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学習動機と学習行動の変化―中国の大学の日本語学習者を中心に―

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学習動機と学習行動の変化―中国の大学の日本語学

習者を中心に―

著者

王 俊

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第17624号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00120397

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博士論文

学習動機と学習行動の変化

―中国の大学の日本語学習者を中心に―

王 俊

2016 年

(3)
(4)

I

目次

目次 ... I 図目次 ... VI 表目次 ... VII 第 1 章 序 論 ... 1 1.1 研究の背景と目的 ... 1 1.2 論文の構成 ... 5 第 2 章 先行研究 ... 8 2.1 学習動機 ... 8 1.1.1 自己決定理論 ... 9 1.1.2 原因帰属理論 ... 11 1.1.3 自己効力感 ... 12 2.2 日本語教育における学習動機 ... 14 2.2.1 学習動機に関する質的研究 ... 14 2.2.2 中国国内の日本語学習者の学習動機の研究 ... 22 2.3 学習ストラテジー ... 24 第 3 章 研究方法 ... 27 3.1 調査対象 ... 27 3.1.1 中国の日本語教育の事情 ... 27 3.1.2 調査校の事情 ... 28 3.1.2.1 日本語専攻のカリキュラム ... 29 3.1.2.2 日本語双学位のカリキュラム ... 32 3.2 データ収集 ... 35 3.2.1 日本語専攻学習者のデータ収集 ... 35 3.2.2 日本語双学位学習者のデータ収集 ... 40 3.3 分析方法 ... 45 3.3.1 質的研究 ... 45 3.3.1.1 質的記述的研究法... 47 3.3.1.2 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ ... 48 3.3.2 質的研究における再帰性 ... 49 3.3.3 調査方法の信頼性・妥当性 ... 50

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II 第 4 章 結果と考察―日本語専攻学習者― ... 55 4.1 日本語学習開始時までの学習動機 ... 55 4.1.1 グループ1 ... 55 4.1.2 グループ 2 ... 59 4.2 日本語学習開始時までの学習行動 ... 63 4.3 学習動機と関連のある要因 ... 67 4.3.1 学習者要因 ... 67 4.3.2 日本や日本語に対する態度 ... 69 4.4 各学習者の学習軌跡―A03 と A05 を除く― ... 73 4.4.1 学習者 A01 ... 74 4.4.2 学習者 A02 ... 79 4.4.3 学習者 A04 ... 86 4.4.4 学習者 A06 ... 90 4.4.5 学習者 A07 ... 96 4.4.6 学習者 A08 ... 105 4.4.7 学習者 A09 ... 109 4.4.8 学習者 A10 ... 119 4.4.9 学習者 A11 ... 124 4.4.10 学習者 A12 ... 130 4.4.11 学習者 A13 ... 134 4.4.12 学習者 A14 ... 139 4.4.13 学習者 A15 ... 143 4.5 優れた日本語専攻学習者の学習軌跡―A03 と A05― ... 147 4.5.1 優れた日本語専攻学習者の選定及び分析方法 ... 147 4.5.2 大学一年から三年までの学習動機 ... 148 4.5.3 大学一年から三年までの学習行動 ... 153 4.5.3.1 学習時間 ... 153 4.5.3.2 学習ストラテジー ... 154 4.5.4 四年生における学習動機と学習ストラテジー ... 162 4.5.5 まとめ ... 165 4.6 日本語専攻学習者についての考察 ... 167 4.6.1 学習動機の視点からの考察 ... 167 4.6.1.1 一年生から三年生 ... 168 4.6.1.2 四年生 ... 174 4.6.2 自己効力感・学習性無気力感の視点からの考察 ... 175

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III 4.6.3 原因帰属の視点からの考察 ... 179 第 5 章 結果と考察―日本語双学位学習者― ... 196 5.1 学習開始時までの学習動機と学習行動 ... 196 5.1.1 学習動機と学習行動の実態 ... 197 5.1.2 学習動機と学習行動についての考察 ... 205 5.1.2.1 複合的学習動機と単一的学習動機 ... 205 5.1.2.2 長期的学習動機と短期的学習動機 ... 206 5.1.2.3 日本語・日本の知識と日本への印象 ... 208 5.1.3 まとめ ... 209 5.2 学習開始後の学習動機と学習行動の変化 ... 209 5.2.1 学習動機と学習行動の変化の実態 ... 210 5.2.1.1 全体的な変化のプロセス ... 210 5.2.1.2 カテゴリーごとの変化のプロセス ... 211 5.2.1.3 日本語双学位の学習動機と学習者数 ... 215 5.2.2 学習動機と学習行動の変化についての考察 ... 215 5.2.2.1 日本語双学位の学習動機と日本語の学習動機 ... 215 5.2.2.2 学習動機の減退要因 ... 217 5.2.2.3 まとめ ... 218 5.3 優れた日本語双学位学習者の学習軌跡―B01 と B02― ... 219 5.3.1 優れた日本語双学位学習者の選定と分析方法 ... 219 5.3.2 優れた日本語双学位学習者の学習動機と学習行動 ... 220 5.3.2.1 学習開始時まで ... 220 5.3.2.2 学習開始後 ... 221 5.3.3 優れた日本語双学位学習者についての考察 ... 231 5.3.3.1 学習動機 ... 231 5.3.3.2 学習ストラテジー ... 233 5.3.4 まとめ ... 234 第 6 章 総合的考察 ... 236 6.1 日本語主専攻学習者と日本語双学位学習者との共通点と相違点 ... 236 6.1.1 学習開始時までにおける違い ... 236 6.1.2 日本語学習開始後における違い ... 240 6.1.3 学習動機の減退要因の共通点と相違点 ... 241 6.2 外発的動機・内発的動機についての議論 ... 247 6.2.1 外発・内発的動機研究の問題点と本研究との関連 ... 247 6.2.2 内発的・外発的動機の優劣と日本語専攻学習者への応用 ... 251

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IV 6.2.2.1 学習動機上昇型における応用 ... 253 6.2.2.2 学習動機不変型・下降型における応用 ... 257 6.2.3 本研究の結果と自己決定理論に関わる命題 ... 258 6.2.4 義務的動機の提案 ... 262 6.2.5 まとめ ... 264 6.3 学習過程における支援 ... 265 6.3.1 日本語学習上における支援... 265 6.3.2 就職における支援 ... 267 6.3.2.1 日本語専攻学習者 ... 267 6.3.2.2 日本語双学位学習者 ... 269 6.4 調査方法の説明および調査結果から得られた調査方法に関する示唆 ... 271 6.4.1 調査方法の説明 ... 271 6.4.2 調査結果から得られた調査方法に関する示唆 ... 273 第 7 章 結 論 ... 278 7.1 まとめ ... 278 7.1.1 日本語専攻学習者の学習軌跡 ... 278 7.1.2 日本語双学位学習者の学習軌跡 ... 280 7.1.3 優れた日本語専攻学習者と日本語双学位学習者 ... 281 7.2 日本語学習者への知見 ... 283 7.2.1 日本語専攻学習者 ... 283 7.2.2 日本語双学位学習者 ... 288 7.3 研究の意義 ... 289 7.4 本研究の一般性 ... 291 7.5 今後の課題 ... 293 参考文献... 296 付録 ... 307 1 日本語専攻学習記述式質問紙調査① ... 307 2 日本語専攻学習者記述式質問紙調査② ... 311 3 日本語専攻学習記述式質問紙調査③ ... 318 4 日本語専攻学習者記述式質問紙調査④ ... 323 5 日本語専攻学習者学習日記① ... 327 6 日本語専攻学習者日常調査票 ①... 330 7 日本語専攻学習者記述式質問紙調査⑤ ... 334 8 日本語専攻学習者学習日記② ... 338 9 日本語専攻学習者学習日記③ ... 341

