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家庭内言語使用

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 152-155)

第6章 漢字圏での日本語言語資源とトランスナショナル空間

6.2 家庭内言語文化のトランスナショナル空間

6.2.1 家庭内言語使用

柳瀬(2015)の調査協力者である北京在住日中国際結婚家庭の日本人母親は、第3章3.5.3 の調査協力者の表3.7(p. 53-54)に示されたように、トランスナショナルな実践をする移 民第一世代である。

そして、調査の結果、その子どもたちの言語状況は、非常に多様であることが明らかにな った。インタビューやメールで確認した、本人或いは母親によって判断された言語優勢順位

78を表6.3に示す。

表6.4 子どもの言語優勢順位(原則2017年9月現在)

日・中・英 中・日・英 中・英・日 英・中・日 中・英

合計 6 20 7 1 1 35

注: 現在中国国外居住者は中国居住時のデータに基づく。

前回調査(2014)協力者のうち、今回調査でデータ確認がとれなかったのは2名、「中・

日・英・」1名、「英・中・日」1名である。また、前回と言語優勢が異なるのは1事例の み、前回は「英・中・日」タイプであったが、今回の確認では「中・英・日」に言語優勢が

78個人の言語レパートリーにおける言語の得意順。インタビューやメールで、「どの言葉が得意ですか」

という質問によって回答が得られた。優勢の判断がつかない場合、便宜的に「読み書き」能力が高いとす るものを上位にした。

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変化していた。表6.3から、程度の差はあれ、1家庭を除くすべての家庭が日本語の継承を 行っているということが確認できる。各家庭の教育方針が多様であり、日本語をどの程度子 どもに継承するかも様々であるが、母子間の会話は日本語で行いたいというのは、言語優勢 順位が「中・英」の1名の母親を除いて全員に共通する希望であった。

そのような母親の希望に対して、家庭で中国語のみ使用の1名を除く34名中、母子間の 会話における母親に対する発話が中国語或いは日本語と中国語の混合である子どもは3名、

母子間の会話は基本的に日本語使用の子どもが31名である。この数字は、先行研究のOkita

(2001)、渋谷(2011)の調査の数字と比較すると、母子間の会話が日本語である家庭が非常

に多いことが確認できる。母親への言葉が中国語或いは日中混合である 3 名が、母親が日 本語で話しかけても、中国語で返す理由については、言語だけではなく他の要素も含まれる と思われるが、本稿では言語使用の面から分析考察を行うものとする。

第2章の先行研究で概観したように、複数言語環境において、家庭で子どもをバイリンガ ルに育てるためには「一親一言語」(OPOL)原則が有効であるという言説が有力である。

OPOL とは、親が一人一言語で子どもに接することで、子どもの言語の使い分けが明確と なり、二言語の習得を促進するという親から子どもへの言語使用の態度である。このような 家庭内で二言語を使い分けるという実践が、トランスナショナルな家庭内言語文化空間を 構築すると考えられる。もちろん、家庭内で二言語の使い分けがなくても、家庭内と家庭外 で言語を使い分けるという方法は、非国際結婚家庭をはじめ国際結婚家庭でも採用される トランスナショナルな実践である。

実際には、家庭内でどのような言語使用がなされているのかを調べたものが、次の表6.4 である。第3章3.5.3の調査協力者の一覧表3.7(p. 53-54)に掲げた27名の日本人母親は、

調査実施時、子どもが中国で義務教育を修了或いは修了見込みという条件で協力を依頼し た調査対象者である。以下の表には、参考のため、条件に合致しないため27名に含まれな い1名の母親を28に追加している。事例28は、調査開始の一年前、子どもが中学在籍途 中で日本へ移住した家庭である。

調査の結果、対象28家庭のうち、データに追加した1家庭(家庭28)と日本人母親が日 本語を継承しないという選択をした1家庭(家庭25)のほかは、すべての家庭ではほぼ日 本語が使用されていることが明らかになった。しかしその使用実態は、両親、子どもともに 日本語を使用する家庭から、日本人母親が子どもに対して日本語と中国語を使い、子どもは 母親に中国語で話すという家庭まであり、また兄弟間での言語も日本語、中国語、日本語と 中国語と非常に多様で、話者の組み合わせごとに言語使用形態が変わるという点も、

