• 検索結果がありません。

RQ1 に対する考察

ドキュメント内 2016 年度 博 士 学 位 申 請 論 文 (ページ 168-173)

第5章 日本人英語教師の英語観と形成要因

5.4 RQ1 に対する考察

表5.18 年代における属性分析:

質問 51「日本人が英語を話すときに、語彙が限られていたり、文法が違ってい

たりすると教養がない感じがする」

まったくあて はまならい

あまりあて はまらない

どちらともい えない

どちらかとい うとあてはま

よくあてはま

総計

20 代 11 (17.2%) 21 (32.8%) 14 (21.9%) 15 (23.4%) 3 (4.7%) 64 30 代 7 (8.8%) 15 (18.8%) 26 (32.5%) 27 (33.8%) 5 (6.3%) 80 40 代 6 (8.6%) 22 (31.4%) 25 (35.7%) 13 (18.6%) 4 (5.7%) 70 50 代 2 (3.4%) 12 (20.7%) 28 (48.3%) 14 (24.1%) 2 (3.4%) 58

60 代 0 2 (14.3%) 6 (42.9%) 6 (42.9%) 0 14

総計 26 72 99 75 14 286

年代別では、30代が他の世代(60代を除く2)と比較して、「あまりあてはまらな い」よりも「どちらかというとあてはまる」と回答している人数の比率が高い。20 代、40代は比較的類似した回答傾向であるのに比べて、その間の世代である30代の この傾向を分析するためには、さらなる調査が別に必要となると考えられる。

以上、ライフストーリー調査の結果に基づいて、始めに母語話者英語に対する意 識について属性分析を行い、次に、学生時代の英語学習経験について、さらには英 語を話すことへの不安について、最後に非母語話者英語と教養における属性分析を 試みた。次に、これらの結果を踏まえて考察を行う。

のではないか検証を行う必要があったためである。

最初に、ライフストーリー調査協力者の 3 名が母語話者英語に対して強い意識を もっているという結果について、属性分析を行った。英語の母語話者と意思疎通が 図れることを重視するかどうかという問いに対して、公立高校の男性、女性、私立 高校の男性、女性いずれのカテゴリーにおいても「とても重要だと思う」と回答し た人数の割合が最も多かった。つまり、いずれの属性においてもそれを重視してい るという傾向が明らかになった。これによって、ライフストーリー調査の 3 名の母 語話者英語に対する意識は、私立高校の女性教師特有の傾向ではないということが いえるが、特に私立高校の女性教師が「とても重要だと思う」と答えた比率は、他 のカテゴリーと比較して最も高く、私立高校の女性教師に多く見られる傾向である こともわかった。

また、ライフストーリー調査協力者3名の年齢は、30代、40代、50代と異なって いたが、母語話者英語に対する年代による特徴についても分析を行った。結果は、

母語話者と意思疎通が図れることを重視するかという問いに対して、すべての年代 において、「とても重要だと思う」と回答した割合が高かったが、特に 20 代、続い て30代、40代、50 代と、若年層ほどそれを重視する傾向があることが明らかにな った。また、母語話者に対してだけでなく、非母語話者と意思疎通が図れることを 重視するかという問いに対しても、最重要視する傾向が若年層ほど高いこともわか った。これは、若い世代の教師ほど、英語でのコミュニケーション能力育成に重点 をおいた英語教育改革による影響を受けてきたことが要因として考えられる。

この点について、学生時代の英語学習経験についてさらなる属性分析を行った。

自身が学生として中学時代、高校時代に受けた英語の授業について尋ねた問いでは、

どの年代においても、コミュニケーションを重視した授業の実施について、および 楽しさなどの満足度について否定的な回答が最も多く見られたものの、わずかでは あるが、年代が下がるにつれて否定的な回答をした割合が少なくなっていた。この ことからも、若年層の教師ほど、自身が学生時代に受けた授業において、コミュニ ケーション能力育成を意識した授業という点で変化の影響があったものと考えるこ とができる。ただ、ライフストーリー調査における30代のC先生のように、自身が 学生として学んでいた際には、知識を重視した傾向の授業を受けていたことに対し て、大学の教職課程ではそれとは異なるコミュニケーションを重視したアプローチ

