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第 4 章 結果と考察―日本語専攻学習者―

4.4 各学習者の学習軌跡―A03 と A05 を除く―

4.4.3 学習者 A04

A04は最初K大学の選択することができる文系の専攻の中で、評判の良い国際貿易専攻 を第一志望にしたが、結局合格できずに、第(二・三・四・五)志望として選んだ日本語 専攻に入学した。その理由は外国語を学習してみたいというものであった。

日本語学習開始後、それまで接したことのない日本語の授業に対して、「ごく普通の感 じだね。何も感じていないわけではない。高校の授業と変わらない気がする。これらの授 業は大抵同じように感じる。(感觉很一般,没什么特别的,感觉和高中时候的课没多大区别,日语 这些课感觉差不多。)(質問紙調査/20111006)」とあるように、あまり情熱を感じていなか った。A04の考えの、日本語の授業は高校時代の授業と変わらないというのは、一つの科 目として勉強している感覚を指している。A04は四年間の日本語の学習過程を二段階に分 けている。A04は日本語を高校の学習科目と同じ感覚で学習していたが、高校の学習科目 と違うのは、専攻だから長時間の学習が要求されることであろう。一・二年生の基礎段階 では、毎日同じ内容――日本語の基礎(暗記などの反復練習)を学習するのに、「日本語 学習の積極性が足りない。(日语学习的积极性不够。)(質問紙調査/20111121)」「だんだん 無味乾燥に感じてきている。(渐渐感觉到有点枯燥。)(質問紙調査/20150507)」という心境で あった。高校時代の学習の原動力は試験で良い成績を獲得し、良い大学に入学することで あったが、大学一・二年生時の日本語学習の原動力は「明日、授業があるとき、そのため の宿題をやらないといけない。それをやるとき、自分が好きかどうか考えていなかった。

(比如说明天要上课,作业肯定是要做的,但是做的时候不会想喜欢还是什么的。)(インタビュー調査 /20140901)」、「先生に言われた宿題の完成しかやらなかった、会話文の暗誦や単語の暗 記をしている時間が多かった。(学习动力大多是学习任务的完成,平时读书、记单词的时间相对比 较多。(質問紙調査/20150507)」、ということであった。宿題をやっていた際、多くの場合、

A04は「自習で日本語を学習していたとしても、集中してやっていなかった。自習だけで はなく、日本語の授業でもよく気が散ることが多かった。他の種類の本を読む方が日本語 の本を読むより面白かった。(就是自习的时候,心思不会集中在上面,虽然去做了,就算上课的时候 我都会走神,看其他别的书,都觉得比如日语专业书要有趣很多。)(インタビュー調査/20140901)」

というような精神状態であった。二年生時の精神状態について、A04は下記のように語っ

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特に二年生では、日本語学習の精神状態がひどかった。日本語学習は宿題以外に、期末試 験の前ぐらいしかやっていなかった。平日も宿題はやっていたが、彷徨っていた。何をす ればいいかわからなかった。目標もなかった、自分が何を好きかもわからない自分にムカ ついていた。

(大二的时候那个时候完全,可能就是到了期末考试的时候才去看,平时虽然也有看,就是感觉自 己的整个状态很迷茫那种,就是不知道自己要做什么,每天感觉自己没有目标,感觉自己没有一个 自己喜欢的东西,那时候就感觉自己喜欢的东西都不知道,都不知道自己每天要去干嘛。)

(インタビュー調査/20150901)

二年生の時には、A04は日本語に対する新鮮味がなくなり、日本語学習に楽しみを感じ ることができなかった。また、学習の目標がなかったため、将来に対する不安も募ってい った。専攻としての日本語学習がずっとこのままの状態で良いか、自分が何を好きかも分 からないままで良いのか、などの不安が窺える。

