第7章 ニュー・パブリック・ガバナンスの事例検証−NPGの有用性の考察− . 146
7 うすき石仏ねっと(大分県臼杵市)
いと考えられる。
地方自治体 アクター 顧客
臼杵市 臼杵市医師会、歯科医師
会、薬剤師会、社会福祉協 議会、居宅介護事業所
医療・介護の専門職、住民
ビジョン 自分らしい生き方を選択しましょう。石仏が見守るこの臼杵で生きる・活きる・逝きき る
事業内容 多職種連携のための研修、医療・介護の24時間体制づくり、在宅サービスの充実のた めの課題と解決策の検討、臼杵市Z会議の運営
協働
(地方自治体及び各アク ターの役割)
事業の企画・コーディネー ト
アクターとの連携による 財源確保
会議の運営 プロジェクトの組成 研修の企画実施 現場サービスの改善
―
経営資源
(各主体によって提供さ れたヒト・モノ・カネ・知 識等)
※地方自治体にとっては、ア クターの資源が活用できる こととなり、必要とする資 源が最少化される。
・企画・コーディネート費 用
・事業実施のための財源確 保
・各団体・関係機関からの 専門職人材の投入
・専門職の専門知識
―
創造される価値
(個別価値、社会的価値)
【社会的価値】
在宅サービスの充実 医療と介護のシームレス なサービスの提供体制の 構築
【個別価値】
多職種連携によるサービ ス基盤の強化
専門職団体のプレゼンス の向上
【個別価値(専門職)】 専門性の向上
【個別価値(住民)】 提供されるサービスの質 の向上
【社会的価値】
専門職基盤の強化 在宅サービスの充実
2013
年3月からは訪問看護の情報との連携が開始された。2014 年10
月からは調剤薬 局との連携が開始、2014
年12
月からは福祉施設との連携が開始、2015
年4月には「うす き石仏ねっと運営協議会」が発足された。2015
(平成27)年7月には歯科医院との連携が
開始、2015 年10
月には消防署通信指令室での運用が開始されている。2016年1月には 介護事業所との連携が開始され、2016年8月には健診データとの共有が開始されている。現在、臼杵市人口約4万人の4分の1にあたる
10,000
人の住民が登録している。また、医 療機関は32
か所中の23
か所、調剤薬局は17
か所中の15
か所、歯科医院は17
か所中の17
か所、福祉施設6か所中の6か所、訪問看護事業所は4か所中の2か所、介護事業所は21
か所中の19
か所の登録があり、公的機関では、臼杵消防署、地域包括支援センター、臼杵市役所、市民健康管理センターが登録を行っている57。
うすき石仏ねっとでは、利用者の基本情報や臨床データ、医療情報、生活情報等の効率 的な情報共有が可能であり、また、医療・介護関係者のコミュニケーションの促進ツール、
利用者への対応に関する連携や相互相談ツールとしても活用されている。うすき石仏ねっ との情報を通じて、「医薬連携」、「歯科連携」、「介護連携」、「救急における通信指令室の閲 覧」、糖尿病や心疾患等の「疾患連携」、「健診情報連携」など医療と介護の連携にとって重 要なさまざまな連携が促進される。また、臼杵市によると、今後は母子手帳情報との連携 などさらなる情報の充実を考えているとのことである58。
また、うすき石仏ねっとについて、在宅医療に向けて退院調整や日常療養生活の支援を 進める際には、医療と介護の関係者が顔の見える関係のもとで情報を共有したうえで連携 した対応を行うことが重要である。臼杵市ではその情報基盤が形成され、容易に共有が可 能となっている。こうした地方自治体は全国的にはほとんどみられず、臼杵市は医療・介 護の
ICT
化による情報共有に成功した数少ない地方自治体の一つとされる。また、消防と の連携により緊急時対応がより効果的に行われ、あまり例がないと思われる消防との連携 についても、臼杵市は、「従来から医師会立病院と消防署との連携があった。また、市の一 組織であるので、連携に支障がなく、自然なこと」としている59。こうした臼杵市の組織 の柔軟性や日頃からの外部組織との関係性が基盤となっていることが組織間連携の大きな ポイントとなっている。図表7−12は当該事例を地方自治体、アクター、顧客別に、NPGにとって重要となる 視点ごとに分析したものである。ビジョンや事業内容は、それぞれに相互影響によって合 意された内容であり、当初は臼杵市と医師会を中心に検討がなされたものである。
