第 1 章 行政主導の「住民主体」観光の形成
1.2 長崎さるく博’06 の開催
2006年のまち歩きイベントは、「歩き回る」「ぶらぶるする」という意味の長崎方言であ る「さるく」が採用され、「日本ではじめてのまち歩き博覧会 長崎さるく博’06」という 名称で行われた。2006年4月1日から2006年10月29日までの212日間行われたが、
2004年と2005年には、プレイベントが行われ、2年以上の準備期間を経て、イベントが 幕を開けた。イベントの基本方針は、一つ目にすべてのイベントを、市民が企画し、市民 が実施する。二つ目はイベント実施による直接的な利益は、すべて市民が享受する。三つ 目は実施されるイベントの大半は継続されることを前提にするとなっており、長崎市民の 役割や参加が重要なイベントとして規定された(長崎さるく博’06推進委員会 2007)。
まち歩きイベントの種類は3つに分かれていた。一つ目は、まち歩きコースマップを持 って自分で自由に歩く「遊(ゆう)さるく」(42 コース)であり、二つ目は、さるくガイ ドの案内を受けながら2時間程のコースを歩く「通(つう)さるく」(31コース)であっ た。通さるくの31本のコース自体は、游さるくの42本コースの中に含まれており、通さ るくでさるくガイドが案内をしないコースは、マップを持って自らまち歩きをすることに なる(図1-1-1、図1-1-2)。最後の三つ目は、専門家や有識者、有名人による講 座や体験等を単発的に行う「学(がく)さるく」(74 テーマ)で構成された。他にも、イ ベント期間中、グラバー園や出島、稲佐山、中島川などの観光名所を拠点に会場イベント や記念イベント等、様々なプログラムが実施された(表1-1-2)。
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【表1-1-2】長崎さるく博’06 の概要(長崎さるく博’06 推進委員会 2007)
企画要旨 長崎には、他所にないユニークで魅力的な資源が数多く存在するが、それらの すべてが十分活かされているとは言いがたい。これまで発信されず、楽しまれ ることお少なかった多くの素材の楽しみ方を創造し、発信し、「長崎での新し い時間の過ごし方」として定着させる契機とするためにイベントを開催する。
また、市民主体でイベントを運営することで、市民が観光資源を「市民の財産」
として再認識し、交流にかかわるさまざまなノウハウを取得する契機とする。
基本方針 ①すべてのイベントを、市民が企画し、市民が実施する。
②イベント実施による直接的な利益は、すべて市民が享受する。
③実施されるイベントの大半は継続されることを前提にする。
名称 日本ではじめてのまち歩き博覧会 わからんまち体験 長崎さるく博’06 テーマ 【メインテーマ】
知らなかった長崎の体験と発見
【サブテーマ】
すてきに・ちてきに・げんきに 開催期間 【プレイベント】
平成 16 年 10 月 23 日(土)から 11 月 23 日(火)までの 32 日間 平成 17 年 7 月 30 日(土)から 10 月 16 日(日)までの 79 日間
【本イベント】
平成 18 年 4 月 1 日(土)から 10 月 29 日(日)までの 212 日間 イベント
構成
①基礎イベント
・長崎游さるく:自由気ままに長崎散歩
・長崎通さるく:長崎名物・ガイドツアー
・長崎学さるく:専門家の講座+ガイドツアー
②会場イベント ③演出イベント ④記念イベント ⑤長崎体験 ⑥タイア ップイベント
延参加者数 1,023 万 3 千人(目標 960 万人)
主催 長崎さるく博’06 推進委員会
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【図1-1-1】長崎さるく博’06 游・通さるくコースマップ 長崎市中心部・浦上周辺
(長崎さるく博’06 推進委員会 2007)
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【図1―1-2】長崎さるく博’06 游・通さるくコースマップ 外海・東長崎・香焼・
伊王島・高島・三和・野母崎周辺(長崎さるく博’06 推進委員会 2007)
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長崎さるく博’06において話題を集めたのが、さるくガイドが案内する「通さるく」であ った。通さるくが人気を博した理由の一つは、まちを案内するさるくガイドの解説により、
住んでいても気づいていなかったまちの歴史を学び、暮らしの中での過去の思い出を喚起 できたことが挙げられる。また一律500円の手ごろな参加費や様々な特典が付いていたこ とも参加者の誘致に効果的であったと考えられる。まち歩きツアーは2時間程度を所要し、
午前と午後二つに分けられ、定刻出発で行なわれた。
通さるくを行うさるくガイドとガイドサポーターには395名の住民が関わった。さるく ガイドの場合は、以下の二つの経路から参加者が現れた。一つ目は、1994年から活動を行 っていた「長崎市民ボランティア観光ガイド」であり、二つ目は、長崎さるく博’06を機に 新しく公募した人々である。ボランティア活動として位置づけられていたが、完全に無償 ではなく、一度のガイドツアーにつき謝礼金として一律1,000円が支給されていた。さる くガイドの年齢層については、確実なデータを持っているわけではないが、2006年長崎さ るく博’06 の当時から活動してきたガイドたちが、調査を実施していた 2018 年度現在に 70代から80代になっていることから換算すると、現役を引退した60代から70代前半の 年齢層の人々が主流であったと考えられる。
その他、長崎の老舗や伝統工芸の仕事場、コレクション等を店主自身が訪問客に紹介す る「さるく見聞館」が19ヶ所誕生した(表1-1-3)。さるく見聞館は、地域住民が愛用 する店舗であるという意味でもあるが、観光客に長崎らしさをアピールしやすい長い歴史 を持った老舗やお土産屋が中心に構成された。長崎さるく博’06 以前からも観光客向けの 商売を行っていたお店がほとんどであった。加えて、「さるく」途中でトイレを借りたい時 や休憩したい時に立ち寄りが可能なホテルやレストラン、喫茶店等118店が「さるく茶屋」
として協力した(長崎さるく博’06推進委員会 2007)。
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【表1―1-3】さるく見聞館の一覧
1 岩永梅壽軒(和菓子見聞館)
2 小川凧店(長崎ハタ見聞館)
3 江崎べっ甲店(べっ甲見聞館)
4 老舗菊水 大徳寺 (焼餅見聞館)
5 ツル茶ん(レトロ見聞館)
6 理容たていし (くんちミニチュア見聞館)
7 瑠璃庵 (長崎ガラス見聞館)
8 四海楼ちゃんぽんミュージアム (ちゃんぽん見聞館)
9 万寿庵(まんじゅう見聞館)
10 高野屋(からすみ見聞館)
11 鍵屋薬品本舗(くすり見聞館)
12 文明堂総本店(カステラ見聞館)
13 きっちんせいじ(電車マニア見聞館)(2017 年 12 月閉店)
14 十八銀行史料展示室(銀行見聞館)
15 坂本屋(卓袱見聞館)
16 長崎路面電車資料館 (路面電車見聞館)
17 千寿庵 長崎屋(有平糖見聞館)
18 三菱重工業(株) 長崎造船所史料館 (長崎造船所見聞館)
19 平野楽器店(和楽器見聞館)