第 3 章 研究方法
3.1 調査対象
3.1.2 調査校の事情
3.1.2.1 日本語専攻のカリキュラム
K大学の日本語科は1998年に設置されたが、日本語教育は1960年代から始まっており、
日本語教育の歴史が比較的古い9。全国の高等教育機関において、日本語科実力ランキング でも上位にいる。K大学の日本語科は毎年20人(日本語学習はほとんどゼロから始まる)
8 全国大学ランキングリストが毎年複数発表されており、K大学の順位は一般的に5位から15位の間に ある。
9 日本語学科が設置される前に、日本語教研室があった。日本語専攻の人材または、ほかの専攻の第二外 国語としての人材を養成していた。
30 前後を募集し、少人数で授業を行う。
日本語のカリキュラムについては、中国国家教育部(日本の文部科学省「文部」部門に 相当)が定めた日本語専攻大学生用の指導要領である『高等院校日語専業基礎階段教学大 綱』と『大学日本語専攻高学年段階教学大綱』10により、定められている。基本段階(一・
二年生)における日本語授業は精読(または総合日本語、基礎日本語)と技能別日本語(読 解、聴解など)、各大学が独自に設置した科目(日本文学、日本経済など)である。個々 の大学によって異なるが、読む、書く、話す、聞くの四技能を育成する精読という授業は 殆どの日本語カリキュラムの重点コースとして扱われている。『高等院校日語専業基礎階 段教学大綱』により、具体的な基礎段階の教育目的、学習時間数、教育内容が定められて いる。教育目的は日本語に関する基礎知識の獲得や聴解・会話・読解・作文の四技能の訓 練を通して、日本語の運用能力を身に付けると同時に、日本の社会文化の知識を学習、理 解することである。学習期間は、四学期があり、一学期の平均は17週である。第一学年は、
週に14コマ(1コマ=45分)の授業数があり、合計で476コマ以上になる。第二学年は週 に12コマ、合計408コマ以上と規定されている。教育内容は表3-1に示す通りである。
表3-1 日本語専攻の基礎段階の教育内容
カテゴリー 学年 教育内容
発音 一 発音:①清音、濁音、半濁音、撥音、促音、長音、拗音、拗長音の発音
②母音の無声化、送気音と無送気音 ③単語レベルの発音の弁別 ④日 本語の発音の特徴、アクセント、イントネーションなど
二 発音:センテンスの発音および発音についての知識
イントネーション:単文・複文におけるイントネーションの変化、文レ ベルのプロミネンス、終助詞の発音
文字と語彙 仮名、漢字、ローマ字の習得。漢字1,607字、語彙第一学年3,000語、第 二学年5,600語
文法 一 品詞の分類、意味および基本用法、単文の構造および使い方 二 敬語、テンス、アスペクト、発声
文型 文型の数:230個 機能・概念 60項目
社会文化 対象国の文化知識
続いて、『大学日本語専攻高学年段階教学大綱』(2000)の教育目的と教育内容を見て みよう。教育目的は「学生が学部を卒業する時、しっかりした日本語の基礎能力や応用能 力を身に付けること、日本語学、日本文学、日本社会文化(地理・歴史・政治・経済・民 俗、宗教など)の基本知識も身につけること」(筆者訳)である。教育内容は基礎段階の ようには明確に規定されておらず、カリキュラムに①日本語総合スキル、②日本語学、③
10 ここでは、『高等院校日語専業基礎階段教学大綱』と『大学日本語専攻高学年段階教学大綱』を日本語 に訳しているが、参考文献に入れる際は、中国語そのままの形で記述する。「高等院校」は大学または 大学に相当する教育機関のことである。基礎段階は一・二年生で、高学年は三・四年生のことである。
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日本文学、④日本社会文化という四つの面の内容が含まれるべきであると書いてある。具 体的には、日本語の精読の授業、日本語の文章と新聞の閲読の授業、日本語の作文の授業、
翻訳(通訳)の授業という四種類の授業が設置されるべきという要求事項がある。学習時 間数と具体的な授業科目についても明確に記されておらず、上記規定した要件を満たし、
それぞれの学校の特徴に応じて、カリキュラム作成を行うことが求められている。
『高等院校日語専業基礎階段教学大綱』および『大学日本語専攻高学年段階教学大綱』
にしたがい、作成されたK大学の日本語学科の日本語カリキュラム(2011年度入学者一年 生から四年生まで)を表3-2に示す。
表3-2 K大学2011年~2014年の日本語カリキュラム
学年 コマ/週
科目
一年生 二年生 三年生 四年生 前
半 後 半
前 半
後 半
前 半
後 半
前 半
後 半 基礎日本語 10 〇 〇
中級日本語 8 〇 〇
上級日本語 6 〇 〇 〇
日本語聴解 4 〇 〇 〇 〇 日本語会話 4 〇 〇 〇 〇
日本事情 2 〇
日本語作文 2 〇 〇 〇 〇
日本語閲読 2 〇
日本史 2 〇
日本新聞閲読 2 〇 〇 〇
日本語言語学 2 〇
日本語実用文法 2 〇
日本語視聴 2 〇 〇
ビジネス日本語 2 〇 〇
日本語実用文法 2 〇
通訳実践 2 〇 〇
日本語古典文法 2 〇
日本文学史 2 〇
日本古典文学鑑賞 2 〇
中日対訳 2 〇
日本経済 2 〇
日本近代文学鑑賞 2 〇
日本語概論 2 〇
日本文化論 2 〇
日本政治 2 〇
異文化交流 2 〇
論文指導 4/17(週)11 〇
11 論文指導という授業は全部で4コマしかなかった。
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表3-2はK大学の日本語学科に2011年に入学した学習者の一年生から四年生までの日 本語のカリキュラムである。
本研究の研究対象はK大学日本語学科2011年入学の学習者である。K大学の日本語学 科は毎年20人前後を募集する。2011年に募集した15人の学習者の中で、日本語科を第一 志望にした学習者は2人で、第二・三・四・五志望にした学習者は6人で、日本語科を志望し ておらず、日本語専攻に配属された学習者は7人である。学習者のプライバシーを保護す るために、学習者本人の同意を得て、日本語専攻学習者を「A+数字」で表記する。学習 者の内訳は表3-3に示す通りである。
表3-3 本研究における日本語専攻学習者の理系文系別の内訳
日本語学科への志望状況 文系学習者 理系学習者 第一志望 A01、A02
第二-五志望 A03、A04、A05、A06、
A07
A08
志望せず A09、A10、A11、A12、A13、A14、
A15
前述のように、ほとんどの大学が転専攻の制度を有し、K大学もこの制度を有する。大 学によって、転専攻制度が異なり、転専攻試験が行われる時期がそれぞれ違っている。K 大学の場合、一学期が終了し、転専攻試験が行われ、その試験に合格し、かつ日本語専攻 の定期試験に合格すれば転専攻できるということになっている。