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NPG導入による行政システムの新たなフレームワーク

第4章  ニュー・・パブリック・ガバナンスのフレームワークーOsborne を中心とす

1  NPG導入による行政システムの新たなフレームワーク

なアクターの参加によるガバナンスが資源の増加や知識の融合によるイノベーションを促 進し、事務事業の改善に向上することが考えられる。

  6点目は、コ・プロダクションの重要性について述べたものである。従来のコ・プロダ クションに関する理解は、生産と消費が分離され別々のプロセスであるとの理解のもと、

公共サービスは政策決定者や提供者によって提供され、受け身のサービス利用者によって 消費されるとされてきた。一方、コ・プロダクションは持続性のあるビジネスモデルの中 心とされ、サービス提供者と利用者の相互影響の本質的なプロセスとされている59。この 点については、Osborne(2017)では、コ・プロダクションはコ・クリエーションの一部 として、修正が加えられている。具体的には、「我々のフォーカスを、線形であるコ・プロ ダクションからダイナミックなコ・クリエーションにシフトする」としており60、第6章 で詳細を述べる。

  7点目は、知識移転の重要性について、公的・私的、物的・サービスに関わらず、持続 性のあるビジネスモデルの明らかな特徴であることが述べられている。ビジネスの持続性 は、単価の調整や内的な効率性のある産物等に関係のないものであり、知識が基盤となる 特別な技術によるものである。この過程において、サービス利用者は、価値をともに作る 立場の者であり、経験や気づきが、サービスの内容を決定する重要なものとなる61

以上のように、NPMは単一組織の論理であり、サービス利用者との関係性も顧客とい う限定的なとらえ方であり、内部の効率性を重視しているのに対し、NPGではサービス マーケティングをベースとしている。NPGが目指すガバナンスによる地域課題の解決に 向けて、サービス利用者も含め、多様な関係性とのネットワークの形成、さらにはネット ワークの相互影響による公共サービスの改善や創造というサービスの有効性を重視してい る点が特徴である。

について公共への適用をSDLにより具体化し、相互影響の重要性について述べているよ うに63、NPGにおける中心的概念となっているものである。わが国においては、これま で、PAからNPMによる政策形成がなされ、現在はガバナンスを意識した政策展開がは じまっているところである。しかしながら、そのガバナンスの方法論については、必ずし も明確ではないことは前述のとおりであり、NPGの展開が一つの手法として求められる。

図表4−10にNPMとNPGの行政システムについて、これまでの論述をもとに、政策、

施策、事務事業の形成とその実践、評価といった諸相ごとにキーとなるコンセプトを整理 している。NPMの形成におけるキーコンセプトとしては、石原(2005)がNPMの基本原 理として提示している「顧客志向」、「戦略・ビジョン」、「権限移譲・分権化」、「競争原理」、

「成果志向」、「説明責任」の6つの基本原理64が中心的なものとなる。一方で、NPGに ついては、本章で定義した基本原理である「価値創造」、「価値共創」、「相互影響」、「コー ディネート」、「協働」、「経営資源の拡大」が中心的なものとしてあげられる。また、実践 については、NPMが「経済性」や「有効性」をあげ、NPGについては、「有効性」、「対 話」、「相互影響」、「知識の共有」、「資源の共有」といったコンセプトをあげている。この ように整理すると、NPMとNPGの融合を行うことにより、様々なキーコンセプトを結 合させながら、政策、施策、事務事業の展開の可能性が広がる、

NPMの実践において重視されるのが、「効率性」や「経済性」であるのに対し、NPG では、「有効性」が重視される。NPGの実践においては、対話等を通じて相互影響が行わ れ、知識や資源が共有され、単一のアクターではなしえないグッズやサービスが提供され ることになる。グッズやサービスが住民を含めた利害関係者に利用されることにより価値 が創造される。

評価については、第8章で詳細を述べることとするので、ここでは簡単に触れる程度に とどめる。NPMでは成果指標の設定は行政内部で行われる。一方、NPGでは、行政内 部で設定される場合もあるが、アクターとの対話により設定される場合なども考えられる。

少なくともアクターとの共有がなされる。NPMでは、成果志向であり、また効率性や経 済性が重視されるため、事務事業評価が中心であり、事後評価が中心となっている。NP Gでは、多様なアクターの相互影響を促進しガバナンスに基づく地域課題の解決等が主眼 の一つとなるため、事務事業評価だけではなく、施策評価や、解決を目指す社会的課題に よっては政策評価も重要となる。また、多様なアクター間の共通認識のもと総力を生かし た取組みが求められるため、事前におけるビジョンの共有が重要となり、事前評価も重要

