第2章 わが国地方自治体における総合計画策定の問題点
Ⅰ 地方自治体における総合計画の位置づけ
定める条例」が
34.1%と最も多くなっており、次いで自治基本条例が18.0%、総合計画条例が
12.8%となっており、その他の条例6.4%も合わせると、約7割が条例を根拠として
いる
6。
総合計画は一般的には基本構想、 基本計画、 実施計画で構成される政策分野横断的かつ、
中長期的な計画
7である。こうした基本構想、基本計画、実行計画には、政策、施策、事 務事業が位置づけられており、NPMにより導入が進んだ行政評価とも関連づけて策定が なされている。石原(2005)は、行政評価の目的の一つとして、政策を実現するために実施 されている諸手段(施策と事務事業)の現状分析と改善改革案の明確化をあげ、地方自治 体の総合計画との関係性に言及している
8。また、高寄(1999)は、行政評価を「行政活 動の効果を数値化していく評価システム」 、 「政策、施策、事務事業の3つのレベルの評価 がある」とし、 「選別(plan) 、執行(Do) 、成果(see)指標による3つの評価方式に分類 できる」 、 「事前、現状、事後評価と3つの時点で行われる」
9とし、定義付けを行っている。
1969
年の都道府県知事に対する自治行政局長通知では、 「基本構想は、当該市町村の存 立している地域社会についての現状の認識および将来への見通しを基礎として、その地域 の振興発展の将来図およびこれを達成するために必要な施策の大綱を定めるものであるこ と」 、 「各分野における行政に関する計画または具体的諸施策がすべてこの構想に基づいて 策定され及び実施されるものであること」 、 「おおむね
10年程度の展望は持つことが適当 である」とされ、中長期的なビジョンのもとでの各分野における個別計画や政策等の形成 及びその実施については、総合計画との整合性を確保しながら推進していくことが求めら れている。
基本構想は、まちづくりの基本姿勢や将来像、基本目標について明記したものであり、
総合計画のなかでも最も抽象度が高く、期間の長い計画とされている
10。基本計画は、基 本構想の実現をめざし、分野別に取りくんでいく施策を明記したものであり、基本構想よ りも具体性が高く、実施計画よりも抽象度が高い計画であって、基本構想よりも期間が短 く、実施計画よりも期間が長い計画とされている
11。また、実施計画は、事業内容や実施 時期を明らかにし、行財政運営の指針を明記したものとされている
12。総合計画の理解と しては、こうした三層構造での理解が通例となっている
13。この三層構造が政策・施策・
事務事業と対応し、それぞれの拠り所として機能するためのPDCAサイクルに基づく評 価やマネジメントの基盤となっている。
地方自治体は、法令等に基づく活動はもとより、NPMによって民間参入も進み公共領
域において多様な主体との連携のもと多様な活動を展開している。地方自治体における活 動の企画、実施、評価、改善といった一連の諸活動については
PDCAサイクルを形成しそ の有効性や効率性、経済性を高めることが重要である。1990 年代以降、NPM(ニュー・
パブリック・マネジメント)が導入されていくなかで、三重県における事務事業評価シス テムの導入が契機となり、一部の地方自治体において、いわゆる行政評価が実施されるよ うになった。2001 年には、 「行政が行う政策の評価に関する法律」が施行され、行政活動 について、 「政策」 、 「施策」 、 「事務事業」の体系化及びそれらの評価の明確化が行われた。
地方自治体においても、 このことを契機に本格的に行政評価が取り組まれることとなった。
この法律により「政策」の定義が明確化され、 「行政機関が、その任務又は所掌事務の範囲 内において、一定の行政目的を実現するために企画及び立案をする行政上の一連の行為に ついての方針、方策その他これらに類するもの」
14と定義された。
真山(2001)によれば、政策とは「自治体の取組みによって解決すべき問題は何か、自 治体が解決(達成)しなければならない課題は何かを明確に示すことによって、具体的な 行動プランである事業の方向性や狙いを表明したもの」
