第7章 ニュー・パブリック・ガバナンスの事例検証−NPGの有用性の考察− . 146
1 医療と介護の連携(熊本県八代市)
地方自治体 アクター 顧客 臼杵市 臼杵市医師会、歯科医師会
等関係団体、医療機関・介 護事業所等、消防署
医療機関・介護事業所等、
消防署、住民
ビジョン 住民・患者が安心して日常生活を過ごすために必要な患者本位の医療・福祉サービス の基盤づくり
事業内容 臼杵市内の医療・介護機関を結ぶ情報ネットワークの構築・運営 協働
(地方自治体及び各アク ターの役割)
医師会と連携した事業の コーディネート
財源確保
【医師会】
事業の企画
【医師会、関係団体】
システムの構築・運営 協議会の運営
医療関係機関、介護事業所 等の加入促進
【医療機関・介護事業所 等】
患者・利用者情報の提供
―
経営資源
(各主体によって提供さ れたヒト・モノ・カネ・知 識等)
※地方自治体にとっては、ア クターの資源が活用できる こととなり、必要とする資 源が最少化される。
・コーディネートに必要な 人的資源の投入
・事業実施のための財源確 保
・システム構築における各 団体・関係機関からの専 門職人材の投入
・専門職の専門知識
・関係機関の加入による患 者や利用者等の情報
―
創造される価値
(個別価値、社会的価値)
【社会的価値】
サービス基盤の強化
【個別価値(関係団体)】関 係団体間の連携強化(社会 関係資本)
【個別価値(医療機関・介 護事業所等、消防署)】 関係機関同士の連携強化
(社会関係資本)
【個別価値(医療機関・介 護事業所等、消防署)】 医療・介護情報の共有によ る現場対応力の向上やケ アマネジメント力の向上 専門職間の連携強化
【個別価値(住民)】 提供されるサービスの質 の向上
【社会的価値】
サービス基盤の強化
価値創造につながる取組みが、各地方自治体の経営資源が限られているなかで、ハードル の低い官官連携である。
介護保険制度の改正により、各市町村においては、医療と介護の連携を進める事業を
2018
年4月までに事業化することが求められている61。しかし、医療圏域は通常市町村区 域を超えた二次医療圏であり、複数市町村にまたがる広域的なものである。特に合併市町 村においては、市町村区域と医師会の区域が異なることがあるなど、市町村単独での実行 には困難さが伴う。熊本県八代地域では、八代市と氷川町が官官連携し、二次医療圏と地方自治体エリアが 同じとなるよう連携体制を組んだ。そして、八代市医師会及び八代郡医師会との連携も進 め組織間連携体制を構築した。そして、4者が協働で医療介護連携事業に取り組むことに 合意し事業を推進している。医師会、看護協会、介護支援専門員協会、社会福祉協議会、
民生委員などの組織が連携し、多職種の人材育成や顔の見える関係づくりなど、医療と介 護の切れ目ないサービス構築に向け取組みを進めている62。区域の違いという根本的な違 いを官官連携及び官民連携により解消したうえで、多職種によるサービスの包括的な提供 に向けた組織間連携を構築し、実施体制面の強化を図ったうえで、価値創造を行っている。
仮に組織間連携の視点がなければ、区域の違いといったハードルをクリアできないことを 考慮すると、組織間連携の意義は大きい。
2015
年4月に4者の共同組織となる在宅医療介護連携室を八代市健康福祉政策課内に 設置、2016
年10
月には、八代市長、氷川町長、八代市医師会長、八代郡医師会長により、「在宅医療と介護の連携に関する協定書」が締結された。
2017
年4月には、八代地域在宅 医療・介護連携支援センターを八代市健康福祉政策課内に設置。事務局には、八代市職員 だけでなく、氷川町職員、八代市医師会職員、八代郡医師会職員が出向し、本格的な共同 組織が設置された63。図表7−13は、当該事例を地方自治体、アクター、顧客別に、NPOにとって重要とな る視点ごとに分析したものである。ビジョンや事業内容は、八代市、氷川町、八代市医師 会、八代郡医師会の四者の合意のもと設定され共有されているものである。八代市と氷川 町が官官連携し、アクターとしては、八代市医師会、八代郡医師会、医療・介護の専門団 体、医療機関・介護事業所等であり、地方自治体と協働し、事業を推進している。顧客は アクターでもある医療機関・介護事業所等と住民である。
協働における役割について、八代市と氷川町が事業のコーディネートを担っており、八
代市医師会及び八代郡医師会と協働で行っている。また、当事例においては、4者がそれ ぞれで必要な財源を拠出しており、八代市及び氷川町それぞれにおいても財源確保を行っ ている。また、八代市役所内に共同組織を設置しているが、これは八代市がその中心の役 割を担っている。