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V 10 日本語専攻学習者記述式質問紙調査⑥ ... 343 11 日本語専攻学習者インタビュー調査① ... 345 12 日本語専攻学習者インタビュー調査② ... 347 13 日本語双学位学習者質問紙/インタビュー調査① ... 349 14 日本語双学位学習者学習日記調査① ... 355 15 日本語双学位質問紙調査② ... 357 16 日本語双学位学習者質問紙調査③ ... 364 17 日本語双学位学習者学習日記② ... 366 18 日本語双学位学習者記述式質問紙調査④ ... 368 19 日本語双学位学習者記述式質問紙調査⑤ ... 370 20 日本語双学位学習者記述式質問紙調査⑥ ... 372 謝辞 ... 373

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VI

図目次

図 2-1 学習動機のプロセス(櫻井 2001) ... 9 図 3-1 2012 年 5 月 29 日(第一学年前半)のチャット記録 ... 44 図 4-1 学習者要因の構成 ... 67 図 4-2 日本語学習と文系・理系出身別学習者との関係についての意識調査 ... 68 図 4-3 大学四年間における学習者 A01 の日本語の学習動機のモデル ... 79 図 4-4 大学四年間における学習者 A02 の日本語の学習動機のモデル ... 85 図 4-5 大学四年間における学習者 A04 の日本語の学習動機のモデル ... 89 図 4-6 大学四年間における学習者 A06 の日本語の学習動機のモデル ... 95 図 4-7 大学四年間における学習者 A07 の日本語の学習動機のモデル ... 104 図 4-8 大学四年間における学習者 A08 の日本語の学習動機のモデル ... 104 図 4-9 大学四年間における学習者 A09 の日本語の学習動機のモデル ... 104 図 4-10 大学四年間における学習者 A10 の日本語の学習動機のモデル ... 104 図 4-11 大学四年間における学習者 A11 の日本語の学習動機のモデル ... 104 図 4-12 大学四年間における学習者 A12 の日本語の学習動機のモデル ... 133 図 4-13 大学四年間における学習者 A13 の日本語の学習動機のモデル ... 139 図 4-14 大学一年生上半期における学習者 A14 の日本語の学習動機のモデル... 143 図 4-15 大学一年生上半期における学習者 A15 の日本語の学習動機のモデル... 146 図 4-16 学習者 A03 の学習ストラテジーにおける変化 ... 158 図 4-17 大学四年間における学習者 A03 の日本語の学習動機のモデル ... 166 図 4-18 大学四年間における学習者 A05 の日本語の学習動機のモデル ... 166 図 5-1 日本語双学位学習者の学習動機の変化に関する結果図 ... 211 図 5-2 学習者における日本語双学位の学習動機と日本語の学習動機の変化 ... 217 図 5-3 優れた日本語双学位学習者 B01 の学習動機モデル ... 232 図 5-4 優れた日本語双学位学習者 B02 の学習動機モデル ... 232

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VII

表目次

表 2-1 原因帰属の次元と要因(Weiner 1972) ... 11 表 2-2 日本語教育分野における学習動機に関する質的研究 ... 15 表 2-3 中国国内の日本語学習者における学習動機の研究の現状 ... 22 表 3-1 日本語専攻の基礎段階の教育内容 ... 30 表 3-2 K 大学 2011 年~2014 年の日本語カリキュラム ... 31 表 3-3 本研究における日本語専攻学習者の理系文系別の内訳 ... 32 表 3-4 K 大学の日本語双学位のカリキュラム ... 34 表 3-5 一部の学習者の授業観察のフィールドノーツ(一部抜粋) ... 37 表 3-6 日常的な接触から得たデータ(一部抜粋) ... 37 表 3-7 2011 年日本語専攻学習者日常調査票 ... 38 表 3-8 授業観察のフィールドノーツ(一部抜粋) ... 43 表 3-9 質的研究と量的研究との相違点 ... 45 表 4-1 日本語専攻学習者の学習動機の変化の仕方と学習効果の原因帰属 ... 185 表 5-1 分析のプロセス ... 197 表 5-2 学習者の学習動機についての分類 ... 198 表 5-3 長期的学習動機と短期的学習動機におけるパターン ... 207 表 5-4 Ⅿ-GTA による日本語双学位学習者における学習動機の変化についての分析 結果 ... 207 表 5-5 日本語双学位学習者のカテゴリー、サブカテゴリー、学習者数 ... 207 表 5-6 優れた日本語双学位学習者のプロフィール ... 207

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1

第 1 章 序 論

1.1 研究の背景と目的

私たちは何かしらのきっかけがあって外国語の学習を始める。誰もが、同じスタート地 点から外国語学習を開始したにも関わらず、いつの間にか他の学習者に差をつけられたと いうことを経験したことがあるだろう。なぜ、このような差が生まれてしまったのだろう と疑問に思っただろう。多くの人が外国語の学習過程で、様々な困難にぶつかり、もがき、 何とかレベルを上げたいという思いを抱いた経験があるだろう。私たちはどのように外国 語を学習しているのだろうか。どのような要因が私たちの外国語学習に影響を与えている のだろうか。周りの学習者はどのように学習しているのだろうか。学習過程を考えると、 それに関する疑問はひっきりなしに頭に浮かんでくる。筆者は、日本語学習者の一人とし て、上記のような苦悩や疑問を感じていた。日本語教育分野では、残念なことに、学習者 のこれらの素朴な質問に答えるような研究はあまり行われていない。 筆者は大学入学前に専攻を選択する際、日本語専攻が就職に有利であると考えて日本語 学科を第一志望にした。大学受験に合格し、入学後、日本語学習を開始した。大学一年生 と二年生の時、日本や日本語にあまり興味がなかった。毎日、先生の言われた通りに学習 内容をやり遂げ、クラスの中の日本語ができていた学習者を観察して、その学習者の真似 をしたり、直接本人から教えてもらって学習していた。しかし、時間をかけて努力したに もかかわらず、日本語学習は依然として困難なままで、日本語に苦戦する日々が続いてい た。日本語学習に面白みは一切感じていなかったこともあり、学習効果は一向に上がらな かった。クラス 17 人中、日本語の成績が 10 位前後の時期もあった1。当時、どんなに頑張 っても結果はあまり変わらないとやけくそを起こしていた。 ちょうどこのスランプ期間(三年生の前半)に「スラムダンク」というアニメを見て、 「日本語はこんなに美しい言葉なのだ」と初めて日本語に興味が湧いた。それに、推薦入 試の資格を獲得したかったため、成績を向上させたかった。2その後、多くのアニメを鑑賞 し、様々な学習リソースを積極的に利用するようになった。日本語学習が苦痛だと思わな くなり、成績も右肩上がりに上昇した。学習動機が異なるだけで、こんなに違いが出るこ とを、不思議に思った。これが、本研究の研究テーマを選んだ動機である。日本語の学習 1 この成績は日本語の成績のみを指す。一般教養科目の成績を含めた上での成績 GPA においては、筆者は 5 位前後であった。 2 筆者が所属していたクラスに三人の推薦入試の資格があり、筆者の一年生と二年生の成績から見ると、 その資格を獲得するには、三年生時の成績を向上させなければならない。また、三年生では、一年生と 二年生とは違い、一般教養科目はほとんどなくなり、日本語の成績を上げなければならないのである。