15とされている。また、施策につ いては、 「政策を実現するための具体策のセットであり、政策の下位概念であると同時に、
事業の上位概念」
16とされている。事務事業は、 「政策を実現するための具体的な方策であ り、手段・方法に当たるものである」
17とされている。政策や施策を実現するために、地 方自治体組織の内外の様々な組織や個人が有する資源を投入して行われる基礎的で直接的 な活動やプロジェクト、サービスが事務事業である。事務事業については、本論文では、
総務省の定義にある「行政手段」と限定せずに、 「地方自治体、企業、NPO等の組織や住 民によって、公共領域において展開される手段」と定義する。理由としては、ガバナンス に基づく行政システムにおいては、地方自治体が関与して実施される事務事業は、必ずし も地方自治体が独占して実施するものではないという立場をとるためである。なお、 「事務 事業」には、定例的な事務事業だけでなく、プロジェクト、サービスまで幅広いものが含 まれうる。
こうした定義や関係性を踏まえて総合計画と政策・施策・事務事業の関係性を整理した
ものが図表2−1である。基本構想には、概ね政策を中心に位置づけられ、政策に基づき
具体化された施策の柱が位置づけられることが多い。また、基本計画には、政策を実現す
る手段としての施策が位置づけられる。実施計画には、施策を実現する手段としての事務
事業が施策体系ごとに位置づけられる。実施計画は
3年間といった複数年度のパターンが
多くなっているが、これをPDCAサイクルに基づき毎年実施状況を確認し、必要性や有 効性、経済性、効率性、達成度を評価したうえで、改善策を検討し、予算やその後の運営 に適切に反映させていこうというものが事務事業評価である。
松尾(2010)の行政評価の約9割が総合計画体系に従ったものとの指摘
18もあるように、
総合計画は行政評価との関連がある。わが国においては、行政評価のような業績管理シス テムの導入は、地方自治法などの法律として規定、強制されていないが、ほとんどの自治 体において、総合計画との関連で行政評価を導入している。その背景としては、国や自治 体における財政構造の悪化、行政に対する社会的ニーズの多様化、地方分権、NPM(ニ ュー・パブリック・マネジメント)の潮流など様々な要因が指摘されている
19。
そうした背景のなかで全国の地方自治体のほとんどで導入されている行政評価は、自治 体が行う行政の活動の評価において、政策、施策、事務事業といった計画体系に焦点を当 てようとするもの
20である。その特徴として成果志向と成果に対する定量的測定であり、
目標管理志向である
21。総合計画の機能を発揮するうえで、行政評価との関連のなかで重 要な前提条件となる目標設定の状況について、定性的な目標については、基本構想への位
置づけが
81.8%、基本計画への位置づけが79.7%、実施計画への位置づけが21.3%となっている
22。また、数値目標については、基本構想への位置づけが
16.1%、基本計画への位置づけが
87.2%、実施計画への位置づけが32.8%となっている23。具体的なサービスやプ
ロジェクトなど住民や現場レベルで直接影響を与える事務事業と関連する実施計画への目 標の位置づけが比較的低い状況となっている。
以上を踏まえ、本章では、行政システムにNPGを導入するにあたっての総合計画にお
けるガバナンスの規定とそれに基づく政策等の形成や実践が重要性を念頭に、ガバナンス
の観点からみた総合計画の問題点や課題について整理する。また、総合計画の進捗管理と
評価の問題点として、行政評価の問題点や課題等について整理する。そして、総合計画と
地域経営の関係について触れ、地域経営におけるNPGに基づくガバナンスの重要性を指
摘し、総合計画に基づく地域経営におけるガバナンスのイメージの枠組みを提起する。
ドキュメント内
地方自治体における政策の形成と実践の論理 : NPMとNPGの融合
(ページ 34-38)