シン ポジ ウム
座長:
松原悦朗(大分大学医学部 神経内科学講座)
三條伸夫(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学(神経内科))
≪ねらい≫
平成28年度より,認知症に対する国家戦略の一環として,
日本の65歳以上高齢者1万人を対象とした大規模認知症コ ホート研究がAMEDプロジェクトとしてスタートすること が予定されている.認知症の実態を把握し,そのリスク・防 御因子を明らかとするコホート研究で,これまで何を学び,
今後この認知症の急増する高齢化社会に如何に対峙するか,
コホート研究のこれからを紹介するとともに,これまで実績 がある認知症地域コホート研究の担当者が集い,日本におい て全国多地域共同による大規模認知症コホートを精度の高 い継続的な研究として成功させるために必要なノウハウ等 について議論を深めたい.
共催:日本認知症学会
S-09-1
なかじまプロジェクト:石川県七尾市に おける認知症早期発見・予防プロジェク ト
金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 脳老 化・神経病態学(神経内科学)
○山田正仁,篠原もえ子,岩佐和夫
演者らは認知症の早期発見と予防を目標とする地域基盤型研究 として,石川県七尾市中島町における認知症早期発見・予防プロ ジェクト(なかじまプロジェクト)を計画し,2006年度から脳健診 事業を継続している.中島町は人口約6,700人/高齢化率約37%
(2015年現在)で,わが国の約30年後の人口構成を示すモデル地域 である.なかじまプロジェクトでは,認知症・軽度認知障害(MCI)
に焦点を当てた脳健診事業のほか,認知症・MCIの危険因子・防御 因子に関する研究,早期発見・診断のためのツール開発研究(スク リーニング用タッチパネル式認知機能検査,脳磁図,脳画像,血液 マーカーなど),予防法開発研究(食品関連因子,運動・認知リハな ど)を行っている.60歳以上の地域住民を対象とする脳健診では,
地区別集団健診方式と戸別訪問調査方式を併用した悉皆調査を行 い(90%以上の調査率),認知症・MCIの有病率を明らかにした(65 歳以上における認知症有病率13.3%・MCI有病率15.5%).調査の経 過で,集団健診に参加せず戸別訪問調査を必要とした住民に認知症 やMCIが多いこと,すなわち調査方法や調査率に関連してバイアス が生じることが明らかとなった.ライフスタイルに関連する認知 症の危険因子・防御因子の研究では,認知機能健常者の緑茶摂取習 慣が将来の認知症・MCIの発症リスクの減少と関連することを見出 した.疫学的観察研究の成果に基づき緑茶や赤ワインなどの食品 に含まれる天然フェノール化合物(ポリフェノール類)に注目し,
アルツハイマー病(AD)の試験管内及び動物モデルで効果及び作 用機序を確認した上で,健常者及びADを対象とした臨床試験,地 域在住非認知症高齢者を対象とした予防介入試験へと進んでいる.
さらに,平成28年度から開始される大規模認知症コホート研究
(AMED)において,当地域を含む全国8地域における高齢者1万人 コホートの前向き縦断研究を実施し,全国規模で認知症の危険因 子・防御因子等を検討する.
《略歴》1980年東京医科歯科大学医学部卒業.同大学附属病院,都立広尾病院,リ ハビリテーションセンター鹿教湯病院,東京医科歯科大学病理学教室等で 研修,1984年 同 大学院修了(医学博士),1985年浴風会病院内科,1988 年カリフォルニア大学サンディエゴ校フェロー,1990年東京医科歯科大学 附属病院神経内科助手,1998年 同 講師,1999年東京医科歯科大学大学 院助教授(神経内科),2000年金沢大学医学部神経内科教授,2001年-(大学 院重点化に伴い)金沢大学大学院医学系研究科 脳医科学専攻 脳病態医 学講座 脳老化・神経病態学(神経内科学)教授,2004-2009年脳医科学専 攻長併任,2008年-現職(大学組織改編による),2014年-金沢大学附属病院 副病院長併任.厚生労働省・アミロイドーシス調査研究班(2005~2011年 班長),同 プリオン病及び遅発性ウイルス感染症調査研究班(2011年~
班長),AMED・プリオン病及び遅発性ウイルス感染症分子病態解明・治療 法開発研究班(2014年~ 班長)ほか.
シンポジウム S-09:本邦の認知症大規模コホート研究:何を目指す?
5月19日(木) 15:15~16:55 第3会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室B)
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ポジ ウム
S-09-2
愛媛県中山町における認知症コホート研究
愛媛大学大学院医学系研究科精神神経科学
○森 崇明
愛媛県中山町(現伊予市中山町)は,松山市から南へ自家用車で 1時間ほどの距離にある山間部に位置し,農業を主産業とする地域 である.平成9年には総人口約5000人,高齢者人口約1500人(高齢 化率:28.5%)であったが,平成24年には人口約3500人,高齢者人口 約1500人(高齢化率:43.5%)と,急速に高齢化がすすんでいる.
