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コ・プロダクションの概念の発展

第6章  コ・プロダクションの拡張と新たなビジネス・モデル−コ・クリエーション

Ⅱ  コ・プロダクションの概念の発展

わが国地方自治体においては、その政策等の形成にあたり、コーディネーターとしての 役割を持ちつつも、公共領域を形成するアクターの主体性の発揮を前提とし、アクター間 の関係性や相互影響を重視したガバナンスが重要となることをこれまで説明した。そのた め、NPMによるこれまでの手法に加え、NPGに基づく政策等の形成手法の導入を進め、

NPGとNPMの融合を図りながら、行政システムの再構築を進めていくことが求められ る。

NPGにおいては、地方自治体と公共領域のアクター等はそれぞれ主体性を発揮する対 等の関係であり、地方自治体については、地域経営の観点から地域全体の公共領域を見渡 し、アクターであるとともに全体をコーディネートする立場となる 4。そうしたガバナン スにおいては、企業、NPO、住民組織等との共創による政策等の形成手法の確立・定着 が重要となる。

特にこれからは、少子高齢化を要因とする人材不足や財政状況が深刻化することが想定 されている。地域の総力をあげた地域特性を踏まえた取組みが求められるが、そのために は多様なアクターとの共創によるガバナンスが不可欠である。組織等との関係性を構築し、

相互影響により、ニーズに基づく政策・施策・事務事業の形成による有効性の向上と効率 性・経済性を意識した形成手法の確立が求められる。

Osborne et al. (2015)では、その最も適切なロジックとして、SDLをあげ、その一つの

有力な手法としてあげられるのが、コ・プロダクションであるとしている5。SDLについ ては、「製品(商品)の交換から得られる効用を解釈するマーケティングマネジメントに代 わる価値創造過程で、新たなマーケティングを描くことを意図したもの」6とされ、「その 顧客価値は、供給者と需要者との相互影響で創造される」7としている。このように、NP Gにおける価値共創の中核的な手法がコ・プロダクションとして位置づけている。

また、

Pestoff(2011)も「コ・プロダクションはNPGの中核的な要素である」

8としてい る。Pestoff(2011)は、コ・プロダクションが与える影響について、市民参加の拡大や「第 3の組織(the third sector)」による公共サービス提供の拡大を指摘している。第3の組織 によるサービスの提供は、より住民参画を促進するだけでなく、利用者とスタッフの相互 影響を促進することになるとしている。また、住民参加を促進することにより、公的サー

ビスや営利サービスにおけるサービスの限界を超えることができるとしている9

さらに、Pestoff(2011)は、欧州諸国では、今後、公共サービスにおける行政による独占 の可能性は低いとしたうえで、

2030

年に向けたシナリオとして、2つのシナリオがあると している。10。それを図6−1のように示している。一つには、急速にサービスの民営化が 進みNPMが加速するシナリオである。もう一つのシナリオがサービスの多様性やさらな るコ・プロダクションの充実したNPGが発展するシナリオである。後者のシナリオにつ いては、行政との連携のもと、第3の組織に多くの役割を期待するシナリオである11。前 者のシナリオについては、経済性や合理性を主眼とするNPMによるサービス改革が、相 互影響やコ・プロダクションを低下させ、公共サービスを低下させる傾向があると指摘し ている12。一方で、相互影響を重視することは住民にとって真に必要な公共サービスを促 進していくとしている。また、行政が公共サービスの提供者の中心の場合と、民間市場に 委ねる場合とも、コ・プロダクションや民主的なガバナンスの発展を阻害するとしている

13

1980

2005

2030 2030 国・行政

国・行政

他 の 供 給者

第3の組織

営利企業

国・行政

営利企業

営利企業

第3の 組織 国・行政

NPG

NPM 図表6―1 欧州の福祉国家の発展(1980 年から 2030 年)

(出所)Pestoff, V., “Co-production, new public governance and third sector social services in Europe," Ciências Sociais Unisinos 47.1 ,2011,p.23.を筆者訳出。

