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第4章  ニュー・・パブリック・ガバナンスのフレームワークーOsborne を中心とす

4  NPGの有用性

  前章では、サービスマーケティングの特徴として、「ネットワーク(企業から顧客まで)」、

「相互影響(企業間だけでなく、顧客とも)」、「経営資源の拡大」、「コーディネート」の4 点をあげた。そして地方自治体の政策形成に援用できる可能性について述べている。ネッ トワークについては、多様なニーズに対する対応が可能となること、協働による相互影響 については、協働の緊密度を高めることにより政策や施策、事務事業の形成力が高まるこ と、経営資源の拡大については、ネットワーク内の経営資源が共有されることによる政策 や施策、事務事業の形成力が向上すること、中間的な促進者としての役割については、コ

PA NPM

NPG

NPM

PA

今後の行政システム改 革の方向性

図表4−8  今後の行政システム改革のイメージ 

出所)筆者作成。 

融合

ーディネーターとしての地方自治体の役割の明確化を指摘したところである。

こうした観点から、NPMの限界も踏まえ、Osborne

et al. (2015)は、SDL、SL、コ

ア・コンピタンスと共創などを参考とし、公的サービス提供機関の持続性の確保のために、

関係性やガバナンスを基本とするアプローチであるNPGの重要性を強調している。その うえで、公的サービスの提供機関における持続的なビジネスモデルのためのサービスフレ ームワークとして7つの提案を行っている51(図表4−9参照)。

図表4−9  持続可能なサービスフレームワークのための7つの提起

1  公的サービスはシステムであり、単に組織や組織間のネットワークでなく、すべての構成要素を包括 しながら推進する必要がある。

2  単一の公的サービス機関にとって、短期的に組織の持続性が確保される必要があるが、公的サービス 機関や公的サービスシステムの長期的な持続性の観点からは、短期の持続性については、必要ではある が、十分ではない。

3  持続性のある公的サービス提供機関は、短期的で個別の業務上の価値を求めるよりも、サービスシス テム間の長期的な関係性を構築することを主眼としている。

4  内部の効率性は、個々の公的サービス提供機関にとっては必要なことである。ただそれだけでは、持 続性のある公共サービスのシステムは創造されない。むしろ公的サービス提供機関は、サービス利用者 にとっての有効性や地域社会にとっての持続的な公的価値を創造することに焦点をあてる必要がある。

5  公的サービス提供機関は、サービスの有効性を達成するために、サービスシステムを革新することを 通じイノベーションを推進する必要がある。

6  コ・プロダクションは公共サービス提供の核心であり、公共サービスの有効性とイノベーションの源 泉である。

7  公共サービスシステムは、効果的なサービスを維持し、提供するため、重要な知的資源を獲得し利用 する必要がある。

  図表4−9の1点目について、

Osborne et al. (2015)は、従来から単に個々の公的サービ

ス提供機関を取り扱った誤った論文が展開されてきたと主張している52。すなわち、組織 単体でのサービス提供ととらえることなく、組織間の連携やネットワークによりシステム 的にサービスが提供される ことの重要性を指摘し ている。これ は、

Prahalad and Ramaswamy(2004)の主張と共通する考え方であり、組織間の連携の重要性を述べたもの

である。地方自治体が多様なアクターと連携しサービスを提供する社会保障部門に特にい えるが、多様なアクター間の連携による取組みが求められる地域振興やまちづくりといっ た様々な分野での事務事業においても展開が期待できる。地方自治体だけでの事業の企画 や実施では、有効性、経済性、効率性の観点から望ましい展開が困難な場合、相互影響や 信頼関係をベースとする組織との連携が求められる。

  2点目は、コスト削減や競争により公的サービス提供組織を維持しようというNPMは、

出所)Osborne,S.P., Radnor,Z., Kinder,T. and Vidal,I, “The Service Framework: A Public-service-dominant Approach to Sustainable Public services,” British Journal of Management, 2015,pp.5-10.をもとに筆者が訳出し、作成。

長期的なイノベーションの観点からは不十分な面も想定されることである53。事務事業の 内容や規模に応じて、財源や人的資源の配分を決定するような仕組みがNPMには内在し ておらず、NPM型の改革を継続的に進めることは、持続可能性の観点からは不十分な面 があり、補足的なシステムが必要と考える。