しかし、一年生と二年生の学習期間内において、日本語学習を「無味乾燥」であると感 じていたが、これは最初からあった感情ではない。日本語専攻に入学し、日本語に接した ことがないため、「日本文化について知りたいという気持ちになった。(就是开始有想去了 解日本文化的欲望了)(インタビュー調査/20111121)」とあるように、最初は日本や日本語に新 鮮味を感じていた。時間が経つにつれて、日本語に対する新鮮味もなくなり、日本語を高 校時代の授業と同じようにただ一つの科目として学習していた。ただし、常に「無味乾燥」

ということではなく、日本人の先生が担当していた会話の授業は好きであった。「その先 生が理由かもしれない。その先生が非常に活発で、クラスみんなの能動性を引き出すこと が上手な先生だった。(可能是日语会话课的老师性格比较活泼,比较能带动大家的积极性。(イン タビュー調査/20150524)」とあるように、先生の授業の仕方によって、A04の日本語学習 への関心を引き出すことができたのである。

三年生では、日本文化、文学などの教養科目が開設され、A04は日本語学習に対して、

「三年生の授業が好きだった。精神状態も良かった。」というように変化していた。また、

どの部分に興味を持っていたかというと、「感じの良い時は文学を勉強していた時ぐらい だったかな。特に時間を割いて読んでいなかったが、古典文学のほうが面白く感じていた。

感觉对日语感觉比较好的时候就是学习文学的时候,虽然我那段时间也没有去看,但是就感觉古代文学那 一点还是挺有意思的。)(インタビュー調査/20140901)」とあるように、日本の古典文学に興味 を持ち、三年生の授業を「無味乾燥」とは思わなくなったのである。日本語の授業数がま だまだある四年生の上半期では、古典文学の授業に対して、「四年生の授業でも日本文学 や文化などの内容があったので、それらの授業の発表準備をした時、真面目だった。(

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四研究文化方面的比较多一点,看了文化文学方面的,完成这部分学习任务的时候还是觉得比较认真的。)

(インタビュー調査/20150524)」という様子であった。中国の大学では、学部四年目は就職 活動の時期になるが、就職することに決めたA04は就職より、日本語学習を優先していた。

これは主に、日本文化関連の学習内容の授業が多かったからである。一年生・二年生との 違いについて、A04は「これらのことをやるとき、前と違って、面白いと感じることが多 くなった。(现在老师在让你做这些事情的时候,我查着查着觉得有点意思。)(インタビュー調査 /20150524)」と述べている。

学習行動においては、一年生や二年生では、いくら日本語学習に彷徨っていたと言って も、それはあくまでも考え方の範囲内であり、実際の行動まで影響はなかった。日本語学 習への能動性は少なかったが、A04の日本語学習への態度は真面目であった。「授業外活 動でやることと言えば、日本語の自習しか思いつかなかった。(自己能想到的大部分时间也都 是在自习。)(インタビュー調査/20140901)」とあるように、日本語学習で、自分の好きなこ とを発見できないという精神的動揺があったが、宿題はしっかりと完成していた。学習者 の日本語学習調査票からも、質問紙調査からも、授業外のほとんどの時間を日本語の学習 時間に充てていたことが分かる。四年生では、就職活動が主となるはずであったが、日本 語の授業の宿題(発表、レポートなど)を優先的に完成させていた。

日本語の学習効果についてA04は、「ずっとよくなかった」と落ち込んでいる様子で言 っていた。大学のGPAの算出は専攻学習のみならず、副科目の成績も含まれる。A04の日 本語の授業の成績はクラスでも普通であったが、副科目の成績が良かったため、大学院の 推薦入試を受ける資格があった。しかし、A04本人は三年生から大学院に進学するかどう かについて、「もう三年間も勉強したというのに、ずっと状態が改善しない。日本語にそ れほどの興味を持っていない。自ら勉強しようと思わなかった。(感觉自己学了三年,自己一 直都是这种状态,没有什么兴趣,没有太大的兴趣,没有太上心的感觉。(インタビュー調査/20140901)」

