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第 4 章 結果と考察―日本語専攻学習者―

4.5 優れた日本語専攻学習者の学習軌跡―A03 と A05―

4.5.3 大学一年から三年までの学習行動 .1 学習時間 .1 学習時間

4.5.3.2 学習ストラテジー

学習者が学習ストラテジーについて、どのような観点を持っているかにより学習行動へ の影響が異なることが考えられるため、学習ストラテジーについてどのように思っている

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かを調査した。「言語学習に近道などないが、方法はある。(学语言没有捷径。但一定有方法。

(質問紙調査/20111121)」と学習者A03は述べている。ここからA03は言語学習では時 間をかけて努力する必要があり、学習ストラテジーが非常に重要であると考えていること が分かる。また、A05も「日本語の学習方法はとても重要だ。(方法很重要。)(質問紙調査

/20111121)」と考えている。A03とA05が使用している学習ストラテジーにはサブカテゴ

リーの《直接ストラテジー》と《間接ストラテジー》がある。

(一)直接ストラテジー

本研究では、直接ストラテジーを、具体的な学習項目を勉強する際、直接に使用する学 習ストラテジーと定義する。その下位項目には《文法学習》と《単語学習・聴解学習・会 話学習》がある。

① 文法学習

文法学習で二人の学習者が主に挙げているのは、学んだ文法項目をノートにメモするこ とにより、復習するという目的を果すということである。まず、学習者A03とA05が常に 使用している学習ストラテジーの全体像を見てみよう。

授業中、先生の言ったことを集中して聞いて、肝心なところをメモしておく。授業後、早 速授業のメモを分かりやすいように整理する。反復学習をすることで記憶を堅固にする。

(上课认真听讲,记下老师讲的重点;课下及时整理学习笔记,形成自己的体系;课下勤复习,循环 复习、巩固记忆。)

(A03/質問紙調査/20111121)

日本語の学習方法はとても重要だ。勉強した内容をメモすること、単語を暗記すること、

宿題を完成させること、教科書CDを多く聞くことなどの方法で学習する。

(重要,整理笔记,熟记单词,完成作业,读课文找语感,多听录音。)

(A05/質問紙調査/20111121)

上記の記述から分かるように、二人とも重要であると思っている方法は一度メモした学 習内容を自分で再度整理することである。これが二人の学習者の日課になっている。学習 者A05の学習日記にメモの重要さについて下記のような記述がある。

自分がこの日、一体何を身につけたかを問い返すことで、勉強した内容を忘れてしまうこ とを防ぐことができる。一般的には、メモを整理するときに、本文に対する説明と先生か ら教わった関連知識をまとめて、問題点を見つける。その時間は約1時間で、勉強した内

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容を思い出してみると、分からないことがどんどん出てくる。全ては解決できないが、こ の復習は必須であると思われる。なぜかというと、記憶力には限界があって、勉強した内 容はすぐに忘れてしまうので、メモを整理して知識を統合することが大事だからだ。

(晚上我进行了课堂笔记总结,记录了今天学过的内容,因为通过反问自己学到了什么,有助于不会 过几天就忘掉所学的内容,花费的时间大约一个小时,精神很集中,一边回忆一边会提出很多问题,

虽然有些没有得到解决,我认为这项活动比较必要,毕竟记忆力有限,学的东西很快就忘记了,记 下来也有利于知识的巩固。)

(学習日記/20111130)

メモの内容は主に授業中教師が説明した文法知識に関するものである。教科書にある例 文には限りがあるため、学生に分かりやすいように補足として挙げた他の例文などがそれ にあたる。文法をよく理解するために、学習者はできるだけ多くの例文を暗記することに より文法をマスターしている。授業では、全ての例文を書き取る時間がないため、自分で 分かるようにメモを取り、後からこれらのメモを綺麗に整理することが学習者A03とA05 がやっていることである。

学習者A03によると、メモの内容は授業中に学習した内容に限らず、「不意に思いつい た。メモ帳をもう一つ用意して、それに分からない語彙や例文を書き留める。授業外で触 れた単語などもこのメモ帳に記入できる。これを通して、言葉の運用能力を高める。良い アイディアだ。すぐに実行しよう。(忽然有个想法,要再准备个本子,记一些词汇和句子等,平时 不是在课堂上接触到的东西也可以记在这个本子上,通过这个来增加自己的语言应用能力。O(∩_∩)O~想法 不错,马上实施。)(学習日記/20120518)」とあるように、常に如何に日本語をよりよく勉強 するかについて思案し続けていることが分かる。その後、「授業中先生が挙げた例文がと てもよかった。その中に出てきた分からない言葉を新しく拵えたメモ帳に書いた。このメ モ帳を早く充実させないと。(课堂上老师举的例子都很好,于是都记在了新建立的词汇本上,希望它 尽快地越来越充实。(学習日記/20120523)」とあるように、アイディアを頭の中に暖めておく ことなく、直ちに実行に移している。

② 単語学習・聴解学習・会話学習

以下では、単語学習・聴解学習・会話学習において、2 名の学習者がどのように取り組 んでいるかを詳細に述べる。

単語学習については、2 名の学習者は言語学習において基礎となるものとしている。特 に学習者A03は如何に忙しく、勉強時間が限られていても、単語学習は重要な学習項目と してしっかり行っていた。具体的には、教科書CDの単語を聞き、復唱して、紙に書き、

