門医 平成25年11月 日本老年医学会 老年病専門医 所属学会・研究会
日本内科学会 日本神経学会 日本老年医学会
日本脳神経超音波学会 日本臨床神経生理学会 日本脳卒中学会
ガイドラインコース G-03:ジストニア診療ガイドライン
5月19日(木) 15:15~16:55 第9会場(ポートピアホテル偕楽3本館B1F)
ガイ ドラ イン コー ス