サービス提供の過程において、サービス利用者をより積極的な役割として捉え、単なる サービスの受け手ではなくサービスを共創するものとして捉える。そこには、「公的なサー ビスの創造システムとサービス利用者、サービススタッフとの複雑な相互影響がある」14 とし、それぞれの関係者の主体性の発揮と相互影響の重要性について強調している。従来 からのマーケティングは、単一の公的サービス機関が、組織等との関係性をなしに業務を 遂行するものと捉えられているが、

Osborne et.al. (2015)は、関係性マーケティングをベー

スとするSDLが大勢であり、競争よりも協調や信頼に基づく相互影響に基づく価値創造 の重要性15について主張している。複数の関係機関同士の関係性と組織間連携の重要性を 織り込んでいる点もコ・プロダクションの特徴の一つと捉えることが重要と考えられる。

Osborne et al. (2015)は、コ・プロダクションは公共サービス提供過程の本質的なもの

であり、サービス利用者と社会の双方へのサービスの向上に直接的に結びつくものとして いる16。Brudney

et al. (1983)は、コ・プロダクションが生産者とサービス利用者(顧客)

の領域が重なる部分で行われるとしている 17。また、Ramirez(1999)は、産業の視点との 比較において、コ・プロダクティブな視点として、共創されることや、顧客が共創の主体 となること、相互影響の重要性を指摘している18(図表6−2参照)。その比較においては、

相当な相違点があることが比較されているが、コ・プロダクティブな視点の特徴としては、

次の3点があげられる。

第一に、コ・プロダクションにおける価値創造の「同時性」や「双方向」である。同時 性は、サービス等が提供されることと利用されることとの同時性であり、利用された時点 で価値が創造されるといった同時性のことである。双方向性は、サービス提供者の主体性 と利害関係者の主体性を前提とする相互影響に関する特徴である。

第二に、「価値が必ずしも貨幣で測定できないものであるとされていること」と、「相互 影響が分析の単位である」とされている点である。産業の視点では、「全ての価値は、貨幣 価値で測定できる」とされているが、公共サービス等行政の事務事業の特徴の一つである 財務指標での測定の困難性を示したものである。また、地方自治体といったサービスの提 供者と利害関係者の相互影響を分析しているとされており、そうした特徴を踏まえた業績 評価やKPIの設定などが研究課題としても重要と考えられる指摘である。

第三に、顧客が価値の共創者であることを明確に述べている点である。顧客は価値を共 創するといった指摘や、価値は関係性の中で顧客とともに共創されること、消費者を創造

の要因者であるとしている点が、コ・プロダクションの特徴の一つと考えられる。

地方自治体の事務事業についても、利害関係者が対象となる事務事業については、こう したコ・プロダクションの視点からの改革改善が実施されていくことが求められる。前章 で述べたPA型、NPM型、NPG型の3つの類型の事務事業ごとの特徴を踏まえて、日 頃からの実務として定着される行政システムとマネジメントの手法が求められる。

図表6−2  Value production の2つの視点 

産業の視点 コ・プロダクティブな視点

価値創造は、連続性があり、一方向性で、他動性のもの であり、価値連鎖が好例である。

価値創造は、同時性があり、双方向のものであり、価値 の集合体が好例である。

全ての価値は、貨幣価値で測定できる。 いくつかの価値は、貨幣では測定できない。

価値は付加される。 価値は共創され、結合され、調和される。

価値は有用で優れた機能である 価値は有用で優れた資源を変化させたものである。

価値は目標であり、主観である。 価値は偶然性があり実在のものであり、双方向性によっ て創造される。

顧客は価値を破壊する。 顧客は価値を共創する。

価値は供給者のみの取引によって実現する。 価値は、関係性の中で顧客とともに共創される。

サービスは分離された行動である。 サービスは共創と考えられる全ての行動のフレームワー クである。

消費は創造の要素ではない。 消費者は創造の要因者としてマネジメントする。

会社や行為者が分析の単位である。 相互影響が分析の単位である。

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