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2 過程において、自分で経験した心境の変化から、筆者自身が学習動機が大変重要なテーマ であると感じ、学習動機に関する従来の量的研究では決して解決できない問題なのではな いかとつくづく思った。学習動機が日本語学習の中でどのような働きをするのか、学習行 動とどのように結びついているのかなどの解明が重要な課題となってくる。 近年、外国語教育の指針は教師が学習者に効率よく知識を伝授するかの従来の「教師主 導」から、学習者が積極的に学習へ関与する、いわゆる「学習者中心」へと転換してきて いる。言語習得に影響を及ぼす様々な要因についての研究は多数なされてきた。林(1998) は学習者の個別性要因には「学習者要因」、「学習環境要因」、「社会文化的要因」の三 つがあるとしている。同じ社会文化の背景における同じ学習環境の学習者間でも習得差(個 別性)が出てくるのはやはり学習者要因が最も大きいと考えられる。学習者要因の中には、 年齢や性別などのような生得的な要因と、情緒や適性、スタイルなどのような長年にわた ってもほとんど変化しない要因、学習動機や学習ストラテジー3のような外部からの影響を 受けやすい要因がある。生得的な要因と内的要因に比べ、外的要因が多くの研究者によっ て多く研究されてきたのは、言語学習に働きかける外部からの要因を把握できれば、これ らの要因を働きかけることで、言語学習にプラスの影響を与えることが可能になるからで ある。学習者要因の中で、学習者の学習成果に直接影響を与える学習行動に密接に関連す る学習動機の研究は、極めて意義のある研究であるとされている。1970 年代から学習者要 因の中の学習動機の研究は社会心理学や教育心理学等の関連分野で多く行われてきた。ま た、第二言語習得研究における諸要因の研究は、全体としての枠組をもって行われてきた というよりも、個々の要因について、統計的手法を用いて、個別に行われる量的研究が中 心であった(林 2006)。しかし、学習者を特性によって捉える手法は、学習者をステレオ タイプに当てはめて理解してしまう危険性を伴う(浜田 2004)。したがって、学習者の実 態を把握するため、学習者を一個人として扱い、その学習プロセスと学習者要因を総合的 に見ていく必要性があると思われる。 一方で、国際交流基金(2013)の調査によると、2012 年に中国の日本語学習者は 100 万 人を突破し世界 1 位になった。その中で、中国の高等教育機関における日本語学習者数は、 世界の高等教育機関の学習者数の 6 割を超える。そして、中国の高等教育機関における日 本語学習者数は 67 万人を超え、中国における日本語総学習者数の約 65%を占めている。 その構成は、日本語を専攻としている日本語専攻学習者と、日本語以外の専門分野を持ち、 外国語科目として日本語を勉強している日本語専攻以外の学習者(本研究では、日本語専 攻以外の日本語学習者を非専攻日本語学習者と呼ぶこととする)、部活などのカリキュラ 3 本研究では、学習行動と学習ストラテジーの両方を使用した。本研究における「学習行動」はマクロ的 な面の行動を指し、「学習ストラテジー」はミクロ的な面の行動を指すこととする。優れた学習者の学 習行動を解明する際には、ミクロの面から学習者を分析するため、学習ストラテジーという用語を使用 する。

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3 ム外の課外活動を通じて日本語を勉強している学習者に分けられる。この中で、日本語専 攻学習者は 24 万人を超え、非専攻日本語学習者は 36 万人に達している。しかしながら、 これだけ多くの学習者がいるにもかかわらず、中国における日本語専攻学習者や非専攻日 本語学習者を対象とする研究は筆者の知る限りでは極めて少ない。日本語専攻学習者も非 専攻日本語学習者も、規定のカリキュラムに従い日本語学習を行っているため、高等教育 機関における日本語学習者の学習状況を把握することは、カリキュラムの改善や学習者の 日本語習得の推進につながるものであり、非常に有意義であると考えられる。 本研究は、中国における日本語専攻学習者および非専攻日本語学習者を対象とし、日本 語の学習過程における学習動機と学習行動の変化と、その変化をもたらす要因について明 らかにすることを目的とする。 上記のように、高等教育機関における日本語学習者数が多いことが中国における日本語 学習者の特徴である。そのうち、日本語専攻学習者というのは、いわゆる専攻として日本 語を学習する者のことである。以下では、中国における非専攻日本語学習者はどのような 状況に置かれているかを紹介する。 中国の大学教育の非専攻日本語学習には一般的には英語の代わりに第一外国語として日 本語を履修するパターンと、選択科目の第二外国語として履修するパターンがある。国際 交流基金(2013)によれば、現在英語学科の履修者を中心に、第二外国語として数ある外 国語の中から日本語を選択する者が最多となっている。この二つに加え、もう一種の形の 日本語学習のパターンがある。中国の一部大学において、学士課程において主専攻と異な る専攻で二年間程度の課程を修了した者に、別の学位記が授与される「双学位」制度(ダ ブルメジャー、ダブルディグリー4という用語があるが、本研究では学習者間の通称である 「双学位」という用語を用いる)が実施されている。この制度を利用して、日本語を勉強 している学習者数が少なくない。本研究では、双学位制度を利用し、日本語を学習する学 習者を調査対象の一つとする。 改革開放以来、学科間の交差・相互浸透が進むに従い、「複合型」人材の育成が次第に 求められるようになった。このような傾向のもとで、双学位制度の実施により、従来の単 一的人材育成モードが一変した。1980 年代より一部の重点大学が双学位制度の試行的実施 に参加し、その後規模が大きくなり、現在大学内のみならず、大学間でも広範に採用され るようになった。『普通高等学校学生管理规定』5(2005)では双学位制度や大学間の連携 4 ダブルメジャーとは、大学や大学院の在学中に二つの異なる専攻を学べる制度で、たとえば、数学と経 済学、言語学と歴史学など、二つの専攻を履修して学位を得ることができる。ダブルメジャーで取得で きる学位は、学校によって異なる。ダブルディグリーとは、二つの学位を取得できることを指す。ダブ ルディグリー制度を利用すると、たとえば一つの大学に在籍しながら他の大学にも在籍し、卒業時には 二つの大学から同時に学位を取得できる本研究では、ダブルメジャーで二つの専攻を履修し、さらに二 つの学校から学位を得られる「ダブルメジャー型ダブルディグリー制度」を採用している。本研究で使 用する「双学位」という用語は、一年しか履修しない課程についても含めることにする。 5 「普通高等学校」とは、全国修士課程統一入学試験、全国大学統一入学試験、専門学校などで行われる

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4 履修などの人材育成に有利な管理制度の創設を奨励し、引導すると明確に書いてあるが、 各大学での双学位課程の開設は自主的であり、開設された大学数については、公式な調査 がないため、現段階では確認できない状況である6。双学位制度は大学の資源を極限まで利 用し、複合的人材を育成する手段の一つになっていることは確かである。その中で、特に 「専攻+外国語」という組み合わせが競争力を上げ、就職に有利とされるため、この流れ に乗り、日本語学習が新しい形で行われるようになった。 日本語双学位学習者は日本語専攻学習者と違って、多くの場合、学習を義務付けられて いないため、一旦開始した日本語学習を必ずしも最後まで継続するとは限らない。学習者 の日本語学習を継続させる学習動機は不変のものでなく、外部または学習者自身の要因に 影響され、変化するものであると思われる(Ushioda 1996、文野 1999、Dörnyei 2001/2005)。 特に、双学位制度では途中で履修放棄することができるため、時間が経つにつれて、学習 者の日本語学習動機に大きな変化が起きると想定される。 前記のような筆者の実体験から、学習者が学業成績を努力して上げるための一手段とし て、我々の普段の生活でもよく見かけることができる、成績優秀者から学ぶ、という方法 が挙げられる。勉強がよくできている人の学習の仕方を摸倣すれば、自分も同じようにな ることができるという経験則が私たちにはあるのである。言語学習に限らず、何事につけ ても、達者な人から学習することはごく自然なことであろう。成績優秀者から学習するこ とは多少なりとも有意義であるとされているが、問題となるのは、我々が本当に成績優秀 者から成功要因について、正確かつ豊富なディテールを獲得できるかどうかである。我々 の単純な観察などから得られたデータではなく、科学的なデータ収集と分析によって、優 秀な日本語学習者の学習動機や学習行動などを解明することが大切であると思われる。 日本語専攻学習者は、多くの時間を共有することが可能であるが、クラスの中の優れた 日本語学習者の学習行動を全て正確に把握できるとは限らない。ましてや一週間に僅かな 時間しか接触する機会がない日本語双学位学習者については、優れた学習者の学習行動を 観察することはより困難であろう。特に、日本語専攻学習者と比べ、日本語双学位学習者 は学習動機減退による授業の不参加や、主専攻学習との両立の難しさに起因する日本語の 学習時間不足などが原因で、履修放棄という現象が多く見受けられる。しかし、筆者の経 験上、このような現象が見られる一方で、日本語双学位学習者の中には、主専攻があるに も関わらず、日本語の到達度が日本語専攻学習者を超える者もいる。そのような日本語双 学位学習者が主専攻の学習と並行して如何に日本語を習得したのか知りたいところだが、 私たちは往々にして自分の観察などから「多くの時間を割いていたから」などのような漠 然とした印象で彼らの成功のコツを推測しがちである。しかし、それらは印象に留まり、 大学入学試験などの正式な試験を通して入学することができる学校のことである。 6 双学位という制度を研究する文献は杨(2011)、王他(2008)、陈他(2007)などがあるが、全国規模 の調査が行われていないため、双学位開設の大学数および学習者数を確認することができない。