協働における役割について、臼杵市は、医師会と連携した事業のコーディネートや財源 確保を行う役割である。アクターとしての医師会は、事業の企画を行った主体であり、医 師会や関係団体は、協議会を設置し、システムの構築・運営や、医療機関・介護事業所等 関係機関の加入促進を行う役割である。また、医療機関・介護事業所等の関係機関、消防 署の役割は、患者・利用者情報を提供する役割である。顧客は住民とアクターでもある医 療機関・介護事業所等、消防署となる。
経営資源の拡大について、臼杵市の経営資源としては、コーディネートに必要な人的資 源や事業実施のための財源である。医師会等関係団体については、システム構築における 各団体や関係機関からの専門職人材や専門職の知識である。また、加入機関の持つ情報も 資源と整理でき、協働による経営資源の拡大が、当事業の原動力となっていることが確認 できる。
この取組みにより創造される価値は、顧客としての関係機関や専門職については、医療・
介護情報の共有による現場対応力の向上やケアマネジメント力の向上、専門職間の連携強 化という社会関係資本である。また、住民にとっては、提供されるサービスの質の向上で ある。社会的価値としてはサービス基盤の強化である。アクターとしての専門職団体にと っての個別価値は、関係団体の連携強化である。臼杵市にとっての社会的価値は、サービ ス基盤の強化である。
臼杵市と医師会等の関係団体の強固な連携のもと、医療機関や介護事業所といった組織 を動かし、また住民の理解を得て情報共有を行うといった高度な調整による体制整備がポ イントとなっている。医療機関や介護事業所の加入率も相当高く、住民の加入率も高い割 合となっており、こうしたことは関係団体間の連携なしではできないことである。もう一 つは、情報の内容充実に向けた企画力と関係者の参画の促進である。臼杵市関係者の主体 性とビジョン設定に基づく適切なマネジメントにより実現された質の高い価値創造活動で あるといえる。
地方自治体 アクター 顧客 臼杵市 臼杵市医師会、歯科医師会
等関係団体、医療機関・介 護事業所等、消防署
医療機関・介護事業所等、
消防署、住民
ビジョン 住民・患者が安心して日常生活を過ごすために必要な患者本位の医療・福祉サービス の基盤づくり
事業内容 臼杵市内の医療・介護機関を結ぶ情報ネットワークの構築・運営 協働
(地方自治体及び各アク ターの役割)
医師会と連携した事業の コーディネート
財源確保
【医師会】
事業の企画
【医師会、関係団体】
システムの構築・運営 協議会の運営
医療関係機関、介護事業所 等の加入促進
【医療機関・介護事業所 等】
患者・利用者情報の提供
―
経営資源
(各主体によって提供さ れたヒト・モノ・カネ・知 識等)
※地方自治体にとっては、ア クターの資源が活用できる こととなり、必要とする資 源が最少化される。
・コーディネートに必要な 人的資源の投入
・事業実施のための財源確 保
・システム構築における各 団体・関係機関からの専 門職人材の投入
・専門職の専門知識
・関係機関の加入による患 者や利用者等の情報
―
創造される価値
(個別価値、社会的価値)
【社会的価値】
サービス基盤の強化
【個別価値(関係団体)】関 係団体間の連携強化(社会 関係資本)
【個別価値(医療機関・介 護事業所等、消防署)】 関係機関同士の連携強化
(社会関係資本)
【個別価値(医療機関・介 護事業所等、消防署)】 医療・介護情報の共有によ る現場対応力の向上やケ アマネジメント力の向上 専門職間の連携強化
【個別価値(住民)】 提供されるサービスの質 の向上
【社会的価値】
サービス基盤の強化