ため、推薦入試の資格を放棄し、就職することに決めたのである。さらに、詳しく言うと、

「宿題や試験のために、ずっとのらりくらりと大学生活を送ってきたので、虚しく感じて いる。(为了作业为了考试,一直感觉大学就是混的感觉,因为感觉过来了,可能正是因为这样才会感觉 到很空虚。)(インタビュー調査/20140901)」という理由もあった。A04は能動的に行動でき るような何かを非常に重視し、それを基準に専攻学習で有意義に過ごせていたかどうかを 判断していた。専攻として学習する日本語に心から取り組みたい何かを発見することがで きなかったため、日本語専攻でこれ以上学習しても、恐らく同じ結果になると予想し、大 学院への進学を断念したのである。

以上のことからA04は、受動的に日本語を学習していたことが明らかになった。しかし、

専攻である日本語に対して、常に消極的に取り組んでいたわけではなかった。一年生の時 には、日本のアニメやドラマなどを鑑賞することで、日本語への興味を養うことができる という助言を先輩から聞いたため、その目的で一時期日本のドラマなどを見ていた。しか

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し、日本語への興味を養うことができなかった。そのやり方では A04 に効果はなかった。

また、クラスで内気なほうのA04は、四年生時にスピーチコンテストに参加していた。参 加した理由についてA04は、「自分の日本語を鍛えようと思って参加したのだ。このよう な活動に参加するのは初めてで、自分がちゃんとやり遂げるかどうかを見てみたかった。

当时就是突然想试一下,当时想着要锻炼自己,以前也没有参加过这种活动,就看一下自己能不能把这件 事做完。)(インタビュー調査/20150524)」と述べていた。自分が日本語を能動的に学習して いなかったことを認識し、そのことで悩み、そのような状況から脱出しようと努力してい たことが分かる。努力が足りなかったからか、日本語学習に興味を持つことができなかっ たためか、その理由がどうであれ、A04は自分の日本語学習の学習効果に満足できていな かった。クラスで日本語が上手な学習者との違いについて、「一部はアニメなどに興味が あるから、よく勉強できる。一部は(興味がなくても)長期間にわたり、日本語学習に集 中できるから。私は宿題のためだけに学習していた。(一部分人因为兴趣,接触的比较多,所以 学的比较好,还有一部分因为比较专注,也会学的比较好,我就是完成作业。)(インタビュー調査 /20140901)」とA04は回想している。

大学四年間におけるA04の学習動機をまとめると、図4-5になる。

外国語を学習 したい好奇心

日本語専攻学習開始 時間経過

無味乾燥だが、日本語専攻 だからという義務感

三年生 四年生

日本文化・歴史などの授業に興味 無味乾燥だが、日本語専攻だからという義務感

学習動機

図4-5 大学四年間における学習者A04の日本語の学習動機のモデル

A04は第一志望ではなかったが、日本語専攻に入学した際、外国語を学習したかったと いう好奇心で日本語学科を志望した。その後、日本語に対する新鮮味が減少してきており、

無味乾燥と思うようになり、日本語を高校時代の科目と同じような感覚で学習していた。

この種の学習動機は、日本語が専攻なので学習する必要があるという義務感から生じる動 機であると思われる。三・四年生では、日本文化関連の授業が増加し、A04はこれらの授 業に関心を持つようになり、一・二年生の時と比べて、日本語学習について能動的になり、

主体的に日本語を学習するようになった。ただし、これはただ、日本文化関連の授業のみ に対する態度であり、そうでない授業は、やはり暗記などの内容に無味乾燥だと感じてい たが、日本語が専攻だからという義務感から日本語学習を行っていた。専攻であるという 義務感による動機と、日本文化・歴史のなどの授業に興味を持ち、これらの授業の内容に ついては主体的に学習する動機が併存しているわけである。