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5 説得力に欠け、日本語双学位学習者が手本にしても十分な学習効果を収めることができる とは考えにくい。それに、日本語双学位学習者は日本語の授業の時間外では、互いに顔を 合わせることも少ないため、一人で日本語を学習することがほとんどである。学習経験な どの情報交換が少ない、またはできないのが現状である。このような背景の下で、優秀な 日本語学習者の研究がますます重要となってくる。優れた言語学習者を研究することは優 れた学習者の学習ストラテジーを分析することによって、教師側にとってはより良い指導 を模索する上での参考となり、学習者側にとっては言語学習の手本になると考えられる。 以上のことを踏まえて、本研究では、中国人日本語学習者、特にその中の優れた日本語 学習者の学習動機と学習行動の解明を目的とし、下記のように研究課題を設定した。 ① 中国の大学における日本語専攻学習者は大学四年間において、日本語の学習動機と 学習行動に変化があったか。ある場合、どのように変化していったか。 ② 中国の大学における日本語双学位学習者は二年間の学習期間中、日本語の学習動機 と学習行動に変化があったか。ある場合、どのように変化していったか。 ③ 中国の大学における優れた日本語専攻学習者の学習動機は何か。どのように変化し たか、如何に日本語学習に取り組んでいたか。 ④ 中国の大学における優れた日本語双学位学習者の学習動機は何か。どのように変化 したか、如何に日本語学習に取り組んでいたか。

1.2 論文の構成

本研究は、中国の高等教育機関における日本語学習者(日本語専攻学習者と非専攻日本 語学習者)の学習動機と学習行動の様相を明らかにするという点で、日本語教育における 学習動機分野の研究の一つとして位置付けられる。以下では、本研究の構成について紹介 していきたい。 第 2 章では、まず学習動機の定義について論じる。学習動機という概念は様々な分野で 研究されてきており、その定義についてもそれぞれの分野で様々になされている。2.1 では、 日本語教育分野では、学習動機はどのように定義されてきたかを紹介する。そして、学習 者の学習動機を様々な角度から説明する理論が提示されている中で、本研究と関連のある 学習動機に関する理論――自己決定理論、原因帰属理論、自己効力感を紹介する(2.1.1、 2.1.2、2.1.3)。ここで注意を払いたいのは、これらの理論をそのまま援用するのではなく、 これらの理論により本研究で出現した現象を説明できる部分と説明しきれない部分がある と思われるため、これらの理論を紹介することにより、日本語教育分野の学習動機の研究 での応用の注意点及び限界を明らかにすることである。また、本研究は質的研究であるた め、日本語教育分野において、それに密接に関連する、現在まで行われてきた学習動機の 質的研究について概観し、その特徴と問題点をまとめる(2.2.1)。さらに、中国国内で行

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6 われた、中国語で書かれた日本語の学習動機の文献についてまとめ、その問題点を突き止 める(2.2.2)。そして、学習動機の下で行われた学習行動――学習ストラテジーに関する 先行研究を概観する(2.3)。 第 3 章では、主に調査対象、データ収集方法と分析方法について紹介する。まず中国の 日本語の事情について、主に中国の日本語教育の歴史、日本語専攻の教学大綱を紹介する (3.1.1)。その上で、調査対象とする K 大学の日本語専攻学習のカリキュラム、日本語双 学位の教育理念、カリキュラムなどの全般的な紹介を行う(3.1.2)。そして、3.2 では、本 研究における具体的なデータ収集方法を紹介する。日本語専攻学習者と日本語双学位学習 者はそれぞれのデータ収集法が異なっているため、それぞれ異なる節を設けて説明を行う (3.2.1、3.2.2)。3.3 では、主に質的研究と、本研究で用いる質的研究法について紹介する。 まず、質的研究について定義する。様々な分野において行われている質的研究の定義を参 考にしながら、本研究での定義を示す。そして、どのような研究が質的研究に適している か、本研究の特徴を取り入れて、説明する(3.3.1)。その後、本論における質的研究法― ―質的記述的研究、M-GTA、事例研究という三つの研究手法の特徴を紹介し、(3.3.1.1、 3.3.1.2、3.3.1.3)質的研究を行う際に注意すべき点である質的研究における再帰性について 説明する(3.3.2)。最後に、質的研究における妥当性について論じる(3.3.3)。 第 4 章では、日本語専攻学習者の学習動機と学習行動の結果と考察について説明する。 まず、4.1 では、日本語学習開始前、日本語専攻を志望したかどうかで学習者の学習動機を 二つのグループに分ける(4.1.1、4.1.2)。そして、これらの学習動機が異なる学習者の学 習行動を紹介する(4.2)。また、4.3 では、同じスタートラインから始まった日本語学習 について、学習者はどう思っているか、などの意識調査をし、日本語専攻学習開始前にお ける学習者の実態を報告する(4.3.1)。そして、日本語学習開始後取った学習行動と対照 的に見るため、日本語専攻学習開始前、学習者やその周囲の人々の日本語を専攻として学 習することに対する態度を明らかにする(4.3.2)。その後、日本語学習開始後、大学一年 生から四年生までの間に、学習動機と学習者行動はどのように変化していったか、学習者 ごとに説明を行い、その学習動機の変化を図式化する(4.4)。その中で、特に、日本語専 攻学習者の手本となる二人の日本語学習者の学習軌跡を詳細に描写し、特に学習ストラテ ジーに重点を置いて記述する(4.5)。ここまでで日本語専攻学習者全員の学習軌跡の描写 を終え、続いてこの部分についての考察を行う。学習者の第一年生から三年生までの期間 における学習動機の変化の傾向から、日本語専攻学習者を学習動機上昇型、学習動機不変 型、学習動機下降型という三つに分け、それぞれの特徴を記述し、三つの型における学習 動機の相違を分析する(4.6.1)。そして、自己効力感の視点と原因帰属の視点から日本語 専攻学習者の学習過程の分析を試みる(4.6.2、4.6.3)。自己効力感は本研究の学習者の学 習動機の分析に適しており、特に学習性無気力感は学習動機下降型に当てはまる。原因帰 属理論を本研究に適用するには、学習者は正確に日本語学習について原因帰属を行うこと

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7 ができ、その後一時的に努力するものの、長続きしないことが問題である。 第 5 章では、日本語双学位学習者の学習動機と学習行動の変化について論じる。第 5 章 は三つの部分に分かれており、最初は日本語双学位学習開始前の学習者の学習動機と学習 行動である。日本語双学位学習者は双学位学習開始前、日本語学習の経験がある者が多い ためである(5.1)。そして、双学位学習開始後、これらの学習者の学習動機はどのように 変化していったか、M-GTA 法を通じて分析し、学習者の学習動機の変化のプロセスとその 減退要因を明らかにする(5.2)。最後の部分では、日本語双学位学習者の中で、手本とな る学習者を取り上げ、その詳細な学習動機と学習ストラテジーを記述する(5.3)。 第 6 章では、本研究を通して、自己決定理論の日本語教育分野への適用について議論し、 日本語専攻学習者と日本語双学位学習者との学習過程における共通点と相違点を究明する。 まず、日本語専攻学習者と日本語双学位学習者の学習動機における共通点と相違点を分析 し、その原因を明らかにする(6.1)。そして、自己決定理論を日本語専攻学習者に適用す る際の注意点と、その理論の中で矛盾している点について論じる(6.2)。その上で、中国 大陸という学習環境における日本語専攻学習者、日本語双学位学習者の日本語の学習過程 で、最も多く出現している動機は義務的動機であることを示し、その根拠を述べる。また、 日本語専攻学習者と日本語双学位学習者の日本語の学習過程において、出会った困難をど のようにして克服することができるかについての学習支援、及び就職上における支援を提 案する(6.3)。最後に、質的研究として実施した本研究における調査方法の説明および研 究結果から得られた方法上の示唆について記述する(6.4)。 第 7 章は本論文全体をまとめる結論の章である。日本語専攻学習者と日本語双学位学習 者を対象とした本研究において、それぞれどのような結果が得られたか、学習者に対して どのような支援を行うことができるか、などを総括する。

