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プラス・ポライトネス効果

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 117-126)

第 5 章 「ローカルな観点」からみるスピーチレベル・シフト

5.1 母語場面におけるスピーチレベル・シフトのポライトネス効果

5.1.1 プラス・ポライトネス効果

例1)JFB021-JFO016(女女、目上)「相手への同意」

発話文 番号

発話文

終了 話者 発話内容 スピーチ

レベル

シフ ト

93 * JFB021

え、私中国語は全然出来ないから(うんうん) もしね、台湾でやるんだったら(うん)中国語 ちょっと勉強して、<と思うんですけど

>{<}。

P

94 * JFO016 <あーそう>{>}ですね。

95 * JFB021 どう<ですか?>{<}。 P

62 母語場面の女性ベース話者JFB024は、同等に対する無標スピーチレベルが普通体であったため、

本研究の分析対象から除外した。

96 * JFO016 <う ん、できると>{>}<便利かもしれない

>{<}。 N D63

97 * JFB021 <教えやすいですか?>{>}。 P U64

98 * JFO016 うん、そうですね=。

99 * JFO016

=ただ、私は全然やっぱり中国語がわからな いときに、(うん)行って、でも、すぐにね、

知り合いの、###、日本語学校で(うん)教え 始めたんですけど。

P

100 * JFB021 うん。

101 * JFO016

でも、そこでは私はね、来たばっかりで、

(うん)中国語がわかんないってことに(う

ん)もうなってるから、(うんうん)全然皆ね、

こう頼らないで(うーん)頑張ってやってた んだけど、(あー)私がそのうち中国語でわか るって<笑いながら>思い始めると、段々頼 ってくるんですよ。

P

102 * JFB021 あー、そうですね。

103 * JFO016

だから、それが逆に結構悩みで、(うーん)う ーんだからもう日本語教えてるときは、(う ん)結構使わないようにしてると、(あー)う ん、自分の中国語が全然伸びないですね<笑 い>。

P

104 * JFB021 あ、そっか。

105 * JFO016 難しいですね<笑い>。 P

106 * JFB021 生活する分には、中国語、でも必要です<よ

ねー>{<}。 P

107 * JFO016 <あ、そうですね>{>}=。

63 本研究では、ベース話者の使用するダウンシフトに焦点を当てるため、対話者のダウンシフトを 扱わないこととした。

64 本研究では、有標行動と捉えられるダウンシフトを中心に分析するため、アップシフトを扱わな いこととした。

108 * JFO016

=生活レベルの、でも中国語だったら、(う

ん)あのー、向こうの人本当に親切なんで、

(うん)あのどんどん話しかけてきてくれる し(あー)お店の人とか(へぇー)うん、何でも ね、こう、語学の勉強になる場は沢山ある から、(あー)うん。

N D

109 * JFB021 あ、じゃあ暮らしやすそうですね、<台湾っ

て、すごく>{<}。 P U

110 * JFO016

<あ、本当に、>{>}うん、本当にフレンドリ ーでね、すごく、うん、いいところだと思い ますよ。

P

111 * JFB021 近いしね65。 N D

112 * JFO016 うん、ほんとほんと。

113 * JFB021 いやー、<そっか>{<}。

114 * JFO016 <うん>{>}。

115 * JFB021

や、なんかもし日本語教えるんだったら、

まぁ、(うん)現地の言葉が出来た方‘ほう’

が、(うんうんうん)あのー、例えばあっちで

“あの先生は中国語もわかんないんだよ”

って(<笑い>)結構見下されたりするってこ

とってありますね。

P U

例1)の会話は、目上のベース話者JFB021が台湾で日本語教師になるための情報に関し

て、経験者のJFO016に聞いている場面である。発話文番号96、108で、目上の対話相手

JFO016は目下のベース話者に対して普通体を用いた。それに対し、ベース話者は発話文番

号 93-109 で、無標スピーチレベルの丁寧体を使い続けており、目上に当たる対話相手の

JFO016への配慮を表している。

ベース話者は、「生活する分には、中国語、でも必要です<よねー>{<}。」(発話文番号106)

