第 2 章 長崎市におけるガイド事業の経緯とガイドにとってのガイド活動の
3 ガイド活動の精神的報酬について
3.2 ガイド同士のつながりが生まれる居場所
3.2.2 集合時間の 30 分前に集まるガイドたち
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るくガイド研修が単純にガイド資格の取得やガイドスキルアップのみではないことがわか る。
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②2017年11月20日 13:00-15:00 熊本市立帯山小学校6年生に対する案内
ガイド集合時間は12:40だったが、ガイドさんたちはいつも30分、早い人は1時間も先 に来るので、私も早めに行こうと思っていたが、結局12:20くらいに平和公園平和祈念 像の前に着いた。今日は大きな規模の学校に対するガイドで、16名のガイドさんが動 く。私は緊張して、到着前から吐き気がしてきた。到着した時には、やはり10名ほど のガイドさんはすでに着いて待っていた。みなさんに「おはようございます」と大き くあいさつをしながら、「今日はガイドデビューの日です。よろしくお願いします」と 言った。そうすると、私とガイド同期の田中さん(60代男性)が来て、自分が説明を 書いた紙を見せながら、「こういう風にするとね、わかりやすいよね」と自分のガイド 方法を教えてくれた。2回目に会うガイドさん(60代女性)は、「みなさんね、こうい うふうに写真を集めて、やってるね」とクリアファイルの中の写真を見せながら、教 えてくれた。初ガイドと言うと、ガイドさんたちは私に色々と教えてやろうとしてい た。
③2017年11月22日 12:15-14:15 福岡県木佐木小学校6年生に対する案内
依頼する学校によってゴールが異なることがあるが、今回はいつもとゴールが違った ので、もう一度確認したく、集合時間の1時間ほど前に来た。雨の中でうろうろしなが ら、ガイド集合場所に行ったら、ガイド同期のCさん(60代女性)がいた。集合時間の 40分くらい前だった。Cさんは「いや、寝れないしね、ガイド向いてないかな」と緊張 していそうな顔で言い、「ガイドネームプレートと依頼書とセットにしておいて、バイ ク入れて、来たらそれだけ忘れてきちゃった。もう戻ると時間に間に合わない」と忘 れ物をしたという。今日で3回目のガイドで、1回目は一時間前に到着して、2回目は時 間を勘違いして10分ほど遅れたそうだ。3回目はネームプレートを忘れてしまったと。
ガイドをする前に緊張するのは私だけではないことに気づいた。
Cさんと話をしているうちに、ベテランに見えるDさん(80代男性)が話をかけてきた。
旅行会社との交渉や雨の日の注意事項などを話してくれる。そして先日全体会議があ ったこともあり「携帯電話はくつみたいなもんですよ」と、ガイドの必須品だと話し た。その後も会話は続き、Cさんは「ガイド費も所得になりますか?所得になって150 万超えると税金上がるので」とDさんに質問をする。Dさんは修学旅行は謝礼金で所得 に入らないが、コンベンション次第だと言う。出発時間までに所得、年金、ガイド方 法、韓国等を話題にした会話が続いた。
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④2017年11月27日 12:30-14:30 熊本市立壺川小学校6年生に対する案内
集合時間の20分前の12時に着いた。私が一番最後の到着だった。初めてと思われるガ イドさんが一人二人いた。「先週も会ったね。毎日入っているかと思った」と近くにい たガイドさん(70代男性)が私に言った。実は私には会った覚えがなかったけど、話 を続けた。「あ、緊張します」と私が言ったら、「何回もやってるでしょう?」と、「あ、
でも緊張しますよ。最初はどうでしたか?」と言った。「最初はね。もう100回以上や ってる。でも全部が全部違うね。小学生は小学生、中学生、高校生みんなに合わせて 話が変わるね。どうやってそうなるのか不思議だね。」とガイドさんは、数多くの案内 をしてきたけど、その都度異なっていると語った。(調査日誌の中から)
ガイドはツアー出発時間の10分前に集まるのが本来の規則である。しかし、実際にさる くガイドたちは早い人は1時間前、大体30分前に集合場所に来る。ガイドをする前後の時 間に原爆資料館の中に設置されているガイドステーションで謝礼金の1000円を受け取る
のだが、1時間も早く来た人は謝礼金をもらってから集合場所に来る人もいる。出発を待っ
