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RQ3 に対する結果

ドキュメント内 2016 年度 博 士 学 位 申 請 論 文 (ページ 186-192)

第5章 日本人英語教師の英語観と形成要因

5.7 RQ3 に対する結果

リサーチ・クエスチョン 3 では、前章で挙げられた、国際語としての英語を中心 とした英語観に関わる要因についてどのような傾向があるのかをより細かく見てい くこととする。5.3および5.4のリサーチ・クエスチョン1の結果と考察では、前章

のライフストーリー調査の結果に基づいて、全体の回答について性別・年代・学校 種別といった属性別の分析を行ったが、本節の分析では協力者全体の傾向について 明らかにすることを目的とする。具体的には、ライフストーリー調査および属性分 析の結果から、以下の 5 つの項目について質問紙調査および自由記述での回答に基 づいて検証を行う。

RQ3. A: 母語話者および非母語話者に対しての意識に違いはあるのか。

RQ3. B: 英語をコミュニケーションのための道具と捉えているのか。

RQ3. C: 英語に関する興味・関心の傾向はどのようなものか。

RQ3. D: 英語を話すことへの不安といった心理的要因は見られるか。

RQ3. E: 教師自身の英語学習経験における傾向はどのようなものか。

5.7.1 RQ3. A: 母語話者・非母語話者に対する意識の違い

母語話者への意識と非母語話者への意識が異なるか調べるため、質問項目の中で6 項目からなる 3 つの対応ペアの質問を設定した。一点目は、教師自身が英語でコミ ュニケーションを行う際に「英語の母語話者と話が通じること」(質問 1)、「英語の 非母語話者と話が通じること」(質問2)をそれぞれどのくらい重要視するかという 問いであった。二点目は、生徒に英語を教える際に「母語話者と意思疎通が図れる ような英語力を養成すること」(質問11)、「非母語話者と意思疎通が図れるような英 語力を養成すること」(質問12)をどれほど重要とするかという質問、三点目は「母 語話者と英語でやりとりをすることに関心がある」(質問45)、「英語で非母語話者と やりとりをすることに関心がある」(質問46)という自身の興味・関心を問うもので あった。質問項目 1、11、45 から構成される尺度を『母語話者への意識』とし、質

問項目 2、12、46 から構成される尺度を『非母語話者への意識』として、信頼性を

検討するためにクロンバックα係数を算出した。その結果、『母語話者への意識』が α= .78、『非母語話者への意識』がα= .75で、内的整合性をある程度確認できたた め、次にt検定を用いて差の検証を行った。その結果、t(288) = 6.98、p< .001で、

『母語話者への意識』が『非母語話者への意識』に比べて有意に高いことがわかっ た。

教師自身が英語でやりとりを行う際には非母語話者よりも母語話者と話が通じる ことを重視し、生徒に教える際も母語話者と意思疎通が図れる英語力を意識してい

ることがわかった。さらに、自身の興味・関心という観点からも、母語話者とのや りとりにより関心があることが明らかになった。

5.7.2 RQ3. B: 英語道具論

意思疎通を図るためのツールとして英語を捉えているかというリサーチ・クエス チョンに対しては、質問47「英語はコミュニケーションの道具として便利なもので ある」と、質問 48「英語は自分の思考や人となりを表すことができる言葉である」

という項目を検証したい。まず、質問47は平均値が4.70、標準偏差が0.49で、質問 48は平均値が3.96、標準偏差が0.91であった。ヒストグラムによる回答結果の分布 はそれぞれ図5.4、図5.5のとおりである。

図5.4 質問47のヒストグラム 図 5.5 質問48のヒストグラム

「英語はコミュニケーションの 「英語は自分の思考や人となりを 道具として便利なものである」 表すことができる言葉である」

どちらの項目も平均値が高く、特に質問47にはほとんどの協力者が賛同している ことがわかる。それと比較すると、質問48は回答の度数分布に多少の分散が認めら れる。これら2つの項目におけるt検定の結果は、t(288)=14.47、p<.001で、質問 47のほうが有意に高い。このことから、「英語はコミュニケーションのための便利な 道具である」と捉えていることは明確だが、「英語が自分の志向や人となりを表すこ とができるもの」であるかについては、多少の見解の違いがあることが推測できる。

0 0 4

79

205

1 2 3 4 5

質問47

2 11

81

96 98

1 2 3 4 5

質問48

5.7.3 RQ3. C: 教師の英語に関する興味・関心

協力者の英語に関する興味・関心は質問40から46の7項目にわたって調査した。

図5.6の平均値の比較が示すように、「英米文学」への興味を除いては、いずれの項 目も平均値4.00以上で、語彙・表現、音声、文法といった言語体系、および英語圏 の文化、さらには、実際のやりとりであるコミュニケーションにも興味・関心があ ることがわかった。

