第 6 章 中国人日本語学習者のスピーチレベルとスピーチレベル・シフトの使用意識
6.2 調査方法
本調査は、留学経験の有無による使用意識の差を考察するため、在日の中国人日本語学 習者(20名)と中国国内の中国人日本語学習者(10名)を対象とした。また、調査対象者 は全てN2合格者に限定した。調査対象者は、以下の表6-1と6-2の通りである。
表6-1 留学経験者の一覧75
調査対象者 年齢 性別 日本語の学習年数 日本留学期間
CSF1 26 女 5年 2年
CSF2 26 女 8年 2年
CSF3 28 女 10年 2年
CSF4 26 女 8年5ヶ月 2年3ヶ月
CSF5 27 女 3年 2年6ヶ月
CSM6 26 男 6年 2年6ヶ月
CSF7 24 女 5年4ヶ月 2年9ヶ月
CSF8 31 女 1年 3年
CSF9 27 女 8年 3年
CSF10 24 女 2年 3年5ヶ月
CSF11 27 女 8年3ヶ月 3年11ヶ月
CSM12 26 男 3年 4年
CSM13 27 男 5年 4年
CSF14 29 女 11年6ヶ月 4年
CSF15 32 女 14年 4年
CSF16 25 女 7年5ヶ月 4年10ヶ月
CSF17 28 女 4年 5年
CSF18 25 女 6年 5年
CSF19 26 女 7年 5年
CSF20 26 女 8年4ヶ月 6年
75 調査対象者の記号について、C は Chinese、S/F は Second Language/Foreign Language、M/Fは
Male/Femaleを指す。また、表6-1は留学期間が短い順に配列されている。留学期間が同じである場
合、日本語学習年数が短い順に配列されている。
表6-2 非留学経験者の一覧76
調査対象者 年齢 性別 日本語の学習年数
CFF1 19 女 1年5ヶ月
CFM2 21 男 2年
CFF3 20 女 2年6ヶ月
CFM4 18 男 3年
CFM5 20 男 3年
CFM6 20 男 3年
CFM7 22 男 3年6ヶ月
CFF8 22 女 6年6ヶ月
CFF9 26 女 7年6ヶ月
CFF10 25 女 9年
6.2.2 アンケート質問紙(調査票)
本調査は、中国人日本語学習者のスピーチレベルとスピーチレベル・シフトの使用意識 を究明することを目的とする。調査票における質問項目は15問からなり、大きく中国国内 の日本語学習(初級・中級レベル、上級レベルの自己判断)、留学後の使用意識、今までの 問題点という3つの部分に分けられる(詳しくは付録1、2を参照)。
質問1~10は、中国国内で日本語教育を受けた時(学部)、スピーチレベル(シフト)の 学習過程に関する項目である。質問1~8は、具体的に、導入時期(質問1)、使用した日 本語教科書(質問2)、日本語教科書におけるスピーチレベルの紹介(質問3)、日本語教師 による指導の時間(質問4)、学習者の復習・勉強の時間(質問5)、意識的に丁寧体あるい は普通体を使う経験と理由(質問6、7、8)に関する質問である。これにより、初級、中級 におけるスピーチレベル(シフト)に関する学習過程を把握できると予想される。
また、質問9は、現段階の上級レベルで、スピーチレベル・シフトの使用頻度に関して 自己判断してもらう項目である。これにより、上級学習者は自ら使用意識をどのように判 断するかということを把握できるであろう。質問10は、質問9で「ほとんどスピーチレベ ル・シフトを使わない」を選んだ回答者に対して、その理由を選択してもらう項目である。
これにより、学習者は単一のスピーチレベルを使用する理由を導き出すことができる。
76 表6-2は日本語学習年数が短い順に配列されている。
質問11~14は、日本への留学経験の有無、留学期間、日本語教科書での知識と実際に日 本語母語話者との会話に見られるスピーチレベル(シフト)の相違点、留学後のスピーチ レベル(シフト)に関する使用意識の変化に関する項目である。これにより、教科書と実 際会話との相違点、留学前と留学後の使用意識の変化などを導き出せると考えられる。
質問15は、自分の今までの日本語学習を振り返り、スピーチレベル・シフトに関する問 題点や不明な点などに関して記入してもらう項目である。これにより、中国人日本語学習 者(留学経験者と非留学経験者)のスピーチレベル・シフトの使用上の問題点を導き出す ことが可能であると考えられる。
6.2.3 調査手順
1)調査時期:2019年1月
2)調査方法:在日の日本語学習者20名に対し、個別に面談しながら調査の説明を行い 回答してもらった。中国国内の日本語学習者10名に対し、メールによって調査の趣旨や目 的などを説明した後、回答してもらった。
3)実施手順:まず、調査対象者に専門用語である「スピーチレベル」と「スピーチレベ ル・シフト」77について中国語で説明した。具体的には、日本語の発話末においては、丁寧 体(「です・ます体」)と普通体(「だ・である体」)という2つのスピーチレベルが存在し ており、時には丁寧体から普通体へ変わったり、また普通体から丁寧体へ戻ったりすると いう切り替えの現象が起こると説明した。
次に、本調査の目的と趣旨、すなわち、中国人日本語学習者が実際にどのようにスピー チレベルとスピーチレベル・シフトを学習してきたか、そしてどのようなスピーチレベル とスピーチレベル・シフトの使用意識を持っているかなどを明らかにすることを、調査対 象者に十分に理解してもらった。
最後に、上記のような説明をした後、調査票に協力者の年齢、性別、学習期間などの基 本情報を入力してもらい、15問をよく読んで適切な選択肢あるいは自由記述を記入しても らった。
77 中国語では、それぞれ「语体」と「语体转换」の用語を用いる、詳しくは付録1を参照のこと。
また、調査対象者に「语体」と「语体转换」に対応する日本語の用語は「スピーチレベル」と「スピ ーチレベル・シフト」であることを事前に説明した。
6.2.4 自由記述の分析方法
自由記述の質問項目(質問7、8、13、14、15)を、以下の手順に沿って分析する。
1)自由記述の回答から、最も記述を意味するキーワード(語彙あるいは語句)を1つか
2 つ選出する。元の記述に適切なキーワードが存在しない場合、回答の意味を吟味したう えで相応しいキーワードを提示する。なお、意思疎通をより円滑にするために、回答者の 意思を把握したうえで、括弧で筆者による解釈を加える場合がある。
2)回答のキーワードに関する分類作業を行う。小さい意味範囲を持つキーワードをより 意味範囲の広いキーワードへと統括していく。また、1 人の回答者が様々な内容を記述し た場合、2つ以上のキーワードに分類することがある。
3)必要に応じて、それ以上意味範囲の広いキーワードへ統括することができなくなるま で、2)の手順を繰り返す。最後に、最終的に残ったキーワードを表にまとめる。