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ビジネス・モデルの提起

第6章  コ・プロダクションの拡張と新たなビジネス・モデル−コ・クリエーション

1  ビジネス・モデルの提起

前節では、これまでNPGの中核概念とされてきたコ・プロダクションを含めたコ・ク リエーションにおける価値の特性として、個人レベルでの福祉の増大から社会関係資本の 形成に至るまでの特性について Osborne が講演で示した要点をもとに整理した。また、

コ・プロダクションとしてOsborne

et al.

(2016)が整理したボトムアップのアプローチ による政策形成の包括的な概念としては、Osborne(2017)を踏まえ、コ・クリエーショ ンであると修正した。Osborne

et al.

(2016)では、サービスの提供者と利用者といった個 人との共創によって成果がつくられる「コ・プロダクション」、それらを意識的に行い、サ ービスの提供方法等の改善に結びつける「コ・デザイン」として捉えられる。また、つぎ のステップとしてサービスシステムの改善に結びつく「コ・コンストラクト」や、最終的 にはサービスシステムにおけるサービス提供の新しい形態を創造する「コ・イノベーショ ン」とされていることを述べた。これらの説明については、個人レベルにおけるコ・プロ ダクションが、最終的にはシステム改革までに発展する流れを示したものである。そのよ うな発展の形態については、2017年11月8日に実施したOsborneへのインタビューに

図表6−6  政策手段の形成モデルにおけるコ・プロダクション 

出所)Howlett, M., A. Kekez and O. Poocharoen, “Understanding Co-production as a policy tool:

Integrating New Public Governance and Comparative Policy Theory,” Journal of Comparative Policy Analysis,2017, p.6.を筆者訳出。

おいて、 コ・プロダクションはコ・デザインや、コ・コンストラクト、コ・イノベーショ ンとともに、コ・クリエーションの中の一つであるとの位置づけを改めて確認したところ である。

また、Durose

et al. (2016)は、コ・プロダクションが個人だけでなくグループや協働体

レベルで起こることを示唆しているが、必ずしもボトムアップの流れを想定しているわけ ではない。ここで重要なことは、コ・プロダクションがマクロレベルの社会的課題の解決 にも役立つ手法である点である。このことから、多様なアクターとの相互影響を前提とす る組織力を生かしたマネジメントが求められているとも考えられる。

  一方で、Howlett

et al. (2017)では、政策形成段階をマクロ・メソ・ミクロの3段階に分

けて、マクロからの流れで説明している。まず、ビジョンの設定やガバナンスの生成とい ったマクロの段階があって、最終的には、住民やアクターとの相互影響によりサービスの 共創が起こることを説明しており、

Osborne. et al. (2016)らの主張とは、逆の政策形成の流

れを想定している。

  なお、Durose

et al. (2016)と Howlett et al. (2017)が述べている「コ・プロダクション」

の概念は、個人レベルから組織レベルまでのことについて整理がなされて おり、

Osborne(2017)の「コ・クリエーション」と同義であると捉えている。

  わが国地方自治体の政策等の形成においては、総合計画に基づく形成が一般的であると 考えられる。総合計画は一般的には基本構想、基本計画、実施計画で構成される政策分野 横断的かつ、中長期的な計画33である。こうした基本構想、基本計画、実行計画には、政 策・施策・事務事業が位置づけられており、NPMにより導入が進んだ行政評価とも関連 づけて策定がなされている。総合計画に基づき政策・施策・事務事業が位置づけられ、行 政評価等も実施しつつPDCAによるマネジメントにより改善が行われていくこととなる

34。例えば、当初の新規の事務事業については、現場からのニーズや課題を把握したうえ で、トップダウンのアプローチによる政策レベルからの発想により形成されることもある。

一方で、改善策や拡充策として推進される事務事業については、一般的に現場レベルから の発想により、PDCAサイクルを通じてボトムアップで形成されていくことも多い。し たがって、

Osborne. et al. (2016)や Howlett et al. (2017)、 Durose et al. (2016)らの主張する

ボトムアップによるアプローチとトップダウンによるアプローチの双方とも地方自治体に おける実態を踏まえると、現実的に既に実践をされていることである。この双方を念頭に おくと、地方自治体におけるコ・クリエーションにおけるビジネス・モデルについては、

図表6―7のように設定することが考えられる。

図表6−7ではコ・クリエーションのビジネス・モデルとして、個別の事務事業レベル から政策形成に至るまでのコ・クリエーションの内容を整理している。Ⅰは現場レベル、

サービスを含めた事務事業を展開するレベルのコ・プロダクションである。Osborne.

et

al. (2016)は、個人の社会ニーズを満たすことによる価値共創としているレベルであり、利

用者は公共サービスの提供者とともに、サービスの経験知や成果をつくるものとされてい いるレベルである35。また、Howlett

et al. (2017)らの主張では、この段階は、政策手段の

選定にあたり、ネットワークの形成と柔軟な政策手段が重要であり、また住民の関わりと アクターの参加促進を目標としている段階である36。この段階においては、サービス提供 者と住民やアクター等の利害関係者による共創が進められる段階であり、相互影響による 事務事業の現場レベルでの改善も行われている段階と捉える。このような段階で創出され る価値は、個人や個々の組織の社会的ニーズを満たすレベルの価値(以下、「個別価値」と いう。)である。この段階では、社会的課題の解決というよりも、個人や個別の組織レベル の課題の解決に向けた事務事業が展開されている段階である。

  つぎにⅡの段階については、

Osborne et al. (2016)が主張する公共サービスのデザインや

サービス提供者 利害関係者

利用者

利害関係者 利用者 サービス提供者

利害関係者 利用者 サービス提供者

現場、事務事業レベ ルのコ・プロダクシ

ョン

課題抽出、評価によ るコ・デザイン

コ・コンストラク ション(システム 改革)、コ・イノ ベーション(政策

形成 社会関係資本の形

成)

図表6−7  コ・クリエーションにおけるビジネス・モデル 

出所)筆者作成。 

Ⅰ 

Ⅱ 

Ⅲ 

個別価値

社会的価値

提供方法の改善等を行う「コ・デザイン」37

Howlett et al. (2017)の主張するメソ・レベ

ルにおけるニーズ把握の段階が想定される。Ⅰの個別レベルでのコ・プロダクションから 利害関係者との共創によって把握される経験に基づいた課題の抽出と活動の評価33が行わ れ、改善が行われる段階であり、これらはⅠの活動の結果をⅢのコ・コンストラクション やコ・イノベーションといった行政システム改革、政策形成、社会関係資本の形成に結び つけるための重要なポイントとなるのがⅡである。あるいは、Ⅲの政策形成を行う際には、

課題やニーズの把握が重要であり、そのポイントしてⅡを捉えることもできる。

  Ⅲについては、相互影響による個別のコ・プロダクションの活動の結果、その活動によ って生じた課題や活動の実績等を評価し、システムレベルでの改革や政策形成に結びつけ るコ・コンストラクションやコ・イノベーションの段階である。また、アクター間の関係 性の構築によるガバナンスに基づき、組織間連携による社会的課題の解決に向けた事務事 業が展開されている段階でもある。その結果、

Osborne. et al. (2016)がいう社会関係資本の

形成が行われる段階である。社会的課題の解決につながるようなマクロレベルでのシステ ム改革が行われ、その成果が社会にも認知されるようになり、社会的価値38が創造される。

そのような政策や社会関係資本がⅠの現場にもトップダウンのアプローチによりフィード バックされ、サービスのレベルの向上につながる。

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