ただし、「母語話者とのやりとり」と「非母語話者とのやりとり」への興味・関心 については、t検定の結果、t(288)=6.50、p <.001 で、「母語話者とのやりとり」へ の関心が高いことが明らかになった。5.6.1では「母語話者・非母語話者に対する意 識の違い」を検証し、「自身が重要視すること、生徒へ教える際に重視すること」の 項目を含んだ尺度の比較を行ったが、本項では英語教師自身の興味・関心という単 一の質問項目を比較し、同様の結果となった。

図5.6 興味・関心における平均値の比較

5.7.4 RQ3. D: 英語を話すことへの不安

英語に関わる心理的側面として、教師が英語を話すことへの不安について質問し た項目は、質問55の「母語話者と英語で話すことについて不安がある」(平均値3.11、

4.42 4.16 4.19 4.39

3.53

4.3 4.05

1 2 3 4 5 6 7

教師の英語に関する興味・関心

語彙・表現 音声・発音 文法 英語圏文化 英米文学 母語話者との 非母語話者 やりとり とのやり

とり

標準偏差 1.16)と、質問 56の「英語で授業を行うことについて不安がある」(平均

値3.27、標準偏差1.15)という 2 項目だった。ヒストグラムによる回答結果の分布

はそれぞれ図5.7、図5.8のとおりである。

図5.7 質問55のヒストグラム 図5.8 質問56のヒストグラム

「母語話者と英語で話すことにつ 「英語で授業を行うことについて いて不安がある」 不安がある」

5.3.3 の属性分析においても言及したように、いずれの項目も平均値にしてしまう

と、さほど数値が高いとは思われにくいが、このような度数分布で確認することに よって、その分散がわかる。質問 55 の「母語話者と話すことへの不安」は、1(ま ったくあてはまらない)と 2(あまりあてはまらない)と回答した人数が合わせて 93 人で、「不安がない」と感じる割合が全体の 32.3%であるのに対して、3(どちら ともいえない)が69人(24.0%)、4(どちらかというとあてはまる)と5(よくあて はまる)を合わせた126人(43.7%)が「不安がある」と感じていることがわかる。

また、同様に質問 56 の度数分布においても、「英語で授業を行うことへの不安」

は、1と2を合わせて75人(26.0%)が「不安がない」と感じているのに対して、3 と回答したのは84人(29.2%)、4と5を合わせた129人(44.8%)が「不安がある」

と感じていることが明らかになった。

29

64 69

98

28

1 2 3 4 5

質問55

21

54

84 83

46

1 2 3 4 5

質問56

5.7.5 RQ3. E: 教師の英語学習経験

これまでの英語の学習経験については、質問28から39の12項目にわたって調査 した。「英語学習において刺激を受けた友人」(質問 33)や「自分が英語を教わった

教師」(質問34)からの影響の項目では、それぞれ平均値が3.16、3.33、標準偏差が

1.42、1.33であり、その他の項目と比較して回答にばらつきが見られ、全体の傾向と

して「友人」や「教師」からの影響が強いとは言えず、人それぞれであることがわ かった。

また、以下で述べる5つの質問項目については、いずれも平均値が4.00以上と高 く、標準偏差もそれほど大きくないことから、全体の傾向として、これらの経験を している教師が多いと判断した。「母語話者とやりとりをした経験」(質問 35:平均 値4.42、標準偏差0.87)、「非母語話者とやりとりをした経験」(質問36:平均値4.11、

標準偏差1.10)、試験などにおいて「難題が解けた経験」(質問37:平均値4.08、標

準偏差1.09)、「興味深い英語の表現や文章に出会った経験」(質問38:平均値4.52、

標準偏差0.70)、「英語の文章を書くのを楽しんだ経験」(質問39:平均値4.00、標準

偏差 0.97)である。つまり、英語を用いた実際のコミュニケーションの経験、テス

ト等における成功経験、英語に言語学的興味を感じた経験、筆記で表現する経験な どは、多くの教師がもっていたものであった。

さらに、中学・高校の学生時代は「英語が好きだった」(質問28:平均値4.25、標

準偏差1.00)という項目と、「英語が得意なほうだった」(質問29:平均値4.19、標

準偏差 1.00)という項目に関しては、やはり平均値が高く、英語という言語、ある

いは教科に対して好意的な態度をもち、自己効力感もあったと解釈ができる。

しかし、それに対して、自身が中学・高校時代に受けた英語の授業に関しては、

逆の結果が表れていた。学生時代の「英語の授業は興味がもてるものだった」(質問

30)という項目では、平均値は3.32、標準偏差は1.12で、学生時代の「英語の授業

はコミュニケーションを重視したものもあり、楽しかった」(質問31)では、平均値

が2.09、標準偏差は1.07と、質問31は特に、全57項目中、最も平均値が低かった。

学生時代に英語に対して好意的で得意であったにもかかわらず、その授業に対する 評価は低いことが明らかになった。

ドキュメント内 2016 年度 博 士 学 位 申 請 論 文 (ページ 186-192)