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継承日本語教育とトランスナショナル空間

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第6章 漢字圏での日本語言語資源とトランスナショナル空間

6.4 継承日本語教育とトランスナショナル空間

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このような子どもの日本語習得のための努力や工夫が、トランスナショナル空間の構築 であるとすると、どのようなトランスナショナル空間が構築され、子どもたちがそこでどの ように参加し活動しているのかを探ることによって、日本語継承の全体像がより明らかに なると考えられる。

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表6.8 「日・中・英」6名の日本語言語資源状況(原則2017年9月現在)注(1) ID

家庭 言語

一時 帰国

メディア(2) 日本語 学習(3)

家庭外 空間

体験 入学

進路

(居住地)(4)

24 2/年 G, A, V, M, I,

高校(日)

大学・大学院(中)

23 2/年 G, A, I, 本 × 大学(中)

就職(日)

23 日中 1/年 G, S, A, M, I,

大学(日)

22 日中 1/年 G, A, M, 本 高校・大学(日)

19 日中 1-2/年 S, I × 大学(中)

16 2/年 G, A, M, 本 × 高校(日)

注(1) 言語資源データは、現在中国以外の地に居住する者は移住する前の中国での状況をもとにする。

注(2) 【略号】ゲーム:G、音楽:S、アニメ:A、バラエティ:V、ドラマ:D、漫画:M、

ネット動画及び文字情報:I

注(3) 符号●○△×はそれぞれ言語資源の状況を総合的に判断したものである。●は十分な資源がある、

○は限定的ながらもある、△は非常に限定的或いは過去にあったが現在はない、×はなし。

注(4) 20179月現在、中学・高校卒業後、或いは大学卒業後の進路状況。括弧内は居住地である。

表6.8について、③と④を除く4名は日本人学校在籍経験があり、学校教授言語であった 日本語が優勢になっていることが明らかになった。①②⑤はいずれも、現地校と日本人学校 という日中両方の言語を教授言語とする教育機関間の移動がある。例えば、①は小学校は現 地校、中学は日本人学校、日本の高校で3年間学んだ後、中国の大学に進学している。②は 中学途中で日本人学校から現地国際班に移動し、中国の大学に進学した。⑤⑥は中学まで日 本人学校、その後現地校国際班へ移動したケースで、⑤は一時期日本の小学校にも通った経 験を持つ。⑥は小中と日本人学校に在籍していた。このように、学校がトランスナショナル 空間として大きな影響をもち、子どもの日本語を優勢にしていると考えられる。

一方、③と④は同じ家庭の姉弟であるが、現地校在籍で中国語を教授言語としながら、日 本の学校へ進学する前に日本語が優勢になっている。言語資源のデータから見る限りでは、

体験入学を含む一時帰国とメディアを通した日本語接触に関連があるように思われる。

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表6.9 「中・日・英」20名の日本語言語資源状況(原則2017年9月現在)注(1)

ID

家庭 言語

一時 帰国

メディア(2) 日本語 学習(3)

家庭外 空間

体験 入学

進路(4)

(居住地)

22 2/年 G, A, I, 本 × 就職(日)

22 中日 1-2/年 A, M, 本 × 大学(米)

21 2/年 G, A, M, 本 大学(米)

20 中日 2/年 A, M, I, 本 大学(日)

19 1/数年 V, A, I, 本 1 大学(日)

19 日中 1-2/年 A, M, I, 本 2 大学(日)

19 日中 2/年 A, V, M, I, 雑誌 × 大学(日)

19 日中 2/年 V, 本 × 大学(中)

19 中日 1-2/年 A, M, 本 × × 大学(中)

18 中日 2/年 A, I × 1 大学(中)

18 1-2/年 G, A, V, M 不明(4)

17 日中 2/年 A, V, M 1 現地校(中)

17 中日 1/年 S, V, 本 × 2 現地校(中)

17 1/数年 V × 高校(日)

17 日中 2/年 A, V × 現地校(中)

17 中日 2/年 A × × 現地校(中)

17 中日 1-2/年 A, M × × 現地校(中)

16 1/年 M, 本 × 現地校(中)

16 日中 2/年 V、雑誌 × × 高校(日)

16 中日 1-2/年 A, M, I, 本 × 2 現地校(中)

注(1) 言語資源データは、現在中国以外の地に居住する者は移住する前の中国での状況をもとにする。

注(2) 【略号】ゲーム:G、音楽:S、アニメ:A、バラエティ:V、ドラマ:D、漫画:M、

ネット動画及び文字情報:I

注(3) 符号●○△×はそれぞれ言語資源の状況を総合的に判断したものである。●は十分な資源がある、

○は限定的ながらもある、△は非常に限定的或いは過去にあったが現在はない、×はなし。

注(4) 20179月現在、中学・高校卒業後、或いは大学卒業後の進路状況。括弧内は居住地である。

⑰はデータ更新の確認ができていないため不明である。

表6.9について、このグループの子どもは、学校教授言語の中国語が一番得意である が、母親に対する言語は、㉑と㉒を除いて基本的に日本語である。家庭言語も帰国頻度も多 様で、日本語学習、コミュニティ活動、体験入学にも共通する傾向が見られないが、メディ アを通した日本語接触については大半の子どもが積極的に利用していることが分かる。と りわけアニメの視聴は20名中15名に上り、漫画と本はそれぞれ11名である。日本語の本

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を読む子どもが年齢の大きい子どもに多いことも注目に値する。