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第 2 章 先行研究

2.1 学習動機

学習動機は英語の「motivation」より邦訳されたものである。その他の訳として、学習意 欲、動機付けなどが挙げられるが、本研究では、中国人日本語学習者を研究対象とするた め、より中国人に馴染みのある漢語訳語である「学習動機」を使用することにする。 まず、学習動機の定義については、研究者によって異なる。以下に代表的なものを挙げ る。 学習動機は「なぜ人がそれを行うのか」、「どの程度その活動を維持しようとするのか」、 「いかにそれを達成しようとするのか」という三つの面を含んでいる。(Dörnyei 2001) 学習動機とは、言語学習におけるゴールを達成しようとする努力と、学習言語に対する好 意的態度である。(岡市他 2006) 学習動機は人間にとって、何かを知りたい、学びたいと言う欲求は根源的なものであり、 学習でその成果(期間、到達度)に大きく影響を与えるものである。(市川 1995) 心理学における学習動機とは、行動が生起し、維持され、方向づけられるプロセス全般と 定義される。(鹿毛 2012) 学習動機は何かの行動に駆り立てられることを意味している。(伊藤 2010) 以上のように、様々な分野で学習動機に関する定義がなされてきた。これらの定義を踏 まえ、本研究の研究課題に合わせて、本研究における学習動機を「学習行動を喚起する心 理的エネルギー、行動を促すもの」と定義したい。ここで注意したいことは、学習動機は 学習行動と密接に関係しているとしており、学習行動と関連しない心の動きを学習動機と 認定しない点である。本研究の例を挙げると、日本語の成績をアップしたいという考えを 多くの日本語学習者は抱えているが、それを実行に移すかどうかはまた別問題である。本 研究における学習動機は実行につながる考え方(発想)のことである。 また、学習動機のメカニズムは複雑であるが、「人間はなぜ学ぶのか」という問いに対 し、発達的、包括的な概念として捉えている理論がある(加賀美 2002)。心理学では、図 2-1 のような学習動機のプロセスが提案された。

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9 先行要因 環境 記憶 内的状態 欲求 動機 または動因 目標 または 誘因の選択 行動 目標の達成 目標 または 誘因の獲得 満足・報酬 図 2-1 学習動機のプロセス(櫻井 2001) 現在の環境や過去の記憶、葛藤または達成感という内的状態を意味する先行要因が存在 するとする。この先行要因を解決したい、手に入れたい、あるいは逆に避けたい、といっ た欲求が発生し、この欲求が原動力となり、次の具体的な行動へと移るための動機を生じ させる。その後、行動が起こり、目的が達成され、最終的に自身の満足や報酬、および他 者からの報酬が得られる。 学習動機の生成プロセスをめぐり、学習動機の様々な側面を捉えようとする理論が関連 分野で次々と生まれてきた。しかし、様々な学習動機の理論が独自のアプローチにより発 展してきているが、学習動機を包括的に説明する理論はまだ誕生していない(山口 2012)。 つまり、学習動機は様々な面を持っており、個別に発展してきた理論は学習動機の多様な 側面を説明しようとするものであり、実際の場面における学習動機を説明または解釈する 際、一つの理論では対応しきれないのである。そこで、本研究では、中国人日本語学習者 の学習動機の変化のプロセスを明らかにするために、複数の学習動機に関する理論を用い ることにする。以下では、本研究で使用する日本語学習者の学習動機を説明する際の理論 を紹介する。ただし、これらの理論については、世界各地で様々な分野において、それら の理論に基づいて研究が行われ、正反対の結論が出たケースもある。本研究では、これら の理論を丸ごと援用するのではなく、あくまでも参考にして、本研究の結果を分析してい きたい。

1.1.1 自己決定理論

Deci & Ryan の「自己決定理論」(Self-Determination Theory)(Deci & Ryan 1985、Ryan & Deci 2000、2002)は、「認知的評価理論」(Cognitive Evaluation Theory)(Deci 1975/1980)、 「有機的統合理論」(Organismic Integration Theory)(Deci & Ryan 1985、Ryan & Connell 1989)、 「因果志向性理論」(Causality Orientations Theory)(Deci & Ryan 1985)、「基本的欲求 理論」(Basic Needs Theory)(Ryan & Deci 2002)の四つの下位理論を発展させている。 その中で最もよく知られている中心概念は内発的動機(intrinsic motivation)と外発的動機 (extrinsic motivation)であり、従来の内発・外発の二項対立から学習動機を理解するので はなく、連続的なプロセスとして捉えることができ、多くの心理現象が説明できるように

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10 なり、心理学や教育学、スポーツ学などの幅広い分野で応用されるようになった。具体的 には、自己決定理論は、学習動機を全く動機づけられていない無動機(amotivation)、外 発的動機の四段階、自己決定的でそれをすること自体が目的である内発的動機の各段階に 分け、自己決定度に基づいて区別している。 外発的動機の四段階というのは、外的な価値をどれだけ自分にとって重要と見なしてい るかという内在化(internalization)の過程を通じて自己決定的になる場合もあるとして、 自己決定度がもっとも低い「外的調整」(external regulation)、内在化が少し進んでいる がまだ自律的ではない「取り入れ的調整」(introjected regulation)、内在化が進み自律的 段階とみなされる「同一化調整」(identified regulation)、内在化が完了し自律性が強い「統 合的調整」(integrated regulation)の四段階に区別している。それぞれの段階で代表的な言 葉としては、無動機は「やりたいとは思わない」、外的調整は「人から言われるから仕方 なく」、「やらないと叱られるから」、取り入れ的調整は「やらなければならないから」、 「不安だから」、「恥をかきたくないから」、同一化的調整は「自分にとって重要だから」、 「将来のために必要だから」、統合的調整は「やりたいと思うから」、「学ぶことが自分 の価値観と一致しているから」が挙げられる。また、内発的動機では、「面白いから」、 「楽しいから」、「興味があるから」、「好きだから」が挙げられる。Dörnyei(1998)は、 この理論の、学習動機を自己決定の連続体として捉えることにより変化のプロセスを考慮 できる点を評価している。しかし、外発的動機の四段階では、それぞれの代表的な言葉に ついていくつかの疑問が沸いてくる。 ① 外的調整の「人に言われるから仕方なく」では、想定できるシチュエーションとし て強制的に何かをやらされるというシチュエーションの他に、圧力をかけてくるも のが同一化的調整の「将来のために重要だから」という思いから強制的にせざるを えないことも考えられる。親が勉強嫌いの子供に学習を勧める行為には外的調整と 同一化調整が併存していると思われる。他に類似的な例も見られる。取り入れ的調 整の「恥をかきたくないから」、「不安だから」などはある事態を想像し、芳しい 結果が得られないために生じる感情であり、これも外的調整と重複し、同時に存在 するシチュエーションも十分考えられる。 ② 段階間の境目がはっきりしない。最も典型的なのは統合的調整の「やりたいと思う から」と内発的調整の「好きだから」、「興味があるから」などである。二つの異 なる概念として唱えられているが、同じように見えることは否定できないだろう。 以上のことから、自己決定理論による学習動機の考え方を動的な学習動機のプロセスと して見ることに賛同するが、外発的動機の四段階の分け方には賛同できない。そこでまず、 本研究における学習動機について基本的な視点を述べておこう。