また、アクターである医師会においては、研修・講演会等の企画を八代市や氷川町と連 携し、企画・実施を行う役割となっている。医療機関や介護事業所等への周知や参加促進 を専門職団体と連携しつつ行う役割となっている。また、それぞれの医師会における財源 確保を行っている。
医師会、歯科医師会、看護協会、介護支援専門員協会などの専門職団体の役割としては、
医療機関や介護事業所等の事業への参加促進の役割であり、協議会等における専門職団体 としての助言等の役割がある。
経営資源の拡大について、八代市、氷川町は、事業のコーディネートや広報等の財源、
共同事業展開のための財源や人的資源がある。アクターである医師会と共同することによ り、財源や人的資源は増加する。医療・介護の専門職団体や医療機関、介護事業所等の参 加により、専門的知識等の資源が増加する。
こうした活動により創造される価値は、顧客としての医療機関や介護事業所の専門職に とっては、専門性の向上が個別価値としてあげられる。また、住民は、スキルアップされ 連携体制のとれた従前より質の高いサービスが提供されることが個別価値としてあげられ る。社会的価値としては、専門職のスキルアップと多職種の連携等を通じた専門職基盤の 強化であり、在宅サービスの充実である。アクターとしての専門職団体としての個別価値 は、関係団体等の連携強化という社会関係資本である。医療機関や介護事業所等にとって の個別価値は、関係機関等の連携強化という社会関係資本である。八代市及び氷川町にと っての社会的価値は、専門職基盤の強化や在宅サービスの充実、医療と介護のシームレス なサービス体制の構築である。
ガバナンスのポイントとしては、八代市及び氷川町、八代市医師会、八代郡医師会の4 者の緊密な連携体制をまず構築したことがあげられる。相互影響や対話の場として、4者 会議が設置され、事業が推進されている。また、財源をそれぞれで確保しそれぞれで執行 している点が特徴である。それぞれの地方自治体やアクターの主体性が確保しやすい手法 ともいえる。また、実効性を担保するために、4者で協定を締結していることが要点とし て考えられる。これにより組織間連携がより確かなものとなっている。
地方自治体 アクター 顧客 八代市、氷川町 八代市医師会、八代郡医師
会、医療・介護の専門職団 体、医療機関・介護事業所 等
医療機関・介護事業所等 住民
ビジョン 在宅医療と介護の連携によるサービス基盤の充実
事業内容 八代地域在宅医療・介護連携センターを中心機関とする在宅サービス基盤の充実につ ながる事業。連携体制の構築や多職種を対象とする研修、住民向け講演会等。
協働
(地方自治体及び各アク ターの役割)
・事業のコーディネート
・八代市及び氷川町それぞ れにおける財源確保
・共同組織の設置
【医師会】
・研修、講演会等の企画・
実施
・医療機関・介護事業所等 への事業の周知、参加促 進
・それぞれの医師会におけ る財源確保
【医療・介護の専門職団 体】
・医療機関・介護事業所等 の事業への参加促進
・会議等での助言
【医療機関・介護事業所 等】
・研修等への参加によるス キルの向上と、グループ ワーク等での専門知識 の提供や共有
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経営資源
(各主体によって提供さ れたヒト・モノ・カネ・知 識等)
※地方自治体にとっては、ア クターの資源が活用できる こととなり、必要とする資 源が最少化される。
・事業のコーディネート財 源、広報財源
・共同事業の展開のための 財源
・共同事業の展開のための 人的資源
【医師会】
・共同事業展開のための財 源
・共同事業の展開のための 人的資源
【医療・介護の専門職団 体】
・事業への参加のための人 的資源、専門的知識
【医療機関・介護事業所 等】
・研修等における専門的知 識
―
創造される価値
(個別価値、社会的価値)
【社会的価値】
専門職基盤の強化 在宅サービスの充実 医療と介護のシームレス なサービス体制の構築
【個別価値(関係団体)】関 係団体間の連携強化(社会 関係資本)
【個別価値(医療機関・介 護事業所等)】
関係機関同士の連携強化
(社会関係資本)
【個別価値(医療機関・介 護事業所等)】
専門性の向上
【個別価値(住民)】 提供されるサービスの質 の向上
【社会的価値】
専門職基盤の強化 在宅サービスの充実