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ニュートラル・ポライトネス効果

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 135-140)

第 5 章 「ローカルな観点」からみるスピーチレベル・シフト

5.2 接触場面におけるスピーチレベル・シフトのポライトネス効果

5.2.2 ニュートラル・ポライトネス効果

大変だなぁ<笑い>。」のように普通体を使い、発話時の自己の心情を直接に表出している ことが見られる。また、直後に笑いが多く見られることから、話者間の心的距離の接近に 貢献しており、一種のポジティブ・ポライトネスであると捉えられる。

このように、自分の心情を直接に相手に示すことによって、初対面における堅苦しさを 緩和することができる。このようなダウンシフトの使用は、直後に笑いが多く見られるこ とから、和やかな雰囲気を作っており、話者間の心的距離の接近に貢献していることが見 られた。「ディスコース・ポライトネス理論」に基づき、このダウンシフトは対話相手との 心的距離を縮め、相手が心地よく感じる「プラス・ポライトネス効果」を生み出している と考えられる。

233 * JFO014 へー、そっか。

234 * JFO014

日本語の先生とか、じゃ、やらないです

か?。 P

235 * TFBA003 日本語の先生?。

236 * JFO014 うんうん。

237 * TFBA003 うん、あの、もし、(うん)博士をとったら

…<2人笑い>。 NM

238 * JFO014 うーん、確かにそうですね。

239 * TFBA003 そうですね。

240 * JFO014 今大学で教える時は、(うん)絶対博士(は

いはいはい)ね、必要ですもんねー。 P

241 * TFBA003 うんうんうん。

242 * JFO014 台湾は結構、あの、学歴が大切??、ですか

ね。 P

243 * TFBA003 うーん、なんか(うん)景気が悪いかな。 N D

244 * JFO014 あぁ、うんうんうん。

245-1 / TFBA003 だから、あの、学歴も、(あぁー)だんだん,,

246 * JFO014 そっか。

245-2 * TFBA003 少し、はやい、(うん)学歴ははやい(うん)

なら、給料もたくさんもらえる。 N

247 * JFO014 そうですね。

248 * TFBA003 うん<うん>{<}。

249 * JFO014

<あと>{>}は仕事ね、皆で探す時に、(う ん)学歴がいい人は(うんうん)簡単に仕事 がもらえるかもしれないですね。

P U

250 * TFBA003 そうですね。

251 * JFO014 そうだねー(うん)確かに。

252 * JFO014 日本はね、最近あんまり学歴のことを言

わないですよ。 P

例 10)は、目上の対話相手JFO014 とベース話者TFBA003が学歴の重要さについて話 している場面である。ベース話者TFBA003は、発話文番号222-242で、無標スピーチレベ ルの丁寧体を使い続けており、目上の相手に当たるJFO014に対する配慮を表している。

発話文番号222から、対話相手はベース話者の専門についてたくさん聞いている。その 後、将来の職業という話題へと転換し、大学の教師になるためには博士が必要であるとい う話に至っている。ベース話者は、対話相手による「台湾は結構、あの、学歴が大切??、 ですかね。」(発話文番号242)という質問に対し、「うーん、なんか(うん)景気が悪いかな。」

(発話文番号243)のように普通体を使い、相手からの確認の質問を返答している。

このようなダウンシフトの使用は、対話相手からの確認を応答する時に見られた。「ディ スコース・ポライトネス理論」に基づき、このダウンシフトは相手が心地よく感じる「プ ラス・ポライトネス効果」も、相手が失礼だと感じる「マイナス・ポライトネス効果」も 見られない。一方、「プラス・ポライトネス効果」と「マイナス・ポライトネス効果」と別 次元の効果、すなわち、相手からの質問を返答することにより、発話内容を強調するよう な効果があると考えられる。

