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ベース話者ごとのスピーチレベル・シフトの比較

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 85-89)

第 4 章 「グローバルな観点」からみるスピーチレベルとスピーチレベル・シフト 58

4.1.2 女性ベース話者と男性ベース話者のスピーチレベル・シフトの比較(対目上、

4.1.2.2 ベース話者ごとのスピーチレベル・シフトの比較

表4-5によると、母語場面における女性ベース話者と男性ベース話者は、対目上と対同 等に使用するダウンシフトとアップシフトの回数に1%の有意水準で有意であった(χ2 (3)

=35.402 , p<.01)。なお、残差分析の結果、母語場面における女性ベース話者と男性ベース 話者は、目上に対してアップシフトを有意に多く使用しているのに対し、同等に対してダ ウンシフトを有意に多く使用している点で共通していることが観察された。このことから、

日本語母語話者の初対面会話において、対話相手との力関係を顕著に反映しているのはダ ウンシフトであることがわかった。

以上から、母語場面における女性ベース話者と男性ベース話者は、全体的に対話者側と の上下関係に応じたダウンシフトとアップシフトの分布が似ていると言える。

3.0

4.7

1.7 2.9

1.5

8.6

6.8

3.6

0 2 4 6 8 10 12 14 16

JFB022/O JFB022/S JMB005/O JMB005/S

%

ダウンシフト アップシフト

7.3

9.2

2.5

5.2 16.5

7.9 8.8

3.9

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

JFB023/O JFB023/S JMB006/O JMB006/S

%

ダウンシフト アップシフト

4-4 母語場面における女性ベース話者ごとと男性ベース話者ごと各スピーチレベル・

シフトの使用割合

図4-4を参照すると、母語場面における全ての女性ベース話者と男性ベース話者は、目 上に対して、アップシフトを極めて多く使用している点で共通していることがわかった。

一方、同等に対して、女性ベース話者JFB022と男性ベース話者JMB005を除くと(JFB022

とJMB005は、同等に対してアップシフトを多く使用している)、全てのベース話者は、ダ

ウンシフトを多く使用している点で共通していることが観察された。

以上の全ての女性ベース話者と男性ベース話者が使用する目上と同等に対するダウン シフトとアップシフトの出現回数をカイ二乗検定で分析した結果と残差分析の結果を、以 下の表4-6に示した。

7.2

14.9

8.3 6.7

30.6

5.9

26.0

5.5

0 5 10 15 20 25 30 35

JFB024/O JFB024/S JMB007/O JMB007/S

%

ダウンシフト アップシフト

4-6 母語場面における女性ベース話者ごとと男性ベース話者ごとのスピーチレベル・

シフトの出現回数に関するカイ二乗検定と残差分析の結果 カイ二乗検定

ベース話者ごと ダウンシフト アップシフト χ2の結果

女性 ベース話者

JFB021

対目上 3(8.109) 19(13.891)

χ2(15) = 43.836, p<.01

対同等 18(12.164) 15(20.836)

JFB022

対目上 3(6.635) 15(11.365)

対同等 6(6.266) 11(10.734)

JFB023

対目上 8(9.584) 18(16.416)

対同等 7(4.792) 6(8.208)

JFB024

対目上 8(15.481) 34(26.519)

対同等 15(7.741) 6(13.259)

男性 ベース話者

JMB004

対目上 2(2.212) 4(3.788)

対同等 8(4.423) 4(7.577)

JMB005

対目上 1(1.843) 4(3.157)

対同等 4(3.317) 5(5.683)

JMB006

対目上 2(3.317) 7(5.683)

対同等 4(2.580) 3(4.420)

JMB007

対目上 8(12.164) 25(20.836)

対同等 11(7.372) 9(12.628)

( )内は期待値

残差分析

調整された 残差と結果

ベース話者ごと ダウンシフト アップシフト

女性 ベース話者

JFB021 対目上 -2.348*▽ 2.348*▲ 対同等 2.236*▲ -2.236*▽ JFB022

対目上 -1.833+ 1.833+

対同等 -0.138 ns 0.138 ns

JFB023 対目上 -0.674 ns 0.674 ns

対同等 1.299 ns -1.299 ns

JFB024 対目上 -2.585**▽ 2.585**

対同等 3.408**▲ -3.408**

男性 ベース話者

JMB004

対目上 -0.181ns 0.181 ns

対同等 2.186*▲ -2.186*

JMB005 対目上 -0.788 ns 0.788 ns

対同等 0.479 ns -0.479 ns

JMB006 対目上 -0.925 ns 0.925 ns

対同等 1.126 ns -1.126 ns

JMB007

対目上 -1.595 ns 1.595 ns

対同等 1.742+ -1.742+

表4-6によると、母語場面における各女性ベース話者と各男性ベース話者は、対目上と 対同等に使用するダウンシフトとアップシフトの回数に 1%の有意水準で有意であった

(χ2 (15) = 43.836 , p<.01)。なお、残差分析の結果、女性ベース話者JFB021とJFB024の

み、目上に対してアップシフトを有意に多く使用しているのに対し、同等に対してダウン シフトを有意に多く使用していることがわかった。一方、男性ベース話者JMB004のみ、

同等の相手に対してダウンシフトを多く使用していることが観察された。

以上から、全体のスピーチレベル・シフトの分布状況と異なり、各女性ベース話者と各 男性ベース話者は、対話者側との上下関係によって、実際に使用するダウンシフトとアッ プシフトの分布に差異があることが言える。

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