となると考えられる。事前評価における評価指標の設定や資源の確保・配分等の戦略性が 重要となり、管理会計的な発想が重要となってくる。

      諸相 フレーム ワーク

形成 実践 評価

NPM ・顧客志向

・戦略・ビジョン

・権限委譲・分権化

・競争原理

・成果志向

・説明責任

効率性・経済性 成果指標(行政内部)

事務事業評価が中心 事後評価が中心

NPG ・価値創造

・価値共創

・相互影響

・コーディネート

・協働

・経営資源の拡大

有効性 対話 相互影響 知識の共有 資源の共有

成果指標(行政内部+アクター)

事務事業評価に加え、施策評価、政策 評価も重要

事前評価+事後評価

NPMとNPGの融合は、政策、施策、事務事業の展開可能性を拡大する。そのフレー ムワークを模式化したものが図4−11である。NPMの基本原理は石原(2005)が提起し ているように、「顧客志向」、「戦略・ビジョン」、「権限委譲・分権化」、「競争原理」、「成果 志向」、「説明責任」である。このような基本原理に基づく内部のマネジメント改革は、地 方自治体のマネジメントの根幹であり、継続的かつ発展的に取り組んでいく必要がある。

NPGにおいては多様なアクターによる相互影響を通じた政策形成が求められる。こうし たNPGの政策形成においても、利用者としての住民や組織に対する「顧客志向」が求め られる。また、総合計画等において規定される「戦略・ビジョン」に基づいた政策形成が 重要である。地方自治体間の権限移譲・分権化の視点も、例えば行政機関同士の連携、い わゆる官官連携などの事例もあり、皆無とはいえない。また、行政の役割を多様なアクタ ーの主体性を引き出すことによって、地方自治体からアクターへの実質的な権限委譲が図 られる可能性もある。多様なアクターの中での民間市場における競争原理も活用した取組 みも想定される。「成果志向」や「説明責任」についても地方自治体の運営の基本的なもの である。NPGはNPMの基本原理を包含した概念ともとらえることができる。一方で、

NPGの基本原理は、「価値創造」、「価値共創」、「相互影響」、「コーディネート」、「協働」、

「経営資源の拡大」であるが、これらは、内部改革を主眼とするNPMの基本原理とはな りにくいものではある。しかしながら、NPGとNPMの関係性のなかでは、NPGの組

図表4−10  行政システムの諸相とフレームワーク 

出所)筆者作成。 

織的文化の醸成により、例えば、NPMの手法として実施されていた指定管理者制度によ る事業運営やアウトソーシングにかかる業務についても、受託者の主体性を取り込み、サ ービス内容を決定する仕様の段階からの相互影響等を通じ、より有効性の高いサービスが 提供される相乗効果の可能性も考えられる。

すなわち、NPGが地方自治体の行政システムに組み込まれることによって、多様なア クターの知識や資源が投入されることとなり、政策形成の範囲が広がり、多様なニーズへ の対応が可能となる。

ここで留意すべきこととして、Osborne (2010)が主張しているように、PAやNPMそ のものがNPGにとって代わられるものではないということである65。法的な執行管理や 内部事務等の執行管理型のPAは政策形成力向上の対象としてなじまないが、NPMにつ いては、引き続き、その効率性や経済性を高めるとともに、例えば外部委託等の事務にお いても有効性を追求することを組み入れることによって、引き続き改善の余地が十分に存 在することが考えられる。

すなわち、Hewlett

et al. (2017)

もNPGと他の比較できる行政システムとの統合を主 張しているように、NPGの導入とNPMの発展の両面での政策形成システムの構築が求 められる。Hewlett

et al. (2017)

は、警察や収税といった業務を例に、これらは、コ・プ ロダクションで展開する意義は少ないとし、一方で、高齢者ケアサービスなどの大規模な

PA  NPM 

顧客志向  戦略・ビジョン  権限委譲・分権化 

競争原理  成果志向  説明責任  執行管理 

NPG 

価値創造  価値共創  相互影響 

コーディネート  協働  経営資源の拡大 

図表4−11  今後の行政システムのフレームワーク 

出所)筆者作成。 

多様なアクター の主体性

行政に規定され たアクターの参

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