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Gerling/Orthen (1979)

ドキュメント内 ― ドイツ語の移動動詞を例に ― (ページ 63-66)

3. 移動動詞における項の拡張

3.2. 移動動詞の分類

3.2.3. Gerling/Orthen (1979)

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ものとされる。Reiten タイプでは移動手段が生物(Tier; 具体的には馬など)であり、

Fahrenタイプではそれが例えば自動車などの人工的な乗り物(Fortbewegungsmittel)で

ある点で、互いに区別される(Diersch (1972: 199))。このようにDiersch (1972)では、

動詞で表される動作の様態や速度、移動の空間、移動手段といった移動に関わる弁別 的な要素に従い、移動動詞がタイプ分けされている。

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このように移動動詞schwimmenが2つの用法に分類される基準は、動詞によって表さ れる移動が能動的なものか受動的なものか、言い換えれば、主語で示される移動物が 有生であるか否かという違いである。(14)の場合、主語で示されているのが人であり、

有生の移動物である。(15)の場合は、主語の移動物がおもちゃの舟(Schiffchen)とい う無生物である。

Gerling/Orthen (1979)では、移動動詞がこのように能動的な移動を表す場合と受動的 な移動を表す場合とに区別され、それぞれ異なる機能子によって次のように特徴づけ られる。能動的な移動(主語の移動物が有生)の場合は、/−ZUSTAND/(-状態)、

/+AKTIVITÄT/(+活動)、/+BEWEGUNG/(+運動)、/+HILFSMITTEL/(+道具)と

いう4つの機能子によって特徴づけられる。このうち特に重要なのは、/+AKTIVITÄT/

という機能子であり、この機能子を持つ場合、主語で示される移動物には「動作主

(Agens)」の意味役割9が与えられるとされる。他方、受動的な移動(主語が無生物)

の場合、当該の移動動詞あるいは移動動詞の特定の用法は、/−ZUSTAND/(-状態)、

/−AKTIVITÄT/(-活動)、/+BEWEBUNG/(+運動)という 3 つの機能子によって特

徴づけられる。/−AKTIVITÄT/という機能子で特徴づけられる受動的な移動では、主語 の移動物に付与される意味役割は「担い手(Träger)10」であるとされている。

例えば、Gerling/Orthen (1979: 213ff.)によるlaufenの記述は、次のように示される。

laufenは主に統語的結合価の違いに従って、laufen1~laufen5と分類される。ここでは、

機能子(Funktor)と修飾子(Modifikator)からなる意味分析の記述11と、それぞれに対 応する例文を示す((16)~(20)はGerling/Orthen (1979: 213ff.)からの引用)。例文には、

文の各構成要素に付与される意味役割も併記する:

laufen1:

9 Gerling/Orthen (1979)では、「ヴァレンツ素性(Valenzmerkmal)」という用語が用いられて いるが、実際的には従来の意味役割と同一の概念を指す。

10この担い手という意味役割は、岡本 (1997: 12)で指摘されるとおり、従来の主題あるい は対象(Theme; theme)の意味役割の代替として用いられていると考えられる。

11 Gerling/Orthen (1979)の分析では個々の動詞について、ここで取り上げる意味分 析

(semantische Analyse; SMA)のほか、文中に現れうる項(Argument)の数を示す論理 構造(logische Struktur; LS)、動詞の共演成分の数を示すヴァレンツ(Valenz; VZ)、ヴァ レンツに対応する意味役割(Valenzmerkmal; VM)、共演成分の意味的な制限(semantische Beschränkung der Mitspieler; SBM)、共演成分の統語的実現(syntaktische Realisation; SYR)

が記述されている。

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意味分析: Funktoren: /−ZSD/, /+AKT/, /+BEW/, /+HILFSM/

Modifikatoren: /Land/, /+horizontal/, /±schnell/

(16) Ich laufe zu Fuß in die Stadt. I-NOM walk-1SG on foot into the city /AG/(動作主) /INSTR/(道具) /G/(着点)

私は歩いて街に行く。

laufen2:

意味分析: Funktoren: /−ZSD/, /+AKT/, /+BEW/, /+HILFSM/

Modifikatoren: /Land/, /+horizontal/, /+schnell/, /sportlich/

(17) Henry läuft mit seinen Skiern über die Bergwiese.

Henry-NOM goes-3SG by his ski into the city

/AG/(動作主) /INSTR/(道具) /P/(経過点)

ヘンリーはスキーで山の野原を滑る。

laufen3:

意味分析: Funktoren: /−ZSD/, /+AKT/, /+BEW/, /+HILFSM/

Modifikatoren: /Land/, /+horizontal/, /+schnell/

(18) Die Kinder laufen über die Straße ins Wirtshaus.

the children-NOM run-3PL across the street into.the pub

/AG/(動作主) /P/(経過点) /G/(着点)

子供たちは通りを渡って飲食店へ走って行く。

laufen4:

意味分析: Funktoren: /−ZSD/,/−AKT/,/+BEW/

Modifikatoren: /Land/,/±horizontal/,/±schnell/

(19) Das Garn läuft von der Spule.

the thread-NOM runs-3SG out.of the bobbin /TR/(担い手) /S/(起点)

糸がボビンから繰り出される。

laufen5:

意味分析: Funktoren: /−ZSD/, /−AKT/, /+BEW/

Modifikatoren: /Land/, /±horizontal/, /±schnell/

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(20) Die Sauce läuft über den Teller auf den Tisch.

the sauce-NOM runs-3SG over the plate onto the table

/TR/(担い手) /P/(経過点) /G/(着点)

ソースが皿から溢れてテーブルの上にこぼれる。

上掲のlaufen1~laufen3は、Gerling/Orthen (1979)の定義による能動的な(aktiv)移動を 表すもので、上掲のlaufen4とlaufen5は受動的な(passiv)移動を表すものであるとさ れる。/−AKT/で特徴づけられるlaufen4およびlaufen5の主語の移動物はどちらも「担 い手」の意味役割が与えられるが、その差異は「固体」(laufen 4)か「液体」(laufen 5)

かという移動物の性状によるとされる12

Gerling/Orthen (1979)による移動動詞の意味分析において特徴的なことは、それぞれ の移動動詞に内在する固有の意味特性を、/Land/(地上)や/+schnell/(速い)のような 修飾子によって、ヴァレンツに対応する意味役割を記す機能子とは分けて記述してい ることである。laufen の記述を例にすると、laufen1 として示される「私は歩いて街に 行く」のような場合、/Land/, /+horizontal/, /±schnell/といった修飾子で特徴づけられる。

laufen2 の「ヘンリーはスキーで山の野原を滑る」のような場合、/Land/, /+horizontal/,

/+schnell/, /sportlich/といった修飾子で特徴づけられている。両者は地上における水平方 向の移動(/Land/, /+horizontal/)という点で共通しているが、移動の速さ(/±schnell/ま たは/+schnell/)やその移動がスポーツによるものなのか(/sportlich/)という点で異な っている。修飾子として示される主な要素は、移動の空間(Land「地上」、Luft「空中」、

Wasser「水中」)、方向(horizontal「水平方向」か否か)、移動の速度に関わるものが挙

げられる。

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