を発話し、台湾で生活するためにどのくらいの中国語力が必要であるかということを対話

65 本章では、ベース話者が使用するダウンシフトの「ポライトネス効果」に焦点を当て、ダウンシ フトの生じたところ、すなわち、発話末が普通体である部分のみを網掛けと太字によって示す。

相手に向かって聞いている。そして、相手の返答がもらえた後、「あ、じゃあ暮らしやすそ うですね、<台湾って、すごく>{<}。」(発話文番号109)のように丁寧体を用い相手に確認 を求めている。その後、対話相手は「<あ、本当に、>{>}うん、本当にフレンドリーでね、

すごく、うん、いいところだと思いますよ。」(発話文番号110)のように丁寧体を用いベー ス話者の確認を返答していることが見られる。ベース話者はその返答を受け、台湾での暮 らしやすさを確認することができ、さらに発話文番号111で普通体を用いて自分の理解を 示しながら、相手の発話に同意している様子が伺える。

目上に対して丁寧体が無標スピーチレベルとして使用されてはいるが、普通体を使い対 話相手の発話(台湾の暮らしの良さという話)に対して自分の理解を示しながら、相手の 発話に同意している。このようなダウンシフトの使用は、相手の発話に強く共感を示すこ とにより、互いの心的距離の縮小に貢献しようとしていることが見られた。「ディスコー ス・ポライトネス理論」に基づき、このダウンシフトは対話相手との心的距離を縮め、相 手が心地よく感じる「プラス・ポライトネス効果」を生み出していると考えられる。

例2)JMB004-JMO003(男男、目上)「感情の吐露」

発話文 番号

発話文

終了 話者 発話内容 スピーチ

レベル

シフ ト

176 * JMO003

まあ、ワクチンが出ればそりゃ、まあ越し たことはまあないですけれども(ええ)、な かなか…そういうのは難しいですよね。

P

177-1 / JMB004 確かに、今後もまた起こる<可能性も>{<},, 178 * JMO003 <そ う で すよね>{>}、冬とか<やっぱり

>{<}。 NM

177-2 * JMB004 <あるん>{>}ですよね。 P

179 * JMO003 ええ。

180 * JMB004

《沈黙3秒》なんか、ほんと、ニュースと か、まどこまで本当なのか分かんないんで すけど(ええ)、極端な話日本が感染しなか ったら運が良かっただけだって言う、人も

…たまにいる<んですよね>{<}。

P

181 * JMO003 <あ、そうですね>{>}、はい。

182 * JMB004 どうなんでしょうね、<その辺>{<}。 P 183 * JMO003 <そうですね>{>}、はい。

184 * JMB004 入ってくる危険は<やっぱり>{<}【【。

185 * JMO003

】】<でも>{>}、日本でも例えばインフルエ ンザの集団ね(ええ)、えっと大流行とかね

(ええ)、何人も死んだり(えーえー)、えーっ

と、まあ今麻疹‘はしか’とかね、(ああ)大 流行してたり(あー)、こう、その、何て言う んすかね、SARSだけではなくて(うん)、感 染症での死亡っていうことを考えると、非 常に高いんですよ(ああ)。

P

186 * JMO003

ですから、あのー…、こういう先進国で<軽 い笑い>、やっぱり感染症ってのなくなる、

その、予防できる感染症はなくなってしま うっていうのはね、まああまり、喜ばしい ことではないんですよね。

P

187 * JMB004 うーん。

188 * JMO003

ですからまあ、えっとー、SARSだけが取 り上げられてますけれども、それ以外にも ね、あのー、こう…もっと、簡単に(ええ)、

もっと安く、すぐに、こう、えーっと、予 防できる病気を、み早く見つけないで(う ん)、重症化させないで、あの、その助ける ことができる(うん)病気で亡くなられてい る方がね、いるんですよね。