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11 ① 学習動機は大まかに無動機、外発的動機、内発的動機という三つの段階に分かれる。 無動機は動機づけられていない状態で、ある行為を行う理由がない。外発的動機は 外部から報酬などを獲得したり、処罰などを免れたりするために手段として行う行 動に関わる動機であり、内発的動機はある行動を取ることにより、内面に湧き起こ った喜び・興味や関心によるものである。 ② 学習動機は動的に変化するプロセスであり、無動機、外発的動機、内発的動機とい う各段階間では自己決定の度合いにより転換可能となる。

1.1.2 原因帰属理論

自分や他者のある行為における成功や失敗について、その結果を引き起こした原因を何 に求めるかという帰属過程がどのように行われるかを理論化したものを原因帰属理論とい う。原因帰属については様々な理論が提唱されてきたが、Weiner(1972)の達成場面におけ る原因帰属理論は幅広く採用されている。原因帰属は、成功・失敗がどのような原因によ って規定されたかという原因を認知して行動結果と結びつけることである。その結果をも たらした原因の考え方次第で、その後の行動や学習動機に与える影響が異なってくるとい う考え方である。Weiner(1972)は、この成功・失敗を説明する主要な原因として、能力、 努力、課題の困難度、運という四つを挙げている。そして、これらの要因は時間的に安定 して変わらないかどうかという「安定性」と、行為者の内部にあるか外部にあるかという 「原因の位置」という 2 次元上に分類されている (表 2-1)。 表 2-1 原因帰属の次元と要因(Weiner 1972) 安定 不安定 能力 課題の難易度 努力 運 内的 外的 原因の安定性の次元は行動結果への予想に影響するとされている。結果を安定的な要因 に帰属させる場合、次も同じような結果になるだろうという予想を持つことになる。結果 を不安定な要因に帰属させる場合、次は結果が変化する可能性があるといった期待を生じ させる。たとえば、成功の原因を努力に帰属させると、努力次第で同じように成功できる 期待が高いのに対し、能力に帰属させると、能力が安定的なものとされ、自分ではどうに かできるものではないと考え、次の行動への期待が低い。失敗のケースも同じである。不 運に帰属される失敗は、能力不足に帰属される失敗よりも次回の成功への期待が大きいで

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12 あろう。また、原因の位置の次元も成功の際の有能感や次の行動に影響を与えるとされて おり、内的要因に帰属させるほど、自分が変化することにより、結果が良い方向へ変わる 期待が大きいとされている。つまり、外的な要因に帰属させたときよりも内的な要因に帰 属させたときの方が過去の経験によって生じる感情が大きく認知されるということである。 要するに、内的で不安定な原因への帰属は積極的対応を生じ、外的で安定した原因への帰 属は消極的対応を喚起するのである。 以上のことから原因帰属理論では、学習行動の原因の認知が、上記のようなプロセスを 経て起こる期待や予想の変化が次の学習行動の学習動機を規定する重要な変数であると考 える(速水・長谷川 1979、樋口他 1983)。例を挙げると、同じ失敗をしてもその原因を能 力不足にあると認知すれば学習動機は低下するのに対し、努力不足にあると認知すれば学 習動機は低下しないことになる。具体的にどのような関係が存在するかについては多くの 研究がなされてきた(Dweck 1975、下山 1985、豊田 2012 など)。しかし、これまでの研 究は、一回や二回のような比較的に短い期間内での実験研究(小笠原・下仲 2008)、ある いは、ある事象に対する原因帰属を場面想定法により測定した研究(川島 2005、神田 2007 など)がほとんどであり、実際の教育現場で、特に長期間にわたり、原因帰属が学習者の 学習過程においてどのような働きをしているかについての研究はほとんどない。本研究で は、四年間という長期間において、学習者による原因帰属が学習過程においてどのように 働きかけていたか重点をおいて、考察していきたいと思う。

1.1.3 自己効力感

自己効力感とは、個人が結果を生み出すのに必要な行動を成功裏に遂行できるという確 信」の度合いである(Bandura1977)。よって、自己効力感はある行動を始め、その行動を 維持し、完了させるまでの意志に大いに影響を与えるものであるとされている。しかし、 自己効力感の重要性が説かれているが、自己効力感があれば良い結果につながるかと言え ば、それはまた別問題である。Bandura は、目標を達成するのに十分な能力が欠如してい る場合、期待が高くても望ましい結果を得ることが難しいし、成功させることができる事 柄でもインセンティブがないために実行しない人がたくさんいると指摘している。さらに、 坂野・前田(2002)は、ある一連の行動を遂行すれば特定の結果がもたらされるという期 待が高くても、もしそれに必要となる行動を遂行できるかどうかについて大きな疑念を抱 いていると、学習動機の低下が起こると述べている。適切な方法や十分なインセンティブ がある場合、自己効力感が人々の活動の選択――どのぐらい努力を投入するか、どのぐら い長くストレスのかかる状況に対処する努力を維持するかの主要な決定原因であると Bandura は述べている。言い換えれば、自己効力感の効果を十分発揮させるには、適切な 方法と十分なインセンティブが必要である。また、Bandura(2012)は、自己効力感は個人

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13 が楽観的に考えるか悲観的に考えるかにより影響を受けると主張した。自ら設定した目標、 結果期待、成功または失敗に対する帰属原因を通じてどれほど自分自身を動機づけられる か、困難な状況に直面した際にどれほど我慢強く耐えられるかに影響されるというのであ る。Bandura の研究から、学習者がこれから行おうとしている行動に対してどの程度の自 己効力感をもっているかにより、その人の学習動機や学習目標に与える影響の大きさが決 まることが分かる。 自己効力感には二つの水準がある(Bandura 1977)。一つは、特定課題や場面、行動に 影響を及ぼす領域固有の自己効力感(「特性的自己効力感」)である。もう一つは、具体 的な個々の課題や状況に依存せずに、より長期的に、より一般化した日常場面における行 動に影響する自己効力感(一般性自己効力感)である。以下では、本研究と関連する特定 の場面における特性的自己効力感について紹介する。Bandura(1977)は、自己効力感に影 響を与える情報源として「成功体験」「代理的体験」「言語的説得」「情動的喚起」とい う四点を挙げている。「成功体験」は、自分が実際にその課題を遂行できたという遂行行 動の達成である。特定の活動を自ら成し遂げたという経験は、他の状況においても、自分 は成功裏に行えるという期待を高める。「代理的体験」は、他者がその課題を遂行する行 為を観察する代理的経験である。自分と似たような状況の人々の成功過程を観察(モデリ ング)することで、自分にも出来そうだと自己効力感が上昇する。「言語的説得」は、自 分はやれば出来るといった自己教示や、他者から激励される、自分の努力や能力が評価(示 唆や勧告)評価されるといった言語的説得である。「情動的喚起」とは、脈拍や鼓動とい った生理的な反応の変化を自ら経験することである。緊張や不安等の状態を自覚すれば自 己効力感は低下し、逆にリラックスした状態であることを自覚すれば自己効力感を感じる。 Bandura(1997)は、自己効力感はこれら四つの情報源を通して、個人が自ら作り出してい くものであり、「成功体験」を情報源とする自己効力感がもっとも強く安定したものであ ると指摘している。 自己効力感理論は Bandura(1997)によって理論化されて以来、臨床医療や教育などの 幅広い領域で用いられてきた。その理由は個人の行動を予測するのに有効な手段であるか らである。しかし、中澤他(1988)は自己効力感の研究は、その概念が有意義であったが ために、却って十分な基礎的研究がされないままに、様々な分野への応用研究に移ってし まった感があると指摘している。本研究は実際の中国の日本語教育の現場において、自己 効力感理論が学習者の日本語の学習過程において、どのように学習行動に影響を与えるか を調査する。自己効力感理論をそのまま応用するのではなく、本研究で出現した事象につ いて自己効力感理論が説明できる部分と説明できない部分を明らかにし、日本語教育現場 上で応用される際の注意喚起を行いたい。