中国語訳と単語を対照しながら暗記するという方法である。読み方とイントネーションに 注意を払いながら、「目で見て、耳で聞いて、手で書いて、口に出して、集中する。(眼

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到、耳到、手到、嘴到、心到)(学習日記/20111203)」というように様々な方法で単語を頭に叩 き込むことに重点を置いている。

聴解学習では、学習者A03は一年生の前半、A05は一年生の後半から毎日一定の時間を 設け、聴解の練習をするよう心掛けていた。基礎段階で、正しい回答を選び出すだけでは なく、文章中の分からない単語や文法なども把握するようにしていた。

会話学習において、最も多用していたのは教科書で出てきた会話文などを暗唱し、自分 が話せるようになるまで練習する方法であった。学習者A03は要求されていない会話教科 書や授業外の補足資料の会話文も暗唱できるように練習していた。特に、三年生以降、学 習リソースを拡大させ、ニュースなど生の材料を通して、自然な日本語の会話文を学んで いた。実際に話すチャンスが少なかったため、これで補おうとしていたのだろう。学習者 A05も自分の日本語学習が上手くいったことについて、教科書を読み続けていたことがか なり効いたと思っている。単に朗読するのだけではなく、「教科書CDを聞いて、復唱で きるかどうかをチェックする。記憶力の訓練だけではなく、CD を聞くと同時に頭の中で 中国語訳に変換し、それと同時にまた聞いたものを教科書通りに日本語で表現できるかど うかを確認する。(听录音然后自己试着重复一遍比较长的句子,这样不仅考考自己的记忆力,并且可 以考察当听懂意思时(听的是日语,脑海呈现的是中文意思)能否自己用日语表达。)(質問紙調査 /20141103)」という方法である。

③ 直接ストラテジーにおける変化

ゼロから開始した日本語学習では学習内容が難しくなるにつれて、学習ストラテジーに 変化が見られた。学習者A03は日本語学習開始から三年が経過するまでの学習ストラテジ ーについて下記のように総括した。

一年生:教科書と先生に頼りきって、授業以外で日本語関連の資料は探していなかった。

日本のドラマ・アニメなどを見ていても、あまり役にたたなかった気がする。

二年生:授業以外に、自分で学習資料を探し、ドラマなどを利用し、会話力と聴解力を鍛 える。または、日本語能力試験の受験勉強のために、語彙と読書量を増やした。

三年生:自主学習が主になっている。自分の弱みである会話と文章をアップさせた。

(大一:完全依赖课本和老师,几乎没有自主寻找课外资料。看日剧动漫也没感觉对日语提高有多大 帮助。

大二:除了把握上课时间外,开始自主寻找学习资料,看日剧等练习口语和听力,准备等级考试扩 大词汇和阅读量

大三:自主学习为主,针对自己的薄弱点提高听力口语和书面表达。)

(質問紙調査/20141027)

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以上のことから明らかなように、一年生では、教科書と先生からの指導内容を中心とし て日本語学習を行い、基礎知識を身につけている。この時自主的に日本語を学習する力は まだ養われておらず、ドラマやアニメなどは日本語学習にそれほど利用されていなかった。

一年生が終わると基本的な文法なども学習済みとなり、学習者A03は二年生で N2と N1 を受験し、合格した。その後、三年生の前半にスピーチコンテストに参加し、中国の華中 地区の代表として日本での試合に出場した。しかし、望ましい結果は得られなかった。以 降、自分に欠けているところを認識し、聴解力と会話力を重視するようになった。日本語 の閲読時間も増加させた。三年生になると、日本語新聞閲読の授業が設置され、このリソ ースを活用しようと思い立ち、毎日ネット版の朝日新聞を読むようになった。日本語の文 章は非常に美しい、新しい出来事に対する様々な評論がよい文章であると感じていた。良 い文章が書かれた記事をスクラップし、その中の重要語句を書き取った。それに、字幕な しのNHKのニュースも毎日聞いており、会話力の向上に大きく貢献していると実感した。

先輩の紹介で日本語のバラエティー番組も一時見たが、自分に適したものがなかなか見つ からず、続けることはできなかった。

学習者A03がなぜこのような変化を遂げたかというと、日本語の基礎をマスターした後、

自主性が増し、自ら学習内容を考案できるようになり、様々な方法やリソースを使い、聞 く・話す・読む・書くという四技能を向上させるようになったからであると考えられる。

言語学習者の学習環境を構成する要素は一般的に、「人的リソース」、「物的リソース」、

「社会的リソース」という三つのリソースに分類される(田中・斎藤1993)。全寮制のK 大学の同じクラスに所属している場合は、学習者の社会環境が同じであると考えてよかろ う。学習者A03は学習内容の進展に伴い、物的リソースを中心に学習ストラテジーを調整 していたことが明らかになった。この変化を図に整理すると、以下のようになる。

教科書、先生 ドラマ・

アニメ

能力試験の受 験勉強

NHKニュース 朝日新聞など

基礎 試験合格 スピーチコ

ンテスト 会話力・文章力

一年生 二年生 三年生

図4-16 学習者A03の学習ストラテジーにおける変化

一方、学習者A05は、一年生では先生の指示にしたがって勉強するのが最も効率的な方 法であると認識しており、また、授業内容の復習で精一杯で、自分で自由に使える時間は 少なかった。二年生の時には、能力試験の受験準備をすると同 時 に、日本語の書籍を読ん だり、NHKのニュースを聞いたりしていた。授業や教科書以外のリソースからはより自由