• 検索結果がありません。

5月20日(金) 8:00~10:00 第2会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室A)

ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 158-161)

シン ポジ ウム

座長:

西山和利(北里大学医学部 神経内科学) 辻野 彰(長崎大学病院 脳神経内科)

≪ねらい≫

画像診断技術や機材の発達によって,従来は描出が不可能 であった微小病巣あるいは軽度の病変も捕捉されるように なってきた.血管自体の病的変化も非侵襲的,かつ高精度に 検査することが可能となっている.このような診断技術の 向上や疫学的知見に基づいて,脳卒中や一過性脳虚血発作の 病態の理解が進歩し,新しい疾患概念が矢継ぎ早に提唱され てきている.神経障害の程度は脳循環障害の発生機序,重症 度や持続時間によって規定されており,病態の迅速な把握に よってより良い急性期治療や再発予防が可能となる.一方,

脳血管内治療の発展によって脳梗塞の急性期治療には大き なパラダイムシフトが予測されている.本シンポジウムで は脳卒中の病態と治療を最適化するために,脳卒中の新しい 概念について議論し望ましい治療体制の構築を目指す.

S-11-1

TIAに関するパラダイムシフト

国立循環器病研究センター

○峰松一夫

脳卒中の"前触れ発作"とされる一過性脳虚血発作(transient ischemic attack, TIA)は,従来は「脳虚血による局所神経症状が出 現するが24時間以内に完全に消失するもの」と定義されてきた.最 近,MRI拡散強調画像 (DWI) の普及,TIA登録研究等により,

TIAの診断基準の再検討が行われ,その診断精度や新たなリスク判 定法の開発,発症早期の診断・治療体制の再構築等が強調されるよ うになった.特に,1)診断基準における症状持続時間と画像診断 所見の取り扱い,2)ABCD2スコア,DWI所見,血管病変による脳 梗塞(脳卒中,他の循環器疾患)発症リスク評価,3)TIAクリニッ クなどの迅速診療体制の構築などが話題となっている.

欧州,北米とわが国をはじめとするアジア諸国とでは,疾病構造 や医療システムが大きく異なるため,欧米の研究成果をそのままわ が国やアジア諸国に適用することは問題である.一方で,TIAに関 連する国内からのまとまった臨床研究は非常に少なかった.

こうした情勢を背景に,我々はTIA研究班を組織し,各種レベル での診療実態アンケート調査,研究班所属施設での後ろ向き症例登 録調査を行った.さらに,全国57施設の協力を得て,前向き登録追 跡調査,PROMISE TIAを実施し,データ収集・固定・解析が終了し たところである.解析対象1,365例,DWI実施率97%,血管病変評価 実施率96%,1年間追跡率91.2%を誇る本研究では,発症メカニズム として細動脈病変や頭蓋内脳動脈病変の関与が高く,1年間の脳梗 塞発症率約8%(90日以内6%)であった.ABCD2スコアは脳梗塞 発症リスクと有意に関連したが,DWI病変や頭蓋内動脈病変の有 無は脳梗塞リスクに関連しなかった(論文投稿中).

本シンポジウムでは,上記PROMISE TIAを核とするTIA研究班

(峰松班)の研究成果を中心に,最近報告されたTIAregistry.orgや Korean TIA Registryの結果をも交えて,TIA診療のパラダイムシ フトを論ずる.

《略歴》国立研究開発法人国立循環器病研究センター/副院長

略歴:1977年九州大学医学部卒業.’79年国立循環器病センター内科レジデン ト,’82年内科脳血管部門医師,’89年同センター研究所室長.’90~’92年米国 Massachusetts大学留学.’95年脳血管内科部長.2010年副院長,現在に至る.

