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用語の分類基準と分析単位の検討

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第 2 章 先行研究の概観および研究課題

2.2 用語の分類基準と分析単位の検討

本節では、先行研究の定義と扱う範囲に依拠することで、スピーチレベルの分類を丁寧 体と普通体の2分類、語彙的スピーチレベルの付加、終助詞の付加、中途終了型の扱いの 順にまとめる。さらに、分析単位である「発話」の認定と、頻度の高いスピーチレベル(「基 本的スピーチレベル」、「無標スピーチレベル」など)の認定をも整理する。

27 本研究では、三牧(2013)を参照し、無標スピーチレベルを認定する。詳しくは3.2.3節を参照。

2.2.1 丁寧体と普通体の2分類

研究者間で、スピーチレベルの分類は異なっているが、スピーチレベルが丁寧体と普通 体という文末形式の種類を扱う点では、どの研究も一致している。そのうち、スピーチレ ベルを丁寧体と普通体の 2 種のみに分類した研究として、Maynard(1991)、メイナード

(1991)、Maynard(1992)、Maynard(2008)、Obana(2016)、Isida(2009)、大塚(2004)、 杉山(2000)、岡本(1997)などが挙げられる。

2.2.2 語彙的スピーチレベルの付加

スピーチレベルを文末レベルの丁寧体と普通体に2分類した他、語彙レベルのスピーチ レベルを扱う研究も見られる。そのうち、敬語表現(尊敬、謙譲、丁寧語、丁寧体など)

を表す「+レベル」とそれが見られないことを示す「0 レベル」という2種に分類してい る研究(Ikuta 1983)と、敬語(尊敬語、謙譲語、美化語)を含む発話を全て丁寧体と同レ ベルにしている研究(宇佐美1995など、石崎2000)がある。一方、語彙の範囲をさらに 増やして、狭義の敬語(あらたまり語)(++)、普通語(+)、親密語28(0)と軽卑語(-)

の4種に分類している研究(三牧2002)が挙げられる。

以上のように、研究者間において語彙レベルの敬語と丁寧体は同じレベルに扱われるか 否か、またどのような種類の語彙を分類するかといったことに関する取り扱いに相違が見 られた。

2.2.3 終助詞の付加

丁寧体と普通体の2種に加えて、終助詞の有無を考慮したさらに下位分類をしている研 究には、三牧(2002)、伊集院(2004)、佐藤(2000)などがある。スピーチレベルと終助 詞の関係を考慮に入れるか否かは、分類に大きな相違をもたらす要素の1つであるが、終 助詞の分類も先行研究においては分類基準が異なることが見られる。

三牧(2002)は、文末の言語形式を丁寧体(+)と普通体(0)に分類したうえで、さら に丁寧体を言い切り(+)と、丁寧体に「よ」「ね」「よね」などの終助詞や婉曲の「けど」

などを付加し、疑問詞「か」の脱落などによってややレベルを下げたレベル(+’)とに分 けた。

28 三牧(2002: 59)は、「親密語」を「方言、俗語、流行語、隠語、幼児語など」と「宿約形、口語 形、音便形、格助詞の省略」と細区分しており、さらに前者は後者より重みがあることを示した。

伊集院(2004)は、デス・マス体、ダ体、中途終了型の3種に分けたうえで、さらにデ ス・マス体とダ体を言い切り、終助詞「ね」「よ」以外の終助詞(例えば、「けど」「が」「か ら」「し」)を伴うもの、終助詞「ね」「よ」を伴うものの3種ずつに下位分類した。

佐藤(2000)は、以下に示したように、丁寧体と非丁寧体に終助詞「ね/よ」を付加す る/付加しないという計4種のスピーチレベルを扱った。

レベルⅠ:「ね/よ」が付かない丁寧体 レベルⅡ:「ね/よ」が付いた丁寧体 レベルⅢ:「ね/よ」が付かない非丁寧体

レベルⅣ:「ね/よ」が付いた非丁寧体 (佐藤, 2000: 9)

以上からわかるように、終助詞の付加を考慮したとはいえ、具体的にどのような種類の 終助詞を選択するか、そして、どのようにスピーチレベルと組み合わせるかといったこと に関する取り扱いに相違があった。

2.2.4 中途終了型の扱い

丁寧体でも普通体でもないものを分析している研究として、宇佐美(1995、2001a、2002)、 伊集院(2004)、陳(2003、2004a)などがある。そして、各研究者間においては使用され る用語と範囲が異なっている。

宇佐美(1995)は、丁寧体でも普通体でもないものを「中途終了型発話」と称した。ま た、「中途終了型発話」を普通体発話(-)と同レベルに扱い、そのうえ、「中途終了型発 話」を「述部が省略された場合や、複文の場合、従属節のみで主節が省略されたりする発 話、すなわち、最後まで言い切っていない発話を『中途終了型発話』と呼ぶ」(p. 35)と定 義している。

一方、宇佐美(2001a)は、「中途終了型発話」を含む幅広い意味の持つ用語である「丁 寧度を示すマーカーのない発話:No-marker(NM)」を採用している。また、宇佐美(2002) は、「中途終了型発話」以外に、大部分のあいづちや単語レベルの発話(例えば、一語文、

