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日本語継承に関するインタビュー調査

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 63-69)

第3章 研究方法

3.4 日本語継承に関するインタビュー調査

本研究では、性質の異なる2種類のインタビュー調査を実施した。一つは、漢字読み調査 に協力してもらった保護者に対するフォローアップインタビュー或いは半構造化インタビ ューである。もう一つは、柳瀬(2015)での協力者に対する追跡インタビューである。

この 2 種類のインタビューには大きく異なる点が3つある。まず一つ目は、前者が小学 生の子どもの日本語習得に関する調査であるのに対し、後者は2014年9月の時点で中学生 以上であった子どもの日本語習得プロセスに関する調査である。小学生の調査と中学生以 上の調査を統合させることにより、子どもの日本語の継承の全体像を描くことが可能にな ると考えらえる。二つ目は、前者が漢字読み調査を実施した北京・台北・香港の三都市での 調査であるのに対し、後者は北京での調査のみである。従って、三都市の違いを十分に反映 した全体像を描くことは難しい。三つ目は、後者の調査対象が日中国際結婚家庭、それも母 親が日本人で父親が中国人であるという組み合わせに限定されているのに対し、前者では 対象の幅を大きく広げ、「漢字圏で育つ日本をルーツにする小学生」とした点である。漢字 圏での日本語継承について、現在多様な選択肢がある中で、日中国際結婚家庭に限定する必 要性はないと判断した結果であるが、後者は「追跡調査」であるため、調査対象を広げるこ とはかなわなかったからである。

3.4.1 漢字読み調査協力者の保護者インタビュー

このインタビューは内容から、子どもの漢字読み調査や日本語習得に関する保護者の意 見や感想を聞くフォローアップインタビューと、子どもの日常生活や言語環境、保護者の関 心や考え方などを聞く半構造化インタビューに分けることができる。半構造化インタビュ ーは、漢字読み調査の後、保護者に時間的余裕がある場合はその場で、少数は調査前、或い は後日インタビューの場を設定した。

漢字読み調査後のフォローアップインタビューでは、同席の保護者から感想や質問、意見 を聴取することを目的とし、漢字読み調査の時間は余裕を持って設定した。子どもが日本語 をどのように読むかについて、保護者の関心は非常に高く、読めた漢字や読めなかった漢字 に対する自らの感想や意見を表明したいという傾向が多く見られた。そして子どもが読め た理由や読めなかった原因を分析し、その考えを筆者と共有しようとする姿勢が見られ、筆 者の方も積極的にその分析に協力をした。また筆者の側からは、質問票では簡単に書かれて いることや得られなかった情報を詳細に聞ける貴重な機会であった。時間は短いものでは 数分、長いものは以下の半構造化インタビューと併せて行ったものである。短いインタビュ

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ーの内容は録音することなく、漢字読み調査の文字起こしデータに書き加える方法を採っ た。

半構造化インタビューは、柳瀬(2015)のインタビュー調査と同様に、言語や文化をめぐ る子どものライフヒストリー、夫婦のヒストリーを中心に過去から現在、将来に及ぶ生活に ついての聞き取りを行い、その他に台北・香港では現地の教育事情や外国人として生活する 問題点などについてもインタビュー内容とした。時間は30分から1時間、長いもので2時 間程度である。まとまった話はICレコーダーに録音、その後文字起こしを行った。インタ ビューを実施できたのは調査協力者の一部であるが、とりわけ筆者が現地事情をあまり理 解していない台北と香港では、現地の概況を理解する手掛かりとなる重要なデータを含ん でいる。

3.4.2 北京在住日中国際結婚家庭の中学生以上の子どもに関する追跡インタビュー 柳瀬(2015)では、北京在住日中国際結婚家庭のネットワーク組織である「中国人男性と 結婚した日本人女性の会」(以下、N会)の会員で、中学生以上の子ども52を持つ日本人母 親及び子ども本人を対象にインタビュー調査を実施した。子どものマルチリテラシー育成 の全体像を探るという目的から、言語や文化をめぐる子どものライフヒストリ―、夫婦のヒ ストリーを中心に、2013年8月~9月、2014年4月~5月、2014年8月~9月の3回調 査を実施した。半構造化インタビューの方法を用い、録音されたものは文字起こしを行った。