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2.2 日本語教育における学習動機

2.2.1 学習動機に関する質的研究

1990 年代に入り、日本語教育分野における学習動機の研究が盛んに行われるようになっ た。大西(2014)は日本語教育における学習動機の研究をまとめた。計 56 点の研究中、質 的研究は 16 点しかなかった。学習動機に関して初期に行われた研究は量的研究であり(倉 八 1992、石井 1993、縫部他 1995、成田 1998)、第二言語習得分野で得られた知見を用い て、任意のグループの学習動機の内容を調べたものが多い。よく使用される手段は、質問 紙調査で、因子分析を通じて、学習動機の構成、または内容分析を通じて、学習動機と関 連する要因との相関を調査するという方法であった。初期の日本語の学習動機に関する研 究では、ある地域の特定の日本語学習者を対象とした学習動機の構成の解明に焦点が当て られていた。これらの調査はある時点の日本語の学習動機の調査であり、学習動機を静的 に扱うものである。あるグループにおける複数の学習者の学習動機の内容、学習動機と他 の関連要因との関係の仕方や因果関係を解明するのに有効であるが、個々の学習者の持っ ている学習動機の生成および変化のプロセスを明らかにすることは不可能である。実際の 日本語教育現場においては、何かを明らかにすることによって問題が発見され、その次の 段階で改善法を検討していく。個々の学習者を対象とした研究では、個人レベルで起こる 問題に焦点を当てるため、より現実的な意味があると思われる。つまり、量的研究では、 多数の学習者を対象とするため、学習者の日本語学習動機の傾向や他の要因との関連性を 容易に調べることができるが、学習者一人一人に目を向けることができず、個人レベルで の問題発見・解決も当然できないわけである。この問題は初期の日本語学習動機の研究に 限らず、その後の量的研究(郭・全 2006、毛・福田 2010、大西 2010、楊 2011)を含め、 すべての量的研究が抱える問題であると思われる。 近年、 従来の教師中心型の授業が一変し、学習者中心型という理念が言語教育の現場に 根付きはじめた。現場にいる教師がどのように学習者をサポートできるかが課題となって いる。学習者と密接に関連するもう一つの概念である自律的学習は、 言語教育における重 要なキーワードとして位置づけられ、 さまざまな試みが行われてきた。 学習ストラテジー を自ら調整できるような自らの学習に責任を持つ自律的学習者を育てるには、 教師の果た す役割にも変化が必要である。 従来のように情報を与えるだけの立場から、 学習者と協同 でシラバスを作成する相談役、 あるいは学習カウンセラーや、 学習資源の管理者としての 役割が求められる (長沼 2010)。 Oxford(1990)も、 教師は従来の 「指導者」 ではなく、 ガイ ド、 相談役、 支援者的な要素が求められると指摘した。 さらに、梅田(2005)は学習者の学 習の取り組み方が、 「他者決定型学習」 の段階から 「自己決定型学習」 を経て 「相互決定 型学習」 へ進み、 そのタイプごとに教員の役割も変化すると整理している。このような教 育理念の変換を背景に、個々の学習者を知ることによって、学習者がそれぞれ抱えている

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15 問題点を発見し、どのようなサポートをすれば学習者の問題解決につながるかを明らかに することが重要になってくる。 学習者個々の学習過程を明らかにしようという潮流の中で、日本語の学習動機の質的研 究が文野(1999)により初めて行われた。文野(1999)は日本の大学に在籍している中国 人留学生 1 名を対象に、日本語学習動機研究で初めて質的研究によって日本語の学習動機 の縦断的調査・分析を試み、学習者の学習動機に学習環境要因である友人の存在が強く関 わっていることを明らかにした。それ以降、日本語学習動機の研究は大集団の学習者だけ ではなく、個々の学習者にも向かうようになった。文野(1999)を含め、日本語教育分野 におけるそれ以降の日本語学習動機の質的研究を表 2-2 にまとめた。斜体字で記載されて いるものは分析方法である。 表 2-2 日本語教育分野における学習動機に関する質的研究 文献 対象 調査方法 研究結果 文野 1999 ① 中 国 人 留学生(日 本 国 内 大 学)1 名 ② 対 象 者 を よ く 知 る第三者 1 名 ①インタビュー ②被調査者の半年間の行動 観察記録 ライフストーリー ①学習者の学習動機に学習環境要因の中の 友人の存在が強く関与 ②動機のような学習者の情意面に関わる調 査・分析の場合 、被調査者本人の自己報告 だけでなく、第 3 者の視点もとり入れた複数 の視点による解釈・ 分析が有効 千田 2004 非 教 室 環 境 学 習 者 ( 来 日 目 的 が 日 本 語 学 習 以 外、現在教 室 で学習 なし)2 名 ①インターアクション日記 (一週間分) ②フォローアップインタビ ュー(3 回) ①日本語使用の必要性がない場面では他者 との関係性や動機に変化無し ②教室活動のみでは得られないインタラク ションを通して、日本語を使うことが、自分 にとって意味のあるものであるという実感 守谷 2004 日 本 国 IT 企 業 研 修 中 国 人 研 修生 22 名 半構造化インタビュー(「現 在の日本語能力についてど う思うか」「原因 は何か」) KJ 法 ①成功要因 27 項目「情意要因」「道具的志 向」「コミュニケーション志向」 ②失敗要因 37 項目「情意要因」「研修環境」 「授業」「協力的な他者不在」 飯塚 2005 日 本 語 学 校 の 留 学 生 3 名 日本語学習の学習動機と、 ネットワークの関係につい て ①先行研究を参考にし、45 項目の質問紙 ②自由記述 ③インタビュー ④第三者インタビュー(担 当教師) チューター、アルバイト先の日本人、クラス メート、同国人の先輩が学習動機に関係 飯塚 2006 日 本 語 学 校 の 留 学 ①先行研究を参考し、45 項 目の質問紙 学習動機と生活に関わる問題として、アルバ イト、住居、一時帰国が挙げられた。

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16 生 ②自由記述 ③インタビュー ④第三者インタビュー(担 当教師) 守谷 2005 日 本 国 内 IT 企 業 研 修 中 国 人 研修生 41 名 構造化面接 質問内容:「来日の目的と 経緯」「なぜ日本語を学習 したい と思っているのか」 「日本語を使って何ができ るようになりたいのか」 KJ 法 ①日本語学習を研修の重要部分と位置づけ、 意欲的に学習 ②日本語母語話者、モデルとなる日本語能力 が高い人物との接触が、明確な日本語学習動 機の生起に重要な役割 ③接触機会がない場合には、非自己決定的に 研修に参加し、外発的な義務感から日本語を 学習 羅 2006 台 湾 に お け る 日 本 語 専 攻 学 習者 19 名 インタビュー ライフストーリー 日本語学習者の日本語学習動機の生成には、 自己を取り巻く社会的文脈への認識と、その 文脈における自己形成との深い関係性が存 在 ギブ ソン 2009 香 港 社 会 人 20 名 インタビュー (フォローア ップ インタビュー) 日本語学習歴の短い学習者と長い学習者を 比較し、当初はアニメや日本製品へのイメー ジなどが強く影響。徐々に日本人との接触な どを通じて、日本人とのより親密で個人的な 関係構築に関心を抱く 中井 2009 ① 日 本 国 内 の 日 本 語 学 校 中 国 人 再 履 修 学 習 者 14 名 ② 日 本 人 教師 11 名 半構造化インタビュー(学 習 動 機 に 影 響 を 与 え る 要 因) 修正版グラウンデッドセオ リーアプローチ 得られた要因には、日本での留学生活に伴う もの、彼らとクラスメートや教師とのインタ ラクションに関するものなど 田村 2009 ド イ ツ 人 大 学 生 3 名 episodic interviewing ①「学習行動に対するエンジョイメント」が 「将来の職業」よりも強く意識 ②エキゾチックな言語を学ぶことを目的と しており、日本語、韓国語、中国語に大きな 差異は無し ③エンジョイメントを重視する教育が必要 今福 2010 台 湾 人 日 本 語 専 攻 大学生 質問内容:「どんな時に意 欲が高くなったか/低くな ったか」 ①日記 ②インタビュー グラウンデッドセオリーア プローチ ①「教師要因」 高くなる:授業(楽しい、わかりやすい)/ 自己効力感の要請/信頼感/適切な誤用訂正 低くなる:評価への不満/授業の逸脱/不適切 な誤用訂正/つまらない授業/テスト内容(教 科書と同じだと不満) ②「学習者要因」 高くなる:協働学習/友人との能力差 低くなる: 自信喪失 三國 2011 香 港 の 成 人 日 本 語 学習者 10 名 学習継続に対する学習者の 認識とそれに関わる諸要因 の関連から、学習継続のプ ロセスを調べた ①質問紙調査 ②インタビュー調査 香港の成人日本語学習者の学習継続は、<身 近な「日本」>の存在や<学習の成果>など 他者との関わりの中で支えられながら、学習 への<積極的な関与>を行い、<悩み、迷う 体験>をしながらも、学習者一人ひとりが< 自己の理解>を深め、更新していくプロセス