応答詞、感動詞、笑い声など)を含めることが述べられている。

伊集院(2004)は、「中途終了型」と称し、「もしできれば」、「~と思って」、「~へ行っ たり」、「~みたいな」、「~っていうか」のような例のみを挙げているが、具体的な説明が 見られない。

陳(2003、2004a)は、「中途終了型発話」を用いて、「その発話の意味が場面と文脈から 分かるが、言い切っておらず不完全な発話である」(陳, 2003: 10)ことを指すとしている。

まとめると、先行研究においては、丁寧体でも普通体でもないものに関して、「中途終了 型発話」と「丁寧度を示すマーカーのない発話」という用語を用いたが、具体的にどのよ うに分類基準を設定するか、応答詞や感動詞などをどのように分類するかといったことに 関する取り扱いに相違が見られた。

2.2.5 分析単位の認定

スピーチレベルに関する先行研究においては、分析単位である「発話」の認定、あいづ ちの分類などの基準が各々異なっている。

伊集院(2004)は、杉戸(1987)に従い、全ての発話を「実質的な発話」と「あいづち 的な発話」に分け、「実質的な発話」のみを分析対象とした。そのうえで、「実質的な発話」

におけるスピーチレベルを丁寧体、普通体と中途終了型の3種(さらに終助詞を加え下位 分類を行った)に分類した。なお、「実質的な発話」と「あいづち的な発話」について、杉 戸(1987)は以下のように定義している。

「ハー」「アー」「ウン」「アーソーデスカ」「サヨーデゴザイマスカ」「エーソウデスネ ー」などの応答詞を中心にする発話。先行する発話をそのままくりかえす、オーム返 しや単純な聞きかえしの発話。「エーッ!」「マア」「ホー」などの感動詞だけの発話。

笑い声。実質的な内容を積極的に表現する言語形式(たんなるくり返し以外の、名詞、

動詞など)を含まず、また判断・要求・質問など聞き手に積極的なはたらきかけもし ないような発話。ここではまとめて「あいづち的な発話」と呼ぶことにする。

あいづち的な発話以外の種類の発話。なんらかの実質的な内容を表す言語形式を含み、

判断、説明、質問、回答、要求など事実の叙述や聞き手へのはたらきかけをする発話。

ここでは仮に「実質的な発話」と呼ぶ。 (杉戸, 1987: 88)

また、陳(2003)は、発話を「言い終わっている発話」と「言い終わっていない発話」

に区分し、「言い終わっている発話」のみを分析対象とした。さらに、「言い終わっている 発話」を、「言い切っている発話」(文法的に完結している発話、すわなち、「デス・マス体 発話」と「ダ体発話」)と「言い切っていない発話」(「中途終了型発話」)の2種に分類し ている。詳細は、以下に示している。

発話は、言い終わっている発話、つまり当該発話において情報伝達が終了していると 判断される発話、及び言い終わっていない発話の2種類に分けられる。言い終わって いない発話は、相手の割り込みなどにより中断された発話であり、本稿の分析対象で はない。また、応答詞だけの発話(「はい」、「ええ」、「うん」、「いいえ」、「いいや」、

「いや」)は言い終わっている発話であるが、そのスピーチレベルの分類基準がまだ一 定していないので、分析対象から除外する。 (陳, 2003: 10)

三牧(2013)は、中途終了文、あいづち、文中に挿入された引用文や独話の文などを除 き、文末が明示されている発話のみを分析対象とした。

一方、宇佐美(2001a)とUsami(2002)は、全ての発話文を対象として、単独で現れる あいづちや応答詞なども「丁寧度を示すマーカーのない発話」に属すと規定している。

以上から、発話の認定基準において、宇佐美の一連の研究は、三牧(2013)、伊集院(2004)、 陳(2003)と大きく異なっていることが見て取れる。

さらに、Usami(2002)の理論的枠組みを参照した李(2008)は、以下に示すように、Usami

(2002)と異なる発話の認定基準とあいづちの規定を用いている29

文字化した会話の全ての発話文を「発話文のタイプ」という観点から「実質的発話文

(SB)」と「あいづち的発話文(BA)」にコーディングする。本研究における「実質的 な発話文(SB)」はスピーチレベルの判定の基準となる「丁寧度を示すマーカー」が付 けられる発話文であり、「あいづち的発話文(BA)」はスピーチレベルの判定の基準と なる「丁寧体を示すマーカー」がもともと付けられない「はい」、「ええ」、「うん」な どの発話を指す。 (李, 2008: 62)

上記の基準から、李(2008)は杉戸(1987)とほぼ同様の用語を使用したが、必ずしも 明確的な定義を提示したとは言えない。特に、「実質的発話文」の説明となる「丁寧度を示 すマーカー」という点において、杉戸(1987)と全く異なっていることが見て取れる。

さらに、李(2008: 98)は、発話文末のスピーチレベルを「全ての発話文の発話文末のス ピーチレベル」、「実質的発話文の発話文末のスピーチレベル」、「実質的発話文からNMを

29 李(2008)によると、「実質的発話文(SB)」と「あいづち的発話文(BA)」は、それぞれ “ Substantive utterance ” と “ Backchannel ” の意を表す。

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 41-47)

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