例11)TMBA002-JMO001(男男、目上)「自己の思考」

発話文 番号

発話文

終了 話者 発話内容 スピーチ

レベル

シフ ト

219 * JMO001

いや、でも、あのー、やっぱりね、「大学

名1」のその、発音の指導がね、(あぁ)す

ごいじ、実戦的でしょう?、非常に。

P

220 * JMO001 実戦的。

221 * TMBA002 実戦?。 NM

222 * JMO001 実際的[中国語で]。

223 * TMBA002 あ、実戦。

224 * JMO001 うん。

225 * TMBA002 うーん。

226 * JMO001 実戦は実戦、[中国語で]実戦、[中国語で]

戦争的戦[中国語で]。

227 * TMBA002 あ、実戦的?[↑]。 NM

228 * JMO001 実戦。

229 * TMBA002 戦争の戦?。 NM

230 * JMO001 そうそうそう。

231 * TMBA002 ほー、実践的。

232 * JMO001

うん、実践的っていうのは、(あぁ)要する に実際的、実際的練習[中国語で]、よ、ち ょっとね、模擬練習[中国語で]っていう ような(あぁー)感じ[中国語で]。

233 * JMO001

例えば、あの、採訪[中国語で]とかね、(あ ー)インタビューとか、(あぁ)あれでしょ う?。

P

234 * JMO001 大学の、まあ、夜間の学生は知らないけ

ど、あの【【。

235 * TMBA002 】】あー、日間の大学の学生は、まあ(う

ん)常に練習しています。 P

236-1 / JMO001

うん、あのー、僕が知ってる「大学名1」 の学生、何人かいましたけど,,

237 * TMBA002 はい。

236-2 / JMO001

あの、やっぱりイン、こうやってインタ ビューをね、(あぁー)2年生かな、「大学

名1」の、2年生の女の子が(うん)、あの、

まあ、僕の知り合いが紹介してくれたん ですけどね,,

238 * TMBA002 はい。

236-3 / JMO001

その子らがあの、授業でね、そのインタ ビューの(うんうん)日本人と、話をして る(うん)インタビューをして、(あぁ)それ を録音して、それを,,

239 * TMBA002 授業で?。

236-4 * JMO001 そう、授業で、まあ、発表するんですね。 P

240 * TMBA002 あー、そうそうそうそう。

241 * JMO001 で、全部の学生がやるんですよ。 P

242 * TMBA002 はあー。

243 * JMO001 2年生ですよ。 P

244 * TMBA002 すごい、2年生は、日本人と話す、勇気

がない。 N D

245 * JMO001 そうね。

246-1 / JMO001 だ、勇気の問題いでしょう?,, P U

247 * TMBA002 はい。

246-2 * JMO001 語学はね。

例11)は、ベース話者TMBA002と目上の母語話者JMO001が、ある大学の日本語授業

のやり方について話している場面である。ベース話者TFBA002は、発話文番号219-243で、

無標スピーチレベルの丁寧体を使い続けており、目上の相手に当たるJMO001に対する配 慮を表している。

発話文番号219から、「大学名1」の実践的な発音指導について話者双方は話している。

発話文番号233で、インタビューという実践的な練習が挙げられ、発話文番号243まで、

日本語の授業で2年生の学生たちは日本人と話してインタビューしている内容を発表する ということを話している。それに対し、ベース話者は「すごい、2年生は、日本人と話す、

勇気がない。」(発話文番号 244)のように普通体を使い、自己の思考を直接に表出してい る。

このようなダウンシフトの使用は、「話し手の領域」(鈴木1997)に属す事柄である自己 の思考を直接に表出する時に見られた。「ディスコース・ポライトネス理論」に基づき、こ のダウンシフトは相手が心地よく感じる「プラス・ポライトネス効果」も、相手が失礼だ と感じる「マイナス・ポライトネス効果」も見られない。一方、このダウンシフトは、「プ ラス・ポライトネス効果」と「マイナス・ポライトネス効果」と別次元の効果、すなわち、

自分の思考を直接表出することにより、和やかな雰囲気を作り出しているという効果があ ると考えられる。

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 135-140)

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