所属学会:世界脳卒中機構(理事),アジア太平洋脳卒中機構(理事),日本脳 卒中学会(理事),日本脳卒中協会(常務理事),日本神経学会(理事),日本脳 神経超音波学会(理事長),日本脳循環代謝学会(理事),他

編集委員:脳と循環(編集主幹), Stroke, Int J Stroke, Cerebrovasc Dis, J Stroke Cerebrovasc Dis, Eur J Neurol

書籍:新版脳梗塞rt-PA静注療法実践ガイド(診断と治療社 2013),脳卒中レジ デントマニュアル(中外医学社 2010, 2013),TIA急性期医療の実際(診断と治 療社 2013),他

研究班:①早期・探索的臨床試験拠点整備事業(H23-28,循環器医療機器分野)

総括研究代表者,②AMED研究費「脳卒中を含む循環器病の診療情報収集のた めのシステムの開発に関する研究(H27-28)」主任研究者,他

受賞歴:2010年度公益信託美原脳血管障害研究振興基金「美原賞」

シンポジウム S-11:脳卒中におけるemerging concepts

5月20日(金) 8:00~10:00 第2会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室A)

286 -シン

ポジ ウム

S-11-2

ATISとACVS

北里大学医学部 神経内科学

○西山和利

このシンポジウムの目的は脳卒中のemerging conceptに焦点をあてることで ある.私に与えられたテーマはATIS(atherothrombosis:アテローム血栓症)と ACVS(acute cerebrovascular syndrome:急性脳血管症候群)についての概説で ある.

虚血性脳卒中の主要病態の一つに動脈硬化がある.動脈硬化やプラーク破綻 で生じた血栓が,脳や心臓,下肢などの動脈を閉塞し虚血を生じる病態を総称し てATISと呼ぶようになった.ATISが冠動脈に起これば心筋梗塞や狭心症,脳に 起これば脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA),四肢で起これば末梢動脈閉塞症と なる.これまでは閉塞部位ごとに各専門科で個別に治療される傾向にあったが,

基礎となる病態は同一の動脈硬化性疾患である.虚血による障害が生じた臓器 が異なるだけで,その病態の過程や原因,治療は共通しており,これらの病態を ATISとして包括的にとらえ,専門科の垣根を越えて治療すべきあろう.

ACVSは昨今注目されているもう一つの疾患概念であり,急性期のTIAと虚血 性脳卒中を包括する臨床概念である.TIAは局所の脳,脊髄,網膜の虚血により 生じる一過性の神経学的機能障害で,脳梗塞を伴っていないもの,と定義されて きた.一方で,TIAの定義で症状の持続時間については,当初の「24時間以内」

から徐々に短縮された歴史があり,ついには「時間を区切らない」という変遷を たどってきている.脳梗塞を伴わないという定義からTIAの適切な診断には,

MRIなど画像検査の精度が大きな影響を与えるという臨床上の課題がある.昨 今ではTIA発症直後の再発や脳梗塞への進展のリスクの高さが示されており,

TIAを生じたら直ちに適切な評価と治療を開始できる医療体制の構築が重要で ある.救急疾患としてTIAと虚血性脳卒中は同一のスペクトラム上にあり,両者 を症状の持続時間のみで区別することは無意味である.循環器領域では不安定 狭心症と急性心筋梗塞を区別せずに一つの救急疾患として捉える急性冠症候群

(ACS)の概念が広まっている.ACVSはACSと同様にTIAと虚血性脳卒中とを 同一のスペクトラム上で捉えた概念である.

ATISもACVSも,病態の理解を重視し,治療を優先することに重きをおく姿 勢から提唱されはじめた新しい概念であり,これらについて解説する.

《略歴》昭和56年 兵庫県・灘高等学校 卒業 昭和62年 東京大学医学部医学科 卒業

平成 1 年 東京大学神経内科学教室(萬年徹教授主宰)へ入局 平成 1 年 日赤医療センター神経内科 医員

平成 2 年 国立療養所東京病院神経内科 厚生技官 平成 3 年 日赤医療センター神経内科 医員 平成 3 年 東京大学神経内科 医員

平成 4 年~平成 8 年 東京大学大学院医学系研究科(指導教官:金澤一郎教授)

平成 8 年~平成14年 海 外 留 学(University of British Columbia(カ ナ ダ),

Harvard Medical School(米 国),Cleveland Clinic Foundation(米国))

平成15年 東京大学神経内科学教室(辻省次教授主宰)へ帰国 平成15年 杏林大学神経内科学教室(作田学教授主宰) 助手 平成17年 杏林大学神経内科学教室(作田学教授主宰) 講師 平成18年 杏林大学医学部付属病院脳卒中センター 副病棟医長を兼務 平成20年 同センター 外来医長を兼務