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17 根本 2011 カ タ ー ル の 日 本 語 講 座 を 修 了 し た 日 本 語 学 習 者 10 名 日本語学習動機の変化 ①予備調査(質問紙調査) ②本調査(インタビュー) 質問紙調査: ①日本語学習者より日本のポ ップカルチャーに興味がある者のほうが、日 本および日本語に関して何にでも高い興味 を示す傾向(日本語学習者のほうが興味の範 囲が狭い)②言語学習への興味・関心は日本 語学習者のほうが高い インタビュー:【日本への興味】と【言語学 習への関心】に〈日本語がわからないストレ ス〉[学習方法模索][タイミング]が結合し、 学習の【開始を決心】。日本語を勉強して何 になるのか、という社会状況的な【諦めと割 り切り】を持ちながらも、よりよい自分にな りたい、家族の応援などの【頑張れる理由】 を持って、学習を継続 瀬尾 2011 香 港 の 上 級 の 日 本 語 生 涯 学 習者 11 名 学習者の学習動機の変化 半構造化インタビュー 修正版グラウンデッドセオ リーアプローチ 【日本文化】への興味や【日本旅行】に関心 を持ち学習し始めた日本語学習者は、さらに 【日本文化】への興味を深め、上級になるに つれ、【日本語が理解できることの喜び】と 共に他者との【つながり】にも喜びを感じる。 しかし、そこに至るまでには様々な〈日本語 学習の困難さ〉も存在 瀬尾 他 2012 香 港 の 社 会 人 日 本 語 履 修 放 棄者 日本語の学習動機の減退要 因 量的調査:選択式質問紙調 査 21 人 質的調査:半構造化インタ ビュー 3 人 「仕事」と「時間」が原因で学習意欲を減退 させる調査協力者が多かった。仕事が忙しく なって予習・復習ができなくなり、日本語学 習を断念せざるを得ない状況が浮き彫りと なった。また、授業で取り扱う内容が多いた め、ついていけなくなったと語る調査協力者 も多かったが、カリキュラム改善の難しさも 示唆。 陳 2012 台 湾 人 日 本 語 専 攻 者 1 名 JFL 環境の日本語学習不振 者の学習状況とその心理を 解明 インタビュー TAE ステップ式質的分析法 〈学習動機の低さ〉〈相対的評価の現状〉〈自 己評価視点の欠如〉〈本来の能力への自信〉 〈相対的低評価の現状〉という現状と心理状 態を明らかにした 吉川 2012 日 本 国 内 の 中 国 人 短 期 留 学 生 3 名 環境面を中心に、 学習意欲 が向上した者、または日本 語が上達したと感じる者へ の 半構造化インタビュー 意欲が高まった活動:「スピーチコンテスト」 「学園祭」「高校生との交流会」などがあり、 他の留学生との自分の力の差を実感し、奮起 する様子や、「インタビュープロジェクト」 で日本人と話せたことが自信につながって いる 竹口 2013 ロ シ ア 大 学 の 日 本 語 学 習 者 11 名 動機の変容過程とその要因 の分析 インタビュー 修正版グラウンデッドセオ リーアプローチ 四つのコア・カテゴリーである【地歴・家庭 教育認識】【教育環境認識と活用】【留学と いうライブイベントの希望と受容】【発達修 正される自己と向社会性】が形成 副島 他 2014 中 国 の 日 本 語 専 攻 学習者 171 名 日本語学習者の日本語力に 影響を及ぼす外的学習者要 因 試験、選択式質問紙調査 クラスタ分析、分散分析 ①学習ストラテジーおよび動機付けには「日 本文化理解」「実践会話重視」「用意周到」 などの 7 因子がある。 ②学習者は「統合的志向」「道具的志向」「バ ランス志向」などのタイプに分類できる。

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18 ③「統合的志向」の学習者は日本語力が高く、 「道具的志向」の学習者は低い。 ④会話力の成績上位群は「実践会話重視」を 好む 富吉 2014 タ イ の 大 学 の 日 本 語 主 専 攻 者 日本語学習意欲に影響を与 える要因を下記方法で明ら かにした ① 自 由 記 述 式 の 質 問 紙 調 査:66 名 ②半構造化インタビュー: 30 名 ①質問紙調査の結果:学習意欲に影響を与え る要因は七つの局面全てに現れ、幅広い局面 を視野に入れる必要性が示された ②インタビューの結果:それらの要因は Ideal L2 Self(なりたい L2 自己)および Ought-to L2 Self(なるべき L2 自己)の形成 や維持に結びつくと意欲向上を、挫折や維持 の困難さにつながると意欲低下をもたらす ことが明らかになった Ham ada & Graf strö m20 14 オ ー ス ト ラ リ ア の 大学生 6 名 インタビュー(日本語学習 動機の減退要因) 授業の雰囲気がクラス内のグループ(日本文 化への知識の差により結成されている)によ り影響、学習者が漢字や礼儀の学習に困難を 感じている、オーストラリアにおいては日本 語の社会需要はあまりない 王 2014 (a) 中 国 人 日 本 語 専 攻 学習者 15 名 日本語学習動機の変化 ①記述式質問調査 ②授業観察 ③学習者日常調査票 ④学習日記 ①同じ学習環境にいる学習者の学習動機と 学習行動には大まかに三つのパターン。日本 語学科を志望したパターン 1 では、 学習者 は学習動機と学習行動が平穏的であり、「勤 勉」という態度を見せていた。パターン 2 の 学習者は日本語学科に配属された当初、転専 攻の意思が強かったが、専攻である以上、日 本語学習を優先していた。準備不足のため転 専攻試験に失敗した。その後、学習者は心に よる葛藤が無くなり落ち着いて日本語を勉 強していた。パターン 3 の学習者は日本語 学科に配属され、結果的に転専攻に成功した ②中国の日本語専攻学習者の学習過程に多 く出現する動機は「義務的動機」 王 2014 b 中 国 人 日 本 語 専 攻 か ら 転 出 し た 学 習 者 1 名 半年間の日本語学習動機の 変化 ①記述式質問調査 ②授業観察 ③学習者日常調査票 ④学習日記 学習者の学習動機は四つの時期に分けられ た:最初は大学に入学できれば良いと思い、 日本語専攻に配属されたが、抵抗がなかっ た。その後、暗記が多い日本語が嫌いになり、 一時的に日本語学習を放棄し、転専攻を決意 した。中間試験で不合格になり、転専攻する 条件の一つである日本語の授業に合格する 必要があると知り、転専攻に成功するため、 最低限の日本語学習を始めた 王 2015 a 2015 b 優 れ た 中 国 人 日 本 語 専 攻 学 習者 2 名 A と B 日本語学習動機と学習スト ラテジーの解明 ①記述式質問調査 ②授業観察 ③学習日記 質的記述的分析法 ①学習者 A は自己効力感と、義務的動機と外 発的動機に支えられ、学習動機が好成績、奨 学金、使命感により影響を受ける。学習者 B は義務的動機と内発的動機から、次第に義務 的動機中心に変換し、学習内容が面白い場合 は内発的動機が引き出される

参照

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