ている間に、ガイドたちは色々な会話をするのだが、上記の事例で述べているように、修 学旅行生の平和案内においてのガイドノウハウや情報交換を行う。筆者のような新人のガ イドにとっては、多くの先輩ガイドに会える場でもあり、ガイド方法を含め疑問に思うこ とを聞く機会にもなれる。先輩のガイドたちも後輩に見えるガイドに対しては、自分がガ イドをする時に「受けた」と思われること、要するに学生たちから反応が良かったと思っ たことについて話したり、ガイド同士がガイド経験談を自慢し合いながら、ガイドスキル について情報を共有している。現在の長崎さるくにおいて、さるくガイドがガイド先輩や 後輩と交流できる公式的な場がないなかで、平和学習を行う日の集合時間の前後の時間は、
ガイド同士の横つながりをつくる時間として機能している。
3.2.3 「さるくの後」の反省会
近年は事実上観光客向けになっている「通さるく」がほとんど運行されておらず、長崎 市民、とくに常連の参加者が多く集まる「学さるく」が中心に運行されている。学さるく には、案内をするガイドと仲のいい同僚のガイドが参加することも多い。2時間のまち歩き が終わったら、自然の流れで「反省会」という名目で、ガイドと希望する参加者たちは食 事や飲みに行く。以下の事例は、学さるくの参加者として参加したガイドたちと、実際案
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内をしたガイドが学さるくの後に感想や次回の案内に活かすための情報を話し合っている 様子を描いている。
【事例2-3-6】まち歩きの話で盛り上がる反省会
今日の学さるくは「浦上キリシタンウオーキング」、ガイドは田崎さん(80代男性)。
参加者は10名くらいであるが、田崎さん曰く一緒に勉強しているガイドさんが2名、
田崎さんの親友の秋山さん(70代男性)も同行した。3人とも長崎の風のメンバー。私 も知っているガイドさんたちである。13時からスタートであったが、集合時間20分前 には参加者たちが集合した。2-3名以外は知っている顔だった。
とても暑い日で、田崎さんの健康が心配になったが、15時頃に無事終了。その後すぐ 反省会をするということで、私も入れて5人(ガイド4名は全員男性)で浦上駅前にあ るひぐち(和食大衆居酒屋)へ行った。いつもガイドが終わったら行くコースだそう だ。
まず全員生ビールを頼んで、私は好きなものを選んでいいよと言われた。私は何でも 好きと言い、いつも頼んでいるようなものを注文していった。フライドポテトと海老 味のお菓子と枝豆が出た。話の最初は、まず今日の田崎さんの案内がとてもよかった ということから始まった。最初に浦上天主堂が見える丘で踏み絵のレプリカを見せな がらキリスト教信者でなくても踏み切れなさそうな、罪悪感を感じそうな雰囲気を演 出したのはとてもよかったとみんな褒めていた。そして、その踏み絵のレプリカはど こで買ったのかと聞く。田崎さんは県庁の土産コーナーで買ったという。もし私も隠 れキリシタン関連の案内をする機会があったら買ってみようと思った。ほかのガイド さんたちも同じく考えていたと思う。
その後は隠れキリシタンの話が続いた。どうして言葉も通じなく、文献もないのに、
200年以上信仰を守り続けたのかについての議論が熱くなされた。ガイドの4人があま りにも「身近なこと」のように語り合っていたので、私は「みなさんはキリスト教の 信者さんですか?」と聞いた。すると、誰もそうではなかった。仏教徒だという。田 崎さんは「我々ガイドだから、そして長崎の人も特性かもしれない」という。(2018年 8月4日、「浦上キリシタンウオーキング」調査日誌の中から)
筆者が調査を実施していた2017年から2018年の間は、「長崎と天草地方の潜伏キリシタ
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ン関連遺産」が世界遺産に登録されたことにより、それがガイドたちの間では中心的な話 題となっていた。観光客の関心も高まるという予測から、自主的に研修を行うガイドグル ープもいた。その時期ごとの注目される観光資源が、ガイドたちの日常的な会話において も題材になっているわけである。そういった話し合いの場は、学さるくが終わってからな される。仲の良いガイド同僚や常連の参加者と行う反省会では、実は話の内容としては褒 め合いの会になっている。まち歩きをする途中で良かったと思ったことを共有し合い、学 び合う場にもなっており、ガイドたちはそこで得た新しいガイド「ネタ」を次回にまち歩 きに活かしていく。