我々の講座では,平成9年に愛媛県中山町にて,認知症の有病率に 関する第1回目の悉皆調査を行い,その後も平成11年に第2回,平成 16年に第3回,平成24年に第4回と継続して調査を行ってきた.一次 調 査 で は 65 歳 以 上 の 全 住 民 を 対 象 に Mini-Mental State Examination, Short-memory Questionnaire, Instrumental Activities of Daily Living,Physical Self-Maintenance Scale,などを 行い,認知症が疑われるものについては二次調査で専門医の問診と 診察,Neuropsychiatric Inventory,Clinical Dementia Ratingなどで の評価,三次調査ではCTやMRIなどの画像検査とビタミンB12な どの血液検査を施行する,という内容で調査した.認知症の診断基 準にはDSM-III-Rを,アルツハイマー病の診断基準にはNINCDS-ADRDAを,血管性認知症の診断基準にはDSM-IVを,レビー小体 型認知症の診断基準には国際ワークショップ診断基準を(平成16年 第3回より)もちいた.参加率は70-85%で推移し,認知症の有病率 は各回で,4.2%,8.7%,6.0%,6.9%という結果であった.これらの 調査で,他にもMCIから認知症へのコンバート率や,家族の介護負 担などについて報告し,国内外から高い評価を得ている.調査を実 際に行うにあたっては,評価尺度や収集すべき情報などの医学的問 題はもちろんのこと,それ以外の様々な諸問題も解決しなければな らなかった.当講座は,平成28年度から九州大学を中心とした大規 模認知症コホート研究に研究協力する予定である.ついては,過去 の調査・研究を紹介しながら,今後の課題について考察する.
尚,過去の調査については倫理委員会で承認を受け,個人情報の 取り扱いについては十分に注意して行った.
《略歴》平成12年 愛媛大学医学部卒業,愛媛大学附属病院精神科神経科 医員に 平成18年 愛媛大学大学院医学系研究科博士課程修了,医学博士の授与採用 平成18年 愛媛大学大学院医学系研究科脳とこころの医学分野 助手 平成19年 愛媛県立今治病院精神科副医長
平成20年 財団新居浜病院常勤医師
平成20年 愛媛大学医学部附属病院精神科神経科 助教に採用 平成23年 独立行政法人放射線医学総合研究所に客員共同研究者として
赴任,研究に従事
平成24年 愛媛大学医学部附属病院精神科 講師
所属学会日本老年精神医学会会員(専門医,指導医),日本認知症学会会員(専門 医,指導医),日本神経心理学会会員(評議員),日本高次脳機能学会会員,
日本精神神経医学会会員 その他第24回愛媛医学会賞受賞
S-09-3
AD発症リスクの解明を目指した臼杵市 研究
大分大学病院 神経内科学講座
○木村 成志
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)の疾患修飾薬開発は進めら れているもの未だ実用化には至っていない現在,予防法および根本的治療 法の開発には,コホート研究による地域住民を対象とした認知症の実態把 握や認知症の危険因子・防御因子の発掘からのアプローチが重要である.
これまでの疫学研究からADの発症における高血圧・糖尿病・脂質異常症な どの生活習慣病の関与が明らかとなってきたが,活動量,睡眠,発話量など の生活習慣の影響は確立されていない.このような背景から我々は,大分 県,臼杵市,東芝ヘルスケア社と連携し,AD発症病態,特にAβの脳内沈着 と身体情報・生活習慣との因果関係を解明するための産学官共同研究を開 始した.モデル地域とした臼杵市は,人口40,834人,高齢化率36.16%(2015 年3月現在)であり,認知症高齢者は,2020年には1500人を超えることが予 想されている.このため,2010年より行政・市医師会・大分大学医学部が連 携し,認知症の啓発,予防,早期診断・早期治療等の認知症対策を継続して きた地域であり,現在臼杵市内の医療機関を結ぶ情報ネットワークも構築 されている.本研究では,1,000人の地域住民を対象としてリストバンド型 生体センサによる活動量・睡眠時間・発話量・摂食状況などの「生活データ」,
200名の軽度認知障害症例では神経心理検査,頭MRI検査・FDG-PET検査・
PIB-PET検査等の先端画像検査,血液バイオマーカー等のビッグデータの 蓄積および解析を経年的に行い,科学的根拠のあるAD発症リスクを探索す る.近年,ADの診断における脳脊髄液Aβ・リン酸化タウ,アミロイド PET等の有用性が報告され,NIA-AAおよびIWGによりバイオマーカーを 考慮したADの診断基準が提唱された.従って,バイオマーカーを組み入れ ることで精度の高い疫学研究を実現することが可能となり,ADの病態解 明,科学的根拠のある予防法の確立,根本的治療薬開発に向けたレジストリ 整備も推進する.本発表では,臼杵市における多職種連携,認知症対策,コ ホート研究に関して報告する.
《略歴》職歴
1996年 大分医科大学卒業
1996年 大分医科大学医学部第三内科入局 2000年 鳥取大学医学部脳神経病理部門研究生 2006年 大分大学医学部第三内科助手 2007年 博士(医学)(大分医科大学)
2007年 大分大学医学部第三内科講師 2014年 大分大学医学部神経内科診療准教授 2015年 大分大学医学部神経内科准教授 現在に至る
[専門医]
2000年 日本内科学会認定内科医 2001年 日本神経学会専門医 2007年 日本内科学会指導医 2011年 日本神経学会指導医 2014年 日本認知症学会専門医・指導医 2015年 総合内科専門医
[受賞等]
2008年 日本神経病理学会賞 2008年 大分大学学長賞 2014年 日本認知症予防学会浦上賞 [研究テーマ]
神経機能画像を用いた認知症および神経変性疾患の病態基盤に関する研究
シンポジウム S-09:本邦の認知症大規模コホート研究:何を目指す?
5月19日(木) 15:15~16:55 第3会場(神戸国際展示場1号館2F 展示室B)
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