  3点目について、Osborne

et al. (2015)は、従来からのマーケティングは、単一の公的サ

ービス機関が、他の組織との関係性をなしに業務を遂行するものととらえられているが、

こうした考え方は現在では大勢ではなく、RMによるSDLが大勢であると主張している

54。また、そこでは競争よりも組織間の協調が求められ、信頼に基づく相互影響が進み、価 値が創造される。RMは、組織間の信頼と関係性を構築することに貢献したとしている。

Osborne et al. (2015)

はさらにRMがこれまで公共経営にほとんど貢献していない現状に 触れたうえで、NPGにおけるRMのとらえ方について説明している。すなわち、サービ ス提供機関と利用者とのコ・プロダクションが、サービス提供システムの持続性を確保す るためには不可欠とし、サービス提供機関対顧客の枠組みが重要としている55。RMをベ ースとする考え方からは、組織間連携や、コ・プロダクション、コ・クリエーションとい った住民や組織との共創までの幅広いガバナンスの志向が重要な研究テーマとも考えられ る。

  4点目は、NPMは公的サービス提供機関の内部の効率性の向上には貢献したが、サー ビスの有効性につながらず、最終利用者にとっての福祉の向上にはつながらなかった点を 指摘したものである56。NPMでは、効率性を重視した財源や人員削減等が手段として重 視されてきたが、そうした削減はサービス内容の改善や効率化とリンクしたものでなく、

単にサービスの低下を招いたという点を指摘している。この点については、サービスを維 持する観点からのアウトソーシングによる人員削減は必ずしもサービスの縮小や廃止には 直結していない点や、例えば、わが国地方自治体における民間委託あるいは指定管理者制 度を通じてサービスの質の向上が図られている事例をどう考えるのかといった疑問も残る。

5点目は、公共サービスの提供においては、イノベーションが公共サービスの持続性に 欠かせないものであるとされている。NPGでは、マネジメントというよりガバナンスが 複雑なため相互影響を通じたサービスシステムにおけるイノベーションが重要であるとし ている57。この点については、Moore and Hartly(2008)も、ガバナンスにおけるイノベー ションが、単一の組織の境界内ではなく、組織間の境界線を越えた生産システムに変化し ているとし、社会のガバナンスにおけるイノベーションの重要性を指摘している58。多様

なアクターの参加によるガバナンスが資源の増加や知識の融合によるイノベーションを促 進し、事務事業の改善に向上することが考えられる。

  6点目は、コ・プロダクションの重要性について述べたものである。従来のコ・プロダ クションに関する理解は、生産と消費が分離され別々のプロセスであるとの理解のもと、

公共サービスは政策決定者や提供者によって提供され、受け身のサービス利用者によって 消費されるとされてきた。一方、コ・プロダクションは持続性のあるビジネスモデルの中 心とされ、サービス提供者と利用者の相互影響の本質的なプロセスとされている59。この 点については、Osborne(2017)では、コ・プロダクションはコ・クリエーションの一部 として、修正が加えられている。具体的には、「我々のフォーカスを、線形であるコ・プロ ダクションからダイナミックなコ・クリエーションにシフトする」としており60、第6章 で詳細を述べる。

  7点目は、知識移転の重要性について、公的・私的、物的・サービスに関わらず、持続 性のあるビジネスモデルの明らかな特徴であることが述べられている。ビジネスの持続性 は、単価の調整や内的な効率性のある産物等に関係のないものであり、知識が基盤となる 特別な技術によるものである。この過程において、サービス利用者は、価値をともに作る 立場の者であり、経験や気づきが、サービスの内容を決定する重要なものとなる61

以上のように、NPMは単一組織の論理であり、サービス利用者との関係性も顧客とい う限定的なとらえ方であり、内部の効率性を重視しているのに対し、NPGではサービス マーケティングをベースとしている。NPGが目指すガバナンスによる地域課題の解決に 向けて、サービス利用者も含め、多様な関係性とのネットワークの形成、さらにはネット ワークの相互影響による公共サービスの改善や創造というサービスの有効性を重視してい る点が特徴である。

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