法を教わり、さらに教師になって授業をする際にはそれを実践できなかったという こともあるように、その変化への過渡期を教師として、あるいは学生としていかな る状況で過ごしていたかについてもそれぞれのケースによって異なる。よって、教 師の年代によるコミュニケーション能力育成への英語教育改革の影響の詳細につい て明らかにするためには、さらにこの点についてのインタビュー調査等が有効な手 段として求められるであろう。

このように「コミュニケーション」については、自身の学生時代に経験した授業 に対して満足度が低いことがわかったが、学生時代に英語を「好き」であったか、「得 意」であったかという問いに対してはどの年代においても「よくあてはまる」ある いは「どちらかというとあてはまる」と回答する割合が高く、英語という教科に対 する好意的な態度があり、自己効力感が高かったことがわかった。さらに、女性の ほうがより学生時代に英語という教科を好ましく思い、得意であったと強く感じて いる割合が多いこともわかった。

前章のライフストーリー調査においても、A先生は学生時代のストーリーの中で、

英語がそれまで自分にとってただの一教科にしかすぎないものであったのが、ある 教師と出会って英語の学習が楽しくなり、友人に刺激を受けて学習を続けるうちに 得意教科に変化したと語った。また C先生も、学生時代の英語学習や授業を振り返 って、黙々と訳読を続ける「作業」ともいえる授業が楽しいとは思えなかったが、

英語について言語学的な興味をもつきっかけを教師が与えてくれたことで、将来そ れを専門に学びたいと思えるほどの言語になったと語っていた。本稿におけるライ フストーリー調査では、男性 2 名の先生もインタビュー協力をしてくれたものの、

分析対象とはできなかったため男女別による比較はできず、推測の域を出るもので はないが、A先生や C先生のように英語が「好きになった」、「楽しくなった」とい った感情が、学習という行為にさらに結びついて結果として表れ出るといった、「感 情」と「成果」の相乗効果を体験する女性が多いのかもしれない。

さらに、ライフストーリー調査で C先生が語った「不安」についても属性分析を 行った。まず、「英語の母語話者と話すこと」について不安があるかどうかを問う質 問では、私立高校の女性教師はその他のカテゴリーと比較して最も不安を感じてい ないという傾向が明らかになった。しかし、「英語で授業を行うこと」について不安 があるかどうかの質問には、私立高校の女性教師が特に不安を感じていないという

目立った傾向は見られなかった。英語で授業を行うことに関して特徴的であったの は、公立高校の教師のほうが私立高校の教師より、より不安を感じていないという 点である。これについては5.3.3でも言及したが、公立高校のほうが学習指導要領の 変更に伴う変化に対応するための研修等が広く行われることや、独自のカリキュラ ムの実施が許される私立高校では学校によってその対応にばらつきがあることなど が挙げられる。

この「英語で授業」についての議論には賛否両論があり、実際に現場で教える2,134 人の高校の英語教師を対象に2015年に行ったベネッセ教育総合研究所の調査では以 下のような結果が報告されている。

1.「日本語で行ったほうが効果的な場合がある」 95.3%

2.「生徒の学力によって難しい場合がある」 92.7%

3.「入試に対応できる学力を育成できるかどうか不安である」75.5%

4.「生徒が英語を使う機会が充実する」 74.4%

5.「生徒の英語を使う力が高まる」 73.5%

6.「授業が実際の英語を使うコミュニケーションの場になる」73.0%

7.「生徒が英語を使う楽しさを感じる」 64.9%

8.「基礎・基本が身につかない気がする」 63.8%

9.「授業を英語で行うには自分の英語力に自信がない」 53.5%

(ベネッセ教育総合研究所,2016,p. 17)

質問紙調査において、「英語で授業」について用意された質問項目は上記の9つで あり、これは英語教師たちの調査協力を得て、まず聞き取り調査を行い、その結果 に基づいて作成された項目であったという。「あてはまる」と回答された上位3つ(「日 本語で行ったほうが効果的な場合がある」、「生徒の学力によって難しい場合がある」、

「入試に対応できる学力を育成できるかどうか不安である」)はいずれも否定的な意 見である。続く、4~7番は、「生徒が英語を使う機会が充実する」、「生徒の英語を使 う力が高まる」、「授業が実際の英語を使うコミュニケーションの場になる」、「生徒 が英語を使う楽しさを感じる」というもので、英語で授業を行うことに対する肯定 的な意見、また、最後の2つに否定的なものが続いている。このことからも、「英語

ドキュメント内 2016 年度 博 士 学 位 申 請 論 文 (ページ 168-173)