一人当たり 1 時間から5時間、親と子どものペアでの面接、親と子ども別々の面接、家庭 によっては親のみ或いは子どものみの面接、家族での面接等、それぞれの事情を考慮したた め、面接の形態は多様である。大学生や高校生には親や子どもに追加調査として複数回面接 を行った。データの偏りと恣意性を極力避けるため、データ収集は把握できた全数を目標と した。

調査対象のN会会員は越境性が非常に高く、子どもを連れて日本から中国へ移住したり、

子どもが小さいうちに中国から日本や他の国・地域に移住した数は少なくない。義務教育修 了 53まで社会主流言語を中国語とする環境にいた、或はいる見込みであるという条件を設 定し対象を絞った結果、2014年9月現在把握した子どもは35名、母親は27名であった。

諸事情により母親 5 名は面接が行えず、インタビュー調査結果は 22 名のものをもとにす る。インタビューが行えなかった5名については、子ども本人への面接調査、電話インタビ ュー或はメールによる質問調査によって得られた情報をデータとして用いた。調査は親と

52 中島(2010)によると、年齢と第一言語/文化の習得の関係において、910歳を境に言語形成期前半 と後半に分けられる。後半では、自律心が旺盛になり、自我に目覚め、勉強にも自分なりの取り組みがで きるようになるという。個人差を考慮して、中学生以上を調査対象とした。

53 関口(2008)は、移民研究において「子ども」と「大人」の境界(成熟ラインや言語文化形成期の臨界 ライン)をどこに引くかという問題に関して、先行研究では1314歳を成熟ラインと定めるものが多いと いうグアルダの見解を紹介している。したがって、個人差も考慮し義務教育修了の15歳を基準とした。

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子どもの双方に行うことが望ましいものの、時間的制約等から、子どもへの面接調査は高校 生以上の子どもを優先して行った。また中国で中学校課程修了を条件に、現在中国以外の国 を居住地としている子どもも調査対象に含んでいる。子ども35名のうち、面接調査を実施 できたのは18名である。

柳瀬(2015)で用いたデータは2014年9月時点のもので、その後の3年間で調査協力 者の子どもたちには環境の大きな変化が見られた。主として、進学や就職といった進路選択 によるものである。元来、柳瀬(2015)が子どもの日本語習得のプロセスを調査したもので あることから、その追跡調査を行うことはプロセスをより完全な形で提示できるものと考 える。追跡インタビューは、2015年4月から2017年7月にかけて一部の調査協力者に対 して断続的に実施した。追跡インタビューでは特に録音をすることなく、インタビュー後の フィールドノート記載に留めた。また、この間追跡インタビューが実施できなかった調査協 力者には、2017年9月メールやSNSにて子どもの最新情報の確認を行った。

3.5 調査協力者

本章では、第2、3、4節で本研究の調査について概略を述べた。本節では、その調査協 力者について、以下3つの区分に分けて概説する。第2節の漢字読み調査と第3節の言語背 景質問票は、調査協力者が重複するため、一括して「漢字読み調査協力者」とする。第4節 のインタビュー調査のうち、フォローアップインタビューは「漢字読み調査協力者」と重複 するが、半構造化インタビューはその協力者の一部であるため、「半構造化インタビュー」

協力者とする。追跡インタビューの方は「追跡インタビュー」協力者とし、柳瀬(2015)か ら抜粋する。

3.5.1 漢字読み調査協力者

漢字読み調査は、漢字圏を最も代表すると思われる北京・台北・香港三都市を選んで、

2016年から2017年にかけて実施された。この3都市を選んだ理由は、以下二つに集約で きる。第一には、北京は中国大陸で使用される繁体字、台北と香港は大陸とは異なる繁体字 を使用すること、第二には、同じような繁体字でも台北は大陸と同じ中国語が主となり、香 港は広東語・英語・中国語の複数言語環境であることから、字体及び言語環境という点でそ れぞれ特徴があり、漢字圏を代表するものと考えられるからである。大陸では在外邦人が最 も多い都市は上海であり、上海の方言が使用されているため、多言語国家としての中国のも う一つの代表的な都市の例として考えられるが、方言使用の要素については台北・香港の調 査結果から分析考察が行えると判断し、調査対象としなかった。逆に、中国語に圧倒的な地 位を与える北京が、台北や香港との関係で対照的な例として適当であると考えられた。

三都市を選び比較対照するためには、調査協力者の条件をできるだけそろえることが望 ましい。しかし、それぞれの地で調査協力を要請する実際の作業はスノーボールサンプリン

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