メディア利用が比較的少ない子どもについて見ると、まず母親に中国語で話す㉑と㉒が ある。㉑は、小さい頃は母子間で日本語を使っていたが、姉の就学をきっかけに中国語を使 う傾向が見られるようになった。㉒は、母親によると、子どもが日本語で話すのは母親に対 する発話の20%程度で、80%は中国語である。子どもが小さい頃、母親が日本語を使うこ とを意識してこなかったためではないかと分析する。⑳と㉕もメディア利用が比較的少な いが、⑳は家庭の言語を日本語にしていること、㉕は一時帰国を年に2回、夏休みと冬休み の全部を日本で過ごすことから、日本語の会話は問題ない。⑳も㉕も日本の高校に進学して いる。

表6.10 「中・英・日」7名の日本語言語資源状況(原則2017年9月現在)注(1) ID

家庭 言語

一時 帰国

メディア(2) 日本語 学習(3)

家庭外 空間

体験 入学

進路

(居住地)(4)

㉗ 22 中日 1-2/年 G, A, M, I × 大学(米)

大学院(日)

㉘ 22 1/数年 D × 高・大(日)

㉙ 19 中日 1-2/年 A, M, I, 本 大学(米)

㉚ 19 中日 1-2/年 雑誌 × 高・大(米)

㉛ 18 日中 1-2/年 M, I, 本 1 大学(米)

㉜ 16 日中 1/2 S, D × × 現地校(中)

㉝ 16 中日 2/年 A, M, 本 英中双語校(中)

注(1) 言語資源データは、現在中国以外の地に居住する者は移住する前の中国での状況をもとにする。

注(2) 【略号】ゲーム:G、音楽:S、アニメ:A、バラエティ:V、ドラマ:D、漫画:M、

ネット動画及び文字情報:I

注(3) 符号●○△×はそれぞれ言語資源の状況を総合的に判断したものである。●は十分な資源がある、

○は限定的ながらもある、△は非常に限定的或いは過去にあったが現在はない、×はなし。

注(4) 20179月現在、中学・高校卒業後、或いは大学卒業後の進路状況。括弧内は居住地である。

表6.10について、このタイプの子どもの言語状況はさらに多様である。一時帰国頻度が 高く、メディアの日本語資源も豊富な㉙と㉛は、漫画や本を楽しむぐらいの日本語運用力を 持っている。一方で、㉗㉘㉚は日常的な日本語の実践は問題ないが、読み書きにおいて学校 で学習する英語が日本語を上回り、読み書きでは日本語に少し苦手意識を持っていること が明らかとなった。㉘は日本の高校、大学へ進学し、日本語の読み書きも問題ないが、本は 中国語を、インターネット情報は英語を好み、日本語の苦手意識により日本語のメディア利 用が少ないことが、子ども本人から報告された。また、母への言語がほとんど中国語である

㉜は、幼稚園入園前、母親が子どもの中国語を強化するために中国語で話すようにした結果、

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その後母親が日本語で話しかけても子どもが日本語で話さなくなったケースである。一時 帰国の頻度も少なく、期間も短く、家庭外で日本語を話す機会もほとんどなく、㉜のトラン スナショナル空間は非常に狭いと言える。しかし、㉜の「日本語学習」は、在籍中学で第二 外国語としての日本語履修から始まり、高校では日本へ短期留学し、現在日本の大学進学を 進路の選択肢に含めている。㉞は英中バイリンガル校に通う生徒であるが、母親は日本語の 継承に非常に熱心で、通信教育とメディアを活用、日本人コミュニティ活動への参加や体験 入学も重視している。

表6.11 「英・中・日」1名の日本語言語資源状況注(1) ID

家庭 言語

一時 帰国

メディア(2) 日本語 学習(3)

家庭外 空間

体験 入学

進路

(居住地)

㉝ 17 数回/年 M, I, 本 1 不明 注(1) 言語資源データは、20145月調査時点の状況。

注(2) 【略号】ゲーム:G、音楽:S、アニメ:A、バラエティ:V、ドラマ:D、漫画:M、

ネット動画及び文字情報:I

注(3) 符号●○△×はそれぞれ言語資源の状況を総合的に判断したものである。●は十分な資源がある、

○は限定的ながらもある、△は非常に限定的或いは過去にあったが現在はない、×はなし。

表6.11について、「英・中・日」タイプは英語を授業言語とする国際校に在籍する1名し かいない。母親は明確な複数言語教育方針を持っている。そのため、可能な言語資源を最大 限活用しようとする努力がインタビューでも明確に語られた。㉝の家庭では、言語は日本語 に限定し、一時帰国の頻度も高く、日系の塾で読み書きを学習していると、前回調査で語ら れたが、今回データ更新の確認がとれないため現在の状況は不明である。

表6.12 「英・中」1名の日本語言語資源状況 ID

家庭 言語

一時 帰国

メディア 日本語 学習

家庭外 空間

体験 入学

進路

(居住地)

㉟ 16 1/2 A, 本(中) × × × 中学編入(日)

注: 進路は20179月現在、言語資源は日本移住時20164月の状況である。

表6.12の1名は、中学卒業直前に日本に移住し、一年学年を下げて日本の公立中学に編 入、現在公立高校受験へ向けて準備をしている。母親によると、中国在住時は家庭で簡単な 日本語しか話さなかったため、子どもにとって日本語はほとんど外国語であった。㉟の中国 でのトランスナショナル空間は、家庭での簡単な日本語と二年に一度の一時帰国のみであ った。帰国後、国語と社会で苦労したが、帰国後1年半を経て、最近成績が伸びてきたと言 う。

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 164-169)