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ガバナンスの観点からのサービスマーケティング

第3章  地方自治体における政策形成とサービスマーケティング

1  ガバナンスの観点からのサービスマーケティング

地方自治体において、公共領域における多様な課題に対し、有効性、経済性、効率性を 出所)筆者作成。 

高める政策形成を進めるためには、地方自治体だけでの事務事業の執行や地方自治体主導 の取組みでは限界がある。真山・藤井・林沼・正木・戸政(2000)は、まちづくりにおけ るNPOや市民など、政府以外のアクターの活動を例に、地方自治体の限界が現れている 点を指摘している

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また、山本(2002)は、社会的問題の解決あるいは社会の変革の担い手と目された政府が、

それ自体問題であると考えられるようになったと指摘している

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。宮川(2002)は、ガバナン スの主体である政府の統治能力の低下の側面と、統治される側の社会の統治可能性の低下 を指摘し、後者については、特に、社会における多様性、複雑性及び動態性が増大してい るために統治の困難性が増しているということを指摘したうえで、伝統的な統治方法に頼 ることの限界を指摘している

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。真山(2001)は、マクロのガバナンスのイメージとして、社 会環境の変化に伴って地方自治体が唯一の公共主体ではなく、公共的問題の解決にあたっ ては地方自治体以外の様々なアクターの協働作業を当然の前提とする基本認識を示してい る

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。このように地方自治体のみが主体となった政策形成の限界については山本(2002)、宮 川(2002)といった論者が指摘するところである。この点において、住民や組織を単なる消 費者や利害関係者とはとらえず、 サービスの提供者として主体的な役割を期待する場合に、

ガバナンスとサービスマーケティングの接点が見いだせ、サービスマーケティングの導入 の意義がある。

しかしながら、現行の行政システムは、ガバナンスを重視したシステムであるかどうか は不明瞭な状況であり、政策形成においてもガバナンスが明示的に機能しているとは必ず しも言い切れない。

現在の地方自治体において、真山(2001)が指摘するような「ガバナンス・イメージが定

着し、政策形成に真剣に取り組むといった状況」

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を把握するのは困難ではあるが、少なく

とも多様なアクターによるガバナンスを掲げた行政システム改革を進めるということを明

確に掲げている地方自治体はほとんどない状況と思われる。ただし、総合計画において住

民や企業、団体等の多様な主体に関する位置づけを行っている地方自治体も

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割強あるこ

とからガバナンスのイメージは浸透しつつある状況とも考えられること、いわゆる先行自

治体と呼ばれる地方自治体は多様なアクターの主体を活かし、地方自治体もアクター間の

ネットワークの一員となり、相互影響を前提とするガバナンスを構築している例が多いと

考える。福祉やまちづくり、産業振興等において多様なアクターのネットワークによる取

組みの成果が注目されている先行地方自治体においては、住民や組織等の多様なアクター

の主体的な企画等も取り入れた相互影響が重視されていると考えられ、NPGの特徴を備 えたガバナンスを自ずと構築していることが共通点と考えられる。

(2) NPMとNPGにおけるガバナンスの比較 

多様なニーズと地域特性に応じた対応策の実施が求められる現在、先行地方自治体とそ うでない自治体の差があるとすれば、その理由の一つには、多様なアクターの相互影響に よる政策形成の重要性に関し、地方自治体が組織的に認識しているか否か、またそのうえ で、従来は顧客側であった住民や組織等が政策形成に参画できるよう、地方自治体がコー ディネーターとしての役割を果たしつつ政策形成を実践しているか否かが考えられる。こ の点について、真山(2001)は、 「従来とは根本的に異なる発想であるガバナンス・イメージ を導入するためには、行政の意識改革はもとより、住民の意識も変えていかなければなら ない」

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としており、ガバナンスを機能させることについて地方自治体間で差異が生じや すい要因の一つとなる多様なアクター間の意識の差異について指摘している。

また、矢吹(2010)は、 「公共サービスの行政サービス化で守備範囲が拡大した自治体によ る主導的な地域経営主体からの撤退が進んでいる」

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としたうえで、地域経営

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の中核的 主体を地方自治体と置いた上で、自治体経営の延長線上で地域経営を捉えようとする研究

(宮脇

2003

ほか)については、地域経営におけるNPO間、NPOと企業間の連携とい った組織間の豊富な実態を捉えきれない

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としている。そして、組織それぞれが主体とな ったマーケティングネットワークの実践を主眼とする「地域マーケティング」を提起して いる。その際に、地方自治体を究極のネットワーカーと捉え、地域経営の責任の所在は地 方自治体にあるとしている。 しかし、 地方自治体の主体的役割については示されておらず、

組織や住民をネットワーク化し、相互影響を促す言葉としては、単なる関係性の構築以上 の実践につながることが求められるため、 「ネットワーカー」よりも「コーディネーター」

が適切である。

NPMの一つの成果としては、それまで連携先としてそもそも想定されてこなかった企 業などの民間セクターを、積極的に活用した改革を進めた点にあり、官民連携の取り組み が飛躍的に推進され、地方自治体を主体とするガバナンスの構築を可能とするきっかけを つくったことがあげられる。しかしながら、NPMは、小さな政府を志向するものであり、

地方自治体の関与のもとでの改革においては、定例業務のアウトソーシングやPFIのよ

うに、あらかじめ国や地方自治体が主体として企画するなど、民間も供給側の主体となる

ガバナンスは想定されていない。

一方で、坂本(2008)は

Rhodes

の主張に基づき、小さな政府を前提に、自己組織化ネッ トワークがガバナンスにとって重要であることを指摘している。また、政府だけでなく、

非政府部門も含めた複数の組織が自律的かつ自己統治を行う組織が連携したネットワーク が重要と指摘している

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。このように地方自治体と独立した関係性でのNPO活動など住 民が自ら統治を目指す自己組織化を推進している面もある。すなわち、NPMのもとでの 改革は民間の主体性を地方自治体が引き出すものではなく、地方自治体が関与しない形で の自己組織化による統治ということである。NPMが目指すものは地域の公共領域を見渡 したなかでの組織間連携をベースとするガバナンスではないと考えられる。むしろ行財政 改革のツールとしてNPMが展開されたことからも組織の効率性や持続性を追求する側面 もあるため、コーポレートガバナンスが前提とも考えられる。そのため、多様な組織の主 体性をより一層引き出すための相互影響による公共領域内での事業の更なる多様化や質の 向上、公共領域そのものを拡大するといった成果を期待することは難しいと思われる。

図表3−2は、Osborne らが提唱するNPGのように地方自治体をコーディネーターと

し多様なアクターでのガバナンスと、Rhodes らが提唱するNPM型ガバナンスのように

地方自治体と独立した関係性で自己統治を行う組織のネットワークを基本とするガバナン

スの2類型のガバナンスを単純化し図示したものである。前者が相互影響によるシステム

におけるイノベーションが期待できる点

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で優位であり、社会の多様化が進むなかで、多

様なアクター間の相互影響を重視するガバナンスが求められている。相互影響を求めるガ

バナンス・システムを構築していく場合に、顧客を供給者としても取り込み、よりニーズ

に沿った高度なサービスの提供を目指すサービスマーケティングを援用する意義がある。

2  サービスマーケティングの変遷

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