P

189 * JMB004 うん。

190 * JMO003

ですから、そういうところにこう目を向け

て(うん)、お金を出したほうがいい#####

を、いいと思いますね。

P

191 * JMB004 ええ。

192 * JMB004 毎年言ってますもんね、りゅ、インフルエ P

ンザ大流行って。

193 * JMO003 ええ。

194 * JMB004 ええ[小声で]。

195 * JMB004 ね。

196 * JMB004 えーまあ今年も多いんでしょうね[小声

で]。 P

197 * JMB004 何とか#####。

198 * JMO003 え?。

199 * JMB004 ま、ま、何ともならないんですかね<軽く笑

い>。 P

200 * JMB004 <分 かんない>{<}<軽く笑い>。 N D

201 * JMO003 <あー>{>}[比較的大きな声で]。

202 * JMO003 え?。

203 * JMB004 な、何ともならないんですかね。 P U

204-1 / JMO003

あーまとり、えーっと、やっぱりワクチン は(ええ)、あのー、やった方がいいと<思い ますけれども>{<},,

205 * JMB004 <あーあー>{>}。

204-2 * JMO003

あのー、お手洗いとか、あと、うがいでや っぱ予防することもできますし、あと、あ 普段の生活をきちっとする。

N D

206 * JMB004 そうですよねー。

207 * JMO003

で、やっぱりね、流行ってるのは、一番寒

い時なんですよ。 P U

例 2)は、話者双方がインフルエンザの流行について話している場面である。ベース話

者JMB004は発話文番号176-199で、無標スピーチレベルの丁寧体を使い続けており、目

上に当たる対話相手のJMO003への配慮を表している。

話者双方は発話文番号176-192で、SARS 感染症に関する情報と予防から、インフルエ ンザの流行まで話題を広げている。ベース話者は、「えーまあ今年も多いんでしょうね[小 声で]。」(発話文番号196)を発話し、今年のインフルエンザ流行に対する心配を示してい

る。その後、「何とか#####。」(発話文番号197)を発話したが、対話相手から繰り返しを求 め、「ま、ま、何ともならないんですかね<軽く笑い>。」(発話文番号199)と発話している ように、ベース話者は今年のインフルエンザに対する予防策について相手に聞いているこ とが見られる。さらに、ベース話者は「<分かんない>{<}<軽く笑い>。」(発話文番号200)

のような普通体を用い、インフルエンザの予防に関する知識が不十分であることを相手に 伝達するとともに、相手からの返答を期待している様子が伺える。

目上に対して丁寧体が無標スピーチレベルとして使用されてはいるが、普通体を使い自 分の心情を直接に相手に示し、対話相手からの返答を期待している。このようなダウンシ フトの使用は、直後に笑いが多く見られることからも、和やかな雰囲気を作っており、話 者間の心的距離の接近に貢献していることが見られた。「ディスコース・ポライトネス理論」

に基づき、このダウンシフトは対話相手との心的距離を縮め、相手が心地よく感じる「プ ラス・ポライトネス効果」を生み出していると考えられる。

例3)JFB023-JFO016(女女、目上)「独話的」

発話文 番号

発話文

終了 話者 発話内容 スピーチ

レベル

シフ ト

1 * JFO016 じゃあ、よろしく<お願いします>{<}[ライ

ン1~11までの音声なし]。 P

2 * JFB023 <よろしくお願いします>{>}。 P

3 * JFO016 私は「JFO016姓」といいますが。 P

4 * JFB023 はい。

5 * JFB023 私は「JFB023姓」と言います。 P

6 * JFO016 「JFB023姓」さん、はい。

7 * JFB023 よ ろしく<お願いします>{<}<笑いながら

>。 P

8 * JFO016 <よ ろしくお願いします>{>}<笑いながら

>。 P

9 * JFB023 何度言ってるんだろう?<笑いながら>。 N D

10 * JFO016 いやいやいやいや<笑いながら>。

11 * JFO016 「JFB023姓」さんも(はい)学生さん(はい)で

すか?。 P U

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 117-126)

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