Yamamoto (2001) と同様の結果であった。表6.4はその結果をまとめたものである。今回

データ確認できなかったのは、17, 20の2家庭である。また前回調査時から言語優勢順が 変化したのは、家庭27の㉞である。

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表6.5 家庭内話者間使用言語の状況(原則として2017年9月現在)

性別

(1)

(2)

(2)

両親間 会話(3)

父/子 母/子 兄 弟

家 庭 言 語 形態(4)

言 語 優 勢 順位

備考

1 ①男

⑨男

B A J/J J/J J/J J

J

少数言語 日中英 中日英

家政婦(C)

2 ②女 C A J/J J/J J/J - 少数言語 日中英 日本人学校 3 ③女

④男

✕ A C/C C/C J/J J J

OPOL 日中英

日中英 4 ⑦男 B A J/J J/J J/J - 少数言語 中日英 5 ⑧男

㉚女

㉖女

B A J/J C/C J/J ⑥㉖J

⑥㉛C

㉛㉖C

OPOL 中日英

中英日 中日英 6 ㉘男

(女)

✕ A C/C C/C J/J J OPOL 中英日 家政婦(C)

7 ㉘男 B A J/J C/C J/J - OPOL 中英日

8 ⑩女

(男)

A C C/C C/C J/J C OPOL 中日英 祖母(C)

9 ⑮男

㉓男

B B C/C C/C J/J C OPOL 中日英

中日英 10 ⑪男

⑳女

B A J/J J/J J/J J/J

J JC

少数言語 中日英 中日英

11 ⑫女 B B C/C C/C J/J - OPOL 中日英

12 ㉙女 ✕ B C/C C/C J/J - OPOL 中英日 祖父母(C)

13 ⑬女

⑱男

✕ B C/C C/C J/J C C

OPOL 中日英

中日英 14 ⑭ 女

㉑男

✕ B C/C C/C J/J J/JC

J JC

OPOL 中日英

中日英 混合(日中5:5)

15 ⑤女

(男)

✕ B C/C C/C J/J JC OPOL 日中英 日 本 人 学 校 → 現地校

16 ⑯男 A A C/C C/C J/J - OPOL 中日英 祖父(C)

17 ⑰男 B A J/J C/C J/J - OPOL 中日英

18 ㉛男

(女)

B B J/J C/C J/J JC OPOL 中英日

19 ⑲女 ✕ B C/C C/C J/J - OPOL 中日英

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20 ㉝男 B A J/J J/J J/J - 少数言語 英中日 家政婦(C)→中 止/国際校 21 ㉒男

(女)

✕ C C/C C/C JC/CJ CJ 両言語 混合

中日英 混合(中日8:2)

22 ㉔ 女 (男 男 男)

C A J/J C/C J/J JC OPOL 中日英 姉弟1(J)

姉弟2、3(JC)

23 ㉕女 B A J/J C/C J/J - OPOL 中日英

24 ㉜女

(男)

✕ A C/C C/C JC/C C 両言語 混合

中英日 混合(中日9;1)

25 ㉟男 ✕ B C/C C/C J/J - 単一言語 中日英 中 学 卒 業 直 前 日本へ移住 26 ⑥男

(女)

✕ A C/C C/C J/J J OPOL 日中英 日 本 人 学 校 → 日本の高校

27 ㉞女 B A J/J C/C J/J - OPOL 英中日 英中双語校

28 男・男 B C C/C C/C CJ/C C C

多数言語 中日英 中日英

日 本 → 中 国 → 日本

注(1)( )は年齢上調査対象外の子ども、丸数字は子どものIDである。

注(2) 父親の日本語力と母親の中国語力を母親の判断に基づき、A:日常会話、B:ビジネス, B:ネイティブ レベルで示す。

注(3) C, Jはそれぞれ中国語、日本語を示す。

注(4) 後述の分類を参照のこと。

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