平成22年 杏林大学神経内科学教室(千葉厚郎教授主宰) 准教授 平成24年 北里大学医学部神経内科学講座 主任教授

平成25年 北里大学病院脳血管センター(平成26年より脳卒中センターと改 称) センター長を兼務

平成27年 北里大学東病院 副院長を兼務

S-11-3

Cryptogenic strokeとESUS:概念の変遷

川崎医科大学病院 脳卒中医学

○八木田佳樹

脳梗塞のうち原因が特定できないものは全体の20-30%程度あると考えら れ,cryptogenic stroke(潜因性脳卒中)という名称が用いられてきた(Mohr JP. NEJM1988).これらのうち多くは塞栓源不明の脳塞栓症であるという 観点から,新たにEmbolic Stroke of Undetermined Sources(ESUS)という 概念が提唱されている(Hurt RG et al. Lancet Neurol 2014).この中には大 動脈病変や通常は塞栓源と考えない中等度以下の狭窄性血管病変を塞栓源 とするもの,卵円孔開存を介する奇異性脳塞栓症,塞栓源として低リスクの 心病変そして一過性心房細動などが混在しているものと考えられる.「塞栓 源不明」の診断は施設や状況により異なると考えられるため,ESUS International Working GroupではESUSの診断基準として,脳梗塞のうち1)

CT/MRI画像上ラクナ梗塞ではない,2)梗塞領域に灌流する頭蓋内外の動 脈に50%以上の狭窄がない,3)主な塞栓源リスクとなる心疾患がない,4)

動脈炎や動脈解離,片頭痛,血管攣縮,薬物など特定の原因がないものと定 めている.脳梗塞再発予防のための抗血栓療法は動脈原生と心原性で治療 方針が異なるため,塞栓源が特定できない場合,どのようなマネージメント が最適であるかという臨床上の問題が生じる.これまでの臨床研究の結果 から,現時点では塞栓源が同定されない場合,過度の出血性合併症リスクを 避けるため抗血小板療法が選択されることが多いと思われる.しかしこれ らの研究の多くは抗凝固療法としてワルファリンを用いたものであり,

non-vitamin K antagonist oral anticoagulant(NOAC)ではリスクより有益 性が勝るのではないかという期待もある.現在ESUSに対してNOACとア スピリンの有効性と安全性を検討する2つの国際共同臨床研究が進行中であ る.ESUSの中で一過性心房細動と深部静脈血栓を塞栓源とするものは少 なからず存在していると考えられるが,NOACはこれらの疾患に対する有 効性が示され,既に日常臨床で広く使用されていることから研究の結果が 待たれるところである.もう一つの視点はESUS例で,抗血小板療法を用い ていても再発する症例にはどのような特徴があるか解析し,そのような症 例で抗凝固療法を選択する,というものである.このような例を抽出する ことができれば抗血栓療法の方針決定に役立つものと考えられる.

《略歴》平成 4 年 3 月 大阪大学医学部卒業

平成11年 3 月 大阪大学大学院医学系研究科(内科学第一)修了 医学博 平成 4 年 6 月 大阪大学医学部附属病院(第一内科) 研修医 平成 5 年 5 月 国立大阪南病院 研修医・レジデント

平成12年 5 月 米国マウントサイナイ医科大学 リサーチフェロー 平成15年 4 月 大阪大学医学部附属病院(神経内科・脳卒中科) 医員 平成20年 2 月 大阪大学大学院医学系研究科(神経内科学) 助教 平成20年 4 月 大阪大学大学院医学系研究科(神経内科学) 医学部講師 平成26年 9 月 川崎医科大学脳卒中医学教室 教授 現在に至る 学会活動など

日本脳卒中学会(専門医,評議員),日本神経学会(専門医,指導医,代議 員,中国四国地方会世話人),日本内科学会(専門医,指導医,中国支部評 議員),日本脳循環代謝学会(評議員),日本神経治療学会(評議員),日本 脳神経超音波学会,日本心血管脳卒中学会,日本高血圧学会,日本神経科 学会,米国脳卒中学会,国際脳循環代謝学会,世界脳卒中学会,社団法人 日本脳卒中協会岡山県支部副支部長

シンポジウム S-11:脳卒中におけるemerging concepts

5月20日(金) 8:00~10:00 第2会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室A)

287

-シン ポジ ウム

ドキュメント内 第57回日本神経学会学術大会 抄 録 集 (ページ 158-161)

Outline

関連したドキュメント