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準正答が多い語彙

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 131-134)

第5章 漢字圏年少継承日本語話者の日本語の漢字認識

5.4 北京・台北・香港の出題漢字に関する比較

5.4.1 分析

5.4.1.3 準正答が多い語彙

準正答とは、漢字自体は正しく認識しているが、さまざまな要因で読み方を正しく読めな かったものを指す。前章第2節でも北京の小学一年生後期修了時調査結果を分析の対象に したが、本項では北京・台北・香港を比較する視点から、前期修了時と後期修了時それぞれ

74 準正答が多い語彙は、小学一年生前期修了時では附表5.3、後期修了時では附表5.4を参照のこと。

0 20 40 60 80 100

天気 出発

正答率

北京 台北 香港

124 分析を行う。

5.4.1.3.1 小学一年生前期修了時調査結果

小学一年生前期修了時調査結果では、北京・台北・香港3都市すべて準正答が一番多い語 彙は「小鳥」であった。北京は10名中7名、台北が7名中6名、香港は4名全員が準正答 となった。北京と台北で 2番目に多いのは「小さな」、香港では1名のみ準正答であった。

北京では「大きな」と「中」が3番目に多く、台北でも「中」が3番目、「大きな」は4番 目というふうに、準正答が多い語彙の傾向は 3 都市で共通している。これらの語彙の読み 方がどのように正しくなかったのかについて、代表的な例を都市別に表5.14に示す。

表5.14 小学一年生前期修了時調査結果の北京・台北・香港の準正答例

語彙 正答 準正答例(北京) 準正答例(台北) 準正答例(香港)

小鳥 ことり ちいさいとり

(B0-2, 4,7)/

ちっちゃいとり

(B0-1, 8, 9, 12)

ちいさなとり(T0-8)/

ちいさいとり(T0-5)/

ちっさいとり(T0-6)/

ちっちゃいとり(T0-7)

ちいさいとり

(H0-1, 2, 3, 4)

小さな ち い さ

ちいさい(B0-7, 12)/

ちっちゃい(B0-9, 11)

/ちっちゃいさな(B0-1)

ちいさい(T0-2)/ちっさな

(T0-6) ち っ ち ゃ い さ な

(T0-7)/しょうさな(T0-3)

ちいさい・ちっさい

(H0-3)

大きな お お き

おおきい(B0-11)/おお きいな(B0-1, 9)

でっかいきな(T0-7)/

だいきな(T0-3)

おおきいな(H0-3)

なか まんなか(B0-1, 8,)

ちゅう(B0-9)

ちゅう(T0-3, 7,8) まんなか(H0-1)

さかな おさかな(B0-7, 11) おさかな(T0-6) おさかな(H0-3)

てん そら(B0-1, 9) そら(T0-3, 8) そら(H0-2)

入り いり ひり(B0-8) はいり(T0-3) いれり(H0-2)

表5.14より、北京・台北・香港の児童の準正答は非常に似通った傾向にあることが、明 らかである。中国語の既習の漢字をもとに、日本語の読みを導き出す際に、同様の過ちを犯 すことが確認された。さらに、小学一年生後期修了時調査結果で確認を行う。

5.4.1.3.2 小学一年生後期修了時調査結果

小学一年生後期修了時調査結果では、北京と台北で一番多かった準正答は「家」で、北京 は15名中6名、台北では14名中7名、香港でも2番目に多い準正答となり、14名中7名 である。香港で一番多かったのは「間」で、14名中8名が準正答となっている一方で、北 京では 1名、台北では 2名と準正答はあまり多くない。都市別の準正答の代表的な例を、

125 次頁の表5.15に掲げる。

準正答は、漢字の意味は認識しながら読みで誤ったケースである。北京児童のデータ分析 では、日常会話の既知の音声言語を当てていること、和語漢数字の運用が苦手であること、

漢字の意味を優先し動詞の送り仮名が軽視されることなどが示され、台北・香港の準正答で も同じ傾向が見られた。とりわけ、「家」の読みに関しては、3 都市ともに「おうち」と読 んだ児童が非常に多く、日常会話の音声言語をそのまま読みに当てる共通性が明らかであ る。

表5.15 小学一年生後期修了時調査結果の北京・台北・香港の準正答例

語彙 正答 準正答例(北京) 準正答例(台北) 準正答例(香港)

いえ おうち(B1-1, 2, 6, 11, 15, 18)

おうち(T1-9, 10, 11, 12, 14)/うち(T1-4, 7)

おうち(H1-8, 9, 12, 14, 16, 19)

あいだ とき(B1-13) じかん(T1-13)

うちに(T1-14)

じかん(H1-2, 3, 5, 8)/

とき(H1-12, 13)

とき じかん(B1-4, 6, 11) じ か ん (T1-4, 8, 9, 12, 13, 14)

じかん(H1-2, 3, 8, 10)

一 か い てん

い っ か い てん

いちかいてん(B1-1, 4, 9, 15, 16)

い ち か い て ん (T1-4, 10)

いちかいてん(H1-10, 15)

一人 ひとり いちひと(B1-2, 12)

いちにん(B1-15, 17)

いちひと(H1-19)

いちにん(H1-8, 15, 19)

二人 ふたり に ひ と (B1-12, 17, 18)/ ににん(B1-4)

に ひ と(H1-14)/ふた ひ と

(H1-10)/ににん(H1-15, 19)

同じ おなじ おんなじ(B1-4, 11)

/ いっしょ(B1-15)

おんなじ(T1-11) おんなじ(H1-2)

別(の) べつ(の) ちがう(の)(B-3, 6, 9, 11)/ ほか(の)

(B1-14)

ちがう(の)(T1-4, 7, 13)/ ほか(の)(T1-6)

飛 ば し

とばして とぶして(B1-1, 15)

とびして(B1-6)

とびして(H1-16)

友だち ともだち おともだちたち(B1-11)

おともだち(T1-13) おともだち(H1-10, 19)

準正答の内容ではほぼ同様の傾向が見られる一方で、3都市間で準正答数の相違が見られ る語彙がある。

香港に準正答が多い「間」が、北京や台北では少ない。「一人」「二人」の準正答は北京・

香港で見られても、台北では見られない。「飛ばして」も同様である。また、「別」は北京・

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台北で見られるが、香港ではなかった。このような準正答が出現する傾向はなぜなのかを探 るため、これらの語彙について、正答数、順正答数、スキャフォールディングによる正答数、

非正答数の数を比較したものが、次頁の表5.16である。

「間」は、北京の非正答、台北の正答、香港の準正答の多さが特徴的である。「飛ばして」

は3都市ともにスキャフォールディング効果が見られた。「飛ばして」の準正答は、漢字の 送り仮名に関するものであり、北京と香港の誤りは同じ原因とみられる。和語漢数字での準 正答は、台北では、「一人」で読み間違いを暗示で注意した後正答を出したケースが1例の みで、「二人」も含め全員正答である。

表5.16 「間」・「一人」・「二人」・「飛ばして」の3都市児童の読み回答の分類 正答 準正答 暗示(1) 非正答(2) 正答 準正答 暗示 非正答

一人

北京 2 1 0 12 10 4 0 1 台北 7 2 0 5 13 0 1 0 香港 1 8 0 5 9 3 1 1

飛ばして 二人

北京 4 3 5 3 8 4 0 3 台北 11 0 3 0 14 0 0 0 香港 7 1 4 2 9 4 0 1 注(1) 暗示はスキャフォールディングによって正答を導き出したものである。

注(2) 非正答は回答して誤りがあるものと、分からないため無回答のものを含む。

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